2017年5月22日05時00分
せっかく改善した国際社会との関係を逆戻りさせたくない。そんな国民の思いがまさったのだろう。イランの大統領選挙で、対外融和を進めてきた現職のロハニ大統領が再選した。
核開発をめぐる2年前の国際合意により、米欧による制裁は緩められ、イランの孤立的立場はわずかずつ変わりつつある。その流れが加速するよう、国民は期待を寄せたのだ。
大統領は選挙後のテレビ演説で「イランは世界と協調する道を選んだ」と述べた。その言葉どおり、今後4年間、緊張緩和の努力を重ねてほしい。
選挙は、保守穏健派の現職大統領に、保守強硬派のライシ前検事総長が挑む構図だった。
核合意は、国連安保理常任理事国とドイツの6カ国にウラン濃縮などの縮小を約束したが、ライシ師はそうした米欧との妥協を嫌う姿勢を示した。
そのライシ師が4割近くの票を集めたのは、国民の間に核合意の「果実」が浸透していない現実への不満があるからだ。
合意後、石油生産は回復し、インフレも収まったが、失業率は依然高い。世論調査では国民の7割が「暮らしは上向いていない」と答えている。
イランの体制では、最高指導者ハメネイ師が最終決定権をもち、大統領の権限は限られる。国民の不満が高まれば、「外国に譲歩しても利益はない」と説く強硬派が伸長し、ロハニ政権は苦境に陥りかねない。
中東では、同じイスラム教の中でシーア派のイランとスンニ派の国々の間で緊張が続く。スンニ派の盟主サウジアラビアとイランは昨年国交を断った。
イランの軍部はミサイル開発を続け、シリアやイエメンの内戦などに深く介入している。
イランの動向は、中東だけでなく国際情勢の安定にも影響する。強硬派や軍部の独走を抑え、穏健派が政権を着実に運営していくには、国際社会からの支援も必要だ。
その意味で、事態をこじらせるような無責任さが目立つのが米国である。オバマ前政権が核合意づくりを率先したものの、米議会はイランへの強硬姿勢を崩さず、トランプ大統領もイランへの敵視を隠さない。
トランプ氏はサウジ訪問で、イラン以外のイスラム諸国との首脳会議を開き、「イラン包囲網」とも映る動きを見せた。
中東の和平を実現するには、米国とイランの関係改善は必須条件である。イラン国民が示した融和の意思にこたえるためにも、トランプ政権はロハニ政権との歩み寄りを探るべきだ。
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