トップ > 岐阜 > 5月15日の記事一覧 > 記事
岐阜再発防止の動き進む 御嵩「鬼岩」クライミング金具発見1年
御嵩町の国の天然記念物の巨岩群「鬼岩」で昨年五月、ロッククライミング用の金具が打ち込まれているのが見つかってから一年。その後、全国各地の景勝地で同様の金具が相次いで見つかる事態となった。これをきっかけに管理する自治体は金具の撤去などを進め、看板を設置し注意喚起を図るようになった。一方、クライマーの側にも改善を目指す動きが出始めた。 ■法令違反の場合も御嵩町と瑞浪市にまたがる鬼岩公園は新緑が美しく、リュックを背負った老夫婦が木の枝のつえを片手に散策する姿もあった。訪れるのは事件発覚以来。最初に金具が見つかった巨石「関ノ岩屋」に向かうと、以前はなかった「岩を傷つける行為は法令により罰せられる場合があります」と警告するパネルが取り付けられていた。金具は肉眼ではよく分からなかったが、カメラのズームで岩の表面を観察すると、二本を見つけられた。 事件では、老朽化した金具を打ち直したと名乗り出た愛知県の男性が文化財保護法違反の疑いで書類送検され、起訴猶予となった。 町は昨年六〜七月に鬼岩を調査し、三つの岩に計二十三本の金具を確認した。国の天然記念物のため手続きが必要となるが、今後岩を傷つけずに抜ける金具は撤去し、難しいものは目立つ突起部分を切り落とす方針だ。町生涯学習課の栗谷本真係長は「岩が傷つけられたことは遺憾だが、文化財は保護するだけでなく活用していくことも重要。クライミングという需要があるのは驚きだった」と振り返る。 ■景勝地で対応急ぐ金具が見つかった他の自治体でも、対応に追われた。金具二十四本が見つかった愛知県新城市の国の天然記念物「乳岩」では、抜くと岩が傷つくため、そのままにしてあり、今後文化財のエリアを示す看板の設置を計画している。三十本が見つかった石川県白山市の県天然記念物「白峰百万貫の岩」では、業者に依頼して金具を撤去し、文化財であることや、登らないよう呼び掛ける看板を設置した。県文化財課の担当者は「今後同じようなことがないよう、パトロールなどで経過を観察したい」と話す。 ■登る側も意識改革NPO法人日本フリークライミング協会(JFA)は、昨年十月刊行の会報「freefan」で、「天然記念物へのクサビ問題と今後のJFAの活動方針」と題した特集を掲載し、事件の経緯などを報告。天然記念物に限らず、地権者の許可を得ていない岩場も少なくないとして、「岩場の利用を誰からも後ろ指を指されることなく、どの地域からもあたたかく迎えられる時代を目指す」とする基本方針を示した。 クライミング歴三十年以上で、特集の執筆者の一人の東海理事若林伸一郎さん(48)=愛知県日進市=は「自分も若かったころには、皆が登っているという理由から、登攀(とうはん)が許されているかを確認せずに岩場を登ったこともあった。今後は関係者との交渉を通じて、何とか公に登れる岩場を増やしていきたい」と話す。 (秦野ひなた) <クライミング> 最低限の安全確保のためのロープや金具のみを使って岩場を登るフリークライミングや、その一種でロープなどが不要な比較的低い岩壁を登るボルダリングなどがある。五輪種目のスポーツクライミングでは、ホールド(突起)を取り付けた人工壁を使い、制限時間内に到達できた高さや、ゴールにたどり着く速さを競う。 PR情報
|
|
Search | 検索