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本能は「逆三角形」に反応しやすい?見つけやすいパッケージの心理学

2017.05.17
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こんにちは。BAKEのサイエンス担当、大嶋(Facebook)です。

 

私は、科学でお菓子をおいしくするBAKEの研究開発チーム「OPENLAB」の研究員をしています。普段は、BAKEの新商品開発や既存商品の改善における科学的な実験をするほか、「お菓子と科学」をテーマにしたウェブメディア”OPENLAB Review”を運営しています。

 

OPENLAB Reviewは、比較的科学やテクノロジーが好きな読者向けですが、これからは、その中でも特に人気だった記事を、THE BAKE MAGAZINEでも時々ピックアップしてご紹介させていただければと思います!

 

今回のネタは「パッケージの心理学」。
 

パッケージデザインは商品との出会いを左右します。

 

たとえ商品は同じでも、デザインに引きがなければ、そのまま右から左に受け流されてしまいます。数ある商品の中からどうにかお客様の瞳の住人になれるよう、商品開発に携わる者たちは、色や模様、ロゴなどにあらゆる創意工夫を凝らしています。デザインの流行は刻一刻と変化するので、トレンドを意識することも欠かせません。

 

しかし、時代を問わず、人には本能的に反応しやすい「形」があるようなのです!この記事では、形と心理にまつわる実験をご紹介いたします。

ナイフの形?怒った顔?「逆三角形」は警鐘を鳴らす

物の形は、さまざまな感覚を引き起こします。

 

たとえば、下記の2つの図形に名前を付けることを考えてみてください。この2つに「ブーバ」と「キキ」、どちらかの名前を付けるとしたら、どちらの図形が「ブーバ」で、どちらが「キキ」だと思いますか?

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おそらく曲線の図形がブーバで、ギザギザな図形がキキだと思ったのではないでしょうか。
これは「ブーバ・キキ効果」という現象で、国籍や性別に関わらず98%近い人がそのように思うようです。このように人は、物の形から特有の感覚を無意識的に想起します。

 

こうした無意識的な感覚を想起する形の一つに”逆三角形”があります。

 

人は、上向きの三角形よりも下向きの三角形を見つけやすいことが知られています。

 

たとえば、下図のように、上向きの三角形の中から下向きの三角形を見つけるのと、下向きの三角形の中から上向きの三角形を見つける実験では、下向きを見つける方がはるかに見つけやすいことがわかっています。

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これはdownward-pointing triangle superiority(DPTS)効果と呼ばれているもので、逆三角形が、鋭く尖ったナイフや人の怒った顔など、危険なものと結びつくことが理由だと考えられています。人の注意は、危険なものに敏感な性質を持っています。嬉しいことは忘れてしまっても、悲しいことはずっと覚えているのも、そうした性質のためです。

 

見つけやすいワインラベル

それでは実際に、DPTS効果を、ワインラベルを使って体験してみましょう。下図の左のパターンAと、右のパターンBにはそれぞれ、1つだけ三角形の向きがことなるワインラベルが紛れ込んでいます。AとB、どちらの方が、ワインラベルの違いが目に付きやすいでしょうか?

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(左)パターンA (右)パターンB

 

おそらく、左のパターンAのほうが目に付きやすかったのではないでしょうか?

 

これは、台湾の心理学研究者のXiaoang Wanさんらが実際に行った実験です。今と同じように、パターンAとBで、1つだけ向きの異なる三角形を探してもらう実験を行ったところ、パターンBよりもパターンAで下向きの三角形を見つけるまでにかかった時間の方が早かったのです。

 

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さらに、ワインの本数を変えて同じように実験したところ、ワインの本数が8本以上に増えるにつれてDPTS効果がでやすくなることがわかりました。

 

つまり、下向きの三角形は、ワインのラベルになっても注意を集めやすいことがわかったのです。Wanさんらはこの実験結果を受けて、このラベルのついたワインが店舗に並んだ想定で、ショッピングシミュレーションをしてもらう実験も進めているようです。

 

尖ったよりも丸みのあるものが好まれる?

こうした研究が進むことで、人が思わず注目しやすいパッケージやロゴの特徴が明らかになってくるかもしれません。ただし、もちろん目につきやすいだけでは不十分です。それを示す実験は、イギリスの心理学研究者・Westermanらによって行われました(*2)。

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この実験では、水やウォッカのラベルに、尖った三角形と丸みを帯びた三角形を左右上下に並べたデザインを使って、その印象を調べました。その結果、角のある形よりも丸い形のラベルよりも丸い形のラベルのものの方が好まれやすいことがわかったのです。尖った下向きの三角形は目につきやすいかもしれませんが、ブランドへの印象形成の面では、必ずしも吉と出るとは限らないようです。

 

それでも、こうした心理学実験がパッケージデザインに役立つことは間違いないでしょう。これまで無意識的に行われてきた、特定の形に抱く曖昧な感覚を洞察することが、今後のパッケージには求められていくのかもしれません。

 

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https://bake-openlab.com/

 

*参考文献
(1) Visual Search for Triangles in Wine Labels
(2) The design of consumer packaging: Effects of manipulations of shape, orientation, and alignment of graphical forms on consumers’ assessments

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