若い人に対して、タロット占いをすると、ジョジョで見たことのあるカードだと言われることがあります。『ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダース』という漫画では、主人公や敵がスタンド(精神エネルギー体) という能力を使うのですが、その能力はタロットカードに由来があるとのこと。アニメ化されたり、エジプト好きの友人達にも強く勧められたこともあり、 読んでみましたよ。

せっかく読んでみたので、スタンドとタロットカードの持つ意味の共通点についてまとめてみました。

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空条 承太郎/スタープラチナ(星の白金)

逞しい筋肉質の肉体を持った人型のスタンド。射程距離は短いが、桁外れなパワー、スピード、精密動作性、視力、動体視力を持ち、眼前から発射された銃弾を指で摘んで止めることもできる。
タロットカードの「」に由来するスタンド。スタンドの能力そのものは、このカードの本義にまるで即していないが、「旅をする」「希望を持つ」という意味合いからするに、主人公承太郎にふさわしいカードだ。

ジョセフ・ジョースター/ハーミット・パープル(隠者の紫)

イバラの像(ビジョン)を見せるスタンド。ポラロイドカメラなどを媒体にすることで、念写を行うことができる。テレビや地面の砂を媒体にすれば、遠くの様子や周辺の地図なども映し出すことも可能。また、機械に干渉して操り機械内部を探ることもできる。
タロットカードの「隠者」に由来するスタンド。このカードの本義には、「老人」「真理の探究」「熟考」という意味があり、機械に干渉するプログラマーとも相性が良い。キャラクター・能力ともに、本体・ジョセフ老人にとてもマッチしている。

モハメド・アヴドゥル/マジシャンズレッド(魔術師の赤)

不死鳥の頭部を持った人型の像のスタンド。鉄をも溶かす灼熱の炎を自由自在に操り、単純な格闘能力も非常に高い。
タロットカードの「魔術師」に由来するスタンド。このカードの本義には「創造」「始まり」という意味があり、序盤から登場するスタンドしては悪くない。また、四元素の炎にも「創造」という意味は含まれているので、スタンド能力とタロットの本義はさほど離れているわけでもない。

花京院 典明/ハイエロファントグリーン(法皇の緑)

基本は人型のスタンドだが、紐状に分解して活動できる。スタンドが伸縮自在で射程距離は広く、紐状の状態では人体へ潜り込んで行動を操ったり、随所へ張り巡らせてトラップを作ったりすることができる。
タロットカードの「法皇(教皇)」に由来するスタンド。このカードの本義には「叡智」というものがある。本体・花京院の高い知性とは相関性が高い。なお、「教育」という意味もあるので、拡大解釈すれば人を操作するというスタンド能力と一致しないでもないが、流石にそれは苦しいか?

ジャン=ピエール・ポルナレフ/シルバーチャリオッツ(銀の戦車)

中世騎士のような甲冑を身にまとい、切れ味鋭いレイピアを武器として携えた人型のスタンド。スタンド本体のパワーは低いがスピードに優れ、動作の精密性も高い。
タロットカードの「戦車」に由来するスタンド。作品内には「侵略と勝利を暗示する」とあるが、タロット本義とはその部分が一致する。また本体・ポルナレフの青臭く、一本気の猪突猛進な性格も、「戦車」の特性そのものを見事に反映している。

イギー/ザ・フール(愚者)

砂と同化し、砂を操る変幻自在のスタンド。その性質上、物理的な攻撃でダメージを被ることがない。砂で羽を形成し、空中をグライダーのように滑空できる。
タロットカードの「愚者」に由来するスタンド。一般的なタロットカード(ライダー版)の愚者には、砂漠で放浪する自由人が描かれているが、絵柄からは砂を確かに想定できるし、本体・イギ―の自由気ままを愛する行動も愚者を体現している。

グレーフライ/タワーオブグレー(灰の塔)

巨大なクワガタムシの像を持つスタンド。驚異的なスピードを誇り、口中の「塔針(タワーニードル)」によって人間の舌を引きちぎる。
タロットカードの「」に由来するスタンド。このカードには「中止」「事故」「破壊」等の意味があり、実のところ、全タロットカードの中で最も不吉で忌み嫌われているカードだ。本体・グレーフライは事故に見せかけた殺人が得意という点で、この特性を物語に活かしている。

偽キャプテン・テニール/ダークブルームーン(暗青の月)

四つ目の平べったい頭をしている半魚人のような像のスタンド。水中での戦いを得意としている。水中で素早く動いて渦を作り出すこともでき、渦の中に鋭い鱗を大量に放って敵を切り刻む戦法を使う。また、フジツボを相手のスタンドに付着させることでエネルギーを吸い取る。
タロットカードの「」に由来するスタンド。このカードには「隠れた敵」「水難」という意味が確かに存在する。本体は船長に偽装し、尚且つ水中を舞台に戦うという点で、物語では月を忠実に表現できている。

フォーエバー/ストレングス(力)

本体はオラウータン。船と同化したスタンドであり、普通の人間にも視認できる。船内に設置されている物体を意のままに操作するほか、本体自身が壁の中に入って船内を自由に移動したり、相手を壁や甲板の中へ引きずり込んだりすることもできる。
タロットカードの「」に由来するスタンド。力のカードには、よくライオンなどの獰猛な動物を手なずけている絵が描かれている。作者はこれを意識して、本体を動物にしたのではないだろうか?また、本体の欲望に忠実な性格も、このカードの特性と一致する。

呪いのデーボ/エボニーデビル(悪魔)

本体の恨みをエネルギー源とするスタンド。人形に憑依し、操作することで標的を攻撃する。相手への恨みが強ければパワーも増し、遠隔操作型でありながら近距離パワー型並みの戦闘能力を発揮できる。
タロットカードの「悪魔」に由来するスタンド。このカードの本義には「邪道」「堕落」などがあり、卑劣な暗殺者を描くにあたっては悪くない。また、「魔術」という意味もあり、呪術師としての一面もある本体とは、非常にマッチしている。

ラバーソール/イエローテンパランス(黄の節制)

スライム状のスタンド。接触した生物の肉を溶かして捕食することにより強さや大きさが増し、取り込んだ肉と一体化するために普通の人間にも視認できる。どんな衝撃も分散・吸収する柔軟さを持つため、本体がまとえば物理攻撃にはほぼ無敵の「攻撃する防御壁」となる。
タロットカードの「節制」に由来するスタンド。このカードの本義は、「欲を持たない」「中立」などがあるが、このスタンドの性質とは程遠い。強いて言えば、攻守相反する特性のバランスが取れているところと、「エネルギーを蓄える」という意味が捕食する部分と一致するか?

ホル・ホース/エンペラー(皇帝)

リボルバーと オートマチックを組み合わせたデザインの銃とそれに装填される弾丸のスタンド。弾丸そのものもスタンドであるため、弾切れを起こさず連射ができる他、軌道を自在に操ることもできる。
タロットカードの「皇帝」に由来するスタンド。このカードの本義は、ずばり「最高の男」である。本体ホル・ホースの女ったらしの性格や、なんだかんだで主人公一味にかなりのダメージを与えた結果を残しつつ生き延びているというところは、皇帝の名にふさわしいのかもしれない。あと苦しい解釈としては、ピストルを男性の比喩と捉えられないこともないだろう・・・。 


J・ガイル/ハングドマン(吊られた男)

光の中に存在する、光に似た性質を持ったスタンド。手首に装着した刃が武器。デザインは、包帯を身にまとったミイラ男に、左側頭部に機械的な要素を追加して生物感を消した像となっている。鏡の反射光に潜み、鏡像に干渉することで実際の対象への攻撃や干渉が可能となる。
タロットカードの「吊るされた男」に由来するスタンド。このカードには「時を待つ」という意味がある。鏡の中に潜み、攻め時をひっそり待つ姿勢は、このカードの持つ哲学そのものだ。


ネーナ/エンプレス(女帝)

本体の血液を付着させた箇所に、人面瘡となって取り憑くスタンド。食べ物を摂取することで次第に成長し、取り憑いた相手に攻撃を仕掛ける。また、本体に肉を纏わせ、外見を偽装することもできる。
タロットカードの「女帝」に由来するスタンド。このカードの本義は、「最高にいい女」だ。本体が外見を美女に偽装していたというのは、いい女を武器にしたことになるのだろうか?なお、「育てる」という意味もあるので、成長とも関わりがあるといえば、あるのだろう。


ズィー・ズィー(Z.Z)/ホウィール・オブ・フォーチュン(運命の車輪)

普通の自動車を変形させるスタンド。地中を掘り進み、ボディを変形させて岩の隙間に潜り込むなど、車の常識を外れた動きで相手を徹底的に追い詰める。ガソリンを超高圧で弾丸のように飛ばして攻撃する。
タロットカードの「運命の輪」に由来するスタンド。このカードの本義は「変化」である。車輪のカードだから、スタンドが車というだけでなく、形状を変化させて戦うというのも、実はこのカードの本質に即しているのだ。

エンヤ婆/ジャスティス(正義)

王冠を被った骸骨の像を見せる霧状のスタンド。幻覚を見せる能力だけでなく、傷口から侵入することで血液を蒸発させてコイン大の穴を空け、そこに霧の糸を通して相手(生死を問わず)の身体を操る。これを応用させると1つのスタンドで、多数の人間を同時に操ることも可能。
タロットカードの「正義」に由来するスタンド。どこが正義?と疑問に思えるかもしれないが、実は的外れというわけでもない。正義の本質は、個別の事象に囚われず、一箇所に偏らないことにある。「複数の人間に影響を及ぼす」というのは、22枚のカードのうち、正義が最もふさわしい。


スティーリー・ダン/ラバーズ(恋人)

虫のような像を持つ、最小クラスのスタンド。相手の体内に入り込み、対象の脳内に巣食う。脳や神経を直接刺激することで、本体が受けた感覚を数倍にして巣食った相手に与える能力を持つ。また、脳細胞を捏ねて変装したり、自分の分身を作ったりすることも可能。
タロットカードの「恋人」に由来するスタンド。このカードの本義は「所属」「カップル(二人組)」などが挙げられる。相手に寄生するという意味では所属、またダメージを共有するという意味では二人組の特性が現れていると捉えるべきだろうか?


アラビア・ファッツ/サン(太陽)

太陽に似た火の玉の像を持つスタンド。本体の直上に顕現し、猛烈な熱エネルギーで攻撃する。周辺の温度は80℃以上にもなるうえ、近づく者は高出力のレーザービームで迎撃する。
タロットカードの「太陽」に由来するスタンド。このカードの本義は「エネルギー」「自然」「昼」など、太陽そのものの性質になぞらえていることが多い、そしてこのスタンドも火の玉とプチ太陽そのものである。


マニッシュ・ボーイ/デス・サーティーン(死神13)

眠りという無防備の精神の中に入り込むスタンド。夢の世界だけで活動し、相手が眠っている時に精神のみを支配下に置いて攻撃する。大鎌を持ったピエロのような像を持つが、実体があるのは頭と両手だけで胴体は空洞。
タロットカードの「死神」に由来するスタンド。一般的に死神は鎌を持つイメージがあるが、このスタンドは像にそれが反映されている。

カメオ/ジャッジメント(審判)

人間の「心からの願い」を土に投影し、実体化させるスタンド。3本指のロボットのような像を持ち、登場時は『アラジンと魔法のランプ』さながらにランプの中に潜んでいた。物質ならば感触や質感に至るまで本物と見紛うほど精巧に作り、実体化した願いが生物ならばカメオの意のままに操れる。
タロットカードの「審判」に由来するスタンド。このカードの本義は「復活」だ。キリスト教の世界最後の日、死者が墓場から蘇り、永遠の命を与えられるか、地獄で苦しむかの審判を受けるのである。物語で、ポルナレフは妹の復活を望んでしまったわけだが、このカードの本義と一致する。


ミドラー/ハイプリエステス(女教皇)

人間の頭部に2本の腕が生えたような不気味な像を持つスタンド。機械を含む、あらゆる鉱物や人工物に化ける能力を持ち、一度化けると判別することはできない。戦況によっては人間数人を丸ごと飲み込めるほどの巨体になる。
タロットカードの「女教皇」に由来するスタンド。このカードの本義には「精神力」「論理力」「学問」などが挙げられるが、どれも一致しない。強いて言うならば、本体・ミドラーが若い女性であり、女教皇も若い女性を指すことはありうる。

DIO/ザ・ワールド(世界)

逞しい体つきをした人間型のスタンド。自分以外の「時を止める」ことができる(時間停止)。DIOはこの能力を「まさに『世界』を支配する能力」と形容している。
タロットカードの「世界」に由来するスタンド。このカードの本義は「完璧」である。ラスボスの持つ威圧感を示すには、最もふさわしいカードであろう。しかし実のところ、時間を止めるという意味では、「時の翁」とも言われる「隠者(ハーミット)」の方が的確ではある。ただ、隠者のスタンドはジョースター一家の側にあり、能力そのものの因縁の深さは、あるのだろう。なお、かなり古いデッキだと、世界を時間と呼んでいたこともあるらしいが、今はそこに意味を見出す人は少ないと思われる。



ちなみにジョジョは、敵のスタンド使いと戦いながら、1980年代の世界を旅する話です。アジアやエジプトの放浪旅行が好きな人にもお奨めの漫画ですよ。


※スタンドの説明については部分的にwikipediaを引用しています。