「総理意向」文書なし 文科相「調査尽くした」
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人加計(かけ)学園(岡山市)が国家戦略特区に獣医学部を新設する計画を巡り、文部科学省が内閣府から「総理の意向」などと言われたとされる文書について、松野博一文科相は19日、「文書の存在は確認できなかった」とする調査結果を発表した。職員のパソコン(PC)の個人ファイルなどは調べていないが、松野氏は「調査は尽くした」と打ち切る方針を示し、真相解明に至らないまま幕引きを図った。
文科省によると、大学教育を所管する高等教育局長や専門教育課長ら担当幹部7人に文書を作成・共有したかを聞き取ったところ、全員が「ない」と回答。内閣府側から伝えられたとされる「総理の意向」に関しても、「言われた記憶がない」と答えたという。
専門教育課が保存している行政文書と、7人が役所で使用するPCも調べたが、該当文書は見つからなかったとされる。だが、PCのファイルは「国家戦略特区」と題した同課の共有フォルダーしか確認していないという。
調査は19日の半日だけで終わり、職員1人当たりの聞き取り時間は10~30分程度だった。担当した義本博司総括審議官は「ヒアリングは誠実に対応してもらったと考えており目的は達成した」と説明した。
一方で、松野氏は文書に書かれた内容の真偽については「文科省に捜査する能力はない」と明言を避けた。
文科省関係者によると、文書は昨年9~10月に作成され、内閣府が文科省に獣医学部の2018年4月開学を求めるやり取りなどが記録され、一部の幹部の間で共有されたという。内閣府からの発言として「総理のご意向だと聞いている」「官邸の最高レベルが言っていること」などと記されていた。【伊澤拓也、宮本翔平】
「文書の信ぴょう性高い」改めて強調
加計学園による獣医学部新設計画を巡り、「総理のご意向」と記された文書などの存在を否定した19日の文部科学省発表について、愛媛県今治市の予定地を同日視察した民進党「疑惑調査チーム」共同座長の桜井充参院議員は、「北村直人元自民党衆院議員(日本獣医師会顧問)も間違いないと言っている。文書の信ぴょう性は高い」と改めて強調した。
調査チームは「内閣府か官邸の意向で(国家戦略特区を使う)話が進んだという疑義があり、経緯を確認したい」と県、市を訪問。県、市とも「担当者が不在」として文書での質問を求めた。【花澤葵、松倉展人】