中国の政界と関係が深いとされる中国人政商が、共産党最高指導部メンバーらの「腐敗疑惑」を米国から発信し続け、波紋を広げている。自らも汚職の疑惑を持たれ海外に逃亡したことから真偽を疑う声は強く、中国政府は黙殺。ただ、国内では政商への報復ともとれる動きも続き、人事が大きく動く秋の共産党大会を前に影響が出る可能性もある。渦中の政商に直接聞いた。
ことの発端は、4月19日に米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が米国などで生放送したインタビュー番組だった。
疑惑を暴露したのは、北京の投資会社の実質経営者で、現在は米ニューヨークに住む郭文貴氏(47)。セントラルパークを見晴らす築90年の由緒あるホテルの上層階の1フロアを自宅にする大富豪だ。
郭氏は番組で、中国の国家安全省や公安省の依頼を受け、腐敗官僚の海外の調査を長年手がけてきた「協力者」だったと明かした。その上で、中国最高指導部である政治局常務委員の一人、王岐山(ワンチーシャン)・中央規律検査委書記(68)の名前を出した。
「あとで(通話の)録音も示しますが、王氏と妻の家族について調べろと命令を受けていました」
王氏は、習近平(シーチンピン)国家主席の右腕として「反腐敗」を仕切ってきた責任者。その親族が中国・海南島を拠点とする海南航空を利用し、腐敗しているという衝撃の告発だった。王氏はかつて海南省トップの書記を務めた経歴がある。
しかも、調査を指示したと名前を挙げたのは、警察を所管する公安省の現役次官。調査に習氏の意向が働いた可能性までにおわせた。
王氏は本来、党大会で退く年齢だが、習氏との近さから、慣例を破って最高指導部に残るかが注目されている。疑惑とはいえ、党内に反発が広がれば、次の指導部人事にも影響を与えかねない。
ただ、郭氏自身が汚職の疑惑を…
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朝日新聞国際報道部