誰かと予定を立てるって意外と手間がかかりませんか?
・会社で飲み会の幹事を任された。
・久しぶりに家族でお出かけをしたい。
みんなの日程を確認して、全員が空いてる日を探して…「ああ、もうっ!」となる時ありますよね(笑)。
こんな「ああ、もうっ!」を解決してくれる、予定共有に持ってこいな「TimeTree」というアプリ。
13ヶ国語に対応し、それぞれの言語圏の文化の違いも抑え、機能に反映している。
今回は、カレンダー共有アプリ「TimeTree」を手がける株式会社JUBILEE WORKS(以下JUBILEE WORKS)が、どのように「カレンダー」をサービスとして開発し、グローバル展開のためにローカライズに取り組んでいったのかを共同創業者の松田駿一氏と藤木祐介氏、Androidエンジニアの鈴木諒氏に伺った。
・「TimeTree」とは
・「TimeTree」はどのようにローカライズしていったか
・JUBILEE WORKSの社風
・スタートアップ参画について
・おわりに
(読了 4分)
「TimeTree」とは、家族や恋人、サークルの仲間、職場の同僚などと簡単にスケジュールを共有できるカレンダーアプリだ。共有されたURLから「TimeTree」に飛ぶだけで、複数人との予定を一枚のカレンダーでまとめて表示・管理することができる。
また、ユーザー自身も複数のカレンダーを作成することができ、仕事用、プライベート用、Googleカレンダーと同期したもの、と使い分けや共有したり、させなかったりが可能だ。
メンバーのスケジュールが一覧画面に 複数カレンダーの一覧
そして自分が思う「TimeTree」最大の魅力が、「TimeTree」で立てた予定内でメンバーが参加表明とコメントをし合えるところだ。例えば、”20時から新宿で飲みます”と予定を立てたとしよう。他のメンバーはそれに対し、”22時から合流できます!”や参加表明など、その予定に対しレスポンスを返せるのだ。
予定ごとにコミュニケーションができる
現在、「TimeTree」はiOS・Androidで13ヵ国語の言語でグローバルに提供されている。
<「TimeTree」の主な受賞歴>
日本・韓国で「App Store Best of 2015」受賞(2015年)
日本・韓国・中国で「Watch App Store Best of 2015」受賞(2015年)
日本・中国・韓国・台湾・香港・マカオの計6地域のApp Storeでの「ベスト新着App」選出(2015年)
―グローバル展開している「TimeTree」についてお聞かせください。
取締役 / 共同創業者 / サーバーエンジニア 松田 駿一(Matsuda Shunichi)
1984年生。電気通信大学情報工学科 修士課程を修了。在学中に情報通信研究機構の短期間研究員を兼務。ヤフー株式会社、株式会社カカオジャパン(ヤフーから出向)を経て、2014年9月株式会社JUBILEE WORKSを共同創業。ヤフー株式会社では、EC、O2O、ソーシャル系サービスの開発、運用を担当。現在は主にサーバー開発を担当。
松田 「TimeTree」は世界中で使っていただいていて、現在13ヵ国語で提供しています。
カレンダーは生活に密着しているもので、”この機能がないとカレンダーとして使えない” というのが国ごとであるんです。これらをきちんと反映させてあります。
例えば、日本だと六曜という考え方がありますね。結婚式は大安に行なったり、六曜が密接に関わる職業があったりするので、「TimeTree」にも六曜が表示される機能を盛り込んであります。
韓国や中国では、旧暦で誕生日を祝う習慣があるので、旧暦が必要だったり、アメリカだと24時間表記は軍隊で使われるミリタリータイムと呼ばれる表記なので、避けられる傾向にあったりと、国・文化ごとにカレンダーに必要な要素が異なるんです。
国とその生活によって、カレンダーの使い方が違うのは単純に面白いですよね。
共同創業者 / iOS&Webエンジニア 藤木 裕介(Fujiki Yusuke)
1984年生。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業後、2007年にヤフー株式会社へデザイナーとして新卒入社。スマートフォン版Yahoo! JAPANトップページのデザインや開発に従事。その後社内プロジェクトを機にエンジニアとして転向し、アプリの開発経験などを得る。2014年に株式会社JUBILEE WORKSを共同設立し、共有カレンダーアプリTimeTreeの企画・開発・運営を行う。現在の主な担当領域はiOS。
藤木 「TimeTree」では、国と言語を見て、ユーザーに最適だろうと思われるカレンダー機能を自動で出力するようにしています。
先ほどの六曜で言えば、六曜は日本でしか使われていないので、日本で・日本語で使われている端末だけに六曜機能を表示しています。
端末内のエリア設定を変えていただければ、そのエリアにあったカレンダーを利用することも可能です。
―具体的にどのようにグローバルな展開を進めましたか?
松田 “カレンダーの共有” という課題は、日本に限ったものではなく、世界共通の課題であると確信していましたので、創業時から、グローバル展開は予定していました。
「TimeTree」リリース当初は日本語・英語、あと社内に韓国のメンバーがいたことから韓国語と、計3ヵ国語からスタートしました。その後、アプリの多言語化を、本格的な展開の前準備として実行しました。
―国ごとに異なるカレンダー利用方法はどのようにリサーチされたのでしょうか?
松田 とにかくユーザーからのフィードバックから情報収集していきました。最小実装の機能でリリースし、お問い合わせを通じて、ユーザーから “この国だとこんな機能が欲しい”などの 意見・要望を集め、国別の機能を随時追加実装していきました。
―国内でもユーザーが参加するイベントも開催されていますね。ユーザーの声を大事にしているのが伝わってきます。
松田 ユーザーの声を聞く。とにかくそれは大事にしようと思っています。アンケートも取りますし、実際にインタビューしたり、社内に来てもらって交流したり、具体的にどういう風に使っているかといったことも、ユーザーに伺っています。
―JUBILEE WORKSの会社としての魅力や社風はどのようなところでしょうか?
Androidエンジニア 鈴木 諒(Suzuki Ryo)
1986年生。東京理科大学理学部物理学科卒業。カテル有限会社を経て、2016年11月より株式会社JUBILEE WORKSに 入社。カテル有限会社では、Android/iOS/サーバーサイド開発を担当。現在は主にAndroidアプリの開発を担当。
鈴木 自分はエンジニア歴が今年4年目でして、その前はハンバーガーを作ってました(笑)。
本を読むのが好きで、当時たまたまレイ・カーツワイルの「ポスト・ヒューマン誕生」という本に共感し、エンジニアを目指し始めました。ちょうどそのタイミングで会社を経営している友人からアプリを作りたいという話を聞いて、アプリ開発を始めたのがエンジニアとなったきっかけです。
JUBILEE WORKSには「毎日に、新しい”なくてはならない”を創る」というミッションがあるんですが、そのミッションと僕が個人的にやりたいなと思っている気持ちが一致したのでジョインしました。
日頃から世界中で日常的に使われるサービスを作りたいという気持ちが元々あって、そのようなイノベーティブなスタートアップには興味がありました。
ちなみに、ここにジョインする前は出身地である栃木にいたのですが、プライベートでもサービス開発をしていた時期があって、その経験から様々な面でリソースが潤沢な東京で活動したいという思いから、東京のスタートアップにとても興味を持っていたというのもあります。
―企画から開発までをどのようなスタイルで行なっていますか?
松田 いわゆる大企業では、企画側が企画書を作成し、エンジニア・デザイナーがその企画書の元、開発手順を考え着手する、といった流れが多いと思いますが、JUBILEE WORKSでは異なり、企画をチーム全体でアレンジしていくスタイルでやっています。
具体的には、
・企画を「なぜやるか」というWhyに対する視点からの企画のたたきを作成。
・たたき台に対して、エンジニア・デザイナーも集まり、企画案をチーム全体で練り上げる。
・企画案をもとに、プロトタイプを開発。チームで再びフィードバックしながら改修。
このようなフローを取っています。形式ばった企画書はなくて、全員で企画から携わり、プロトタイプを作成し、改修していく。このような開発スタイルを取っています。
ミッションの一つに「素晴らしいのもっと先へ」というものがあるんですが、それが言わんとしていることは、クオリティに対するこだわりをみんなが持っているということです。デザイナーは1pxずれただけで指摘してくるし、エンジニアも難しいUIを何とか作ってやろうというこだわりをみんなが持っています。
―フラットな職場であると伺いました。具体的にどのような取り組みをなされていますか?
松田 ニックネーム制度をJUBILEE WORKSでは取っています。社内で本名を使わず、「さん」付けもなしで、全員ニックネームで呼び合うようにしています。
本名・「さん」付けで呼び合っていると、何となく上下関係を感じてしまうんですよね。一回り上の人もいたりする中で、そういった上下関係が常態化してくると、どうしても自由に発言しにくくなってしまいます。
そういったことを無くすためにフラットにしたいというのと、一番良い意見を持ってるのが常に代表とは限らなくて、誰かが一番良い意見を持ってたらそれを採用すべきですし、社内ではメンバーが徹底的に議論し尽くせるように、フラットな環境づくりの一環としてニックネーム制度を取り入れています。
お互いを呼び合うニックネーム(公式HPより)。ちなみに松田氏は “ルイ”、藤木氏は “スタッド”、鈴木氏は “リオ” と呼ばれている。
―技術向上のために、実施していることはありますか?
藤木 本や面白い開発ツールなどを自由に購入できたり、社外セミナーや勉強会などの参加費も経費負担でOKにしています。
松田 「この本読みたいんで買いますね。」といった光景はよく見られますよ。
藤木 メンバーが会社の共通Amazonアカウントで、勝手に買ってることもあります(笑)。
松田 みんなが会社や事業に対して、真剣に考えているからこそできることだと思っているので、購入許可を取らなきゃいけないフローは取らず、スタッフには自由に本の購入や勉強会の参加をしてもらっています。
藤木 あと、毎週月曜日には、みんなでお弁当食べながら、海外のエンジニアがiOSのアプリの設計について話してる動画を見たりしていますよ。
―ベンチャー・スタートアップへの参画について、どのようにお考えでしょうか?
松田 何もかもスタートアップが良いとは思っていないです。私も大企業に勤めていたこともあって、そこで学ぶことはとても多かったと感じています。
ですので、大企業に就職することは、とても良いことだと思っていますが、一方でスタートアップでは “作りたいという気持ち” に対して、大きな反応が返ってくるもので、そういう気持ちがある人にはとても適していると思います。
大企業では、自分の作りたいものが作れなかったり、言われたものを作ることになりがちです。
スタートアップ参画は「あれやりたい」、「これを作りたい」を実現したい人にとっては良いと思います。
藤木 若いうちには失敗できるチャンスや時間がたくさんあります。スタートアップは、絶対に成功するとは限らないし、失敗して終わってしまうこともきっとあります。
そういう経験を若いうちからしておくことで、その失敗を次に活かすことができる。経験値を貯めるという点においては、すぐにでも参画しても良いかもしれませんね。
鈴木 JUBILEE WORKSに入社して一番感じているメリットは、サービス開発にエンジニアとして参画できることです。経験として、いくつかサービスをつくっては来ましたが、始めはどのサービスも少ない人数で始めるので、そういう時にエンジニアとして参画することはすごく色んな意味でチャンスがあると思います。
月並みですが、自分が得たい経験がそのスタートアップにあると思えれば、裁量が大きい分、一般的な企業よりも得られるものがあると思います。
ユーザーからのフィードバックをもとに、グローバル展開を推し進める裏には、プロダクト開発への熱量が必要で、それを支える職場環境も重要であることが、JUBILEE WORKSを通して知ることができた。
今回で言えば、フラットな職場を目指すこともそうだが、特にユーザーとの接触をとても重要に捉えていることが印象的だった。
「TimeTree」ユーザーとの交流イベントの運営、アンケートへの動線など、サービス開発の軸である「ユーザーの声」をしっかりと手にしていく姿勢には、世界の全てのユーザーに「TimeTree」を使ってもらいたいという思いを感じた。
実はこの「TimeTree」は、当メディアの編集チームでも日頃利用している。
予定管理機能がとても充実しているので、特にグループでスケジュールを管理するときに重宝している。
アカウント取得が不要なのも嬉しいところ。手軽に始められるので是非、知人と利用してみてはいかがだろうか。
毎日に、新しい”なくてはならない”を創る
「このサービスがなかったころってどうしてたっけ?」
そう思っていただけるような新しい価値を生み出すことに挑戦し続けます。
HP:https://www.jubilee.works/ja/
Twitter:https://twitter.com/timetreeapp