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洋風建築広めたヴォーリズ 90年ぶり2著書復刊

復刊された2冊について説明する芹野さん=近江八幡市慈恩寺町元のヴォーリズ記念館で

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 大正から昭和初期にかけて国内に洋風建築を広めた米国人建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(一八八〇〜一九六四年)が、建築への思いをつづった著書「吾家(わがや)の設計」「吾家の設備」の二冊が四月、約九十年ぶりに復刊した。ヴォーリズが創業した近江兄弟社グループ(近江八幡市)が手がけた。関係者は「ぜひ手に取り、多くの人にヴォーリズが目指したものを知ってほしい」と話している。

◆近江兄弟社グループ手がける

 出版が大正後期の二冊は、現在は入手困難で「幻の図書」とされてきた。ヴォーリズの功績を紹介するヴォーリズ記念館(同市)を訪れる建築関係の研究者やヴォーリズファンから「どこで読めますか」「ここなら買えますか」と問い合わせが相次いでいた。

 昨秋、一粒社ヴォーリズ建築事務所(大阪市)の監修の下、復刊作業が本格化。訳注や解説を加えるなどして生まれ変わらせた。同事務所の芹野与幸(ともゆき)さん(65)は「ヴォーリズは家庭づくりのために家を造っていたことが読み取れる」と話す。

 原著が出版された大正期、一般市民も一軒の家を構えるようになり家長に従属する存在だった妻は、家事を手がけ、家庭をコントロールするようになった。そんな時代の転換期、ヴォーリズは「家とは、家族が集まり、楽しく健康な生活を送る場所」という考えで設計に着手したという。

復刊された「吾家の設計」「吾家の設備」

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 居室と寝室を分け、家族のだんらんの場をつくるため、リビングに暖炉を置いた。大きな窓で日光を取り入れ、太陽光線による空気清浄を試みた。使いやすさや暮らしやすさを追求したヴォーリズ建築は、百年近くがたった現代の建築にも影響を与えている。

 ヴォーリズ記念館の藪秀実館長(52)は「『豊かな生活を実現するための建築』というヴォーリズの思想は、いつの世でも普遍のものであることを味わってもらい、後世に広く伝えたい」と復刊に思いを寄せる。

 同事務所は、今回の復刊を機に、初めてとなるヴォーリズの設計図面集の発刊も計画している。A2大の設計図数千枚から、四百枚程度を選び、一冊にまとめる予定だ。

 (高田みのり)

 

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