希少なイルカ、間もなく絶滅の危機 カリフォルニア湾に30頭のみか

マット・マグラス環境担当編集委員

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Image caption 希少なコガシラネズミイルカには絶滅の危機が迫っている

世界で最も絶滅の危険にさらされている海洋生物を救うには、捕獲禁止措置をなんとしても延長する必要がある。メキシコのカリフォルニア湾北部にだけ生息する希少なコガシラネズミイルカは2011年以来、生存数が9割激減し、今では30頭しか残っていないと保護活動家たちは警告している。

コガシラネズミイルカは刺し網にかかって死亡することが多く、2015年から2年間、生息域での刺し網の使用が禁止された。

使用禁止の規定は今年5月末に期限切れとなるため、研究者はメキシコ政府に禁止の延長を求めている。

コガシラネズミイルカはカリフォルニア湾にのみ生息する。メキシコ本土とバハ・カリフォルニア半島との間に伸びる湾には様々な生き物が生息し、世界遺産に登録されている。その一方で、メキシコ漁業の漁獲高半分がカリフォルニア湾に依存している。

刺し網は、魚をえらでひっかけて捕えるため、垂直に吊られている。カリフォルニア湾で幅広く使用されていたが、コガシラネズミイルカを保護するために2015年に禁止された。

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Image caption コガシラネズミイルカ

しかし漁師たちは、同じ海域に生息するトトアバを求めて漁を続けたため、コガシラネズミイルカの被害はやまなかった。トトアバの浮き袋は漢方薬の材料として珍重され、闇値では1キロあたり8500ドル(約100万円)もの値が付く。

コガシラネズミイルカは多くの場合、トトアバの密猟に巻き込まれて網にかかり、死んでしまう。その生息数は2011年以来、90%激減。今年3月と4月には、5頭の死体が発見された。そのうち3頭は、刺し網にかかり死亡していた。

効果的ではないものの、刺し網漁禁止措置は5月末に期限切れとなる。保護活動家たちはそれでも、メキシコ政府が禁止措置を強化し延長するのが急務で、それがなくてはコガシラネズミイルカは2018年半ばまでに完全に絶滅してしまうと危惧している。

世界自然保護基金(WWF)のクリス・ギー氏は、「コガシラネズミイルカの数が危機的に少なくなり、保護が可能な猶予が限られている状態だ」と話す。

「刺し網禁止措置を強化し、恒久的なものにしてもらいたいと考えている。それがなければ、状況が好転するとはほとんど考えられない。非常に困難な状況だ。何も手を打たなければ、間もなく絶滅してしまう」

コガシラネズミイルカ救済のために刺し網禁止の延長を求める動きについては、米俳優レオナルド・ディカプリオさんもソーシャルメディアを通じて運動に協力。コガシラネズミイルカの置かれている厳しい状況を訴え、メキシコ大統領に禁止延長を求めるようフォロワーに呼びかけている。

ディカプリオさんの運動に対して、エンリケ・ペニャ・ニエト大統領は12日にツイッターで「メキシコ政府は、コガシラネズミイルカ救済のため何十年も前に行うべきだった対策を、大々的に実施している」と説明した。

WWFはメキシコ政府へ働きかけるほかに、米政府や中国政府に対しては、コガシラネズミイルカが犠牲になる間接的原因を作っているトトアバ密猟の取り締まりを強化するよう呼びかけている。

このほかさらに大胆な対策も検討されている。

米国とメキシコの海軍と協力する科学者たちは、バンドウイルカを使ってカリフォルニア湾のコガシラネズミイルカの位置を特定しようとしている。

何頭かを捕獲し、より安全な水域にいったん避難させた後、密猟その他の危険がいずれ排除された時点でもとの水域に戻すという計画だ。

「海中に安全な囲いを作り数頭を守れば、湾内に刺し網がなくなった時点で、また湾に戻すことができる。時間はかかるが、このやり方でうまくいくはずだと確信する科学者もいる」とWWFのギー氏は言う。

「確かに極端な手段だが、現状が極端な状況なのです」

(英語記事 Rare Mexican porpoise faces 'imminent extinction'

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