プリンセスと皇室、先細る皇位継承者

皇室典範の規定により、眞子さまは結婚に伴い皇籍を離脱する Image copyright AFP
Image caption 皇室典範の規定により、眞子さまは結婚に伴い皇籍を離脱する

日本の天皇陛下(83)の孫娘である眞子さま(25)が来年、法律事務所に勤務する小室圭さんと結婚するのを機に、眞子さまの生活は劇的に変わることになる。

眞子さまは皇籍を離脱し、世間から隔絶された皇室を離れ、外の世界で夫との生活を始める。

眞子さまが一時金を受け取った後、二人は自分たちで生活を営むことになる。眞子さまは投票、税金の支払い、買い物、家事を自分でする。二人に子供ができても、子供たちは皇族にはならない。

眞子さまの皇籍離脱により公務を行う人が1人減ってしまう。また縮小する皇族、皇室における女性の役割、今後の皇位継承者をめぐる議論が再燃している。

天皇陛下はすでに退位の意向を述べられた。女性皇族たちが結婚するにつれ、皇族はさらに縮小していくとみられる。

若い皇族の中には、男子が1人だけいる。10歳の悠仁さまだ。もし何も変わらなければ、皇室の将来は悠仁さま1人の肩にかかっている。

京都産業大学の所功名誉教授は、「考えてみると、10~15年以内に悠仁さま以外の全員が皇室を離れる可能性がある」と話した。

「今回の婚約を通じてこの問題について考える機会ができたと思います。これ以上皇族を失わないためにも制度を早急に改革すべきです」

「明るい家庭」

日本の1947年の皇室典範では、一般人と結婚する女性皇族は皇族の身分を離れると定めている。

同法律により日本の皇族の数は大幅に減少し、経費削減策として12の宮家のうち11の宮家が皇籍を離脱した。つまり現在の女性皇族には結婚できる男子皇族がいないことになる。

昭和天皇の娘たちも皇室典範の下で皇籍を離脱した。同様に、皇太子さまの姉、黒田清子さんも2005年に東京都職員の黒田慶樹さんとの結婚を機に離脱した。

黒田さん(紀宮さま)の周囲から守られた皇族の生活から一般家庭への転身は大きな注目を集めた。結婚前に車の運転や自分で買い物をする練習をする様子が報じられた。

二人は一時金(約1億5000万円)を使って家を買い、黒田清子さんはいま伊勢神宮の臨時神宮祭主を務めている。

これまでのところ眞子さまの婚約は正式には発表されていない。ただ、眞子さまは二度にわたって自立した生活を送った期間があり、一般人としての新たな生活には十分準備ができているようだ。

眞子さまは国際基督教大学在学中、2012年~2013年に9カ月間交換留学生としてエジンバラ大学で過ごした。

1年後にレスター大学大学院で博物館学修士号を取得する際、大学院の寮で生活。現在は東京大学総合研究博物館の特任研究員を務める傍ら、国際基督教大学の博士過程で学んでいる。

読売新聞は社説で、「眞子さまは、国民に身近な皇室を体現されている。気さくな人柄だけに、明るい家庭を築かれるだろう」と書いた。

しかし眞子さまの皇籍離脱は惜しまれるだろう。朝日新聞によると、眞子さまは現在2つの団体の総裁を務めており、皇族を代表して海外に渡航し、皇室の重要な行事にも参加してきた。

眞子さまの公務は縮小していく皇室の中で分担しなければならない。

皇室のメンバーは現在19人。そのうち7人は未婚の女性で、結婚すると皇室を離れなければならない。また11人(夫婦4組、3人はパートナーに先立たれた)は50歳以上だ。残るは悠仁さまのみとなる。

悠仁さまは皇位継承権を持つ4人の中で最年少だ。皇太子さま、秋篠宮さまと天皇陛下の弟の常陸宮さまにこれ以上子どもが産まれる見込みはほぼない。

つまり、公務を行い皇室を未来につなぐ責任は悠仁さま(と、いつか持つかもしれない家族)の双肩にかかることになる。

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Image caption 2013年4月にご両親と小学校に初登校する悠仁さま。皇位継承権を持つ皇族で最年少だ

現在、天皇陛下の譲位を可能にする法律の改正が検討されている。読売新聞は社説で「皇族数を維持するための現実的な方策として、女性宮家創設の検討を議論すべきだ」と主張している。しかし保守派からは受け入れられないだろう。

米ポートランド州立大学日本研究センター長で日本の皇室に詳しいケネス・ルオフ教授はこう説明する。「すべてはここまで絶えず続いてきた男系継承の理念から来ています。神話を信じれば、紀元前660年の神武天皇以来、日本は男系継承が続けられてきたから特別だと考えているのです。実際にナショナリストたちは、もし男系継承でなくなれば、日本は滅びるとまで言っています。だから女系ではだめだと主張するのです」。

日本では過去に女性天皇は存在したが、それは250年前だ。男性が天皇に復帰するまでの中継ぎというのが一般的な解釈である(男性の皇位継承者を支えるために女性天皇が娘に皇位を譲ったという例外が1つだけある)。

1947年の皇室典範施行以前は、皇室は今よりずっと大きく、もし皇位後継者がいなくても他の宮家から見つけることができたが、今はそうではない。

悠仁さまが生まれる以前は男性の皇位後継者がおらず、女性天皇を認めるよう法律を改正する議論が少なからずあった。

当時の小泉純一郎首相は女性天皇を容認すべきという姿勢を取っていたが、悠仁さまが生まれてから、この議論はされなくなった。

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Image caption 安倍政権では皇室の縮小問題にどう取り組むか明確にしていない

日本の現指導者である安倍晋三氏は国の誇りや伝統、愛国主義についてよく言及する保守派だ。

「安倍首相は日本を女性が輝ける社会にしたいとよく話しているが、首相が属する右寄りの派閥は間違いなく女性天皇容認のための皇室典範改正に反対するだろう」とルオフ教授は語る。

また戦後に皇籍離脱した旧宮家を復帰させて皇位継承者を増やすという案もある。

読売新聞によると、過去に安倍氏はこの案を支持していたという。しかし同紙は、「幅広い支持を得られているとは言い難い」と指摘した。

しかし世論は女性天皇を支持している。今月初旬に共同通信が行った世論調査によると、女性天皇について、86%は支持しており、59%は女系天皇にも賛成している。

世論に対し、政府の考えがずれていることになりかねない。

今後何が起こっても、眞子さまの未来は明るそうだ。それより、10歳の男の子に日本の皇室の未来すべてを負わせるのかを懸念すべきかもしれない。


日本の皇族

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  • 天皇は、憲法で「国と国民統合の象徴」と定められ、その地位は「国民の総意」に基づくとされた日本の君主で、儀礼的な元首
  • 現在、天皇陛下から長男の皇太子さまに譲位する準備が進められている
  • 皇位継承権を持つのは男子のみ。長らく皇室に男子が生まれていない状況にあった1990年代後半から2000年代にかけて皇位継承の危機がクローズアップされた。2006年の悠仁さまの誕生で事態は収束した
  • 皇族は自分たち自身が裕福なわけではない。皇族の資産の大半は第二次世界大戦後に没収され、皇室の費用は現在、政府から支出されている

Image caption 皇室の家系図

(英語記事 The princess, the palace and the shrinking royal line

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