色彩感覚を調べてみても自閉症児のそれは、NTの子どもとはかなり異なることが明らかとなった。いちばん明るい色である黄が嫌われ,代わりに自然環境を彩る地味な緑と茶が好まれる。
ところが昨今の人工環境の景観では華美な原色が多用されるのは周知のとおりである。それはマイノリテイの人間にとって自覚するしないにかかわらず、相当量のストレスとして働いているだろうと想像される。
自閉症研究は現在、過去に例のなかった規模で活発におこなわれるようになっている。だがややもするとその多くには、自閉症者を実験動物のように扱ったNTの立場に立ったものに終始しているきらいがあることは否定できない。
地球環境を守るためには、人類がバイオダイバーシテイを保全する努力が不可欠となっているように、ニューロダイバーシテイの破壊阻止という観点からの障害者支援が、もとめられているのである。
そのためにはマイノリテイの人々が過剰なストレスを体験することなく生活できる居場所作り(ニッチェコンストラクション)も急務だろう。
たとえば、上の2枚の写真を見ていただきたい。全国展開している牛丼店の写真である。右側が、通常の店の看板であるのに対し、左は京都市内でのみ使われているものだ。左では黄色の部分が「白抜き」になっていることが、見て取れるだろう。
京都市は古都という事情から、独自の景観条例をつくり、華美すぎると判断される店舗の外装を規制しており、その一環として黄色の使用も極力ひかえるように指導しているのであるが、結果としてそれは自閉症者の色彩感覚に適した環境作りにもつながっている可能性が高いのである。
やる気さえあれば工夫次第で、環境改善はいくらでも可能であることの実例ではないかと私は考えている。