【パリ=白石透冴】フランスのマクロン政権は17日、閣僚名簿を発表した。二大政党である社会党(中道左派)と共和党(中道右派)から閣僚経験者を引き抜き、バランスと実績を重視した内閣とした。6月11、18日の国民議会(下院)選挙で過半数獲得に向け広い有権者に支持を呼びかけるのが目的だ。学者やスポーツ選手も入閣して多様性をアピールした。
治安対策などに当たる内相に社会党でリヨン市長のジェラール・コロン氏をあてた。マクロン氏を早くから支持した人物だ。欧州連合(EU)との協力強化を担う外相には同じく社会党でオランド政権の国防相を務めたジャンイブ・ルドリアン氏を起用した。
財政再建が課題となる経済相に共和党のブルーノ・ルメール氏が就く。このほか経営者、政治学者、医師、フェンシング選手なども含まれ、多様な人材を登用した。
国民議会選挙までの暫定政権だが、マクロン氏はこのメンバーですぐに労働法の見直しやEUとの関係強化などに着手する考え。既存政治からの脱却を訴えてきたマクロン氏だが、結局は閣僚経験者を多く登用した。
公約実現に関わる法改正や予算案には議会との連携が必須だが、有力議員を引き抜かれた形の二大政党がどこまで協力するかが課題となる。
バランス重視の内閣を作った最大の理由は、6月の下院選挙までに右派から左派まで広い有権者の支持を集めることだ。マクロン氏が率いる新政党「共和国前進」は現在議席を持っておらず、過半数を取って安定政権の樹立を目指している。
対抗する議会第1党社会党はマクロン氏との合流グループと残留グループで分裂しつつある。所属するオランド前大統領の不人気や大統領選の失敗で弱体化。一段と党の基盤が揺らいでいる。17日、同党は「マクロン政権の経済政策は右派の起用により、労働者を守れなくなるだろう」と批判した。
第2党共和党も離脱者を多く出し、マクロン氏との対決姿勢を強めている。同党は17日、「ばらばらなメンバーを集めた今回の政権は混乱を生むだけだ」と攻撃する声明を出した。
世論調査によると、共和国前進は高い支持率を保っており、下院選挙で第1党獲得の勢い。過半数近くに達するとの見方もある。極右マリーヌ・ルペン氏が率いる政党「国民戦線(FN)」も議席を大きく伸ばす可能性が指摘されている。