2017年5月21日05時00分
センター試験の後を継ぐ「大学入学共通テスト」の大枠が示された。大きく変わるのは英語だ。マークシートでは測れない話す力と書く力も問うために、英検やTOEFLのような民間の検定試験を使うという。
語学は、使えてこそ意味がある。「読める」「聞ける」だけでなく、「話せる」「書ける」もめざすのは当然だ。
ただ、2020年度入試、つまり今の中3から実施するという方針には疑問がある。
計画通りなら、各高校は新入生を迎える来春までに、この四つの技能をきちんと教えられる体制を整えないといけない。
果たして間に合うのか。そこまで急ぐ必要があるのか。
準備不足のまま改革に踏み出せば、困るのは生徒たちだ。
今の学習指導要領も、4技能を総合的に養うことを求めている。だが実態はどうだろう。
高3を対象にした2年前の抽出調査では、文部科学省が求める「日常の事柄について単純な情報交換ができる」(英検準2級程度)という水準を超えた生徒は、「話す」が1割強、「書く」は2割にとどまった。
これは読解・文法中心の授業を脱しきれない現実を映す。スピーチや討論に取り組む教員が「圧倒的に少ない」と、文科省自身が調査で指摘している。英語を教える教員自身の英語力も、国の目標に達していない。
学校の授業で話す力、書く力が十分身につかなければ、生徒たちは塾や英会話教室に頼るだろう。お金があり、都会に住んでいれば、事前に民間試験を何度も「お試し」で受けて場慣れすることもできる。貧富や住む地域による有利・不利の差が、今以上につきかねない。
なによりも授業改善を急ぐ必要がある。研修を徹底して教員の腕を磨くのがいいのか、外部講師の力を借りるべきなのか。それともネットや動画を使って学ぶ方法が効くのか。これらを組み合わせる道もあるだろう。検討してもらいたい。
文科省は「民間試験の導入後も、23年度まで現行方式の英語試験も残す」という選択肢も示している。高校や大学に戸惑いがあるのを受けたものだろう。
22年度には新指導要領が実施され、地理歴史などの科目再編がある。入試改革のタイミングはその時にも来る。今回の方針に無理はないか、現場の声にじっくり耳を傾けてほしい。
受験は生徒にとって大きな負担ではあるが、将来役に立つ力をつける機会にもできる。だからこそ、できる限り公平な仕組みに仕上げたい。
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