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希少コケ、大津の主婦が論文に 水陸両用、謎に迫る 

水田などに生息するイチョウウキゴケ(前田さん提供)
水田などに生息するイチョウウキゴケ(前田さん提供)

 大津市の主婦が、環境省のレッドデータブックで準絶滅危惧種に指定されているイチョウウキゴケについて調査し、論文にまとめた。水面に浮かんで成長するだけでなく、土の上でも生息できるなど謎が多い「水陸両用」のコケ植物に着目。関連文献が少ない中、生殖器官の形成や胞子体の発達段階などを明らかにし「ほとんど研究されていないからこそ面白い発見が散らばっていた」と振り返る。

 前田雅子さん(64)=同市花園町。2010年、県民が調査員となる県立琵琶湖博物館(草津市)の「フィールドレポーター」としてイチョウウキゴケに触れた。胞子ができる過程に関心を持ち「見た目もハート形で愛らしい。研究しがいがある」と、14年から調査を始めた。

 大津市今堅田1丁目と同市和邇中の水田で、調査日ごとに5個体を採取し、カミソリで0・1ミリ以下に薄く切って光学顕微鏡で観察した。田んぼに水が入ってから10日ほどで造精器ができ、その約1週間後に造卵器が見られた。受精は6月初旬から始まり、2週間で成熟した胞子体ができることを確認した。

 水田の水を一時的に抜く「中干し」が受精を阻害していることも証明した。論文は同博物館の芦谷美奈子主任学芸員(水生植物学)と兵庫県立人と自然の博物館の秋山弘之主任研究員(植物分類学)との連名で、前田さんは「研究が堂々巡りになった時に専門的な助言をいただけた。2人は最強の味方」と感謝する。

 イチョウウキゴケは水面に浮遊する際は紫色の微小な鱗片(りんぺん)でバランスをとり、水がなくなると土に張り付いて仮根を発達させる。繁殖方法は胞子体を形成する有性生殖と分裂による無性生殖の2通りあり、生態は謎に包まれている。国内に専門の研究者はほとんどおらず、「まだ99%は解明されていないのでは」と前田さん。「なぜ有性と無性の集団があるのか。どのようなサイクルで1年を過ごすのかを知りたい」と探求心をのぞかせた。

 論文は人と自然の博物館ホームページで公開されている。

【 2017年05月19日 08時10分 】

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