歴史的文献に記載されている驚異的な建築物や世界七不思議。こうした伝説の地は大昔から人々の想像力を掻き立て、インスピレーションの源泉となってきた。
しかし歴史とうものは、長い間に歪められて伝わるものである。書き残した人のおかれた立場や状況によりその内容も改竄されてしまっていたり、誤った伝聞が書き写されていたり、事後に想像力を働かせて記されている場合もある。
それゆえ文献に残された伝説の地の多くは存在しなかった可能性もあるという。仮に実在したとしても今に伝わるイメージとはかなり違った場所であるかもしれない。
当時を知る人はもはや誰も現存していないのだからしかたがない。だがはっきりわからないところが逆に我々のロマンを誘うのかもしれない。
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10. エルドラド――そもそも都市ではない
最近、ディズニー映画の中できらめく都として描かれたエルドラド。南アメリカ先住民の言い伝えによれば、黄金の都であったという。数多くの冒険家が莫大な富を求めて、黄金郷を探してきた。
しかし、もともとの伝説は都市ではなく、人についてだったのだ。ところが冒険家から得られる小銭を当てにした先住民によって、都市へと作り変えられた。そうでなければ探してくれないからだ。
元になった伝説は、莫大な富を持つ古代の長が毎朝金粉を浴び、夜になると聖なる水で金粉を洗い流すというものだ。しかし、この伝説すら正しくなかった。
考古学者によると、本当のオリジナルは、ムイスカ人の習慣であるようだ。彼らは新しい王を任命する際に似たような儀式を行っていた。もちろん、毎日このような大盤振る舞いをするわけがない。特別なときだけに行うのだ。
9. トロイ――イメージとはかなり違うかもしれない
「トロイの木馬」で有名な都市。ホメロスの叙事詩『イーリアス』の中で語られ、また映画にもなり、そのイメージが定着している。
まず始めに、2つの有名な物語を描いたホメロスのオリジナル作品のほとんどは消失しており、今後も発見されないかもしれないことを言っておく。したがって、その内容の真偽やフィクションの度合いを検討することは難しい。さらにトロイが実在するかどうかについては長らく怪しまれていた。現在、その跡地とされる遺跡が発見されているが、かえって問題は複雑になってしまっている。遺跡はいくつもの層が重なっており、どれがホメロスが描いたトロイであるか判然としないのだ。
叙事詩の包囲戦が長年にわたって行われたと考えられるきちんとした根拠もある。しかも包囲戦は1度ではなく、全く同じ場所で複数回行われたかもしれない。このために、トロイの正確な姿を推測することはほとんど不可能なのである。
8. アトランティス――伝説か、あるいは天災を被った普通の島か
世界の覇権を狙えるほどに繁栄したが、神の怒りに触れて滅亡したというアトランティス。その伝説は千年を超えて人々の心を捉えてきた。海底で今も存在するという説やバミューダトライアングルの怪事件はアトランティスが背後にあると主張する説など、突飛なものも含め、様々な説が提唱されてきた。
しかし仮にアトランティスが存在したのであれば、十中八九、それは自然災害によって滅んだごく普通の島であったろう。アトランティスに初めて言及したのはプラトンである。それは消失の突然さや危険に備えることのない尊大さを諭すための寓話として記述された。
その実在は別として、人々はしばしば知っていることを書き記す。実はプラトンの記述にかなり近い、繁栄の最中に火山にほぼ一瞬で飲み込まれた島が存在したことを裏付ける証拠はあるのだ。彼がこれをモデルにした可能性はある。だが、この島についてそれ以上に特別なことはない。
7. バビロンの空中庭園――それほど高度ではない
世界の七不思議の1つに数えられるバビロンの空中庭園だが、おそらく実在しなかった。芸術作品によって、砂漠のど真ん中に砂岩で建設された美しいテラスというイメージが作られてきたが、そもそも最初にこの庭園が言及されたのは、バビロンが滅んでから数百年後のことであった。ゆえにその実在はかなり疑わしい。
バビロンの遺跡はかなり最近になって発見された。だが、それは考古学者が予想していた場所ではなく、ニネヴェという現在のイラクにあたる場所にあった都市の近くだ。ニネヴェ人は戦争でバビロンの文化を乗っ取ったが、敵の名前を自らの都市に取り込むことを好んだようだ。こうして考古学的な特定は難しくなっている。
空中庭園の実在や高度に進んだ灌漑技術の存在を裏付ける証拠は今のところ得られていない。仮に存在したのだとしても、それほど印象的なものではなかったろう。なにしろバビロンがあった土地は特に乾燥していたわけでもなく、作物を育てることもできたのだ。
6. バミューダトライアングル――古代の船乗りにとって危険な場所ではなかった
その謎についてはいくつもの説が提唱され、今では陰謀論の文脈で語られることもある。ほとんどの人はそれが自然現象であると考えているだろうが、何かがそこで起きていると考える人もいるのだ。
しかし、実のところ、そもそもバミューダトライアングルなどというもの自体がない。つまり、世界地図にその名称は記載されていない――そこが回避すべき何かがある特定の地域であると考えられてこなかったということだ。魔のトラングルにまつわる噂は単なる噂でしかない。
統計上、この海域における船舶や航空機の消失が他の場所よりも多いということはない。別の言い方をすれば、海のどこかに適当に三角を描いたとすると、そこもバミューダと同じくらい消失事件が発生するということだ。広大な海はどこも危険だ。だが、特定の海域が特に危険であるという証拠はない。
5. エデンの園――物理的なものではなく、哲学的なもの
一部のキリスト教徒は、エデンの園がかつて地球上のどこかで物理的に存在したと信じている。その場所に関する研究も行われ、いくつか候補地が挙げられている。そのほとんどは中東の、初期の聖書で言及されている場所の付近である。
面白いことに、ユダヤ教ではエデンの園は物理的な場所とは考えられておらず、状態を指していると信じられている。その教義によれば、人類がこの世に創られたとき、彼らは完璧な調和の状態にあった。しかし罪を犯したことで、調和が破られた。その目に映った世界は過酷で孤独な砂漠の中の暮らしだった。最近ではキリスト教学者の中にもこうした見解を支持する者が増えている。
4. バベルの塔――未完の建造物
聖書によれば、大洪水の後、人々は同じ言葉を話し、傲慢にも神を忘れ去った。そのうえ天まで届くような塔を建てようと企てた。そこで神は人々に混乱をもたらすことにした。よって今の世界にはいくつもの言語が存在し、我々は分断されている。
ただの作り話と捉える人もいるが、真剣に考古学的証拠を探した者たちもいた。真実は少々複雑である。
バベルの塔の物語を証明する証拠はない。しかしバビロンにバベルの塔の記述に一致する大ジッグラト(ピラミッド型の神殿)が存在したことを示す証拠はある。そのジッグラトは完成しなかった。完成させようという試みは何度かなされたようだ。
一説によると、教訓になるような寓話を作ろうとしていた当時のユダヤ人が、近くにあった未完のジッグラトからインスピレーションを受けたという。
3. 若返りの泉――ポンセ・デ・レオンはそれを探しに行かなかった
もちろん水浴びしただけで若返ることができる泉など存在しない。現代社会で、それを信じる人などいないだろうが、数百年前には存在したと考える人はいるだろう。
伝説によれば、スペインの探検家ポンセ・デ・レオンは秘密の泉を求めて数年間フロリダに滞在したという。そして、しばらくして現地の住民にかつがれていたことに気がついた。
しかし、彼の著作の中に若返りの泉を探したという記述はない。そう主張しているのは疑わしい出典に基づく空想的な記事だけだ。最初から最後まで単なる作り話である可能性は高い。
2. エリコ――断層上に建設
エリコの壁をご存知だろうか。エリコは聖書に記載されている古代都市だ。モーセの後継者ヨシュアはここを占領しようと包囲するも、城門を閉ざした街を陥落させることはできなかった。すると神が7日間城壁の周りを回り、角笛を吹くように助言した。ヨシュアがその言葉に従うと、なんと壁が崩壊した。
現在ではエリコの実在は確かめられている。だが、それ以上に奇妙なことも判明している。
実はエリコは地震頻発地帯にあったのだ。包囲戦で付近の水源が使い果たされたこともリスクを増大させた可能性がある。あるいは単に運が良かったのかもしれない。地震が多いことを知っていた軍の計算づくの行為だったという説もある。またキリスト教徒の中には神の力によってエリコはそこに作らされたのだと信じる者もいる。真実は神のみぞ知るである。
1. ロズウェル――使われなくなった古い空軍基地
古代の異星人の存在や、彼らの米政府やエリア51との繋がりを信じる人たちにとって、ここは伝説の場所だ。何もここで、ニューメキシコ州ロズウェルが存在しないと言っているのではない。ロズウェルに関していくつもの混乱があると言っているのだ。
もちろんUFO墜落事件で有名な街だ(これについては後に空軍が気象観測バルーンであると発表している)。また政府の極秘プロジェクトの大半はエリア51と関連づけられてきた。そしてロズウェルとエリア51は一緒くたにされるようになった。
ロズウェルにウォーカー空軍基地は存在するが、もうずっと以前から使用されていない。また極秘プロジェクトのために利用されたこともない。
ウォーカー空軍基地はかなり一般的な、戦略的にはあまり重要性のない基地であった。ベトナム戦争末期に予算が削られたとき、最初に閉鎖された場所の1つである。当時を偲ぶ博物館があるが、展示品は商業目的のために残されたものだ。
それでも夢とロマンを求めて、この地に異星人がいると信じる人はいる。
via:10 Ancient Places of Legend That May Never Have Existed/ translated hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
はい嘘松
の、とびきりグレートなヤツだぜ・・・
2. 匿名処理班
田舎者の私からすればラーメン二郎も
ネット上でしか見かけないエルドラド。
伏せ丼するオッサンはアトランティスの民。
3. 匿名処理班
そこに在ると誰かが信じる、それだけで良いんだよ。
ロマンを科学で計るのはそれこそ無粋と言うものだ。
4. 匿名処理班
ガンダーラとかシャンバラとか。
5. 匿名処理班
プレスター・ジョンの王国も希望
6. 匿名処理班
イーリオスはアルゴス軍が攻め落としたのは第7層
その前世代にヘラクレースに攻められてる
7. 匿名処理班
徳川の隠し財宝すらこの科学論だと存在しないことになる
あろうがなかろうがそんな小さいことはどうでもいい
絶対にあると信じる心こそが重要であり、その力で多くの
文化や遺跡を発見した
8. 匿名処理班
黄金の国ジパング・・どこにあるん
9. 匿名処理班
エデンの園が実在すると思った事は一度も無かったかも
10. 匿名処理班
エリア51のは、一般旅行者が車で通るとあとから黒い車が追いかけてきて怖い思いをしたというのは特に繋がないいろんな人たちが言うけどどうなんでしょ。
11. 匿名処理班
山海経にイロイロあるけど俺は解説本を読んだだけ、桃源郷なんてのもあるな、自分の住んでいる地に不満が有るとこんな地を想像するんじゃないかな?
12. 匿名処理班
※3
科学で計ろうとするのもまたロマンだよ
13. 匿名処理班
ニライカナイ
アルカディア
イスカンダル
ソドムとゴモラ
イス
14. 匿名処理班
ありゃ、エリュシオンがないね。
ギリシャ神話の時代から、死者が住まうとされた地上の天国。昔の世界観では、天国も地獄も地上に実在すると考えられてた。
中世の世界地図にも北極の辺りに描かれてたけど、大航海時代の探索を経て、その世界観自体が廃れちゃった。
世界が広かった時代の人は、本当にこの世のどこかに天国・地獄があると信じてたんだと思うと、宗教的な戒律や、モラルなどに対する意識は、我々とは比べものにならんかっただろうねw
私はニュージーランド沖にルルイエが浮上する日をずっと待ってる(/・ω・)/れっつにゃー!
15. 匿名処理班
若返りの泉って今で言う美肌の湯みたいな温泉ですかね?
16. 匿名処理班
※3
それで済めば良かったんだが、本当に実在を信じちゃう&付随する神話まで信じちゃう→否定する資料などは全部陰謀・・・・と言う痛い人種が発生して周りに迷惑をかけまくるんで、嘘・デマだと一度はっきりさせたほうが精神衛生上いい。
言っても聞かないアホ共の相手はもうしたくない。
17. 匿名処理班
アトランティスが一晩で…というのには自分も懐疑的です。
環太平洋の島々には距離に関係なく、似通った文化、文明が存在します。これは「何らかの事情により島を離れ、海洋民族にならざるを得なくなった異民族が散りじりに環太平洋のそれぞれの島々に辿り着いたから」って事を示している様な気がするからです。島が一気に海没したならば、その島から人々が脱出する時間も、海上を漂泊するだけの物資を積み込み人が島から離脱する暇も無かった筈ですし。
18. 匿名処理班
完成度は高いがそっけない絵に少々の差し色を入れる
現実と空想はそういう関係なのだ
19. 匿名処理班
バベルの塔は砂嵐に隠されてるってヨミ様が言ってた
20. 匿名処理班
※17
アトランティスは大西洋や
ムー大陸伝説は欧米ではあんま人気無いらしいね
21. 匿名処理班
※16
というか、神話・伝説をウソ・デマで片付けてしまうのも問題。
神話・伝説はフィクションから生まれることもあるけれども、そのままウソやデマではない。
神話・伝説を頭から信じるのも問題だけども、神話・伝説がその時代・その場所で人々に共有された世界観なんだということを理解せずに、「ウソ」だと決めつけてしまうのも正しくない。
さらに言うと昨今「デマ」という言葉はいいように使われすぎ。
単なる誤解も、意図的なウソも、プロパガンダも全部デマで片付けるのは
デマという言葉の語義を無視している。
その場その場での繊細な違いをそのまま受容できずに
適当にまとめてしまう非・人文科学的な態度が
まさにウソやデマのもと。
22. 匿名処理班
毎日金粉ショーとかどういうアレなんですかね…