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スペースシャトルはなぜ二度も分解・墜落したのか?

First posted: 2017年5月19日2017年5月19日Filed under: 宇宙の歴史Comment
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コロンビアとチャレンジャー。NASA はスペースシャトル計画において、全員死亡の悲惨な事故を二度起こしました。
なぜ、アポロ計画の華々しい成功の後に走り出したスペースシャトル計画は、二度の空中分解を起こしてしまったのでしょうか。

Contents

  • 1 スペースシャトル計画とは
  • 2 事故の遠因1: 甘すぎた見積もりと高いプレッシャー
  • 3 事故の遠因2: ガラス細工と化したスペースシャトル
  • 4 事故の遠因3: NASA の官僚体質
  • 5 チャレンジャー号空中分解事故
    • 5.1 原因1: O リング
    • 5.2 原因2: 握りつぶされた指摘
  • 6 コロンビア号空中分解事故
    • 6.1 原因1: 断熱タイルの剥離
    • 6.2 原因2: NASA の慢心と楽観主義
  • 7 まとめ
  • 8 関連書籍
  • 9 関連記事
    • 9.1 関連

スペースシャトル計画とは

スペースシャトル

そもそも、スペースシャトル計画とは何だったのでしょうか。
スペースシャトルとは、一言で言えば「再利用可能で、恒常的に用いることが出来る宇宙と地球の輸送手段」を目指したものです。
これを、正式名称では再使用型宇宙往還機(RLV)といいます。

当時、ソ連がアメリカに先駆けて宇宙ステーション「ミール」を宇宙に打ち上げており、アメリカはそれに追いつくため「フリーダム計画」なる計画を冷戦下で立ち上げました。
これは、今の国際宇宙ステーションの前進となるもので、日米欧のいわゆる西側諸国の宇宙拠点を作るというものです。
アメリカは、更にその先に月面基地を作成、そして長期的には火星への有人飛行を目指す、という壮大な計画を描いていました。

そもそも、「再利用可能な宇宙ロケット」というのは、歴史的には当然の流れだったといえるでしょう。
その当時、誰もがいずれはロケットは使い捨てではなくなり、耐久性が上がり、何度も利用することでコストを削減できる、更に大型化することで民間の宇宙旅行も安価になるだろう、と考えていました。

多くの人は、ジャンボジェットなどの大型旅客機によって海外旅行が劇的に安くなったのと同じように、宇宙旅行も大型化し、価格競争が起こると信じていた節があります。
そして、それはNASA、あるいは大統領も同じでした。

ロシアも、結果的にはソユーズが未だに使われているとは言え、当時は「プラン計画」という、再使用型宇宙往還機(RLV)を計画していました。
ですから、一概に NASA のスペースシャトル計画を責める訳にはいきません。

しかし、結果的に見れば、スペースシャトル計画はあらゆる意味で大失敗でした。

事故の遠因1: 甘すぎた見積もりと高いプレッシャー

Wikipedia から引用します。

スペースシャトル計画の始まりの段階で、NASAの関係者には「一回の飛行あたり1200万ドルほどのコストで飛ばすことができる」などと主張する者もいて、そうした甘い見込みのもとに計画は進んでしまった。

人を乗せて飛ぶシャトルを繰り返し安全に飛ばすためには、再使用する機体の部品をひとつひとつ徹底的に再検査しなければならない。シャトルは厖大な数のパーツで構成されているため、再検査の作業も厖大であり、その費用は巨額のものになった。

エンデバーの製作にかかった費用は約17-18億ドルで、シャトルの一回の飛行にかかる費用は2002年の時点では約4億5,000万ドルだった。だが、コロンビアの事故以降は費用が上昇し、2007年には1回の飛行につき約10億ドルを要するようになった。

スペースシャトルの最終飛行も終了し総決算の計算をすると、135回の打ち上げで2090億ドルもの費用がかかっていた[1]。一回の飛行当たり、通常の使い捨て型ロケットを打ち上げるよりも、はるかに高くついてしまっていた。

「安価で画期的な再利用可能な往復機」であったはずのスペースシャトルは、「やたら整備に金がかかり、別に安くもない宇宙ロケット」に様変わりしていました。
また、折しもアメリカはニクソン大統領のもとで「双子の赤字」に苦しんでおり、NASA にも余裕がなかった、というのがチャレンジャー号の事故の遠因でしょう。コロンビア号の事故に際しても、スペースシャトルの赤字が多大なプレッシャーになり、結果的に見切り発車になってしまった、というのは否めません。

ロジャース委員会は、NASAが固執してきた非現実的なまでに楽観的な発射スケジュールも事故の根本原因の一つだった可能性があるとして批判した。

NASA は極めて官僚的な組織になっており、失敗が許されない、というプレッシャーと、あらゆる仕様と要求を盛り込み、予算を獲得したいという願望の両方を実現する必要がありました。しかし、それは無理な話でした。

事故の遠因2: ガラス細工と化したスペースシャトル

スペースシャトル計画は迷走を続けました。

本来であればスペースシャトルは、アメリカの国際宇宙拠点や、月面基地への定期往復を前提とした機体でした。しかし、そのプロジェクトが凍結されて以降は衛星の軌道投入のミッションが主となり、その分支え無くてはならない重量が飛躍的に増大したのです。
また、それにより切り離しブースターの火力も更に必要になりました。これにより、スペースシャトルの精密性は更にまし、それに比例して整備にかかるコストと、リスクは増大していきました。

ソユーズ
ソユーズロケットを見ればわかりますが、翼を持たない分だけ遥かに軽量です。当然、軽量であれば墜落リスクも減ります。

通常、飛行機などは「フェイルセーフ」つまり、仮にどこかが故障しても、運行が継続できるように設計するのが常識です。
しかし、スペースシャトルに関しては、少しの整備のミスが重大な事故につながりかねない、脆い設計になってしまっていました。

事故の遠因3: NASA の官僚体質

チャレンジャー、コロンビアの両方の事故で、技術人は懸念点を表明していました。再び Wikipedia から引用します。

チャレンジャー :
最も突出した要因は、NASAとサイオコール社が共に、接合部の設計不良が及ぼす危険に対して適切に対処しなかったことだった。

この欠陥が如何に深刻なものかが明らかになった後でさえ、欠陥を修正するまでシャトルの飛行を差し止めようと考える者はマーシャルには誰一人として存在しなかった。
それどころか、マーシャルの幹部は過去6度にも亘ってOリングに関連する打ち上げトラブルを起こし、その都度問題を握り潰していた。

コロンビア :
チャレンジャー号事故の際の危機管理シナリオと同様に、NASA の管理機構は技術陣の懸念と安全性との関連を正しく認識できなかった。

2つ例を挙げれば、まず損傷有無を調べるために映像が欲しいという技術陣からの依頼を真面目に取り合わず、次に技術陣からの飛行士たちによる左翼の検査がどうなっているかという照会にも答えなかった。

技術陣は国防総省に対し正確な損傷評価のために軌道上のシャトルを撮影するよう3回にわたって要求した。
それらの写真で損傷を把握できる保証は無かったが、有意味な検査を行える程度の解像度で撮影を実施する能力自体は存在していた。

しかし、NASAの管理機構は依頼を真面目に取り合わず、国防総省への支援要請を中止した。

チャレンジャー号空中分解事故

1986年1月28日。チャレンジャー号は爆発し、乗組員全員が帰らぬ人となりました。

チャレンジャー号の事故の、直接的な原因は何だったのでしょうか。
まず大きな原因は、Oリングです。

原因1: O リング

Oリングと言われる、固体燃料ロケットの燃料を密閉用のリングが破損していたのです。
当時、ケネディ宇宙センターの気温は、氷点下一度まで下がっていました。これは、打ち上げ可能なギリギリの温度です。
この気温により、ゴムの弾力性がなくなり、燃料が漏れ出して結果的に爆発事故に至った、と考えられています。

原因2: 握りつぶされた指摘

当時、この懸念点を正確に表明していた人間が居ました。打ち上げを担当したサイコオール社の、ロジャーボイジョレー氏です。

ボイジョレーは問題をマネージャーに説明するメモを送ったが、明らかに無視された。さらに、いくつかのメモを受けて、ボイジョレーを含むタスクフォースがこの問題を調査するために作られたが、彼はタスクフォースには力がなく、資源もなく、経営支援もないことを認識した。

1985年の後半、ボイジョレーは問題が解決しなければ、ミッションは事故を巻き起こす、と彼のマネージャーにアドバイスした。しかし、何の措置も取られなかった。

チャレンジャーのミッションの直前、ボイジョレーとその同僚は飛行を止めようとしました。気温が氷点下一度まで下がったためです。彼はこの気温がOリングの安全性を大きく損なう可能性があり、墜落する可能性があると感じました。

ボイジョレーはマネージャーと話し合いました。彼らは NASA の管理職との電話会議を準備し、彼らの調査結果を発表しました。しかし、ボイジョレーやエベリングなどの努力にもかかわらず、マネージャーは、この懸念は明確なものではないとNASAに報告することを決めました。

Roger_Boisjoly

このように、明白な危険があるにも関わらず、現場からの懸念は握りつぶされ、また悪天候でも延期すること無く、ミッションは継続することとなりました。そして、まさに最悪の形で、その懸念は現実となってしまったのです。

この時の搭乗者には、民間の教師であったクリスタ・マコーリフや、日系人だったエリソン・オニヅカも搭乗していました。

事故後、レーガン大統領は、国民に向けてこう語りました。

我々は、彼らを決して忘れない。彼らを見た最後の朝に、旅支度をし、手を振って「さよなら」を言い、このぶっきらぼうな惑星の表面からすべり落ち、神の御顔に手を触れたことを。

コロンビア号空中分解事故

2003年2月1日、帰還ミッションに入っていたコロンビア号は、空中分解により機体を喪失し、乗組員七名が全員死亡する惨事が、またも起きてしまいました。

コロンビア

原因1: 断熱タイルの剥離

JAXA 最終報告書

コロンビア号空中分解事故の直接の原因は、打ち上げ直後に外部燃料タンクの断熱タイルが剥離し、断熱材に衝突したことです。この際に出来た裂け目が、結果的には命取りになりました。
再突入時に裂け目から超高温の空気が流れ込み、翼が脱落したと考えられています。

原因2: NASA の慢心と楽観主義

しかし、これは NASA も把握していました。把握していながら、これは大した事故ではない、と考え、何ら手を打つことがなかったのです。
このような断熱材の剥離は度々あり、今までは無事に帰還できていた、ということから、このような甘い判断になったようです。

遠因にはスペースシャトルの整備の過重化がありました。あまりにも多くの項目に関してチェックが必要なので、次第に技術者は、多少の事故や破損に関しては麻痺するようになっていったのです。

コロンビア号は、チャレンジャー号以上に経験豊富な機体で、宇宙に初めて到達したスペースシャトルでもあります。事故以前に二八回のミッションをこなしていました。そのことが、飛行士と整備士の中に一種の慣れを産んでしまっていたのかもしれません。

この事故により、リック・ハズバンド機長を含め七名の宇宙飛行士が帰らぬ人となりました。

まとめ

二つの事故の直接的な原因は違いますが、遠因はどちらも一緒です。

  • 甘い見積もりによる整備コストの増加
  • 日程へのプレッシャー
  • 予算獲得のための無理な実装
  • リスクの軽視
  • 現場の声を無視した官僚主義

このようなミスを続けた結果、NASA は結果的には、スペースシャトルを退役させることとなりました。
尊い人命を奪っただけでなく、予算獲得を難しくし、結果的にはアメリカ、そして世界の宇宙開発を後退させました。

スペースシャトルは、野心的な目標を掲げたものの、名実ともに「大失敗プロジェクト」であったといえるでしょう。
しかし、その美しい機体と、先進的なフォルム、そして「再利用可能な宇宙ロケット」というコンセプトは、未だ魅力的なものであることは間違いありません。

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