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223.わすれんぼう
5/14くじ引き五巻発売します、よろしくお願いいたします。

大空を飛ぶドラゴンのオリビア。
おれとイオとタニアは背中に乗っていて、ひかりだけ首にぶら下がったり、かと思えばかぎ爪の手に乗ったりして空を満喫している。
そうしているひかりとオリビアの姿は、元の時代の「ひかりとおーちゃん」とはまるっきり正反対だが、不思議となじんで見える。
「オリビア、メルクーリは南の方にいるのか?」
太陽の位置からざっと進行方向を割り出して、オリビアにきく。
オリビアは竜人の時と違う、厳めしい口調で答えた。
「メルクーリと言う名はしらぬが、人の子が話す容貌とよく似ている種類なら知っている」
「そうか。写真でも見せれば話は早いんだが」
(貴様はアホか、アレを使えばいいだろう)
「あれ? ……そうか、それをやればいいのか。すっかり忘れてた。タニア、ちょっとこっちに来てくれ」
「なんですか?」
「ちょっとの間動かないでいてくれ」
「はい」
タニアはまるで「気を付け!」のポーズをして、拳を握り締めて、目を閉じておれを見あげた。
必要はないけどキスをした。
「カケルさん?」
「そんなに緊張するな、取って食おうって訳じゃない。ちょっと体を使わせてもらうだけだ」
「は、はい! どうぞ使って下さい!」
タニアはまたまた直立不動のポーズになる。
姿勢はまるっきり一緒だが、今度は顔が赤くなってなんか期待してる表情をする。
(その言い方もよくないな)
エレノアは呆れ半分、楽しい半分でいった。
指摘するのも面倒だから、そのまま話を進めた。
エレノアの柄に軽く手を触れて、オーラをだしてタニアを包む。
迷彩オーラ、エレノアの力を使って外見を別のものにかえる力だ。
これを見破れるのはエレノア以上の力をもったものだけ、つまり竜王の目すら誤魔化せると言うこと。
誤魔化すわけじゃないが、おれはタニアの見た目をヘレネーそっくりにかえた。
長い金髪に尖った耳、嫋やかなスタイルに上品な物腰。
ヘレネー・テレシア・メルクーリそっくりにした。
オリビアはまっすぐ飛んだまま首だけこっちを向いた。
深い知性を湛えたドラゴンの目がまっすぐタニアをみた。
「どうだ?」
「まちがいない、こういう種族だった」
「そうか。ありがとうタニア」
オーラを引っ込めて、タニアを本来の姿に戻す。
オリビアに確認してもらった、今から向かうのは間違いなくヘレネーやイリスと同じ種族の人間がいる場所だ。
オリビアの背中に乗ったまま空を飛び続ける。
「カケルさん!」
「どうしたイオ」
「あれ見て、なにかおかしいよ」
イオが指さした方角、オリビアの進行方向を見た。
地上はいつの間にか森が広がっていて、その一角が真っ赤に燃え上がっていた。
炎と共に黒煙が立ちこめている。
「どういう事だ?」
「人の子よ、あれが連中の里のあるあたりだ」
「なに?」
「ねえカケルさん、あれって建物を燃やす炎なんじゃないの?」
「ああ」
(間違いないな)
おれは頷き、エレノアは心の中で同意した。
あの炎の上がり方は知っている、戦闘そのものじゃない、終わった後の一方的な略奪の時の上がり方だ。
「おれはここで降りる。ひかり」
「うん!」
ひかりは戻ってきて、魔剣の姿に戻った。
「オリビアは二人を上空まで運んでくれ」
「わかった」
「そこからどうするかはイオに任せる。出来るな?」
「――っ! うん!」
魔法の杖を強く握り締めて、大きく頷くイオ。
おれはオリビアの背中から跳び降りた。
慣性が働いてるから、しばらくはオリビアと同じ速度で前進しながら落下していく。
森の中に着地したと同時に、地面を蹴って前進した。
着地したところは爆発が起きて、その爆風を置き去りにして猛然と突進する。
空のオリビアよりも速く、一直線に向かって行った。
やがて、森が開けて人里が見えた。
いかにも自然と共存している種族にあるような、緑豊かで静かな里だ。
それは猛烈な勢いで過去形になりつつあった。
二種類の人間がいた。
片方はヘレネーやイリスとよく似ている、金髪に尖った耳のエルフの様な見た目の種族たち。
もう片方は武器と鎧で武装した、兵隊の様な男達。
男達は里の住民を襲っていた。
住民を襲って拘束し、財宝とかを漁っては建物に火をつけていく。
既に略奪は進んでいる、中年の男が殺され、その妻や子供達が身を寄せ合って怯えている。
「きゃあああ! あなた!!!」
「パパ! いやああああ」
「なんかうるせえな、こいつもやっちまうか?」
「やめとけ、殺しすぎるとノルマがきっついぞ」
「それもそうだな。しっかし殺さずにさらってこいってどういう事なんだ?」
「いいじゃねえか、人間のノルマさえ果たせば財宝とかはこっちがそっくりそのままもらっていいって命令だしよ」
「つっても、この里じゃ財宝なんてありそうにねえがな」
「やっぱり女何人かネコババするか? 喰っちゃいけねえとはいわれてねえよな」
兵隊どもは言いたい放題だった。
夫を殺され、それでも妻は健気に残った子供達をかばおうとした。
それをあざ笑うかのように、兵の一人が近づいていく。
「そんじゃ、まずは母親からいただこうか」
「やめて、やめて下さい」
「安心しろ、悪いようには――」
男がその言葉を最後まで言うことはなかった。
踏み込んだおれがそいつを縦に真っ二つに斬ったからだ。
真っ二つにされた男、片方は驚き、片方は怯え。
左右でそれぞれ違う奇妙な表情をして、パカッと割れるように崩れ落ちていった。
「なんだ!?」
「何者だお前は!」
連中の誰何を無視して、手当たり次第に切っていく。
ぱっと見盗賊の類じゃない、装備品からしてどこかの正規兵だ。
しかし、全員が雑兵の身なりだ。
話を聞くまでもなく、まずは全員を切った。
「あ、ああ……」
「大丈夫か?」
「……」
兵を全部切った後子供をかばう母親に聞いた。
母親はいきなりの事で呆けててまともに返事ができない。
パッと見てケガはしてないようだから次に進んだ。
里の中を進む、略奪はそこら中に行われていた。
死人も相当出ている、大半は何かしら武器を持った男で、女達は怯えたり隠れたりでまだ殺されていない。
略奪する連中を次々と切っていった。
なにかを聞いてくるが、全部無視して切った。
頭上に大きな影、オリビアが通り過ぎていった。しばらくして里の反対側から魔力が立ちこめて、雷と氷の魔法が次々と放たれた。
「そっちはイオたちに任せればいいか」
(むう……こいつらは……もしや)
「知ってるのかエレノア」
(武具の様式に見覚えがある、帝国の正規兵だな)
「正規兵? なんでそいつらが里を襲ってる」
(責任者を捕まえて吐かせれば分かる……がまあ、何となく察しはつく)
「……命令したのはお前か」
(……)
エレノアがため息交じりにそれを認めた。
多分この時代の、人間になったエレノアの命令ってことか。
ロドトスが死んだいま、帝国は実質エレノアもののようなもんだからな。
「後で詳しい話を聞かせてもらうぞ」
(うむ)
「はあああ!」
真横から気合と共に空気を引き裂く音が聞こえてきた。
長剣が振り下ろされた音だ。
振り向く事なくエレノアで受け止め、そのまま薙いだ。
手応えあり、長剣――そして鎧もろとも体を両断した感触だ。
(やってしまったな)
「うん? あっ」
振り向く、エレノアの言った意味が分かった。
襲ってきて、腰から真っ二つにした男は雑兵よりもちゃんとした格好をした、指揮官クラスの男だった。
そいつは胴体から真っ二つにされ、地面に転がっている。
(これでは話を聞けんな)
「お前が喋ればいい、見当はついてるんだろ?」
(まあな)
「ならいい」
おれは更にギアをあげて兵を切っていった。
既に略奪がはじめられている、ちょっとでも手を緩めると犠牲が更に増えるだけ。
だから切っていった。
そして、里の外れにに一組の男女がまさに襲われようとしていた。
家の中から男女を引きずり出して、男を殺そうとしている。
地を蹴って更に加速して、手を下そうとする兵を袈裟懸けで両断。
間に合った。さすがに目の前でやられると寝覚めが悪いからな。
さて、残りの連中を――。
「十の男……なぜ?」
「うん?」
手が止まった、あきらかにおれに向けられたセリフだった。
振り向く、尻餅をついてる男がおれを見あげていた。
不思議なことに、それは普通の人間だった。
耳が尖っていない、この里の人間とは思えない男だった。
(ああ、こやつか)
「しってるのかエレノア」
(……はあ)
なぜかエレノアはものすごくため息をついた。どういう事だ。
(おとーさん。あの人だよ、タニアお姉ちゃんの前に占った人)
「タニアの前?」
(老婆の占い師、吉が七で凶が三の男だ)
「……そんなのいたか?」
エレノアとひかりに言われてあの占い老婆の事を思い出したが、目の前の男は結局、思い出せないままだった。
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【同時連載作品】
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■レベル1だけどユニークスキルで最強ですリンク
ブラック企業で過労死した佐藤亮太は異世界に転移して、レベルが1に固定される不遇を背負わされてしまう。
レベルは上がらない一方で、モンスターからその世界に存在しないはずのチートアイテムをドロップするという、彼だけのユニークスキルをもっていた。
それを知った彼は手始めに能力アップアイテムでステータスMAXになって、更に自分にしか使えない武器やアイテムの数々を揃えていった結果、レベル1のまま能力も装備も最強になって、好きに生きられる第二の人生をはじめられることになった。
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