世界で株安進行 トランプ米政権の税制改革などに暗雲で
米国株式の大幅下落を受け、18日のアジア各国の株式市場も下押し圧力を受けている。トランプ米政権が相次いで問題に直面するなか、政権が掲げる税制改革や規制緩和の先行きに暗雲が広がっているためだ。
米国の3つの主要株式指数は17日に1.7%以上下落したほか、ドルも主要通貨に対して下落。トランプ大統領が昨年11月に当選した後の上昇幅が帳消しになった。
日本の日経平均株価は前日比1.32%下落し1万9553.86円で引けたほか、韓国の総合株価指数(KOSPI)やオーストラリアのASX200指数も弱含みとなった。
S&P500種株価指数は昨年9月以来となる大幅下落を演じ、前日比1.8%安の2357ポイントで17日の取引を終えた。一方、ナスダック総合指数は2.6%安の6011だった。
アクシトレーダーのチーフ市場ストラテジスト、グレッグ・マッケナ氏(シドニー)は、アジア市場の下落は「けさはすべてトランプ大統領がらみだ」と語った。
市場はさらに不安定に?
トランプ氏の当選以降、成長を重視する経済政策への期待感が米国の株式市場の急伸を支えてきた。
しかし、トランプ大統領が先週、連邦捜査局(FBI)長官だったジェームズ・コーミー氏を解任したことをめぐり議論が沸き起こるなか、主要政策が議会を通過できるのか疑念が高まっており、市場ムードの重しになっている。
マッケナ氏は、コーミー氏が来週議会で証言する可能性があるなか、不透明な状況は今後数日は続く可能性があると語った。
米国の市場関係者も同様の見方を示している。
ローゼンブラット証券(ニューヨーク)の幹部、ジョセフ・ベナンティ氏は、「事が収まるまでしばらく時間がかかるかもしれないのが多少心配だ」と述べた。
コーミー氏解任や、今月10日に会談したロシアのセルゲイ・ラブロフ外相らに重要な機密情報を漏らしたとの疑惑をめぐり、ホワイトハウスは不適切な行為はなかったと激しく反論しているものの、一部のアナリストは大統領の罷免にさえ言及するようになっている。
ロンドン・キャピタル・グループの市場アナリスト、ジャスパー・ローラー氏は、「トランプ大統領の罷免を求める声は高まっていて、遅ればせながら市場も不安に思い出している」と語った。
アセンド・マーケッツの調査部門責任者、マイク・バン・ダルケン氏は、投資家たちは、「(テレビドラマ)『ハウス・オブ・カード』の現実版最新エピソードを、取引に織り込もうしているようもの」と話した。
ことさらほかに影響がなかったとしても、相次ぐ問題で政権が脇道にそれてしまうのは紛れもなく、予算編成や市場に有利な法律の成立を妨げるかもしれないとアナリストたちは指摘する。
しかし、共和党のポール・ライアン下院議長は、政権の議会運営は麻痺(まひ)していないと強調し、「大統領を傷つけようとする一部の人々」のせいだと語った。
ドル下落
17日の株式市場の下落では、過去何カ月間で大幅上昇していた金融株の反落が目立った。ゴールドマン・サックスは5%以上値を下げ、JPモルガン・チェースは3.8%下げた。
S&P500種の主要11業種のうち8種が下落したが、率は低いもの安定した成長が見込め、不透明性が増した状況下で特に好まれる公益事業株や不動産株は上昇した。
同じく投資の安全な避難先とされる金も0.9%上昇。一方で、「恐怖指数」とも呼ばれる変動性指数(VIX)は過去1カ月間の高値を付けた。
為替市場では、ドルが対ユーロで0.6%下落し、英ポンドに対しては0.35%下げた。リスク回避通貨とされる円に対しては1.9%下落した。
主要通貨に対するドルの総合的な動きを示すドルインデックスは0.6%下げ、97.5と昨年11月以来の低水準を付けた。
グレイディエント・インベストメンツのジェレミー・ブライアン氏は、不透明感が今年夏中、あるいはそれ以降も続く可能性があると指摘した。「決算シーズンを大方終えており、今後3~6カ月で最も大きなリスク要因になりそうなのが、政治的な不透明感だ」。
(英語記事 Global stock markets fall as Trump turmoil intensifies)