先日ハンターハンターのキメラアント編を読んでいたのですが、一つ感じたことがありました。それは、
ネテロはほぼ一人でキメラアントを殲滅するつもりだったのではないか?
ということです。キメラアントは人間や動物、時には魔獣なども食していたようで、並みのハンターでは敵わないほど強力なキメラアントが爆発的に増えていきました。
そんなキメラアントを一人で殲滅するのは、いくらかつて最強の念能力者と言われたネテロであっても無茶だと思うのです。しかし作中のキメラアント編の状況を読むと、ネテロは一人でキメラアントを殲滅する気だったのではないかと思えてしまいます。
ネテロとは?
(引用:HUNTER×HUNTER 20巻42P/冨樫義博)
本名:アイザック=ネテロ。ハンター協会の元会長であり全盛期は最強の念能力者と称されていました。ネテロ自身はハンター達に様々な無茶振りに近い要求を公私問わずしてたようで、陰でいろいろ言われることもありましたが(ネテロは悪口もなぜかずべて把握済み)、それでも高い実力を持ちながらも心に余裕のあるネテロを愛しているハンター達がたくさんいました。しかし、キメラアントの王・メルエムとの戦闘にて惜しまれつつも死亡しました。
念能力は「百式観音」。具現化した巨大な観音がネテロの動作に合わせて駆動し、標的を攻撃します。ネテロが数年間毎日祈りを織り交ぜた「感謝の正拳突き10000回」の修行を積むことで体得しました。
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討伐隊メンバーはサポートタイプばかり
キメラアントにやられ女王の餌になると、キメラアントを生み出すエネルギーになってしまいます。さらに念を使えるプロハンターが餌食となればより強いキメラアントが生まれてしまうことになりかねません。これを危惧しネテロはキメラアント討伐を少数精鋭で行う予定でした。
(引用:HUNTER×HUNTER 19巻189P/冨樫義博)
ネテロが協力を要請したのはモラウとノヴ、そしてモラウの弟子であるナックル、シュート(ナックルとシュートはゴン、キルアと勝負の上、勝った2名が任務に参加するという条件でした)、そしてノヴの弟子であるパーム(正確にはパームはノヴについてきた感じ)でした。結局ゴンとキルアも参戦することになりましたが、ゴン、キルアを除くメンバーは皆、念能力がサポート系能力なのです
モラウ→「紫煙拳(ディープパープル)」で煙を適材適所に応用する。また自らサポートタイプであり戦闘向きではないと公言(でも強い)。
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ノヴ→「四次元マンション(ハイドアンドシーク)」はほぼ侵入不可能の拠点を作り出す能力で」後方支援向き。
ナックル→「天上不知唯我独損(ハコワレ)」は敵を「絶」状態にして念を使用できない状態にする。
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シュート→「暗い宿(ホテル・ラフレシア)」はダメージを与えるというより敵を捕獲する能力。
パーム→キメラアントになってからは攻撃向きの能力を持ちますが、もともとは標的の居場所を水晶で探し当てる能力。
このように、軒並みサポートタイプです。ネテロ以外は前線に立つ能力を持ってはいませんね。シュートはユピーと真っ向から戦う役割を負っていたので若干戦闘向きとも言えますが、やはりをの本質はサポートタイプだと思うのです(チャンスに弱い性格でしたし)。このことからしてもネテロは仲間にある程度のサポートだけさせて、戦うのは自分だけにしようとしてた気がします。まぁ最強の念能力者とされたネテロが戦えば他の使い手では足手まといになってしまいそうですが。
事実途中までネテロ一人で戦っていた
ゴンたちの修行中、ネテロ、モラウ、ノヴの3名は一足先にキメラアントとの戦いを開始していました。その方法は、キメラアントの巣周辺をモラウが煙で覆い、視界を奪ってからノヴの四次元マンションにキメラアントを送り込み、マンション内で待ち構えていたネテロが始末するというもの。モラウとノヴについては安全なところから念を使うのみでした。モラウが「こんなに楽でいいのか?」という思ってしまうほど順調でした。
(引用:HUNTER×HUNTER 20巻100P/冨樫義博)
ネテロは自分のウォームアップも兼ねて戦っていたようです。下級のキメラアントではネテロ相手に手も足も出ませんので、ネテロの鈍ってしまった戦闘技術を取り戻すにはちょうどいい練習台だったわけですね。凄まじい数のキメラアントを倒していました。
しかし、いやもちろんというべきでしょうか、そう簡単にいかないのは漫画の世界でも現実世界でも同じなのです。
ネテロ一人での殲滅は不可能だった
下級のキメラアントが何体いたところでネテロに勝つことは不可能でした(キルアですらサクサク倒すレベルでしたので)。しかしメルエム、そして護衛軍に関してはネテロですら勝てるかどうかわからないレベルの強さでした。ネテロはピトーを見て「あいつわしより強くねー?」と言うほどでしたからね。
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作中の通り、ネテロはメルエムと戦っても、貧者の薔薇(ミニチュアローズ)による自爆を試みなければ勝つことはできませんでした(しかもメルエムは生まれてからそんなに念能力者を食べて強くなることなく軍儀ばかりしていた状態)。加えてピトー、プフ、ユピーの3匹がメルエムを守るためにネテロを始末しようとしてくるとなると、ネテロは自分より強いかもしれないキメラアントを4匹同時に相手取らなければならなくなる可能性がありました。
ネテロは自分より強いと思われるメルエムと武闘家として1対1での戦闘を望みましたが、「自分がメルエムを率先して倒すことで護衛軍およびキメラアント全体の指揮系統を乱れさせる」ことも目的にあったと思います。そのためには護衛軍は非常に邪魔な存在なので、ネテロはモラウたちに「護衛軍とメルエムの分断」という役割も与えました。さらにはゾルディック家のゼノ、シルバの協力まで仰いでましたから、一人での殲滅はやめたのだと思います(シルバは分断には加勢しませんでしたが)。
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連れて行けるメンバーは限られていた
キメラアント編の裏ではハンター協会副会長、当時は名前は明らかになっていませんでしたがパリストン、の邪魔が入り、ネテロや討伐隊が希望したハンターではなく、全く別の協専ハンター(協会が斡旋する仕事のみを受ける、ハンター業界では自分で仕事を取りに行かないことからも評判の良くないハンターたち)ばかりが送りこまれてしまい連れて行けるメンバーは限られていたのです。パリストン的にはネテロの邪魔をして楽しんでいたのかもしれませんが、世界的レベルの事件に発展しているというのに、この茶々入れはシャレにならないなという気がします。ネテロは死んじゃいましたし、ノヴはハゲちゃいましたし。
ネテロは少数精鋭で任務を遂行するつもりだったとはいえ、ベストメンバーを連れてこれたのかというとそういうわけではなかったと思われます。十二支んなどもいたはずですが話は通ってなかったみたいですし(チードルはネテロが「自分でキメラアントを狩りたかったから」と考えていたようで、それもそうなのですが、パリストンが情報が回らないように操作していたということもあると思います)。より強力で便利な能力を持つハンターを連れていければネテロが死なずに済んだかというと分かりませんが、よりスムーズに討伐を勧められたと思われます。
ということで
ネテロは途中まで自分一人でキメラアントを殲滅するつもりだったが、護衛軍やメルエムの強さを目の当たりにし諦めた
のだと思います。
もともとキメラアントはその名の通り蟻サイズの生き物です。暗黒大陸からやってきた女王がすでに人間サイズくらいの大きさがあり異常でしたが、ハンターたちの認識としてはキメラアントと聞くと思い浮かべるのは小さな生き物なのです。異常事態ではありましたが、一応キメラアント編って蟻の駆除なんですよね。そこにどれだけの人員を割けるかというとどのみち少数になるのではないかなと思います。ですのでネテロは自分が参加することで早急かつ少ない労力で始末しようと思ったのでしょう。
さすがにネテロといえど護衛軍を相手にした上でさらにメルエムと戦うというのは無理でしたね。他のハンターたちの協力が必要ですが、正直人と仕事をするのは難しいです。自分一人でできたらすごく楽なのですが、自分だけでできることには限界があります。ですから容量オーバーにならないためにも同僚や部下に仕事を振らなければならない・・・でもそうすると伝達不足によるミスが増えたり、認識の違いによって作業が遅れたりなどさらにややこしい事態になりかねません。ネテロも、「部下がキメラアントに食べられてより脅威が増すくらいならきついかもしれないけど自分が前線で戦って全て倒しちゃったほうがいい」と考えていた部分もあったと思います。漫画の中でも「人と仕事をする」というのは大変みたいですね。
当時のネテロの心情を考えると、部下を抱えて仕事をしている方はとても共感できるような気がします。ただ戦いだけでなく、そう言った細かい部分でのキャラクターの心理描写も読み取れるのがキメラアント編の面白さでもあります。