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tricot、日英米同時リリース! 最新作『3』の「新しさ」を明かす

tricot

『T H E』(2013年)、『A N D』(2015年)に続くtricotの3rdフルアルバム、その名も『3』が「日英米同時リリース」という形で発売された。 komaki♂(Dr)脱退後、辣腕ドラマー5人をサポートに迎えた『A N D』から、オーディションで選ばれた4人のドラマーとともに作り上げた昨年4月のEP『KABUKU EP』へ……といった編成面でのカオスの時期を経て、現在ライブのサポートも務めるドラマー=吉田雄介とのセッションを軸として生まれた今回の『3』。その音楽世界の変幻自在さが、変拍子に留まらず曲調の多彩な展開にまで増殖することによって、tricotの野性と衝動が最も伸びやかに、かつ鮮やかに咲き乱れている快盤だ。

ブックレットなし&「3」の文字だけがプリントされた「ミニマルパッケージ盤」の超シンプルなパッケージデザインにも象徴される自由闊達な革新性と、それを実現する快活なバイタリティ(クリエイター・チョーヒカルとのコラボレーションによるアートボックス仕様「999枚限定デラックス盤」も同時発売)。フェスの大舞台を揺らすポピュラリティと、ロックの核心そのもののスリリングなエッジ感――それらすべてを携えて唯一無二の誘引力を発揮している彼女たちの「今」に、3人全員インタビューで迫った。

インタビュー=高橋智樹

自由に作れたかなっていう感じですね。「なんでもあり」感がより出ました(キダ)

――「tricotにしかできないこと」と「今までやってなかったもの」と「自分たちが楽しめるもの」が常にせめぎ合ってるのがtricotの音楽だと思うんですけど、今回のアルバムは特に「自分たちが楽しいもの」を鳴らした結果、「tricotにしかできないこと」「今までやってなかったもの」にもなってる――みたいな印象を受けたんですけども?

中嶋イッキュウ(Vo・G) そうですね。一個前のアルバム(『A N D』)とかは、結構「楽しませよう」「楽しもう」って作ってた感じがあったんですけど、今回はなんか、自然に「楽しかったな」って。自然発生的な楽しさみたいなものが出てきたので。

キダ・モティフォ(G・Cho) やっぱり、作ってて楽しかったっていうのが一番あって。わりとこう、さらに自由に作れたかなっていう感じですね。「なんでもあり」感がより出ました。

ヒロミ・ヒロヒロ(B・Cho) あんまり考えすぎず、いい感じで力を抜いてできた作品だなと思って。聴いてても聴きやすい感じもあるし、あまり気負いせずにできたというか。それが出てるのかなあって。

――前作『A N D』では千住宗臣、刄田綴色、BOBO、山口美代子(DETROITSEVEN)、脇山広介(tobaccojuice)っていうスーパードラマー5人が参加したアルバムで。スケジュールを押さえるのだけでも大変だったと思うし――。

中嶋 確かに(笑)。

――そういうカオスの中でどう根を張っていくか、そのカオスな状況そのものを楽しんでいくというか、という作品だったような気がするんですが。

中嶋 そうですね。前回は2曲ずつぐらい違うドラマーさんでやらしてもらったんで、そのドラマーさんに任せてる部分とかも多くて。できたものがすべて、みたいな部分が毎回あったんですけど。今回はサポートの吉田(雄介)さんと一緒に曲を作っていけたんで――ライブもめっちゃしてましたし、ある程度「まあ大丈夫やろ」みたいなところからスタートしてたんで。今回は1曲1曲しっかり――それも頑張らんでできたな、っていう感じがしてます。

――『A N D』の時のインタビューを拝見すると、「GarageBand(DTMアプリ)で曲を作ってる」っていう話があって。「tricotの曲をどうやってガレバンで作るんだろう?」って不思議だったんですけど。

中嶋 うちらも「どうやってやるんやろ?」って思いながらやってたやんな?(笑)。結構、作曲中のテンションも重要なんで。

キダ うん。広がりにくかったな。

中嶋 セッションの時も、一個ギターのフレーズから作るのは作るんですけど。でも、パソコン上にそれを入れてずっと聴いてるっていうのでは……あんまり「次じゃあベース入れてみて」とか、重ねていくっていうのがすごく難しかったですね。一個の空間でみんなでバーンって鳴らすから「こうしたい」っていうのがわかる、みたいなところがあるので。逆に遅いっていう。しかも、ずっと聴いてると、正解がわからんくなってくるっていう(笑)。

――tricotの変拍子って、たとえば5拍子とか7拍子とか、あるいは「8+5」「8+7」とか、一定のリズムでノリを作っていく、っていうものとは違うじゃないですか。僕、もともとプログレ好きで、変拍子の曲を、拍を数えながらノるのも好きなんですけど――。

中嶋 ははははは。変態や!(笑)。

――(笑)。でも、tricotの曲は途中でがんがん拍が変わるから、「DTM的な手法でデモを作るって無理あるよなあ」「っていうかガレバン側も困るよなあ」って思ってたんですけどね。

中嶋 ガレバンが結構「もう無理や」って感じの顔してましたね(笑)。「ごめん!」って思って。

自分らが気づいてへんっていう。人に言われて数えて「ほんまや!」って(ヒロミ)

――同じリズムをループするほうがやりやすい――っていうか、途中で拍を変えるのって、明らかに演奏してる本人たちが一番大変だと思うんですけど、tricotはそれをやるんですよね。

キダ 作ってる時が一番大変でした。体に馴染んでない状態で……サビでいきなりリズムが変わったりしたんですけど、スタジオで誰もサビに入れなかったりとか(笑)。頭では理解できてるんですけど、入れないっていう(笑)。

中嶋 今までは、なんだかんだ「誰かは行ける」みたいな感じで、それについていくみたいな感じで、なんとか行けたんですけど。“18,19”は――サビでジャンって鳴った瞬間に止まる、みたいな。「え、ちょっと待ってちょっと待って!」って(笑)。

ヒロミ 人間的に厳しいレベルやった(笑)。でも、ようやく馴染んで。

中嶋 そうやな。じゃあうちら、もう今は人間じゃないんかな?

ヒロミ うん、超えてると思う(笑)。

――すごいですね、人間もGarageBandも超えたところにtricotがいるっていう(笑)。でも、やっぱり常にそういうところに行こうとしますよね。

キダ 原始的なんやろな。

中嶋 そうやと思う。楽しかったですけどね、行けた時は。

――頭で組み立てたリズムなのかもしれないけど、最終的にそれが体に馴染んだ時に、規則的なリズムでは割り切れないプリミティブなものが生まれていく、っていう独特の構造がありますよね。

中嶋 なんか、ゴリラみたいやな(笑)。パフォーマンスとかの面で「野性的」とかいうことは、結構昔から言われてたんですけど、リズム遊びの面でも――。

ヒロミ どんどん野生に帰ってる(笑)。

中嶋 「ゼロから作ろうぜ」みたいな感じがありますね。それ、今初めて思ったけど、むちゃくちゃ面白いなあ。

――“DeDeDe”も、最初クールに始まったと思ったら「え、加速する?」みたいな。

中嶋 わりとすぐ加速するもんな、それまでのがなかったかのように(笑)。

――そういう展開の楽しさも、今回は特にありますよね。

中嶋 そうですね。前までやったら、「こういう流れやったら、これは無しなんじゃないか」とかいうのを――別に言ったりはしいひんけど、自分の中で完成する前に「どうなんかなあ?」みたいなのを考えたりしてたんですけど。今回は「行ってまえ!」みたいな気持ちが強くて。全部やってみた結果、あんまり「やっぱりこれは無しやったなあ」っていうことなく、最後までやりきった感じがしました。

――“pool side”から“POOL”の流れ(1stアルバム『T H E』)はわかるんですけど、“pork side”から“ポークジンジャー”って何ですか。

キダ 意味わからんもんな(笑)。

中嶋 でも、ちゃんとあんねんな、部位で。脇腹の肉がそんなんじゃなかったっけ? 豚の。

――調べたんだ(笑)。

中嶋 なんか「変な意味やったらヤバいな」と思って、一応調べたら、部位の名前やったから。そこで作った生姜焼き、みたいな(笑)。

――“18,19”も、タイトルと歌詞だけ見ると「思春期の曲?」と思うんですけど、実は18拍子・19拍子の曲になってますからね。

中嶋 え、そうなん?

キダ え?……わかんない(笑)。でも、そう言われたらそうかも。別にそんなつもりでやったわけじゃないけど――。

中嶋 なんでそうなったんやっけ?

ヒロミ 歌ってるしやろ、歌詞で。

キダ 9・9・10・9……ほんまや!

中嶋 マジで? やばっ!(笑)。

ヒロミ 自分らが気づいてへんっていう。人に言われて数えて「ほんまや!」って(笑)。

中嶋 “MUNASAWAGI”っていう曲の最初に、中国語と英語の部分があるんですけど。最初デモを作った時に――“18,19”よりも先に歌を入れてたので、そこの部分で♪eighteen, nineteen~って歌ってたんですよ。でもその前に、それを一旦置いといて“18,19”を作ってて、《18 19》っていう歌詞を使っちゃったがゆえに、結局その部分を“MUNASAWAGI”の歌詞で使えへんくなって。で、タイトルがそのまま“18,19”になったんですけど、たまたま。

キダ 怖っ!

中嶋 スピリチュアルな何かが……。

――スピリチュアルな何かでこの拍にはならんでしょう、普通(笑)。

中嶋 そうですよね(笑)。

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