CIA「トランプが勝ったのはロシアのせい」
アメリカの有力紙やオンラインメディアなどで、トランプ氏が勝利した米次期大統領選はロシアによる意図的なハッキング攻撃が理由ではないかという報道が流されるようになりました。
特に、CIAは米大統領選において、ロシアの関与(主にヒラリー氏のメールをハッキングし、ウィキリークスに提供した)があったと糾弾していますが、その根拠の提示については拒否しています。
FBI covered up Russian influence on Trump's election win, Harry Reid claims | US news | The Guardian
勝利したトランプ次期大統領はそれを「馬鹿げた考え」としてこき下ろし、その支持者達も「既得権益を脅かされかねない」エスタブリッシュメント層がロシアがトランプを支持したなどとする説を流布しているだけだと反発しています。
選挙人制度のあり方や選挙結果の公平性など、選挙前にはトランプ次期大統領が「選挙結果が操作される可能性がある」など指摘して失笑を買っていましたが、現在はアメリカ全土で騒がれているようです。トランプ氏が勝った瞬間。ダブルスタンダードというか、なんというか。
そんな中、ODNIとFBIが米次期大統領選にロシアが関与したとするCIAの調査結果に疑問を呈しました。もちろん、CIAの調査が間違っているという指摘ではありませんが、モスクワの関与があったとするには根拠が乏しすぎるとしたのです。
これにはアメリカ世論も敏感に反応し、更にはウィキリークスもツイッターで次のように述べています。
Both FBI and ODNI state they do not share CIA's view on Russia & election - Reuters https://t.co/Hh2WUcZl83
— WikiLeaks (@wikileaks) December 13, 2016
ウィキリークスとの関係?
なぜウィキリークスまでこの報道をツイートしたのでしょうか。理由はいたって単純で、米大統領選中、ウィキリークスはトランプに対して不利になるツイートをあまり行いませんでした。
その代わり、ヒラリー・クリントン候補の私的メール問題などは選挙期間中ずっとツイートされ続けて、スキャンダルを暴き続けていたのです。
エレクション・ダイナミックスによる選挙戦中の関心トピック推移を見てもヒラリー氏の私的メール問題は常にくすぶり、なんどもピーク時を迎えヒラリー氏を窮地においやっていました。
Tracking the Themes of the 2016 Election – Election Dynamics
エレクション・ダイナミックスによる電話調査で明らかになった各月におけるクリントン氏についての大きな話題。私的メール問題は選挙期間を通してくすぶり続け、大きな割合を占め、なんどもピークを迎えています。
その結果、ウィキリークスはトランプよりだったのではないかと批判されることとなったのです。それどころか、流出したヒラリー氏や高官のメールは、ロシアがハッキングしたものだったのではないかという疑いをかけられるようになります。
もちろんウィキリークスもジュリアン・アサンジ氏やエドワード・スノーデン氏の側であるため(アサンジ氏は創設者ですし)、エスタブリッシュメントの権化であるヒラリー氏に良い思いがないというのはひとつ理由として考えられます。
創設者であるアサンジ氏の”不当”拘束に、ヒラリー氏の関係している人間が役員を務める民間諜報会社の存在もあるとウィキリークスは指摘しており、攻撃的になるのは理解できるからです。
ネット民がヒラリー大統領候補と民間諜報組織の繋がり指摘、アサンジ氏とも関わり?
一方でトランプ氏は政治家歴はなく、機密文書等にもほぼ関わっていないためウィキリークスとしては比較的ニュートラル(わざわざ攻撃する意味のない)だったのかもしれません。
とはいえヒラリー氏に対して不利なツイートになったからといって、ウィキリークスをロシアと繋がっているとまで指摘することは難しいでしょうし、ウィキリークスも敵の敵は味方的な単純な考えではないはずです。
ヒラリー・クリントン氏の私的メール問題や高官による不適切メールの流出は、流出の経緯はともかく身から出た錆というか、油断でしかありません。そこにロシアは関係ないでしょう。
ヒラリー氏のメール問題については、流出元がロシア関係ではないことをアサンジ氏も明確に否定しています。
そもそもウィキリークスの中でも限られた人間(アサンジ氏含む)しか知らないはずの流出元について、なぜCIAなどがロシアだと指摘できるのか疑問も残ります。流出元から情報を公開したウィキリークスの創設者であるアサンジ氏が言うからこそ、説得力を持つのではないでしょうか。CIAが根拠の提示を否定したことも理解しがたいものがあります。
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ODNI、怒られる
ちなみにODNIはFBIとCIAとの調査結果の違いに関しての事前報告がなかったと当局から遺憾の意攻撃を受けているようです。CIAサイドからしてみれば梯子を外されたというか、同胞の冷静な意見は心外だったことでしょう。
挙句のはてに、民主党がFBIがロシアのハッキングと米大統領選への関与を覆い隠そうとしているなどと批判する次第。泥沼ですね・・・。
また、ロシアによるハッキング攻撃は存在したが、米大統領選の結果を左右するためではないと指摘する意見などもあるようです。
表では誰も絶対に認めないものの、ハッキング事件は世界中で起きており、米露中を始めとしてサイバー空間での戦争のようになっているのは明らかです。そのため、ハッキングの事実がないとするのはあまりにも無理があります。
とはいえ、具体的に「いつ」「何が」ハッキングされ、結果を「どのように」操作したのかについて全く触れられていないため国民にとっても「操作したって、どうやって?」という疑問が残りCIAの調査はすっと受け入れられないでしょう。
例えば電子投票システムがハッキング可能な状態であったとか、Facebookのタイムラインが不当に歪められていたとか、もう少し具体性のある話が出てこない限りは国民の理解が進むことはないのかもしれません。
トランプ憎しで後出しジャンケン?
確かに、トランプ大統領の選挙中の発言、過去の言論や態度など礼節、多様性の欠如
など様々な批判が当てはまることでしょう。
とはいっても、やれ選挙人制度がおかしいだの、選挙結果がおかしいだの、ロシアが介入しただの、トランプ氏が勝ってから騒がれ始めるのには首をかしげるアメリカ国民も多いようです。ヒラシー氏が勝っていた場合の思想実験をやれば結果は明らかです。
仮にトランプ候補が僅差で敗北し、ヒラリー候補が米次期大統領になったシナリオを考えるとしましょう。トランプ氏はきっと「選挙結果が不正に操作された!」と騒いだり、「(なんらかの)陰謀だ!」と噛み付くはずです。
しかし、それを超党派がサポートしたり、報道機関がまともに相手をすることはないだろうと容易に想像がつきます。ましてやCIAが裏付け調査を行って援護射撃など、とても期待できません。今ヒラリー氏に対しては起きているのですが。
Facebookなどで流れてくるトピックが、トランプ氏が有利になるようなデマばかりだったなどとしてザッカーバーグ氏が批判されるなど「トランプ大統領」誕生の背景には壮絶なバトルが今も行われているようです。
しかしこれも、アメリカのほぼ全ての有力視がトランプ氏をこき下ろし、ヒラリー氏を支持していた以上はあんまり変わらないというか、どっちもどっちだと他人事ながらに思ってしまいます。
今回のCIA発表を受けオバマ大統領も、トランプ氏に政権が移行する前に、諜報機関にロシアによる選挙戦への関与・影響にを調べるよう指示したと言われています。
迫るトランプ大統領の執務開始ですが、まだまだたくさんの波乱が起こりそうです。
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