画像引用元:中学生棋士、天才の系譜 最年少14歳2カ月棋士誕生|エンタメ!|NIKKEI STYLE
最近、将棋に興味が無い人でもニュースなどで「藤井聡太」という名前を聞いたことがあるのではないでしょうか?
加藤一二三九段の14歳7ヶ月での四段昇段(プロ入り)を62年ぶりに塗り替え、史上最年少(14歳2ヶ月)での四段昇段を果たし、この記事を書いている現在もプロデビュー後の連勝記録を更新中です。(記事執筆時点で18連勝)
これまで中学生でプロ棋士になったのは藤井四段を含めて5名。加藤一二三九段、谷川浩司九段、渡辺明竜王、そして羽生善治三冠と錚々たる顔ぶれです。
そんな藤井四段に関するエピソードや、更新する可能性がある棋界の記録などを紹介していきたいと思います。
藤井四段のすごさがわかるエピソード
プロも参加する詰将棋大会で12歳(小6)で優勝し、その後3連覇
詰将棋解答選手権というトップレベルのプロ棋士も参加する詰将棋の大会で小学2年生で初出場。24人中、13位という年齢から考えたら驚異的な成績で入賞、小学6年生で初優勝。
当時小学生だった藤井四段がプロ棋士が1問目を解いている間に全問解き終えて退室、同じ大会に出場していたプロ棋士が「トイレかな?」と思ったという衝撃的なエピソードまで…
「第14回チャンピオン戦速報」のブログ記事一覧-詰将棋解答選手権 速報ブログに結果が掲載されているのですが、第一ラウンドの解答時間が24分と1人だけ圧倒的な早さです。表を見てみると行方八段や広瀬八段と言った終盤力に定評のあるA級棋士(10人しかいないトップ棋士)の名前もあります。
TVの企画でトップ棋士を相手に6勝1敗
AbemaTVの企画で行われた7番勝負では羽生三冠を始めとしたトップ棋士を相手に6勝1敗と勝ち越し。最終戦で羽生三冠に勝利したことはニュースで大きく取り上げられました。
公式のツイッターアカウントで行われた予想アンケートでは「0~2勝」が45%で1番人気。次いで「3~4勝」が42%、「5~6勝」が10%、「全勝」が4%と苦戦を予想するファンが多かったです。
この厳し目の予想は藤井四段の実力を評価していない訳ではなく、流石にこのメンバーが相手では…と言いたくなる7番勝負だったからです。
羽生三冠は言うまでもなく、タイトル経験者のA級棋士に加え、タイトル挑戦経験のある若手棋士を相手にいくら将来を期待される藤井四段でも現段階では苦戦するだろうと言う見方は自然なものでしたが見事に予想を覆しました。
今後、更新が期待される棋界の記録
現時点で史上最年少棋士、デビュー後の連勝記録を更新した藤井四段ですが、今後も棋界の記録を塗り替えて行くことが期待されます。
個人的に藤井四段が更新するのでは?と予想している記録を紹介したいと思います。
史上最年少タイトル獲得
多くの将棋ファンが期待しているであろう記録。現在は屋敷九段の18歳6ヶ月が最年少タイトルの記録となっています。屋敷九段はタイトル獲得の翌年も防衛に成功し、その翌年、失冠。最年少タイトル挑戦・獲得・防衛・失冠全ての記録を保持しています。
棋戦別に最年少タイトル獲得者は以下の通りです
- 竜王 羽生善治 19歳
- 名人 谷川浩司 21歳
- 王位 郷田真隆 21歳
- 王座 羽生善治 21歳
- 棋王 羽生善治 20歳
- 王将 中村修 23歳
- 棋聖 屋敷伸之 18歳
こうして並べて見ると7つのうち3つが羽生三冠となっているのがわかります。
個人的にはこの内のいくつかの記録を藤井四段は更新するのではないか?と考えています。
現在、竜王戦の6組決勝に進出しており、そこで勝てば本戦トーナメントに進出となり挑戦の可能性があります。流石にトップ棋士しかいないトーナメントを6組から勝ち上がるのは厳しいかもしれませんが、現在の勢いを考えると、もしかして…と思えてきます。(6組から挑戦するにはトーナメントで5連勝して上に決勝で3番勝負に勝たなければいけない)
史上初の中学生タイトルホルダーとなる可能性も十分にあると思っています。
史上最年少名人の記録を更新できるか?
個人的に注目しているのは谷川九段の保持する最年少名人の記録を更新できるか?です。
名人戦は順位戦と言う年間を通して行われるリーグ戦で上位になりC2→C1→B2→B1→A級と昇級してからA級順位戦で1位にならないと挑戦できません。
そのためどれだけ勝ち続けても5年間は名人戦の舞台に登場することができません。
谷川九段はC2で1度だけ足踏みをするものの、その後は4連続で昇級し、初のA級順位戦を制して同じく中学生棋士である加藤名人に挑戦し4勝2敗で名人位を獲得しました。
藤井四段がこの記録を破るには、谷川九段と同じく順位戦での足踏みを1回以内にしなければいけません。仮に順位戦を全て1年で昇級し、初挑戦で奪取に成功すると19歳で名人位を獲得することになります。
数多くある将棋界の記録の中でも破られることはないだろうと言われていたこの記録を塗り替えることができるのか?注目です。
公式戦連勝記録
デビュー以来、継続している連勝記録(記事更新時で18連勝)ですが過去の連勝記録は神谷八段の28連勝で羽生三冠は22連勝で歴代3位タイの他に18連勝を2回記録しています。
28連勝と言う数字は30年間破られていない数字でかなり大変ですが現在の18連勝からどこまで数字を伸ばせるか楽しみです。
年度勝率
- 中原 誠 .8545 47-8 1967 C1
- 中村太地 .8511 40-7 2011 C2
- 羽生善治 .8364 46-9 1995 七冠
- 木村一基 .8356 61-12 2001 C1
- 桐山清澄 .8261 38-8 1968 C2
- 近藤正和 .8222 37-8 2004 C2
- 中原 誠 .8205 32-7 1966 C2
- 羽生善治 .8197 50-11 1987 C2
- 大内延介 .8182 27-6 1966 B2
- 久保利明 .8095 34-8 1994 C2
上のランキングは年度勝率とその年度に在籍していた順位戦の級です。C級が多いのは若くて棋力が向上する時期であることと、上位棋士との対極が少ないので勝率が高くなりやすいという理由があります。(1人だけ例外がいますが…)
この記録に関してはかなり高い確率で藤井四段が上位に入って来ると予想します。今年度に史上最高勝率を記録する可能性も大いにあると僕は思っています。
タイトル獲得数/一般棋戦優勝回数
画像引用元:【第1回】私がなぜ今、『羽生善治論』を書いたか|羽生善治論|加藤一二三|cakes(ケイクス)
もし、将棋ファンに歴代棋士でベストスリーを選んでくださいという質問をしたら多くの人が羽生善治、大山康晴、中原誠の3人を選ぶでしょう。
その理由はタイトルの獲得数、一般棋戦優勝回数、共にこの3人がベストスリーにランクインしているからです。
タイトル獲得数と一般棋戦優勝回数は
- 羽生善治 97期 44回 (2017/5/18現在)
- 大山康晴 80期 44回
- 中原誠 64期 28回
4位の谷川九段で27期ということを考えるといかにこの3人がずば抜けているかわかります。
その時代によって棋戦の数が違う、将棋ソフトの登場、定跡の進化によって棋士全体のレベルが上がっていると言った環境の違いもありますが、歴史上の棋士の強さを比較する時にタイトル獲得数という数字は重要な指標になります。
藤井四段がこれら3人の偉大な棋士を超えられるか?僕はその可能性が大いにあると思っています。
これから藤井四段が創っていくであろう歴史の目撃者になれることを1人の将棋ファンとして非常に楽しみにしています。