2度目の記事を書かせていただきます、筧です。
今回は原作小説のあるマンガ「皇国の守護者」について書きます。
「皇国の守護者」は佐藤大輔によって書かれた架空世界を舞台とする戦記小説であり、それを伊藤悠がコミカライズした作品でもあります。
作品の舞台は、人と龍が共存する世界。小さいながらも貿易によって繁栄していた皇国と、その貿易赤字を解消するために海の彼方から侵略してきた帝国との戦争、それをきっかけとして激化する皇国内部の権力闘争を描いています。
主人公は、新城直衛(しんじょう なおえ)。背丈は高くもなく、イケメンでもない、つまりよくある主人公らしくはありません。幼くして内乱で村を焼かれて孤児となり、軍務中であった将校に拾われて育預として育てられ、そのまま軍に入り、政治と戦争の世界で活躍するというストーリー。
ファンタジー世界の物語ですが、特徴はサーベルタイガーを兵として活用しているところで、主人公は千早(ちはや)というサーベルタイガーと幼少期から過ごしており、その千早と戦争を戦うことで、「猛獣使い」として敵から恐れられています。
もう1点特徴として、「導術」というものがあります。主人公の新城は使えませんが、導術士は導術士間でテレパシーが使えたり、敵の位置がわかったりすることで、戦争において、大きな役割をになっています。
さて、この「皇国の守護者」ですが、最初に触れたように、小説が原作、それをコミカライズしたものとしてマンガあるのですが、「5巻以内で完結したマンガランキング」などでプラネテスと並んで上位常連となっているように、コミカライズされたマンガのほうが圧倒的な人気と知名度となっています。
が、私は言いたい!
マンガの5巻での終わり方はすばらしいですが、
原作小説も読まずに、「皇国の守護者」が好きなんて語るなと。
なぜかというと、
マンガで出ている5巻は、原作9巻でいうと1巻と2巻の3分の2あたりまで
なんです。
5巻で終わっている理由は、打ち切りや編集部と原作者の間のいさかいなど様々な事が言われているが理由は不明ですが、このマンガの後が描かれている小説版では、
(以下ネタバレに配慮するため伏せ字にします)
ユーリアが新城の○○になったり、
新城が、副官とユーリアと○○でハーレムだったり、
蓮乃は最終的に○○でしまったり、
と、この後の展開が超面白くなるんですよ。
ほんとうに、ほんとうに、マンガの続きを書いてほしい。切実に。
このレビューでは、「皇国の守護者」の楽しみ方をお伝えすることで、
マンガの続編/再会の後押しする人を増やせればいいなと思っております。
なんといっても絵が美しい
最近表紙で美しいなと思ったのは、東京喰種ですが、この皇国の守護者も負けていません。表紙の絵だけで所有欲がむくむくしてきませんか?伊藤悠先生の絵は静止画としてものすごく洗練されていいます。中身でも見開きの大きなコマなどの迫力がたまりません。
設定が緻密
ファンタジーの楽しみにひとつである、架空世界の設定の緻密さですが、皇国の守護者の設定もかなり細かいです。ここは、原作の佐藤先生がヤバいです。ただし、こういった設定の説明は、マンガにおいては、かなりじれったく感じることが多いですが、マンガ版は必要最低限となっています。そこを楽しみたい方は、原作をどうぞ。最初に少しだけ出てくる守原の副官ってそうゆう立場の人だったんだ、、、とびっくりします。
主人公の描写
小説版の設定画では読者層を意識してか、新城は作中での表現にややそぐわない、いかにも軍人然とした筋肉質の偉丈夫として描かれていますが、漫画版では「三白眼をした一見臆病者のような顔に小柄な体格」と、ほぼ原作小説の表現に忠実な姿で描かれています。この主人公の表情が格別です。嫌らしい顔も苦悩の顔も、書き分けられていて、主人公の魅力があふれています。
台詞まわし
少年マンガにあるような、「その言葉だけ切り取ってもわかる名言」というよりは、ストーリーにおける台詞回しがすばらしいです。その台詞の入れ方も、その言葉だけ浮いているのではなく、絵とうまく調和がとれています。
ひたすら戦略のぶつかり合い
主人公の新城、実は小説版では、戦闘シーンも多く、相当な強者ということはわかるのですが、マンガの中で、その場面が強調されることはありません。もちろんケガなどは全くしませんが、主人公の強さがどこに現れているかというと、指揮官としての冷酷というまでの戦略/戦術です。皇国の守護者の楽しみ方は、この敵の将校と新城の戦略のぶつかりあいだと言えます。この戦略のぶつかりあいは、小説の続きにおいて、エスカレートしていきます。

以上が「皇国の守護者」の魅力です。
最後の「ひたすら戦略のぶつかり合い」が最もフォーカスしたいところですが、
その他の魅力があることで、全5巻ながらも作品としての完成度が高いです。
マンガ版を読んでいない方は、マンガ版から。
マンガ版を読んだ方は、ぜひ小説版を。
小説版も読んだという方は、
私と一緒に佐藤先生、伊藤先生に続編を出してもらうことを嘆願しましょう。
どうかお願いします。佐藤大輔先生、伊藤悠先生、続編が読みたいです。
マンガはこちら。
小説版はこちら。
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