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 かつてシルクロードは、絹、陶磁器から学術、宗教まで様々なものを伝え、東西文化の懸け橋となった。

 その歴史になぞらえ、「一帯一路」は陸と海の交易路を意味するという。そんな名前の経済圏構想を中国が打ち出し、130カ国以上の代表を招いて北京で国際会議を開いた。

 中国から欧州に至る輸送インフラの整備を軸とし、沿線国での投資を活発化させる狙いだ。習近平(シーチンピン)国家主席は巨額の援助や融資枠を表明した。

 欧米の世論が反グローバル化に傾く中、中国が経済交流の旗振り役として期待されている面がある。巨大な経済力を背景に重責を担うのは必然だろう。

 ただ、構想はもっぱら中国資本の進出を促すもので、「新植民地主義」との批判もある。ともすれば自国中心主義に走る従来の姿勢が変わらないのなら、協調的な国際開発の推進役としての資格が疑われる。

 中国は外交で不都合な事態が起きると、国際経済のルール違反に問われかねない手段で相手国に制裁を加えてきた。

 2010年に人権活動家・劉暁波(リウシアオポー)氏のノーベル平和賞授賞が決まると、ノルウェー産サーモンの通関規制で中国の輸入を激減させた。南シナ海問題で対立するフィリピンの果物も、検疫強化と称して輸入を止めた。

 最近は韓国との間でミサイル防衛システムの配備をめぐり対立し、韓国への中国人の団体旅行を制限している。

 経済圏づくりをめざす前に、こうした粗雑な振る舞いとは決別しなくてはならない。

 国内総生産が11兆ドル超の中国に対し、関係国の多くはその数十分の1か、100分の1に満たない。中国は「内政干渉はしない」とするが、投資1件だけでも小国への影響は大きい。その自覚と自制が求められる。

 中国自身が十分に対外開放されているかどうかも問われる。中国に投資する外国企業への制限の多さは、欧州などから改善要求が出ている。また、国内で情報の流れを管理し、世界中の市民が使うソーシャルメディアを遮断しているのは矛盾だ。

 さらには中国の軍拡との関連の問題もある。南アジアでの港湾整備は、海軍力増強と無関係なのか。疑いを拭うには相当の対外的な説明と透明性の担保が欠かせない。

 習氏は会議で「開放型の世界経済を守る」「公正透明な国際経済ルールを構築する」と言明した。千里の道も一歩から。一帯一路構想は、中国の自己点検から始めてもらいたい。

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