(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年5月13/14日付)
英ドーバーに出現した、覆面グラフィティアーティストのバンクシーが英国の欧州連合離脱(ブレグジット)を初めてテーマにして描いた壁画(2017年5月8日撮影)。(c)AFP/Daniel LEAL-OLIVAS〔AFPBB News〕
欧州統合の支持者は好んで、あたかも欧州と同義語かのように欧州連合(EU)やユーロ圏に言及する。ユーロ圏のソブリン債・銀行危機のピーク時には、ドイツのアンゲラ・メルケル首相もこれを認め、「ユーロが破綻したら、欧州が破綻する」と述べた。
同じように、フランスのエマニュエル・マクロン新大統領は今年1月にベルリンのフンボルト大学で欧州統合に関する思慮深い講演を行ったとき、ユーロ圏とEU、欧州をひとくくりにして語った。
欧州の新たな夜明けへの希望を包み込む熱狂的なマクロン旋風がEUの多くの首都を席巻した週が終わった今、こうした点を念頭に置いておくべきだろう。だが、同盟の緊密化という公式目標に近づいていく限りにおいて、関係国は今後何年も、地理的な欧州とは異なる政治的、経済的、法的空間を占めることになる。
米国のジョージ・H・W・ブッシュ元大統領が1989年に語った「一体となった自由な欧州」でさえ、手に届かないように思える。その理由の多くは、過去3年間に欧州大陸を襲った地政学的なショックに根差している。
欧州は、文化的ではなく政治的な意味で、1200年前のカロリング帝国を中核とする地域に縮小しようとしている。それがなぜか理解するためには、トルコやバルカン諸国、英国などでの最近の出来事について考えるといい。