京都大学式辞でのボブディランの歌詞使用にJASRACが物言い

(写真:アフロ)

「式辞に歌詞引用、著作権料を 京大HP掲載でJASRAC」というニュースがありました。

ボブ・ディランさんの歌の一節を、京都大の山極寿一総長が取りあげた4月の入学式の式辞について、日本音楽著作権協会(JASRAC)がウェブ上に掲載した分の使用料を京大に請求していることが18日、関係者への取材で分かった。

ということだそうです。問題とされた式辞はこちらです。「風に吹かれて」の歌詞が使われています。

ウェブに歌詞を丸ごと掲載すれば(JASRACと包括契約済のブログサービスを使う場合を除き)JASRACへの著作権使用料発生義務が生じるのは当然ですが、今回のケースでは、あくまでも式辞の主題である「常識にとらわれない自由な発想」という概念を説明するために歌詞を使っているので、著作権法上の「引用」への該当性が問題になります(なお、今回問題になっているのはウェブへの掲載(自動公衆送信)なので、非営利だからとか、教育機関だからという話は関係ありません)。

第32条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

ここで、「公正な慣行」については、判例上確定した考え方は、(1)他人の著作物を引用する必然性があること。(2)自分の著作物と引用部分とが区別されていること。(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること。(4)出所の明示がなされていること(第48条の要請)です。なので、たとえば、歌詞をほぼ丸ごと掲載して、自分の意見をちょっとだけ書いて「引用」ですというのは通りません。

今回のケースは歌詞の使用部分がやや多いような印象はありますが、概ね上記の要件に合致していると思えます。JASRACは「疑わしきはとりあえず請求する」という運用でやっているように思えるので、今回は京大側が「引用に該当するので使用料支払いは不要」ときっぱり言えば終わるような気はしますが、私の本音を言えば、裁判の場で32条該当性について争って判例を確定してほしい気もします(まあ現実にはそうはならないと思いますが)。