かくいう私も躁うつ病なので、参考も兼ねて読ませていただきました。
・概要
自分自身もうつ病のマンガ家の田中圭一さんが、17人をインタビューして、うつ病になるまでの経緯、抜け出し方を1冊のマンガにした本です。
一話が無料公開されているので、興味のある人は、まずはそこからどうぞ。
うつヌケ 〜うつトンネルを抜けた人たち〜 第1話 | 田中圭一 | note
うつを都合よく直してくれる医者なんて、いません。
自分が精神科・心療内科にかかった時もそうなのですが、…抗うつ剤なんてそう簡単にもらえないんです。
また、もらっても、他のケガ・病気ほど劇的に効くわけじゃないから
「病院にいく→症状を喋る→薬をもらう(→安静にする)→治る」
みたいなサイクルが効きにくいです。
病院にかかり始めた時に、あまりにも勝手が違うからその苦労を僕自身も記事にまとめたことがあります。
精神科や心療内科の場合
・病院に行く:精神科や心療内科は、診断に時間がかかるため、予約しないと相手にしてもらえないことが多い。しかも、重症患者が多い季節に出くわすとこの待ち時間は長くなるため…初回の通院はかなり精神的に辛い。
・症状をとにかく喋る:原因を過去に遡って話すため、自分の半生でうつや躁だと思われるエピソードを、複数の通院を重ねて話す。複数の通院にまたぐため、1ヶ月以上になることもザラ
薬をもらう:最初は睡眠導入剤や漢方しかもらえない。抗うつ剤はとにかく喋った後にもらう。抗うつ剤の種類によっては採血による摂取の管理も必要。薬の血中濃度が一定じゃないと効かなかったり、効くまでにタイムラグがあることもザラなので、効いたり効かなかったりが酷い。
・安静にする:ケガや病気の「要安静」なんて言ったら、一週間~1ヶ月が相場だけど、うつは半年単位とかで大事を取ることが多い。そして、半年も休んでいると多くの場合は体が動かなくなるから、そのへんのリハビリも入れるともっと長い。
しかも、経済的な事情が良くないと、安静にもできないため、マイナスの状態で長引いたり、病院に行くタイミングを逃して治すのに時間がかかるどん底だったりすることもある。
また、仮に病院にかかっても、医者が持っていけるところは±0まで。
「眠れない」とか、「頭が動かない」とか、うつ病特有の症状が、軽くなるだけ。
ケガや病気の「スッキリ爽快!!」「あーおひさまが気持ちいい」みたいな治り方では断じてなく、「とりあえず、日常生活ぐらいなら」程度。
前に、ネットでみた記事の表現で言えば
「プロの野球選手なら140キロ以上のボールが投げられないと復帰できないけど、130キロでもボールが投げられれば、ケガは治っていることになる。」
一般の人で言えば、控えめに言っても8時間フルタイムで働けないと自分で生計を立てて行くのがむずかしい。
実際には残業もするし、自分自身の家事や金銭管理もやるから
「病が治って日常生活が送れる≠生活が送れる」
という悩みにぶち当たる。
うつヌケという本の意義は、その先のことが書いてあること
野球の例えで言うと、医者は治す専門であって、野球のプロではない。
だから、怪我しても140キロのボールを投げられるようになるには、プロの野球選手である当人がトレーニングするか、また別の専門家が必要になってくる。(※だから、野球選手には怪我から復帰できなくて引退する人がたくさんいる)
うつでも、「生き物として正常に生きていける体」には持ってきてくれるけど、「経済面」については医者が職を斡旋してくれるわけでもなければ、資産を運用してくれるわけでもない。
自分に見合った仕事や生き方を見いだせないと、再びうつに戻ってきてしまう…。
確かに、「うつトンネル」は抜け出せる。
でも、うつトンネルから完全に抜け出すのは難しい。
病む前と同じような心と体の使い方をしてたら、やっぱり病む。
かといって、怪我した部分をかばって別のところを体が怪我するように、心もまたトラウマやコンプレックスを意識しすぎると強い自己嫌悪やマイナス思考に陥って病んでしまう。
うつヌケはそんな「うつトンネル」を抜けるための試行錯誤を語った人達の証言をまとめた本。
証言をまとめることで自分が陥りがちなパターンを掴んだり、自分が滅入ってしまった時に変えるべき方向性のヒントが似たような境遇の他人から得られること。
同時に、自分でもおかしいと気づいているうつの時に陥りがちなマイナス思考、認知の歪みについて、客観的に見ることができること。
自分と向き合ったり、変えたり、新しいやり方を見つけるのは自分自身!
しかし、その方向性や見落としているところが何なのかを気づく材料はなかなか自分一人だけでは全部はわからない。
こっちじゃないか?と思っても、自信が持てなくなって、心も体も一度は弱ってしまった自分にはガツンと行動するだけのバイタリティがない(あっても気持ちがハイになってたり、強迫観念で突き動かされているだけで続かないこともしばしば)。
かと言って、医者やうつでもない人に喋っても有り体のことしか言われない。下手したら逆効果だったり、効果があることさえ悪い意味で受け取ってしまう。
…というわけで、うつ病のドツボにハマり気味な人、周囲にそれらしき人がいる場合には、この本を読んで、次の段取りをどのように踏んでいけばよいかを考えてみるのがいいと思う。
100%…というわけには行かないが、大筋同意できる内容なので、読んでよかったし、壁にぶち当たったり、思い詰めている時にはまたこの本を読ませてもらおうと思う。
…いや~ありがたい本に出会えた。