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目利きや!8

第2回 太田和彦さん 1/4

宗像和男

宗像和男

1946年生まれ。
68〜89年/資生堂アートディレクター。89年/アマゾンデザイン設立。00〜07年/東北芸術工科大学教授。本業のかたわら居酒屋・旅などの著作多数。『ニッポン居酒屋放浪記』『居酒屋百名山』『超・居酒屋入門』『東京・大人の居酒屋』『東海道居酒屋五十三次』『居酒屋おくのほそ道』『居酒屋かもめ唄』『愉楽の銀座酒場』『ひとり旅ひとり酒』『ひとり飲む、京都』『ニッポンぶらり旅〜宇和島の鯛めしは生卵入りだった』など。最新刊『男と女の居酒屋作法』(角川書店)。5月にライフワーク『太田和彦の居酒屋味酒覧』の第三版が出る(新潮社)。連載「サンデー毎日/ニッポンぶらり旅」、「ビッグコミック/太田和彦のイケイケ居酒屋」など

−−太田さんは前回登場してくださった宗像さんからのご紹介なんですが、いつからのお付き合いなんですか?

太田 まだ僕が資生堂にいる頃からだから、もう30年近くになるかなぁ、うっかりすると(笑)。

−−そんな長いお付き合いなんですね。太田さんといえば、居酒屋探訪家としても有名で、たくさん著書も出しておられますが、宗像さんも凄くお酒好きな方なので、一緒に酒を飲みに行ったりもされたんでしょうね。

太田 行ったよ、そりゃ(笑)。

−−そりゃそうですよねぇ(笑)。

太田 あの人は日本人にしては……は大げさなんだけど、僕の数少ない友だちの中でもあれほどカッコいい男はいないねぇ。顔もいいし、性格もいいし、豪胆なところもあるし。飲んでると消えちゃうのが難点だけどさ(笑)。

−−そうなんですか?

太田 俺に飽きて、どっかの店に行っちゃうんだよね。ほかの女のところにでも行ってるんじゃない?(笑)。

−−ダハハハ! 僕も宗像さんには凄くかわいがっていただいてるんですよ。今回のインタビューも快く受けてくださいましたし。

太田 僕も読ませてもらいましたけど、あの人のサッパリしてパンパンと言っちゃうところがよく出てるねぇ。面白かったよ。

−−ありがとうございます!

太田 では、何から話しましょうか?

−−紹介していただくレコードの順番はお任せするんですけど、僕から一つお願いがありまして、RCサクセションの『楽しい夕に』の話は最後にしていただけると嬉しいです。

太田 OK。

−−僕自身、そこがゆっくりお聞きしたい部分ですので。

太田 わかりました。僕はいま66歳なんですけど、昭和21年生まれで……。

−−失礼ながら、僕の親父とちょうど同い年ですね。

太田 うるさい!

−−ダハハハハハ!

太田 僕は信州の田舎育ちで、戦後の貧しい頃、音楽を聴くというと音楽室の数少ないレコードか、あとはラジオしかなかったわけね。ラジオも山の中だから、なかなか入らないんだが、うまく合わせるとタイミングよく聞こえてくる時もあるわけ。中学生ぐらいになるとヒットポップスや洋楽に興味を持つじゃない?

−−ええ。

太田 その時、かすかにエルビス・プレスリー登場時の印象があるんだよね。

−−凄い! 日本にロックンロールがやってきた瞬間!

太田 凄いだろ。大変なショックで! スゲーなぁと思ってね。「ハートブレイク・ホテル」だった。

−−こないだ宗像さんはビートルズが日本で初めてかかった瞬間を聴いたっておっしゃってましたけど、さらにもう一つ前ですねぇ(笑)。

太田 だって、原くんの親父と同じトシだもん(かわいらしく)。

−−ダハハハハハ!

太田 心を鷲づかみにされるとは、ああいうことだろうね。「これは凄い!」と思ったから。それから一生懸命に音楽を聴くようになるんだけど、なかなかプレスリーなんか、かからないのよ。自分でレコード買うなんてありえないし。

−−音楽を聴くのも大変な時代ですね。

太田 当時はいいムードを持ってる歌手がいっぱいいてね。カテリーナ・ヴァレンテとか、パット・ブーンとかスティーブ・ローレンスとか。でも、やっぱり誰もが言うんだけど、プレスリーは段違いでね。歌い方が全然違った。ああいう叫ぶように歌う人はいなかったからね。それと声。

−−は〜。

太田 それと、そのあとはお決まりだけど、ビートルズが出た時には、「ギャイーン!」だよね(笑)。

−−ダハハハハ!

太田 「ア・ハード・デイズ・ナイト」(『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』)のイントロの音さ。「ギャイーン!」っていう、あのショック!

−−そうですね。

太田 ホント、電気ショックさ! プレスリーは“ロッキーの山猫”と言われたセクシーな声の魅力、ビートルズはサウンド。第2の電撃大ショック。

−−ましてや思春期に直撃しちゃったんですもんねぇ。

太田 そうだね、感電した。やっぱり感受性が強い時期だから、プレスリーにしても「ハートブレイク・ホテル」1回聴いて覚えちゃったからね。

−−1回で! 凄いですねぇ。いまみたいにあとでネットで調べたりはできないから、ラジオで流れたら全部の神経を音楽に集中させるわけじゃないですか。

太田 そうそう、いいこと言う。そのとおり!

−−ですよねぇ。

太田 もう全身が耳さ! 

−−もの凄い集中力ですね。

太田 真剣そのものだよ。高校に入って大学まではジャズ一辺倒。生意気に『スイングジャーナル』買ったりね。僕の家は貧しくてレコードとか買えなかったが、仲のいい友人がステレオセットを持っていて、彼がレコードを買うと聴きに行ったりね。

−−へぇ。

太田 大学進学で上京して、ジャズ喫茶によく行ってたんだ。僕がよく通ったのは明大前の「マイルス」。とにかくね、音楽を聴くのも簡単じゃないのよ。学校をサボって上野の文化会館に行き、レコード試聴室で盤を借りてヘッドフォンで聴くことができた。あと、レコード屋に行くと当然レコードの現物があるじゃない? それをジーッと眺めるだけ(笑)。まあ、目学問だね。

−−それは世代的にそうなのか、それとも太田さんはその中でも貧乏学生だったからなんですか?

太田 悪かったね!

−−ダハハハハハ!

太田 貧乏学生だが感覚的には貪欲だったんだろうね。また今度聴ける保証はないから真剣。まあ、そんな時代だったな〜(しみじみ)。でさ、資生堂に就職して自立して少し金もできたら、やっと憧れのステレオが買えたのよ〜(かわいらしく)。

−−ダハハハハハ!

太田 パイオニアの。

−−もう忘れられない思い出ですか?

太田 忘れられない! その時に、ステレオを買ったらかけようって決めてたレコードがこれ!(といって目の前のLPを突き出す)。

−−まず今回の一枚目の『THE VERY BEST OF Frankie Valli & Four Seasons』が出ました!

太田 もう大好き!

−−これがそのときに買った盤なんですか?

太田 そうそう。

−−へぇ〜〜〜〜、大事に持ってらっしゃるんですね。

太田 僕の最初に買ったレコード盤の一つだね。もう40年ぐらい前になるかなぁ。自分でもいいもの買ったと思うよぉ(嬉しそうに)。

−−ダハハハハハハ!

太田 フォーシーズンズは「シェリー」のヒットがあったんだが、会社の先輩の家でLPを聴いて、素晴らしいな、いずれは購入だと決めていた。そんな感じで僕はフォーシーズンズから入りました。いまでも大好きです。


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