特集
2017年5月18日
ゴゴゴゴゴ……
その土地にしかないかわった食文化というものはどんなところにでもあるとは思う。
しかし常に県外の人々の注目を集め「かわってる」と驚かれ続けている、なにかが他の地域とは違う、という状態をキープし続けているのは名古屋しかない。 かわっている食文化に県外の人々が慣れることがないのだ。すごいことだと思う。私は常々憧れている。 「名古屋メシ」とも言われるそのかわった食文化のなかで、近頃さらにひねりを加えた食べ物があるときいて3軒の店をめぐってきた。 モツ煮込の味噌はデミグラスソースっぽくなり、ういろうは新感覚に、そして小倉トーストは鉄板に乗っていた。 やはり名古屋はまったく格が違う。 > 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes ういろうに「のびしろ」はあるのかそもそもこういう記事を書こうと思う前から気になっていた1軒目の「緋鞠」というお店。
名古屋のういろうの老舗として有名な「大須ういろ」の新ブランド1号店だそうで「新感覚の『ういろ』」が食べられるのだそうだ(大須ういろではういろうのことを「ういろ」という)。 新感覚の、ういろう。 老舗が既存のお菓子をおしゃれにリニューアルするのは珍しいことではないが、ういろうがそれをやるのか。ごめん、まさかのびしろがあるとは思っていなかったんだ。 サカエチカという地下街にある。いきなりすごくおしゃれ
目当ての新感覚のういろうは「ゆららういろ」という名前。「スプーンでお召し上がり頂く新感覚の『ういろ』です」とメニューにあった。
出た! と思った。「まずは塩でおめしあがりください」というやり口のその先にある「スプーンで食べる○○」だ。新感覚をやる上での作法をきっちりわきまえている。 ういろうだが、スプーンで食べる
店員さんに一番人気を聞いたところ「玉露こしあん」がよく出ますということで頼んだ
料理のおしゃれさは皿のでかさに比例する。←こんなおちょくった見方はいくらでもできるとは思う、しかし素直にこれは垢抜けているではないか。
食べてみると、うわわわわ、やわらかい。いやもう、聞いていた以上にやわらかい。ういろうってぷにぷにしているわりには噛み切るのには結構な圧力がいるだろう。それがまるで不要である。味やちょっとざらっとする食感はういろうそのものなので、ういろうが正しく新しくなったのだと納得せざるを得ない。 この生っぽさで味は完全にういろう…!
そもそも私はういろうが好きなのだ。だからあ〜、美味しいやつ柔らかくなった〜。という昇天があった。
同時に、これまでういろうを柔らかくして欲しいと思ったことの一切のなさを思い出す。履物を温めてもらいたいと思ったことなど一度もないのだ。しかし履物は温めてられてしまう。それと同じように、ういろうはやわらかくなった。結果……あたしうれしい…。 新感覚になって登場した食べ物を試すというのは、思いもよらぬ気づかいにふれるということそのものなのかもしれない。 合法的に「蜜」を食べるこちらの店、この「ゆららういろ」だけが推しというわけではないようだ。寒天の「薄氷寒(うすらいかん)」というのも人気だそうで、すみません! どうしても気になったので頼んだ。
こちらが薄氷寒の「黒蜜」
きけば特徴としては「とにかくやわらかい寒天」であり「一般的な寒天同様、寒天自体には味がない」ということなのである。
ということはつまり、味としてのメインは完全に「蜜」なのだ。メニューも黒蜜、玉露、和三盆と季節のフルーツのもの(=ジャムという認識でいいだろう)から選ぶ。蜜を選ぶ作業である。やっていることとしては蜂だ。 伝わるだろうか、この尋常ならざるやわらかさが
で、これがすごかった。固形物としてギリギリなのだ。あとほんのちょっと行くと、玄関1ミリ出たところで液体だ。固体と液体のきわきわのボーダーでスリリングに固体にふみとどまっている。
ほぼ水を食べる感覚である。おもしろい。おもしろいが黒蜜は全うにまじめに美味しいから困る。ふざけているのに目はマジ、一番こわいから逆らわないほうがいいやつだ。 さらに飲み物には「麩焼き」が付いてくるという。しるこシェーキも気になりすぎる
おしゃれなのに珍しいしおもしろい。名古屋そのものみたいな店だった。
食べ歩き記事としては(特に「薄氷寒」は)お腹にたまらなそうなメニューでほっとしつつ、続いてはかなりボリュームがありそうな鉄板小倉トーストを食べに行きます。 小倉トーストを、なんで鉄板に乗せちゃったのか。
|
|
▲デイリーポータルZトップへ |