大人になってから英語学習を再開すると、必ずぶつかるのがリスニングの壁だ。
巷のブログや参考書では。様々なリスニング勉強法が紹介されている。しかし、それらは書き手の個人的な体験のみを元にしたものが多く、特定の状況下でしか学習効果が出ないことがあった。
そこでトイグルでは、認知科学と外国語習得理論の研究を取り入れた、リスニング勉強法を紹介していこう。多忙な社会人が独学で学習できることを前提とし、戦略的かつ効率の良い方法を提案していきたい。
*目次
- 英語リスニングの仕組み
- トイグル式英語リスニング勉強法の全体像
- シャドーイングの練習方法
- 英語初心者のリスニング勉強法
- 英語中級者のリスニング勉強法
- 英語上級者のリスニング勉強法
- おすすめ英語リスニング教材
- おすすめ英語リスニングアプリ
- おすすめ英語リスニング学習サイト
- 英語リスニングお悩みQ&A
- まとめ
1. 英語リスニングの仕組み
はじめに、認知科学の知見を使い、我々が英語のリスニングをする時のプロセスを明らかにしていこう。
次のチャートは、英語の音声を聞いてから意味を理解するまで、脳内で起こる4つのステップを示している。
(Anderson(1995)より筆者作成)
1つずつ見ていこう。
Step1. 音の識別
リスニングのプロセスは、英語の音の識別から始まる。英語は日本語と異なる発音がされるため、我々は脳のリソースを使って英語の音を解析する必要がある。
しかし、英語と日本語の音の構造は大きくかけ離れているため、我々は英語を往々にして正しく聞き取れない。例えば、rとlの聞き取りを苦手とする日本人は、right(正しい)とlight(明かり)で混乱しがちだ。
音の識別の精度を上げるには、英語の発音を学ぶことが効果的だ。実際の発音があまり上達しなくても、発音のメカニズムさえ理解すれば、リスニング能力は飛躍的に向上する。
Step2. 単語の識別
「Step1. 音の識別」で聞き取れた英語の音は、Step2で単語として認識される。
例えばいま「/raɪt/(ライト)」という音が聞こえたとしよう。発音のメカニズムを知っていればこれが自然にrightに変換され、意味を持った語句として識別される。
- /raɪt/ ⇒ right ⇒ 正しい
ここで発生する問題が単語力だ。
せっかく聞き取れた音も、その単語を知らなければスペル(つづり)がわからず、意味を推測するしかない。推測には多大なエネルギーを利用するため、知らない単語が多いとリスニング音声についていけなくなる。
したがって、たくさんの単語を知っておくことはリスニング力を高める上で重要だ。単語帳などを使い、少しでも多くの単語をインプットしておくようにしよう。
Step3. センテンスの理解
音声内の単語が把握できたら、次はセンテンス(文)を理解する段階に移る。センテンスは単語が組み合わさって構成されるので、そのルールを表す文法力が必要だ。
しかし、ここで言う文法力は「第5文型ではCの位置に目的格補語が使われる」といったような、文法に関する豆知識のことではない。
リスニングに必要な力は文法の意味である。例えば、進行形はbe動詞+-ing形という形を知るより、「今現在起こっていることを表す」という意味を理解することではじめて、その文章が理解できる。
Step4. 文章全体の理解
Step3で複数のセンテンスを理解したら、それを積み重ねることで文章全体の意味を把握する。これがStep4だ。ここでは、背景知識の有無が理解に大きな影響を及ぼす。
例えば、あなたがアカウンティング(会計)に関するビデオを英語で観ているとしよう。
アカウンティングの基礎知識があれば、多少英語がわからなくて動画の大意は理解できる。しかし、アカウンティングを全く知らなければ、英語を聴き取りつつ内容理解をゼロから行わなければならない。リスニングの精度が落ちるのは当然だろう。
※リスニングの4プロセスは、当エントリーで紹介したように順番に起こると考える説と、それぞれが同時並行して起こると考える説の2種類がある。どちらが正しいにしても、各要素の力を伸ばしておくことが重要だ。 |
*リスニングプロセスまとめ
これまで紹介したように、我々が英語の音声を聞いてからそれを理解するまで、脳内では次の4つのプロセスが行われる。
- Step1. 音の識別
- Step2. 単語の識別
- Step3. センテンスの理解
- Step4. 文章全体の理解
4要素の関係性をまとめよう。これらは独立した項目でなく、互いに強く関連しあっている。
トイグル式リスニング勉強法では、これら4要素を英語レベルに応じて、バランス良く鍛えていくよう設計されている。
2. トイグル式英語リスニング勉強法の全体像
はじめに、トイグル式英語リスニング勉強法の全体像について、簡単に説明しよう。
トイグルでは、学習者の英語レベルを次の3つの段階に分けている。
初心者 |
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中級者 |
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上級者 |
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トイグルでは、単に音声を聞いて設問に答えられるような受動的なリスニング力ではなく、話し手の意図を理解し、適切な返答ができる能動的なリスニング力を身につけられることを目標としている。
まずは、全レベルに共通して効果的な「シャドーイング」と呼ばれるトレーニングを学ぼう。次に、必要な箇所から英語レベルごとの勉強法をご覧いただきたい。
3. シャドーイングの練習方法
シャドーイングとは、テキストを見ずに英語の音声を聞きながら、その音声を真似て声に出す練習法のことを指す。リスニングだけでなく会話力の向上も実証されている、効果的なトレーニングだ。
まずは見本を見てみよう。
このように、音声を聴いた直後にそれを真似ることで、英語の発音と構造を脳内に定着させる訓練がシャドーイングだ。
それでは、具体的な練習方法を紹介しよう。
尚、先のビデオは筆者が発音を教わった『英語喉』の著者、上川氏である。
3-1. 教材選び
シャドーイングを行うためには、自分のレベルに合った教材を選ぶ必要がある。上級者以上はYouTube等で生の英語を使ってもいいが、初級者・中級者は市販の教材を使ったほうがいいだろう。
教材選びのポイントをまとめよう。
- 今の自分のレベルよりも難易度が低いもの(目安: 文中の95%の単語の意味がわかる)
- 自分の興味のある分野(必ずしもお勉強用の固いジャンルである必要はない)
- 音声CDが付属している
トイグルのおすすめは、『7. おすすめ英語リスニング教材』で紹介しよう。
3-2. シャドーイングの実践方法
教材を手に入れたら、シャドーイングの実践練習に入る。
シャドーイングをするにあたっては、事前の準備が重要となる。次の手順にしたがって練習しよう。
*シャドーイングの手順
- リスニング: まずはテキストを見ずに音声を聞く。音声の長さやトピックなどの全体像を把握しよう。
- マンブリング: 音声を聞きながら、口の中でぶつぶつとつぶやく。音声が難しすぎないかチェックする段階だ。
- パラレルリーディング: テキストを見ながら音声を聴いて、シャドーイングを行う。音読に近い。本番のためのウォーミングアップとなる。
- 英文の意味のチェック: この段階でわからない単語や文章を、辞書等で調べる。
- プロソディ・シャドーイング: 音声を聞きながらシャドーイングを行う。ここでは英文の意味は無視していいので、英語の発音とリズムを感覚でつかむようにする。複数回行うと効果的。
- コンテンツ・シャドーイング: 音声を聞きながら再度シャドーイングを行う。ここでは発音とリズムより、英文の意味を理解するようにする。複数回行うと効果的。
3-3. シャドーイングのコツ
シャドーイングはダラダラと長時間するより、集中して短時間で行うほうが学習成果が高い。そのため、シャドーイングのトレーニングは1日30分程度に留め、それを毎日続けるようにしよう。
はじめは英語の音も意味も理解できず、「作業」のように感じるかもしれない。しかし、何度か実践し慣れてくると、音や意味が脳にスッと入ってくる感覚がつかめるようになるはずだ。
最低でも数ヶ月は続け、学習効果を実感してほしい。
尚、シャドーイングは英語のレベルによって異なるバリエーションが存在する。レベル別の勉強法で説明しよう。
※トイグルでは、言語学者の門田修平氏が提唱する、科学的に検証されたシャドーイングをベースに紹介した。 |
4. 英語初心者のリスニング勉強法
ここでは、英語初心者のリスニング勉強法を紹介しよう。
まず、日本語と英語は、発音の仕組みが全く異なる言語である。これを知らずにいくらリスニングを練習しても、我々の脳は英語を意味不明な雑音として捉えてしまい、学習成果が上がらない。
大人になってから発音を上達させるのは至難の業である。しかし、発音のメカニズムを知っておくだけで、リスニング力の飛躍的な向上が期待できるのだ。
そこで、トイグルでは英語初心者の学習ゴールを次のように設定した。
英語初心者のゴール: 英語の音に慣れ親しむ
(トイグル)
それでは、具体的な勉強法を見ていこう。
4-1. プロソディ・シャドーイングで英語の音に慣れる
冒頭で、英語リスニングには次の4つの仕組みがあることを説明した。
- 音の識別
- 単語の識別
- センテンスの理解
- 文章全体の理解
最終的にはこれら4要素すべての力を強化することが、リスニング学習の目的だ。しかし、初心者の段階では音の識別を主たる学習目標に設定したほうが、学習の負担は軽減されるだろう。
そのため、シャドーイングでは英語の音にフォーカスを当てる、プロソディ・シャドーイングを中心に行おう。手順は初心者向けに、次のようにカスタマイズした。
*英語初心者のシャドーイングの手順
- リスニング
- マンブリング
- パラレルリーディング
- プロソディ・シャドーイング
数ヶ月間シャドーイングを行い慣れてきたら、英文の意味をチェックしたり、「コンテンツ・シャドーイング」を取り入れても良いだろう。
4-2. 英語の発音のメカニズムを知る
日本人がリスニング力を向上させる鍵となるのが、発音力である。
英語の発音というとRとLの違いなどがよく取り上げられるが、最も重要な点は喉の使い方(発声方法)の違いを知る点にあるだろう。
まず、日本人も英語ネイティブも人間である以上、声帯を使って声を出すことには変わりない。
しかし、日本語は喉を緊張させて話す「口発音」であるのに対し、英語は喉を常時リラックスして音を響かせる「喉発音」である。英語ネイティブが男女問わず立体的で深い声を出すのは、喉をリラックスして英語喉で話しているからである。
例を見てみよう。冒頭でインタビューをする女性とオバマ大統領のどちらも、日本人に比べ深く立体的な声で話していることがわかる。
この事実を知っているだけで、リスニングでの音の捉え方が180度変わってくる。英語の音声を聴くときは、喉の深い音に耳をすませよう。喉発音を意識するだけで、徐々に英語の音が聞こえるようになるはずだ。
4-3. 英語と日本語のリズムの違いを知る
日本語と英語の決定的な違いの2点目が、リズムである。
まず、日本語は「母音+子音」で構成される2ビートのリズムである。例を見てみよう。
- さよなら = Sa+Yo+Na+Ra
母音(a,i,u,e,o)を1拍と数えれば、さよならはSa, Yo, Na, Raの4拍で構成される単語である。
一方、英語は「母音+子音+母音」が基本となる3ビートのリズムである。例を見てみよう。
- Good morning = Good+morn+ning
こちらも母音を1拍と数えると、Good morningはGood, morn, ningの3拍で構成されることがわかる。これを日本語のリズムで「グッ・ド・モ・オ・ニ・ン・グ(7拍)」と捉えてしまうから、日本人は英語を聞き取れない。
発音に関する参考書は、後ほど紹介しよう。
5. 英語中級者のリスニング勉強法
次に、英語中級者のリスニング勉強法を紹介しよう。この段階では英語の音に慣れてきたため、リスニング音声の意味を少しずつ捉えていけるようになりたい。
そこで、トイグルでは英語中級者の学習ゴールを次のように設定した。
英語中級者のゴール: 音から意味へと理解を深める
(トイグル)
それでは、具体的な勉強法を見ていこう。
5-1. コンテンツ・シャドーイングで理解力を強化する
英語中級者は、英語リスニングの4要素をバランス良く鍛えていくことが望ましい。特に、英語を聞いた時に無意識に音と単語の識別ができ、センテンスと文章全体まで理解を深められるのが理想だろう。
そこで、シャドーイングの中でもコンテンツ・シャドーイングを重視して行おう。これはシャドーイングのプロセスの中でも最後に行う練習法で、英文の意味に焦点を当てるアプローチである。
*英語中級者のシャドーイングの手順
- リスニング
- マンブリング
- パラレルリーディング
- 英文の意味のチェック
- プロソディ・シャドーイング
- コンテンツ・シャドーイング
コンテンツ・シャドーイングを成功させるためには、事前に英文の意味を深く理解しておく必要がある。シャドーイングの4つめの手順である「英文の意味のチェック」を入念に行うようにしよう。
5-2. 字幕付き短編動画で生の英語に触れる
英語中級者になったら、少しずつ生の英語に触れていく必要がある。日本人向け英語教材の「不自然な英語」ばかりで練習していると、実践的な英語力は身につかない。
そこで役に立つのが、無料の動画サービスYouTubeである。ここで気に入った英語の動画を見つけ、字幕付きで繰り返し観るだけで高い学習効果が得れる。
動画選びのポイントをまとめよう。
- 自分が心から楽しめるジャンルの動画を選ぶ(必ずしもお勉強用のジャンルでなくても構わない)
- 英語字幕をつける(日本語字幕では英語に集中できないためNG)
- できるだけ短い動画を選ぶ
興味を持って好きな動画を何度も観れば、単語や文法表現もどんどん理解し、フレーズも自然に覚え、リスニング力が飛躍的に向上する感覚をつかむことができるだろう。
5-3. 単語・文法力を鍛える
リスニングの4要素の中で、単語の識別とセンテンスの理解力を高めるためには、単語と文法力を養う必要がある。
それぞれ、具体的な勉強法を紹介したい。
*リスニングのための単語勉強法
単語学習のポイントは、英単語を和訳で覚えないことである。例えば、listenという単語を英和辞典と英英辞典で比較してみよう。
- 英和辞典: 聴く
- 英英辞典: to pay attention to what someone is saying
確かに、今の段階では日本語で意味を捉えたほうがわかりやすく、勉強は楽である。
しかし、リスニングは最終的に英語を英語のまま理解することを目的とする。英文を一度日本語に翻訳してしまうと、脳の無駄なリソースを使ってしまい、スムーズな理解を妨げてしまうのだ。
従って、学習の負荷は増えるものの、英単語はなるべく英英辞典を使って覚えるようにしよう。慣れないうちは英和と英英辞典の両方を使って、日本語・英語の両方の意味を知るといいだろう。
*リスニングのための文法勉強法
リスニングに必要な文法力とは、文法の持つ「意味」を理解することである。
これを理解するため、例として受動態(=受身形)と呼ばれる英文法を分解してみよう。
このように、英文法は形・意味・使い方の3要素に分解するとわかりやすい。
日本人は問題集やドリルを通じ、英文法の形を中心に学習する。しかし、英文をスムーズに理解するのに必要なのは文法の意味であり、形を分析する力ではない。
参考書には必ず文法の意味が載っているため、それを再確認することで、リスニングに必要な文法力を高めていこう。
6. 英語上級者のリスニング勉強法
次に、上級者のリスニング勉強法を紹介する。
上級者になれば、英語リスニングの4要素はある程度バランス良く備わっていると思われる。しかし、実際に英語を使う時にも通用する本物の英語力を手に入れるためには、もう一段高い次元のトレーニングを積む必要があるだろう。
そこでトイグルでは、トイグルでは英語上級者の学習ゴールを次のように設定した。
英語上級者のゴール: 学習の量と質を圧倒的に増やし、戦略的にリスニングを行う
(トイグル)
3つの戦略を見ていこう。
6-1. 発展的なシャドーイングを練習する
英語上級者になったら、マンネリ化を防ぐためシャドーイングの方法に変化をつけてみよう。
代表的な方法を2つ紹介する。
*リピーティング
リピーティングとは、1〜2センテンスほどの音声を聴いて覚えた後、音声を止め、それを発声する練習法だ。すぐに暗唱するシャドーイングと違って文章を暗記する必要があるため、より上級者向けのトレーニングと言える。
*テキスト全体の暗唱
シャドーイングを何度も繰り返し練習した教材を使って、テキスト全体の暗唱を行うことも効果的な練習となる。暗唱時はテキストも音声もシャットダウンし、完全に記憶に頼って発声するようにしよう。
6-2. トップダウン・リスニングに切り替える
英語初級者・中級者は、英語リスニングのプロセス通りに理解することを前提としていた。
- 音の識別
- 単語の識別
- センテンスの理解
- 文章全体の理解
このように、小さな単位から大きな単位へ徐々に理解していく方法を、ボトムアップ・アプローチと呼ぶ。
そのため、リスニングの練習では聞き取れなかった部分をもう一度聞いたり、わからなかった箇所を理解するまで確認することで、文章全体を把握するようにする。
一方、英語上級者を目指すのであれば、トップダウン・アプローチでリスニングのトレーニングを積むことが望ましい。これはボトムアップの逆で、文章の大意の理解を最優先し、必要があれば難解な単語にフォーカスを当てる方法となる。
具体的には、トップダウン・アプローチでは次の手順でリスニングを行う。
- タイトルや導入部分から、文章全体を推測する。
- 推測した内容を確認するような意識でリスニングを行う。
- 重要な箇所は丁寧に聞き、それ以外はざっと大意を理解する。
簡単に言えば、トップダウン・アプローチは情報を探しだすようにして聴く、戦略的なリスニングと言える。
実際のところ、コミュニケーションを行う際は、相手に気持ちが入って長々と話したり、複数の人と同時に会話したり、大学の授業やスピーチのように長文の英文を聴く場面が多々存在する。これらに対応する力を養うのが、トップダウン・アプローチである。
※トップダウン・アプローチは、ボトムアップが高い水準でできることが前提となっている。言い換えれば、意識せずともボトムアップ・アプローチが自然に行えるからこそ、トップダウンでの戦略的なリスニングが可能となるのだ。 |
6-3. 字幕なしの動画や洋書で英語のシャワーを浴びる
英語力を向上させるには、勉強の質だけでなく量を確保することが重要である。リスニングにおいても、基礎的な英語力が身についたら、次は学習量を圧倒的に増やす必要性が出てくる。
日本に住んでいる社会人が英語のシャワーを浴びるには、次の2つの方法があるだろう。
- 字幕なしで映画・動画を観る
- 洋書を読む
特に、リスニング力の飛躍的な向上のためには、リーディング力も同時に高める必要がある。リーディング力をつけることで、リスニングの4要素である「センテンスの理解」と「文章全体の理解」を間接的に鍛えることができるのだ。
これからは「リスニングのために勉強する」から、「何かの勉強を英語で行う」ようにして、英語のインプットの量を増やしていこう。
7. おすすめ英語リスニング教材
これまで、英語リスニングの勉強法について解説してきた。
次に、トイグルおすすめの英語リスニング教材を紹介していきたい。
7-1. シャドーイング用教材
*ゼロからスタート シャドーイング (宮野智靖)
『ゼロからスタート シャドーイング』は、英語の超初心者に最適なシャドーイング教材だ。いきなり会話や長文から入るのではなく、数字や簡単な英単語のシャドーイングから始める構成になっている。
また、センテンスシャドーイングの章では、現在形や受動態など、シャドーイングを通じて文法を学べるようにもなっている。まさしく「ゼロから」はじめたい人にぴったりの参考書である。
*英語シャドーイング超入門 (玉井健)
『英語シャドーイング超入門』は、英語初心者・中級者向けのシャドーイング練習帳である。ステージ0から3までの4段階に分かれており、段階的にシャドーイングの練習を行うことができる。
本書は日常会話で使われるカジュアルな表現や、TOEIC Part3を髣髴とさせる会話など、実践とテスト対策の両方に役立つ。当エントリーのシャドーイング理論を提唱した玉井氏が書いているだけに、クオリティの高い一冊となっている。
7-2. 書籍
トイグル式では、リスニングをシャドーイング教材とYouTube動画を中心に行う。ここでは英語の仕組みが学べる本を紹介しよう。
*機関銃英語が聴き取れる (上川一秋)
『機関銃英語が聴き取れる』は、英語リスニング力を高めることをテーマにした発音の教科書である。中級者向け学習法で紹介した、喉発音とシラブルの理論は、この本からヒントを得ている。
ページ数は少なく、専門用語が使われていないため、初心者でも理解しやすいだろう。リスニングはなんといっても英語の音から始まるため、全レベルの学習者が必ず読んでおきたい一冊である。
*英語喉 (上川一秋)
『英語喉』は、先に紹介した『機関銃英語が聴き取れる』と同じ著者が書いた発音の教科書だ。
こちらは機関銃英語よりも詳細に、英語の音とシラブルの構造を1つ1つ丁寧に紹介している。英語上級者はぜひとも持っておきたい。
7-3. YouTube
トイグル式英語勉強法の中心となるツールが、動画サービスYouTubeである。英語字幕を上手に使って、最強のリスニング力を手に入れよう。
ここではトイグルの独断と偏見で、英語学習に最適なチャンネルをいくつか紹介したい。
*Micaela ミカエラ
1つ目は、カナダ出身で現在福岡県に在住のユーチューバー、ミカエラさんのチャンネルを紹介しよう。
日本の食、文化、暮らしを英語で世界に発信しているため、日本に住む外国人の視点を学びながら、英語の勉強をすることができる。
*Sharla in Japan
Sharla in Japanのシャーラさんも、カナダ出身で東京に住んでいるユーチューバーだ。日本の情報を英語で世界に発信し、高い支持を受けている。
動画の内容が日本に関連するため、背景知識を十分に持った状態でリスニングができる。そのため、たとえ聴き取りがうまくいかなくても、大意を理解することはできるだろう。
*PewDiePie
PewDiePieはチャンネル登録者4,300万人以上を持つ、世界トップクラスのユーチューバーである。
内容はゲーム実況が多く、若者向けのため、スラングを多用した極めてカジュアルな話し方をする。ある意味で海外の文化をよく学べるため、留学や海外赴任を計画している方は、見ておくと参考になるだろう。
7-4. 映画
映画に関しては好みが分かれると思われるので、ここではおすすめのプラットフォームを紹介しよう。
*Amazonプライムビデオ
Amazonプライムはもともと、Amazonの商品をお急ぎ便・時間指定無料で利用できるサービスだった。最近はこれに加えてAmazonプライムビデオがスタートし、プライム会員であれば邦画・洋画が見放題となっている。
Amazonをよく利用する英語学習者であれば、一石二鳥のサービスだ。
8. おすすめ英語リスニングアプリ
スマートフォンのアプリでも、リスニングの練習ができるものが多数リリースされている。通勤中に練習できるおすすめアプリを紹介しよう。
8-1. TED Audio Book (無料)
TED(テッド)とは、学術・経済・ビジネス・エンターテイメントなど、様々なジャンルの人々がプレゼンテーションを行う講演会だ。カナダを中心に、現在は世界各地で定期的に開催されている。
TEDに関しては様々なアプリがリリースされているが、筆者のおすすめは『TED Audio Book』だ。字幕をつけることができる上に、プレゼン内容の書き起こし及び日本語訳が用意されている。
8-2. ListenUp – 英会話リスニングチャレンジ (無料)
『ListenUp』は、海外アプリメーカーが作った英語学習アプリだ。各ステージでは二人の人物の簡単な会話を聴き、それに対する3つの質問に答える形式になっている。
このアプリの最大の特徴は、英語ネイティブが普段の会話と変わらないよう自然な口調で話している点にある。英語学習者向けのため、平易な英語でゆっくり丁寧に話しているので聴き取りやすい。
8-3. TOEICテストリスニング360問 (120円)
『TOEIC®テストリスニング360問』は、かつてApp Storeの教育カテゴリー有料部門で1位を取った、人気リスニングアプリだ。TOEIC Part1(写真描写)とPart2(応答問題)の2セクションの演習問題を解くことができる。
アプリ内ではそれぞれのパートが、600点・730点・860点対策の3レベルに分かれている。それぞれで120問の問題が用意されているため、今の実力にあった練習を積むことが可能だ。
9. おすすめ英語リスニング学習サイト
9-1. アルク TOEIC問題 毎日トレーニング
アルクは、日本でおそらく最も多くの種類の英語関連教材を販売している出版社だ。そんなアルクがTOEIC学習者向けに用意している「TOEIC問題 毎日トレーニング」を紹介しよう。
こちらのサイトでは、TOEICの問題が日替わりで3問ずつ出題される。通勤時などのちょっとした隙間時間に活用できるため、お気に入りに登録しておくと便利だろう。
9-2. 広島大学TOEIC Exam Practice
「広島大学 TOEIC Exam Practice」は、TOEICの全セクションの練習問題が大量に用意されている。各パートの問題数は次の通りだ。
- Part1(写真描写): 125問
- Part2(応答): 105問
- Part3(2人の会話): 252問
- Part4(ナレーション): 84問
- Part5(短文穴埋め): 100問
- Part6(長文穴埋め): 12問
- Part7(長文読解): 50問
例えば、Part1は模試12.5回分に匹敵する量のため、このサイト1つで十分な練習量が確保できる。無料でここまで多くを解けるサイトは他にはないだろう。
ナレーターの発音に強い訛りがある点と、サイトにFlashが使われている点が玉に瑕だが、ぜひとも活用したいサイトの1つである。
9-3. 英語リスニング無料学習館
「英語リスニング無料学習館」は、TOEIC Part2に特化した100題が用意されている。
設問文と3つの応答文のディクテーション(音声の書き出し)の練習もできるため、解きっぱなしで終わらず学習効果を高めることができる。
10. 英語リスニングお悩みQ&A
ここで、英語リスニングに関するよくあるお悩みを、Q&A形式で答えていきたい。
10-1. 英語は早口なので聴き取りに苦労しています
英語は早口なので聴き取りに苦労している、と思う学習者は多いだろう。
ところが、驚くべきことに事実は逆で、英語は日本語の比べてはるかにゆっくり話す言語なのである。その理由を簡単に説明しよう。
まず、話すスピードの速さとは、単位時間あたりに使われるシラブルの数を指す。シラブルを簡単に言えば泊数のことで、母音を含む最小単位を1シラブルと数える。例を見てみよう。
- 日本語: こんにちわ (Ko+n+ni+chi+wa)
- 英語: Good afternoon (Good+after+noon)
日本語の「こんにちわ」は「Ko+n+ni+chi+wa」の5シラブルで1単語だ。それに対し、英語のGood afternoonは「Good」の1シラブルから成る単語と、「after+noon」の2シラブルの語句から成る単語を合わせた表現である。決して「グ・ッ・ド・ア・フ・タ・ヌ・ゥ・ン」の9シラブルではない。
このように、英語は日本語よりも一定時間内のシラブルが圧倒的に少ない。したがって、英語は日本語よりもゆっくり話される言語と言うことができる。
実際、筆者がイギリスに留学していた際、日本人の友達と日本語で普通に会話をしたところ、周囲にいた外国人から「なんでそんなに早口で話すんだ!」と言われたことがある。
こんな早口な日本語を我々は聴き取れるのだから、英語が聴き取れないわけがない。発音のメカニズムを勉強して音の仕組みを知れば知るほど、英語の音が聞こえるようになることを実感するだろう。
10-2. 英語の音のつながりが聴き取れなくて苦労しています
日本人が英語の音を聴き取れないもう1つの原因が、音のつながりである。英語は、単語の語尾と次の語の頭がくっつく現象がよく発生する。
例えば、a pair of shoesは「ア・ペア・オブ・シューズ」ではなく、日本人の耳には「アペラロブシューズ」のように聞こえる。check it outが「チェケラ」に聞こえるのも同じ現象だ。
これに関しても、音のつながりのメカニズムを知ることで、ある程度対処は可能だ。例としてI did it.のメカニズムを説明しよう。
まず、I did it.は「アイ・ディドゥ・イット」のように一音一音区切って発音するのではなく、日本人には「アイディディッ」のように聞こえる。
ここでは、まずIとdidの間に小さなdのような音が加わり、「アイディ」のような音になる。次に、didとitの間にも小さなdのような音が加わり、「ディディ」のようになる。itのtは半分だけ発音されて終わるため、日本人には省略されたように聞こえる。
結果的に「アイディディッ」のようになるのだ。
10-3. 問題集は解けるのに実際の会話で聴き取りができません
リスニングが上達してくると、問題集や映画ではある程度聴き取りができるようになってくる。しかし、英会話教室などでネイティブの先生が少し速く話すだけで、言っていることが半分も聴き取れないことがあるだろう。
これは誰にでも起こりうることのため、心配しなくてよい。リスニングの特性を使って説明しよう。
- 一方向リスニング: 問題集、資格試験、映画など、話し手とのコミュニケーションがない状態でのリスニング
- 双方向リスニング: 実際の会話や電話など、相手に返答をしなければならない状態でのリスニング
一方向リスニングでは相手にリアクションを返す必要がないため、音声のみに集中して聞くことができる。内容が理解できなくてもコミュニケーションに支障が出ないため、聞き流すことも可能だ。
一方、双方向リスニングでは相手の発言を聞いた後、直ちに適切な返答をする必要がある。お互いの言葉のキャッチボールが会話を作るため、相手の発言を高いレベルで理解しないとコミュニケーションが成り立たない。
双方向リスニングは、どんな返答をしようか考えながらリスニングをする「マルチタスク」となるため、脳のリソースのすべてをリスニングに使うことができない。その他、相手の表情やしぐさ、周囲の環境、ジェスチャーなど様々な非言語的な要素も関係してくる。
簡単に言えば、双方向リスニングのほうがはるかに難易度が高いのだ。留学や海外赴任など、英語を実際に使う予定がある方は、双方向リスニングを意識して勉強計画を立てよう。
11. まとめ
当エントリーでは、社会人が英語リスニング力を伸ばすために全手法をまとめてきた。
勉強法を中心に解説したものの、教材やアプリの紹介も行った。学問的な裏付けも含めて解説することで、筆者の個人的な経験だけに基づく内容でないことも、お分かりいただけたと思う。
英語は地道な努力が成果に結びつく世界だ。少しずつ、しかし効率的に勉強し、目標を達成しよう。
*当記事を読んでもっと知りたいと思った方は、次のエントリーも参考にしていただきたい。
- TOEICリスニング勉強法はこちら⇒TOEICリスニングパートの解き方と対策のコツまとめ
- TOEIC勉強法はこちら⇒現役TOEIC講師が教える成果が120%出る勉強法
Good luck!