このエントリーは本当は約1ヶ月前の4月28日までに書こうと思っていたのですが、グズグズしているうちに3週間が経ってしまいました。
さて、その4月28日に何があったのか?と言えば、それはちょっとウェットな言い方をすれば「記念日」みたいなものなのです。何の記念日かと言えば、Kマウント初のフルサイズ・デジタル一眼レフ PENTAX K-1が1年前に発売された日なのです。
ゴールデンウィーク直前の金曜日で、私はいてもたってもいられなくなり、その日は少し早めに連休に入るふりして会社を休み、ヨドバシカメラからの荷物を正座して待ちわび、受け取ったらそのまま撮影に飛び出していきました。確か雨が降って天気の悪い日でした。
必要かどうか?とか、何に使うか? どう使うか? スペックは? 値段は?などと言うことはなにも考えず、ただ「Kマウントのフルサイズ・デジタル一眼レフである」というだけを理由に、発売日に手に入れて、その日からシャッターを切り初めて早365日(と約3週間)。
折々にK-1については記事にして触れてきましたが、1年経ったこの辺りで再度まとめをしておこうと思います。
昨年の5月末、K-1を使いはじめてほぼ1ヶ月経ったところで以下のような記事を書きました。
今から見れば1ヶ月で何が分かる?と言う気がしますが、実はここに書いた印象は今でも基本的には変わっていません。しかし1年間かけて約25,000カット分シャッターを切ってきた中で、いろいろ新たに分かってきたこともあります。
ですので、上記の1年前のエントリーとほぼ同じ項目をそのままなぞりながら、改めて現時点での感想と評価を書いていきたいと思います。褒めちぎるのは簡単なのですが、ここでは敢えて不満に思ってることに重点を置いてみました。
なお、またもや長くなってしまいましたが、文字だけでは何なので段落の合間に、K-1で撮ってきた写真の中から適当に選んで貼ってあります。本文とはあまり関係ない場合がほとんどです。
K-1は理想のフルサイズ一眼レフである?
はい。多分そうです。
などと曖昧な書き方をするのは、自分にとって「理想の一眼レフ」とは何か?が良く分かってないから。もう少し範囲を広げて「理想のデジタルカメラ」としても事情はそう変わりません。だから「こういうのが欲しかったんだろ?」と各メーカーが提示してくる製品のなかで、一番しっくり来るのはどれかと言えばやはりK-1になってしまうのです。
PENTAX K-1はもともとどこかにびっくり新技術が使われていたわけではなく、ひとつひとつのデバイスはすでに1年前の時点で枯れたものでした。そんなK-1の優れたところは、それら普通の機能やデバイスを上手くまとめ上げたパッケージングにあります。一方で何でもかんでも詰め込んでしまえと言うような、無節操なものではなく、そこには一筋のコンセプトが感じられます。
もちろんそれに納得するか、納得しないかは、人によるわけですが、少なくとも私は「そうそう、こういうのずっと欲しいと思ってた!」と錯覚する程度には、気に入ってるということになります。
では全く不満点がないか?と言うと、そう言うわけではありません。これはどうなの?と思ってるところがいろいろあります。以下具体的にその辺を見ていきましょう。
36.4Mピクセル フルサイズCMOSセンサー:超いいね!
K-1に搭載されたのは、恐らくニコンD800/D810辺りで使用されたものとほぼ同じソニー製のCMOSセンサーですが、ある程度実績のある熟れたデバイスと言うこともあってか、得られる画像は非常に先鋭で、ダイナミックレンジが広く、色味も豊かで、高感度性能も実用域で非常に優れており、およそ得られる画像の質という点で不満に感じたことはありません。
ホワイトバランスや露出の制御も完璧ではないにしてもうまく調整されており、少なくともRAWで撮っておけばどうとでも出来る、懐の深さはさすが大サイズ、高画素センサーです。その結果撮影が適当になってしまうという面がありますが、まぁアマチュア的にはそれでもいいじゃない?と、向上心のかけらもないことを思い、完全に頼り切っています。
やはり画質に関して、センサーサイズが大きいことは絶対的な正義だと思います。
ファインダー:イマイチ...
一眼レフファインダーはそれ自体の存在意義が問われつつある中、それでもレンズを通してスクリーン上に再現される被写体の生の光は、それを眺めるだけでも嬉しくなってしまい、まだまだ私はEVFのカメラで写真を撮る気にはなれません。
K-1にとっての一眼レフファインダーは、このカメラの価値を決定づける重要な要素ですから、手放しで褒めたいところですが、実際のところちょっと不満に思っています。
倍率とアイポイントのバランスは実用的なところだし、補正レンズを入れて歪みを補正してある努力は素晴らしいです。ファインダースクリーンは固定となっていますが、それもまぁ良いでしょう。実際私はスクリーンを交換したことないですから。
でも問題は透過液晶です。これには功罪があるわけですが、「罪」の部分が思った以上に気になるんですよね。具体的にはわずかな色付きと暗さ。K-3IIと同時に使うと良く分かるのですが、K-1のファインダー映像は明らかに抜けが悪く、色つきしています。
そしてそれは解放F値がF5.6クラスのズームを使ってると、あれ?何かおかしい?と思ってしまうほど薄暗くなり、ピントもよく見えなくなってきます。
さらに、その透過液晶に表示されるAFポイントと水準器表示は、夜景など暗いところでは全く見えなくなることもイラッとくるポイント。中でもAFポイントが見えないのは特に困ることが多々あります。
じゃぁどうすれば良いのか?と言われてもアイディアはないのですが、どうにもならないなら、透過液晶なんてない方が良い、と元も子もない極論を提案しておきたいところです。
オートフォーカス:いいね!
PENTAXの一眼レフカメラについて必ずついて回るのはAF問題。でも、私は満足しています。ニコンやキヤノンはほとんど触ってないですから。
K-3IIまでの機種と比べて、特に解放F値の明るいレンズ(特にFA Limited)でも安定してピントが来ると感じていますし、複数点オートのアルゴリズムと安定感も良くなった気がするし、動体撮影時のセレクトエリア拡大も、当たり前に機能するようになったと思います。
また、十字キーを使ってAFポイントを選ぶ操作性も、現在くらいのAFポイント数なら十分です。もう少し周辺部にAFポイントが増えると良いと思いますが、実際のところ、実用的に扱えるのはこのくらいではないかと思います。
動体追従性能についても、連写が遅いことと差し引きするとK-3II相当かも知れません。もちろんより一層の向上を目指して欲しいですが、とりあえずF1も撮れましたし、こんなもんじゃない?と思っています。
手ぶれ補正:超いいね!
手ぶれ補正については何も言うことはないでしょう。完全に頼り切っていてもうこれ無しでは写真は撮れそうにありません。よく言われることですが、どんなレンズをつけても手ぶれ補正が効く安心感は本当に素晴らしいです。そして実際のところよく効いていると思います。
この手ぶれ補正機構を応用した各種機能のうち、リアルレゾリューション、ローパスセレクターは、あまり多用する機能ではありません。アストロトレーサについては私はまだ使用したことがありません。しかし、ごくたまに必要な場面に遭遇したときには、これ以上威力を発揮するものもありません。半ば飛び道具的でありながら、実は非常に実用性を考えた素晴らしい機能だと思います。
なお、自動水平補正もK-5時代までは使っていましたが、最近は自力で水平は取るように改めました。結果的に傾いてしまってもそのほうが諦めがつきます。
シャッターフィール:イマイチ...
1年前のエントリーではシャッターフィールを絶賛した記憶があります。多分それは間違っていないはず。シャッターを切ったときのキレがありつつ柔らかさもある独特の感触は、PENTAX一眼レフの美点だと思っています。この感覚はニコンにもキヤノンにもないし、ミラーレスには望むべくもありません。
でも... それだけにかえって気になることがあります。それがシャッターショック。これ2016年のはCP+でK-1の実機に初めて触れたときから感じていることだったりします。
たまにK-3IIを使うとそれを如実に感じるようになります。もちろんシャッターもミラーもK-1は大きいわけで、しかもミラーは複雑な動きをしているので、そのせいで仕方ないのかな?と思います。
でも撮影画像は上にも書いたとおり、手ぶれ補正の威力もあってブレることは滅多にありません。ファインダー像も安定していてミラーのバウンスを感じるわけでもありません。でも手にショックは感じる...と。
シャッター切った感触はK-3IIの方が良かったな、と言うことに気がついてしまい、それ以来ちょっと残念な気持ちになっています。
ボディサイズと重さと質感:イマイチ...
フルサイズ一眼レフ全般にとっての一番の欠点は大きさと重さでしょう。その中でもK-1は小さい方ですが、そうは言ってもやっぱりK-3IIなどよりは一回り大きいです。でも使えば使うほどそのことは気にならなくなってきました。
むしろ問題は重さの方ではないかと思います。スペック表からあらかじめ分かっていたことですが、単体で1kg近い重量をもつK-1は他社のフルサイズ一眼レフと比べても、かなり重たい方です。サイズは小さいのに重たいのだから、ずっしり感がグリップを握った右手に伝わってきます。
しかし重たいから使うのが嫌になったとか、持ち出さなくなったと言うことはなく、重たすぎて撮れなかった写真もありません。ただ、写真を撮ってる間は気にならないのに、一日写真を撮って帰ってくると、右手になんとも言えない疲労が残っていることに気がつき、そこで初めてK-1の重さを実感することになります。
ですから、無茶だとは思いつつも、より一層の小型化、軽量化を進めて欲しいと言わざるを得ません。できればK-3IIと同じくらいのサイズになったら良いのに、と思っています。
あと、ボディ周りでもう一つ気になっているのはトップカバーの質感。K-1はステンレス製のシャーシにマグネシウム合金の外装を採用し、トップカバー全体がプラスチック製となっています。それが悪いわけではないのですが、ペンタ部は面積が広いだけに、なんとなくその質感が気になります。素材も塗装もしっかりしてるはずですが、もう少しなんとかならないものかと思います。
スマートファンクション:イマイチ...
1年前はこれについても絶賛していたかもしれません。いえ、今でもとても良いUIだと思っています。KPで採用されたのも当然だし、今後はこれがPENTAX機の標準仕様になっていけば良いと思っています。でも、結局1年経ってみると、ほとんど使っていないことに気がついてしまいました。
現在は基本的にISO設定にしてあるのですが、ISO感度の変更はスマートファンクションを使わなくても、従来通りISOボタンと後ダイヤルで事足りてしまうどころか、そちらの方が自然で簡単にできるように感じます。
クロップモードも基本フルサイズに固定しているので、このダイヤルで切り替えることはありません。Wi-FiのON/IOFFも最初はスマートファンクションでやっていましたが、今はコントロールパネルからONするようになりました。それ以外の機能は使ったことすらないかも知れません。
それは元々の操作系が完成していて、スマートファンクションなんか要らないということなのか、あるいはアイディアは良いけど、実装が間違っているかのどちらかなのだろうと思います。
フレキシブルチルトモニター:いいね!
4本のリンクによって支えられた背面液晶もK-1だけの特徴です。微妙な角度範囲ですが縦方向にもチルト出来るのが特徴。私は可動液晶懐疑派でしたが、やはりローアングル、ハイアングルするときにとても便利です。一眼レフなんだから光学ファインダーで撮れないものは諦めるべき、と思っていた時代もありましたが、今ではハイアングルや、ローアングル時には何の迷いもなくライブビューをオンしている自分に気がつきました。
引き出すと水平が取れなくなるとか、イラッとくることもあるのですが、1年使ってみてじわじわと良さが分かってきました。なので素直にこれは評価しておきたいところです。
1年経っても機械的な劣化は感じられず、当初心配されていた強度は問題なさそう。今でも節度感を持ってかっちり動きます。
レンズ:イマイチ...
AFとともに常にPENTAXの弱点として語られるのはKマウントのレンズラインナップです。K-1の発売とともにDFAレンズのロードマップが発表されましたが、結局その後1年以上経ってもロードマップに載っている新しいDFAレンズは出てきていません。
今年のCP+で50mmF1.4のモックが展示されましたが、これも実物が登場するのは今年の後半と言われています。となると、今年の新しいレンズはこれ一本きりか...? と考えるともうちょっと頑張って欲しいところです。
なお、現時点で私の持っているKマウントレンズはこんな状態になっています。
かなり節操がないですが、DFAレンズに関しては結局現行のズームレンズは全て手を出してしまいました。あと欲しいのはマクロレンズなのですが、それを買ってしまうとコンプリートして「上がり」に到達した気になってしまうのが怖くて手を出せていません。
ちなみにK-1と組み合わせて使っていて「楽しいレンズ ベスト3」は以下の3本です。
- DFA★70-200mm F2.8ED DC AW
- DFA15-30mm F2.8ED DC WR
- FA77mm F1.8 Limited
書き始めると長くなるので、敢えていちいちのレンズについては語りませんが、この3本は本当に良いレンズで気に入っています。
次点としてはDA★55mmF1.4を挙げておきたいと思います。これもフルサイズで十分使い物になるし、K-1と組み合わせるとまた新しい世界が開ける、面白いレンズだと思います。一方DFA24-70mmF2.8はだんだん分かってきましたが、いまだ完全に信頼が置けていません。もう少し時間をかけて付き合っていく必要がありそうです。
GPSとアウトドアモニター:いいね!
その他の機能で、地味に気に入っているのは内蔵GPSです。撮影地点が自動的に記録されるこの機能は本当に便利で、基本的に出先では必ずジオタグを記録するようにしています。取りこぼしもないし精度も上々です。
あとは、えーっと何があったっけ? そうそう、アウトドアモニターもとても良い機能です。
日中の炎天下ではプラス方向に、夜の暗いところではマイナス方向に、的確に簡単に設定できるのは本当に便利。スマホだってバックライトの明るさは簡単に調整できる(iPhoneの場合しか知りませんが)わけで、カメラもこうであるべきだと思います。
なお、アウトドアモニター機能はデフォルトでは電源OFFでリセットされるようになっています。そのことを嘆いている記事をどこかで見かけた気がしますが、モードメモリーを変更すれば設定した状態を常に保持するようになります。
カードスロット:これはひどい...
さて、一年間使ってきて感じているK-1の一番の欠点は、ずばりカードスロットの仕様です。
K-1はSDカードスロットが二つありますが、海外サイトの評価によると、実際には同時書き込みは行われず、常に順次書き込みしかしていないとの事です。
以下のブログ記事でその評価結果についての日本語訳が紹介されています。
私は通常スロット1にRAW、スロット2にJPEGを記録するようにしていますが、特に連写をしていなくても、長いこと書き込みランプが点灯し続けていることに気がつきますし、たまに飛行機の撮影などに出かけて、全力で連写した場合はあっという間にバッファ詰まりによる書き込み待ちが発生します。
最初は34.6MピクセルのRAWファイルは巨大だから仕方ない、と思っていましたが、上記評価レポートを読んで納得しました。少なくとも連写をする場合は、2スロット同時記録あるいはRAW+で使ってはいけないのだと。事実上RAW+での連写は無理と考えた方がスッキリします。
これは多分SoC(PRIME IV)のH/W仕様なのだろうと思います。そこそこの演算パワーのあるSoCで、設計が古いわけではないと思うのですが、USBが2.0までしか対応していないことも含め、なぜかI/Oまわりの仕様は非常に古くさいです。
幸いなのは書き込み待ちの間もフリーズするわけではなく、カメラは何事もなく操作を受け付けることが救いです。連写して完全にバッファが詰まらない限りは撮影者が気がつくことはほとんどありません。
そういう意味ではうまく作ってあるのですが、K-1の最大の欠点はここで連写速度の遅さよりも、実際のところカード書き込みの遅さだと思います。ここだけ改良し、UHS-IIに対応し同時書き込みが出来るようになるだけでもK-1IIにする意味はあると思います。
Wi-Fi:これはひどい...
あと、もう一点のダメなところはWi-Fiです。以下の記事を書いたときは「そんなに悪くないよ!」という意味でまとめましたが...
やっぱりダメです。Image SyncのUIはギリギリ慣れることが出来るのですが、やはり転送の遅さはちょっと尋常ではありません。5枚転送するだけでも完了までに数分かかるというのはあまりにも遅すぎて、結局面倒になって使わなくなってしまいます。
いえ、私はそれでも我慢して使っていますけど... かなりストレスが溜まります。
K-1を1ヶ月間使ってみて思ったこと...
ということで、いろいろと文句を書いてきましたが、そうは言っても実はK-1はとても気に入っています。この1年間あらゆるシーンでK-1を使ってみて思ったことは「カメラなんてK-1だけあれば良いんじゃない?」あるいは「これ以外のカメラを使う気にはならない」ということです。
私の場合、飛行機とかF1とか、動体撮影で連写する場合は、今後は無理せずにK-3IIを持ち出そうと思っていますが、それだってカード書き込みと連写の遅さを分かっていればK-1を使うことも出来るし、それ以外の撮影シーンであればおよそどんな場面にも対応できます。手持ちで使っても、三脚に乗っけてじっくり撮る場合でも、雨の中でも雪の中でも、暗いところでも、全てに対応できます。
そして「これ一台あれば...」という真の意味は「ただの旅行にK-1を持って行くのも全然アリだ」ということ。撮影メインじゃないから邪魔にならない小さなカメラを持って行こう... という気にはならず、むしろ「K-1で良いよね」と思うようになりました。
特にPeak DesignのSLIDEという素晴らしいストラップを見つけてからは、特にその傾向が強くなりました。3月の沖縄なんて4日間もK-1ぶら下げて観光先を歩き回っても、何の苦にもならなかったし、先月の奈良でもそれは同様です。
それは私が基本的に写真好きでカメラマニアだから、というのはその通りで、で万人に勧められるという意味では決してないのですが、K-1を使うようになってからは、新しいカメラに興味はあるのですが「買っても使わないな」と思うようになってしまいました。
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