ウメハラ

【一流の他薦No.03】レッドブル・アスリート ボンちゃんの目に映るトッププレイヤーの姿

自分以外のプレイヤーについて語ってもらうインタビュー企画【一流の他薦】。第3回は『ストリートファイターV』の舞台で活躍するレッドブル・アスリート、ボンちゃんから見た、日本のトッププレイヤーの素顔に迫る。

ボンちゃん
ボンちゃん© Red Bull Japan

2017年5月にフランス・パリで開催される『ストリートファイターV』(以下、『ストV』)の招待制大会Red Bull Kumite 2017。本稿は出場する日本人選手5名の人となりを知るべく、各選手から見たお互いの印象や、人柄について尋ねてゆく。今回は、その出場選手のひとりであるボンちゃんの視点で、ウメハラ、ときど、ガチくん、ネモの4選手について語ってもらった。

ボンちゃんはRed Bull Kumiteの初代王者。堅実な立ち回りを得意とし『ストV』での使用キャラはナッシュ。2017年はBonchan's Road Tripとして 、全国各地でオフ会を主催するなど、コミュニティの活性化にも力を入れている。

ウメハラ
ウメハラ© Red Bull Japan

変化を恐れず、常に変わり続ける男 ~ウメハラ~

――ボンちゃんとウメハラさんは、格闘ゲーマーとしてではなく、雀荘の店員同士として出会っています。そのときの印象をお聞かせください。

ボンちゃん 最初はただの、雀荘の従業員の先輩です。ウメさんは接客はあまり得意じゃなくて、麻雀にのめり込んでいるような印象でした。とにかく麻雀が好きなんですよ。

――格闘ゲーマーとしてのウメハラさんを知ったのはいつごろですか?

ボンちゃん ウメハラっていう名前だけは、僕は先に知っていました。僕がプレイしていたゲームの大会で、参加者一覧のなかにウメハラっていう名前があったんです。世界チャンピオンっていうのは知らなかったですけど、そのウメハラかな、っていう認識はありました。

――世界チャンピオンだと知ったときはどうでしたか?

ボンちゃん 「何? 世界チャンピオンって」という感想です。最初は冗談だろうと思っていました。当時は大会の知名度が高くなかったし、海外で大会があるというのが、よくわからなかった。僕はゲーセンでしかゲームをプレイしていなかったので、信じられなくて。

――確かに、当時の感覚だとそうなりますよね。ボンちゃんから見て、いまのウメハラさんはどういう方ですか?

ボンちゃん この業界ではすごい人……、くらいの感じです(笑)。あと、いろいろとお世話になった人ですね。自分が迷ったり悩んだりしたときに相談したら、答えを持ってくれている人。頼れる人だと思います。

――いまのウメハラさんの、ここがすごい、自分にはないと思うところはありますか。

ボンちゃん ウメさんは言っていることがコロコロ変わるんです(笑)。これは僕とは明確に違う部分。要するに、考えかたが次の日には変わっていることがある。

――それは、考えかたが柔軟ということですか?

ボンちゃん とても柔軟です。つい最近の話だと、ウメさんがキャラクターをリュウからガイルに変えたことですね。現行バージョン(シーズン2)って、リュウがどうしようもないくらい弱くて、多分リュウを使っても、勝てないとは思うんですよ。でも、「リュウ一本でいく」って言った翌週に、ガイルにキャラ変していたんです。

――なんと(笑)

ボンちゃん しかもそのとき、「仕事となったらガイルを使わなきゃいけない。ゲームっていうのは俺のなかではそもそも遊びで、そう向き合ってきたから、俺はリュウでやっていきたい」みたいなことも言っていたんです。それを聞いて「ナイス! ウメさん、いいこと言った」と思っていたら、翌週ガイルに。さすがに驚いて (笑)。

――そんなに熱いことを言っていたにも関わらず……。驚きですね(笑)。

ボンちゃん でも、これは考え抜いているからこそ 、変わったんですよ。勝ち負けだけなら、今後の調整でリュウも勝てるようになるだろうし、使い続けることはできると思うんです。多分、本人がいろいろ考えて、ガイルへ変更するに至ったんですよ。

――ポジティブな捉えかたをすれば、変化を恐れない?

ボンちゃん そうです。常に変化を求め続ける人なので。たとえば、ウメさんがリュウ、僕がサガットを使って同じゲームを5年間プレイしていると、リュウ対サガットの組み合わせのセオリーは、5年間かけて培われるワケです。でも大会で対戦すると、それだけの時間をかけて培ってきたセオリーを、がらっと変えていたりする。

――同じキャラのなかでも、それだけ大きな変化をできる方なんですね。

ボンちゃん はい。同じことのくり返しが嫌いな人です。考えかたをすぐに変えていけるので、そこは本当にすごいですね。僕がそういう考えかたになりたい、というワケではないんですけども、自分とは正反対過ぎて。僕は、1回口にした言葉は多少の矛盾を抱えていても守り通すぞっていう感情が強くて、そういう意味で正反対な人間に惹かれる部分はあります。

――自分にはないものを持つ人には惹かれますよね。ほかにメンタル面などで、ウメハラさんと自分で違うと思うところはありますか?

ボンちゃん メンタル面だと、ウメさんは極度に緊張しない人ですね。大会で動きを見て、少し硬いなと思うことはあっても、緊張しているように見えたことはないです。

――喜怒哀楽の振れ幅が少なく、つねにメンタルが一定な感じでしょうか。

ボンちゃん そうかもしれないです。つねに自然体でいるのが、ウメさんのイメージ。ただ、何をしていても楽しむ努力はしていますね。やっぱり、楽しいと思えないと何事も苦痛になる。とくに仕事でゲームをプレイしないといけないなら、どこかでおもしろい部分を見つけないといけない。そういうのを探すのは得意な人ですね。

ときど
ときど© Red Bull Japan

膨大な練習量をこなすマシーンから“人間”に生まれ変わった ~ときど~

――ときどさんとの関わりや、印象についてお聞かせください。

ボンちゃん ときどは僕がプロになる前から、ずっとここ(TOPANGA事務所)で一緒に練習をしていました。今回の4選手のなかで、いちばん直にゲームで関わっているのは、おそらく、ときどです。『ストV』だとそこまでじゃないんですけど、『ストリートファイターIV』(以下、『ストIV』)だったら、間違いなくいちばん対戦した人。お互い、切磋琢磨しているようなイメージを僕は持っていますね。

――最初に会ったときの、第1印象はどうでしたか。

ボンちゃん 最初に会ったのは、ときどが大学生のときだったかな? 東大生ってことで、頭がいいんですね、みたいな印象です。ただ、闘劇(※)という大会のDVDで、ときどを観たことがあって、強いプレイヤーだというのは知っていました。

※闘劇……日本で2003年から2012年まで開催されていた大規模な格闘ゲーム大会。2003年の第1回大会『CAPCOM VS. SNK 2』の部門で、ときどが優勝している。

――出会う前から、プレイヤーとしてのときどさんはご存知だったんですね。

ボンちゃん そうです。当時、『ストIV』がゲームセンターで流行っていたんですが、ときどが始めたのはちょっと遅かったんですよ。僕は早めに始めていて、後から強い人が集まるゲーセンにときどが来るようになって、そこからの付き合いですね。

――では最初に出会ったのは、ゲーセン?

ボンちゃん ゲーセンです。基本、そんなにしゃべることはなく、お互い対面にいるような感じでした。ただ、強い人どうしで30本連続で対戦する“ガチ対戦”をときどとやりたくて、全然仲良くなかったころに対戦した記憶があります。後半かなり負けて、「めっちゃキツいな、こいつ」と思いましたね。それも、もう9年前とかじゃないかな。

――長年のライバルといった感じですね。ときどさんのここがすごい、と思う部分はありますか?

ボンちゃん 僕が最初にTOPANGAに出入りするようになったころ、ときどは7タイトルくらいゲームをやっていたんですよ。3、4年くらい前までマルチゲーマーだったので。

――日本一器用な格闘ゲーマーじゃないかなと思うんです。

ボンちゃん そうですね。海外の大会だと、ひとつの大会で7つくらいゲームタイトルを扱うこともあって、同時刻に3タイトルの対戦が開始することもあるわけです。そしてときどは、その3タイトルすべてにエントリーしている。だから、ひとつ終わったらすぐに別のタイトルって形で、大会中、ずっと試合に出ずっぱりだったんです。もう意味がわからない(笑)。

――それで切り替えができるのは驚きです。

ボンちゃん マルチゲーマーとして器用にやるのも、もちろんすごいんですけど、本当にすごい部分が、練習。ふつう練習していて、疲れると休憩しますよね。でも、当時の彼は、「よし、リフレッシュしよう」みたいな感じで、ほかのゲームを起動するんです。だからもう、一生ゲームをプレイしているんじゃないかと思うほどで。

――生粋のゲーマーですね(笑)。ゲームをプレイしないのは寝るときと、食べるときくらい?

ボンちゃん そうですね。多分、当時は食事に関心がなくて、寝ることもそんなに関心はなかったです。本当に1日12時間くらいゲームをプレイしていたと思います。XboxとPS3を交互に起動して(笑)。ときどがオフの日なんて見たことがなかったですよ。

――良い意味で「頭の構造が違うな」って感じですか?

ボンちゃん そうですね。僕はひとつのゲームを3、4時間もプレイしたら、「もういっぱいやったわ」という気分になる。彼はゲームを変えることによって、頭の構造が変わるみたいですね。このゲームとこのゲームは、頭の使いどころが違うという感じで。

――その練習風景などを見て、どう思われましたか?

ボンちゃん プロゲーマーってこういうことなのかな、と。当時、僕はアマチュアで、好きな『ストIV』をただプレイしているだけだったんですけど、彼はプロになったのが早かった。それこそ第一線で活躍している人が、プロとして胸を張れるような練習をしていて、素晴らしいなと思いました。僕はやりたくないけど(笑)。

――常人では及ばないような練習ですよね。現在のときどさんはどういった印象ですか?

ボンちゃん いまのときどは……、人間っぽくなりましたよね。

――かつては人間よりもマシーンだった? (笑)

ボンちゃん 僕のなかでは本当にマシーンでした。あの練習量をこなすのがプロなら、僕がプロになるのはキツイなって、彼を見ていて思ったので。いまは、ときどもタイトルを『ストV』1本に絞ったので、ゲームをプレイしていないことが増えたんですよ。休んでいるし、美味しいものも食べに行くし、好きな飲み物、コーヒーも飲むようになったし、人間になりましたね。

――現在のときどさんで、人とは違う、変わっている部分はありますか?

ボンちゃん ときどは筋トレで身体を鍛えているんです。その一環で、ときどは糖質制限をやっているんですよ。お米をほとんど食わずに、基本タンパク質を摂っています。僕はお米が大好きなので、糖質制限をやるっていうのは正直理解できないですね。僕は過去にダイエットはしましたけど、鍛える目的というより、太らないために身体を動かしていただけなので。

――大好きなお米を食べる代わりに、体を動かすという感じですね。

ボンちゃん そうですそうです。飯はうまいじゃないですか。日本にいるとついつい、食べ過ぎちゃうんで、それで太らないように。たいへんですよ。

ガチくん
ガチくん© Red Bull Japan

後輩的な存在から実力を認めるプレイヤーへ ~ガチくん~

――続いてガチくんについて伺います。住んでいる場所が広島と東京で遠い(※)ですが、ガチくんとの関わりや、印象について教えてください。

※ガチくんはプレイに集中するため、2017年5月中旬より東京に拠点を移す。

ボンちゃん ガチくんは『ストIV』で僕と同じキャラを使っていて、それで知り合ったんです。ガチくんが東京の大きな大会には参加していたので、1年に3、4回くらいは会っていました。交流自体はかなり持っていましたね。

――そのときのキャラクターはサガットですね。同キャラ使いどうしで通じ合うところがあったのでしょうか?

ボンちゃん そうですね。ガチくんも慕ってくれていたので。当時、ガチくんは16歳くらいで、確か高校生。ゲーセンに夜10時以降いちゃいけないから、見た目が若くて注意されちゃうとか話していました。だから、いちばん最初に会ったときは、とにかく若いな、という印象。

――プレイヤーとして、同キャラ使いとして、当時のガチくんはどう見えていましたか?

ボンちゃん そのころは後輩って感じでした。上手いんですけど、さすがにこっちのほうが年季があるな、と。ガチくんは最初の4、5年くらいはそんなに強くなくて、後半のほうでかなり伸びてきていましたね。

――では、現在のガチくんはボンちゃんから見てどんな印象ですか?

ボンちゃん ゲームが変わって『ストIV』のときとは全然違います。『ストV』では先駆者になろうと努力していて、彼自身、「『ストV』では教えてもらうばかりじゃなく、自分でやっていこうと思っています」ということを早い段階から言っていました。それをいま、有言実行できているなという感じです。もとから良いプレイヤーだったのですが、『ストV』になって、さらに良いプレイヤーになった印象があります。

――ガチくんのここがすごい、というところを教えてください。

ボンちゃん ガチくんは自分の置かれた環境と、よく向き合っていますよね。住んでいるところが地方で、オフの対戦環境は東京よりも良いとは言えない。オンライン対戦だけでは、そんなに満足のいく練習はできていないはずなんですよ。だけど、ずっと折れずにゲームを続けて、上達している。僕がもし地方で、オンライン対戦しかできませんという環境だったら、ガチくんほどちゃんとやれるか、怪しいと思います。

――ボンちゃんは、ひとりでずっとオンライン対戦を続けられるタイプではない?

ボンちゃん オンラインだと、ストレスのほうが先行しちゃって。それこそ、プロだったらやるでしょうけど、ガチくんはただの趣味で、仕事ではなかったワケです。だけど『ストV』というゲームに対して、自分は先駆者になりたい、開拓したい、というモチベーションで1年以上続けている。それはすごいなと思います。

――オフでの対戦の場というのはモチベーションにつながりますよね。

ボンちゃん ガチくんも東京に来るとオフ対戦をして、すごく楽しいんですよ。だけど、それが明日帰ったら広島だってなると、そのときの落差ってキツイと思う。『ストV』はアーケードがないですから、どうしても地方だとオフラインでの対戦環境が整いにくい。実際、本人もそう言っていました。

――ガチくんが東京に出てくることを決意した一因かもしれないですね。ガチくんのメンタル面については、どのような印象ですか?

ボンちゃん ガチくんはまだ、メンタル面では強くないですね。緊張しちゃうんです。つい2ヵ月くらい前に大会でガチくんと当たったんですけど、目の前の対戦相手の僕に「ボンちゃん、ほんとに緊張しないんですか?」って聞いてくるんですよ(笑)。司会のほうに話が流れている2、3分のあいだに。

――そんな試合直前に!?

ボンちゃん そうです。でも、こっちも舐められるわけにはいかないので、「何? 緊張してんの?」って返して(笑)。ガチくんが、もとからこういう場で緊張しちゃうっていうのは知っていました。その大会に出ていたほかのプレイヤーと比べると、経験が足りないから。ガチくんもプレイ自体は、他選手と比べて遜色ないんだけど、あの場では緊張して、いい動きができずに負けていた感じでした。

――経験の差が出てしまったんですね。そんなガチくんに対してアドバイスはありますか?

ボンちゃん 場数を踏むしかないんです。僕も手が震えながら大会に出ていたので。さすがに最近はそんなにないですけど、EVO(※)のような大きい大会に出るときや、負けたら敗退が決まるような大事な試合では、いまでも震えることはあります。表には出さないだけで。

※EVO……アメリカ・ラスベガスで毎年7月に開催されている世界最大級の格闘ゲーム大会。正式名称はEvolution Championship Series。

ネモ
ネモ© Red Bull Japan

人間としてもプレイヤーとしてもオンリーワンの個性派 ~ネモ~

――ネモさんとの関わりや印象についてお聞かせください。

ボンちゃん ネモは、ときどよりも知り合ったのは早かったです。僕が『ストIV』をゲーセンでプレイし始めたとき、ネモはすでにそのゲーセンの勝ち頭だったんです。池袋のサファリっていう、『ストIV』を1クレジット50円でできたゲーセンで。当然、半額だから強い人が集まってレベルも高かったんですけど、そのなかでトップの層に入るくらい勝っていた人間でした。

――では最初に出会ったのは池袋のゲーセン?

ボンちゃん そうですね。ネモには最初3ヵ月くらい、1回も勝てなかったんじゃないかな。こいつに勝つのは、多分しばらく無理なんだろうな、と思わされた人でした。

――3ヵ月もですか

ボンちゃん 正確には覚えていないですけど(笑)。ただ、はじめて勝ってからは、けっこう勝てるようになったんです。というのは、ネモが春麗、僕がサガットを使っていて、キャラクターが有利だったから。当時のサガットは全キャラ中で最強と言えるくらいに強くて、春麗は中堅キャラだったので、対戦数をこなすと勝てちゃうんです。だから、塩梅をつかんでからはキャラ差で勝って、なんかすみません、みたいな感じで釈然としませんでした。

――腕の差で勝てている感じではない、ということでしょうか?

ボンちゃん そうですね。ネモというプレイヤー自身は、攻略のやりかたでは抜きん出ている部分が多かったですからね。それはいまでも変わらず、オンリーワンな印象です。

――それと似た話を、TOPANGA大学対抗戦の選手も言っていました。ネモさんが使うと“ネモさん”というキャラになるという。

ボンちゃん それと同じ感覚です。ネモは発想の飛躍のしかたが、ほかの人と違うと思います。要は格ゲーって、勝つために相手の体力をゼロにするワケですけども、ネモは勝ちしか見ていないので、いちばん体力を奪いやすい行動を貪欲にチョイスしてくる。防御力はそこまででもないイメージなんですけど、攻撃力に特化していて、相手を死に至らしめるまでのプランが、ほかの人とは全然違う。

――ネモさんは攻めの強いキャラクターを好まれる?

ボンちゃん できることが少ないキャラは嫌いなんですよ。選択肢が多いキャラのほうが当然おもしろいし、だからこそ多彩な戦略が生まれる。そういうキャラが好きなはずですね、ネモは。

――幅の広さで選ばれるのですね。ほかに独特だと思う部分はありますか?

ボンちゃん 格ゲーでほかのプレイヤーの動きを見るとき、自分だったらこうするなっていうのを考えるんですよ。でも、それがネモのプレイの場合、セオリーではこうだと思ったんだけど、それとは違う行動を取る、ということが多いですね。

――他人の物差しで見るとセオリー外の行動も、ネモさん独自の基準で合理的に判断されている

ボンちゃん あとは自分の読みに自信を持っていますね。セオリーではその選択肢は通りづらい、一見ナンセンスな行動に見えても、「この防御手段を取っている人なら絶対これは通用するな」とネモが判断したら、その行動を通してきます。大胆な選択肢を取るってよく試合で言われているんですけど、それはネモ自身の読みから来ている部分です。

――ネモさんに関して、私生活でここが変わっているなと思うところはありますか?

ボンちゃん 対戦するとき以外だと、そんなに会う機会がないんですよ。ただ、ネモはすごく真面目な人間ですね。ゲーマーって自堕落な生活をしているやつが多いわけです。それこそプロ、アマ関係なく、僕はそういう印象を持っている。

――でも、ネモさんの場合は規則正しい生活を送っている?

ボンちゃん そうです。ネモは社会人プロゲーマーという立場なので、その肩書きに偽りがないくらい社会人っぽいです。ゲーマーっぽくない。配信に出てしゃべるときも、ネモの話しかたは、ふだんの仕事で真面目な会話をしているんだな、っていうのが垣間見えますね。丁寧語というか、仕事上で使うような言葉遣いがあったりして。

――仕事のお客様に対してしゃべっているような?

ボンちゃん そうですね。それの片鱗が出ていて、やっぱりほかのゲーマーとはちょっと違うんだなって感じがします。多分、ネモ自身も「俺はしっかりやっているからな」という感覚でいると思います。

Red Bull Kumite
Red Bull Kumite© Red Bull Japan

自分の役割は、Red Bull Kumite 2017で活躍すること

――最後に今月27、28日にフランスで行われるRed Bull Kumite 2017についてお聞きします。出場選手のなかで、注目の外国人選手はいますか?

ボンちゃん 注目選手だったら、Infiltration(以下、インフィル)かな。去年EVOやRed Bull Kumiteで勝っているのに、インフィルは新しいバージョンになってから、すごく限定的な大会にしか出ていない。いま、キャラが定まっていないのか、プライベートが忙しいのか、理由はわからないですけど。なので、どういうキャラでどういうプレイをしてくるのか、楽しみです。

――インフィル選手とは、対戦したいですか?

ボンちゃん そうですね。インフィルらしいことをやってくれると思うので、仮に自分が当たるとしたら、楽しんで対戦したいと思います。勝ち負けはわからないけど、去年はRed Bull Kumiteで負けているので、リベンジの場にもなりますし。

――本戦の抽選が楽しみですね。Red Bull Kumite 2017に向けての意気込みはいかがでしょうか?

ボンちゃん Red Bull Kumiteは、僕のなかではすごく重要な大会です。僕がこうやってレッドブル・アスリートとして活躍しているのも、そこで結果を出せたのが一因としてあると思っているし、恩返し、じゃないですけどRed Bull Kumiteで活躍するのは、自分の大事な役割だと思っています。

――恩返しや役割というのは、ボンちゃんらしい考えかたですね。

ボンちゃん すごくレベルが高くて、結局、去年は4位でした。また優勝したいです。

――Red Bull Kumiteの初代王者ですからね。遡って、そのときの話を聞かせていただけますか?

ボンちゃん その時期は、近い大会で2位が多くて、あまり優勝できていなかったんです。しかも、 決勝の相手のときどに、「彼は2位ばっかりだ、今回も決勝の相手が僕で残念だね」と英語で煽られて(笑)。そんな状況で優勝できたのは、すごく嬉しかったです。

――Red Bull Kumiteでの優勝は、ボンちゃんにとっても大きな1勝だったんですね。

ボンちゃん あと、Red Bull Kumiteほど、見せ物としてしっかり意識した大会って、格ゲーの大会では、ほかにないんです。

――確かに。演出も凝っていて、ショーマンシップがあります。

ボンちゃん そうですね。Red Bull Kumiteは対戦相手が直前に抽選で決まるので、自分以外のメンバー全員の対策をしないといけない。それは大変なんですけど、「何番引きたくねぇ」、とか考えながら、くじを引くのはおもしろいし、見せ物としても盛り上がります。大会を今後もやっていくなら、そのなかに自分もいたいですし、自分が活躍して盛り上げたいというのがRed Bull Kumiteに対しての考えです。

全国でオフ会を主催するなど、広く交流してコミュニティ形成に尽力するボンちゃん。その目を通して見ることで、一見、孤高の存在にも思えるプロ格闘ゲーマーたちの、素朴な一面を垣間見ることができた。

本企画を通して、プレイヤーとして、そして、人としての彼らを知れば、選手たちをより身近に感じることができるだろう。Red Bull Kumite 2017に出場する彼らを、どうか熱く応援してほしい。

Written by 高城暁、辻良太郎