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善人を悪行に走らせる14の心理的な力

善人を悪行に走らせる14の心理的な力

Inc.:環境によっては、善良な人もつい魔が差して悪行を犯してしまうことがあります。

善良な人は、バーナード・L・メイドフ(元NASDAQ会長で史上最大級の巨額詐欺事件の犯人)やケネス・レイ(エンロン社の創業者兼会長。巨額の不正経理・不正取引による粉飾決算が明るみに出て同社は破たん)のような重犯罪は犯しません。むしろ、ちょっとした気の迷いで、坂を転がり落ちるように問題行動を犯してしまうのです。


「高潔さとは、誰も見ていないときも正しいことをすることだ」-C.S.Lewis(イギリスの学者)


ロッテルダム経営大学院でビジネス倫理とインテグリティ・マネジメントの教授を務めるMuel Kaptein博士は、何十年も人間の悪行について研究してきました。彼は最近発表した研究で、何が善良な人を悪行に駆り立てるモチベーションになるのかをかなり解明しています。

人は気の迷いによりどのように道徳的指針を失い、道を踏み外すのでしょうか。Kaptein博士の大変説得力のある14の発見は以下の通りです。


1.補償作用


補償作用とは、自分は道徳資本を蓄積していると思っている人にありがちな傾向です。私たちは善行と悪行の帳尻を合わせようとします。あるいは、善行と悪行を交互にすることで、善人でいることをちょっと休憩します。たとえて言うなら、1週間サラダばかり食べたご褒美にチョコレートを1粒食べるような感じです。これにより、「自分は善人だから」とか「たった1度だけのことだから」と称して、悪行を犯してしまうのです。環境に優しい製品を購入すると決めた後は嘘をついたりごまかすことが増えることが観察されています。補償作用の好例と言えるでしょう。


2.深刻さをちゃかす表現


表現の仕方が不適切だと、人々の認識をゆがめる可能性があります。企業が反倫理的行為を単純でユーモラスな隠喩を使って表すと(粉飾経理のことを「ファイナンシャル・エンジニアリング」と言ったりすること)、社員は自らの反倫理的行為を真剣に受け取らなくなってしまいがちです。IBMの創業者であるトーマス・ワトソン氏の「ビジネスはゲームだ。やり方を知っていれば、世界一のゲームだ」という言葉は有名です。ビジネスをゲームと呼ぶだけで、みんな自分の行動が現実の世界で深刻な結果になるとは、あまり思わなくなります。


3.認知的不協和


認知的不協和とは、人間が相反する2つの選択肢を前にしたり、自分の信条に合わない行動をするときに感じる不快感のことです。人間を行動に駆り立てる心理的に最強の力の1つです。自分は悪いことをしても構わないのだと感じると、認知的不協和によりこの悪行を行っても無視してしまいます。自分の行動と信条に一貫性が無いことが許せないからです。


4.割れ窓理論


割れ窓理論とは、組織の中に混乱や無秩序があると、社員は権威があるはずの上層部が無力であるような気がして、その流れで反倫理的行動に走る可能性が高くなります。1980年代にニューヨーク市長のルディ・ジュリア―ノ氏が軽犯罪を厳しく取り締まったことによりニューヨーク市の重大犯罪率が劇的に低下したことがその良い例です。ニューヨーク市民は市の行政を信頼するようになり、その結果、重大犯罪率が低下したのです。


5.視野狭窄


目標を設定して達成しようと頑張ること自体は何も悪くありません。問題は、たった1つの特定の目標に取りつかれたように集中してしまい、思いやりや倫理観といった大切な配慮が思考から欠落してしまうことです。


6.ピグマリオン効果


ピグマリオン効果とは、他人からの扱いに応じた振る舞いをする傾向のことです。たとえば、社員はチームの重要なメンバーとして扱われると、それに応じた振る舞いをしがちです。反対に、疑いの目で見られている社員は、その疑いが正しいものだと証明するような振る舞い方をします。


7.同調プレッシャー


同調プレッシャーは強力です。グループが反倫理的な行動を取ると、それに属する個人はその行いに参加したり、大目に見ようとする傾向がはるかに強くなります。そうしないとグループで孤立するリスクがあるからです。


8.権威に対する服従


ほとんどの人にとって、権威ある立場にいる人の頼みを無視することはかなり難しいことです。また、他人の指示に従って悪い行いをしても、それほど責任を感じないというところもあります。この両方が社員が上司の反倫理的な頼みに応じた行動を取る理由です。自分の意志で行動したときより罪悪感がはるかに希薄になります。


9.勝者総取り方式


過当競争の社会では、たった1人しか勝者になれないことがよくあります。賞を獲得するのは1人だけ。仕事に就けるのは1人だけ。手柄も独り占めにされたりします。しかし、この競争文化は本当に良い結果を生むのでしょうか。倫理的行動に関しては、その答えはNOです。既定の状況で1人しか勝者になれないと、人間は敗者になったという結果を直視するより、不正をして勝とうとしがちです。


10.社会的絆理論


自分はかけがえのない存在として価値を認められている、大切にされていると感じている社員は、会社に対する忠誠心が強くなります。しかし、自分は使い捨てにされそうだ、とか、評価されていないという気持ちが強くなるほど、反倫理的行動に走りがちです。


11.権力に目がくらむ


権力の座にある人は、一般に自分は社員とは本質的に違うと思ってしまいます。そのため、自分に課す倫理的基準が社員に対して設定している基準より甘くなっていまうことがあります。その結果、新聞の見出しを飾るような不祥事が発生します。


12.衒示的消費


企業のお金の使い方が派手になり過ぎると、反倫理的な行いを招きます。財力を派手に見せびらかすと、身勝手の度合いが強くなります。社員はニンジンにつられて頑張るか、金遣いの荒い同僚を妬むかにわかれます。その結果、正しいことをするより自分の欲望を優先させることになります。


13.些細な盗みの看過


職場から、ノート、ペン、コンピューター用紙を盗っても構わないと思ってしまうかもしれません。しかし、こうしたささやかな盗みを経営陣が大目に見ていると、どんどん限度が無くなっていきます。


14.リアクタンス理論


人は自由を好みます。順守すべき規則が厳しすぎると感じると、規則を破ることが多く、本来ならきちんとできることもしなくなります。


まとめ

倫理違反に関して最もショッキングなことは、単純で日常的なことが原因になっているということです。幸いなことに、ほんの少しの知識さえあれば、倫理違反を招くような環境を減らすのに大いに役立ちます。


14 Psychological Forces That Make Good People Do Bad Things | Inc.


Travis Bradberry(訳:春野ユリ)

Photo by Shutterstock.







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