株式会社Zucksにて広告営業ガールをしている“あやんせ”が、アプリ関連業界人を訪ねるコーナー「あやんせが行く!」。
第10回目となる今回は、ゲームエンジンUnityを提供するユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社(以下、Unity)にて、エバンジェリストを務める伊藤さんにお話を伺いました。
今回お話を伺った人
株式会社セガでアーケードゲーム「頭文字D」「ガンダムカードビルダー」やモバイルゲーム「三国志コンクエスト」を開発。その後ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社に転職し、Unityエバンジェリストとして今に至る。
– 伊藤さん、本日はよろしくお願い致します!まず、伊藤さんはどういった経緯でUnityに入社されたのですか?
伊藤周さん(以下、伊藤):僕は元々、SEGAで13年ほどゲームプログラマーをしていたんです。当時は「頭文字D(イニシャルディー)」のアーケードゲームなどを担当していました。転職したタイミングは、ちょうどGREEやDeNAなどのプラットフォームへの注目が集まっていた時期ですね。
当時のUnity日本法人は、「Unity製のゲームを増やしていく」というミッションを持って、大手ゲーム会社向けにUnityの営業をしていました。僕も営業を受けたひとりで、その際に出会ったエバンジェリストの大前と話をする中でUnityのミッションと事業に魅力を感じ、Unity日本法人に5番目の社員としてジョインしました。
– まだUnityが日本に上陸して日が浅い頃だったんですね。
伊藤:そうですね。今でこそ、個人でのゲーム開発は当たり前になっていますが、当時は個人開発が徐々に盛り上がってきた頃で、まだ環境は整っていなかったんです。
大手ゲーム会社でコンソールゲームの開発をしていた人たちが独立してゲームを作る事例はあれど、全く経験のなかった人たちがスマートフォンでゲームを作る事例はほぼない状態でした。iOSとAndroidで別々の技術を使ってゲームをつくらないといけないとか、すごく大変だったんですよ。
そういった意味でも、それぞれのOSで同時にリリースできるUnityのプラットフォームは画期的だったと思います。個人が作成したゲームが全世界に公開できるチャンスが来たんです。
– 個人のゲーム開発に革新が起きたんですね。そういえば、Unityは「UnityAds」という形で動画広告を運営されていますよね。UnityAdsは、どういった背景から始められたのでしょうか?
伊藤:Unity本社CEOの「個人向けゲームのマネタイズ方法が変わっていくだろう」という、先見の明からですね。2014年にApplifierという会社を買収して、ゲーム動画共有コミュニティの「EveryPlay」と、動画広告ネットワーク「GameAds」というサービスを運営していました。
「UnityAds」は、「GameAds」の名称を変えて提供開始したものです。リリース初期は、海外の広告案件が多かったのですが、セールスメンバーの採用も行ったことで、今では多くの国内ゲームの広告案件が出回っていますよ。
– 「UnityAds」今ではすっかりカジュアルゲームの定番実装になっていますよね。
伊藤さま:おかげさまで動画広告の売上規模は日に日に大きくなっています。世界的に見ると、特に中国の成長が著しいですね。
これはちょっと宣伝になってしまうのですが、Unity製のゲームであれば、中国に法人がなくても「Xiaomi」(中国のコンテンツ配信サービス)のマーケットに出せるようになります。詳しくは、5月8〜9日に東京国際フォーラムで開催されるイベント「Unite 2017 Tokyo」にてお話させていただくので、楽しみにしていてください。
※編集部注:
中国で販売されているAndroid端末にはGoogle Playはインストールされていません。そのため、ユーザーはキャリアが運営するマーケットからアプリをダウンロードします。
このマーケットにアプリを出すには、中国に法人(有限公司)があること、代表が中国人であること、など様々な条件があります。そういったハードルが一切なく、Unity製のゲームであれば無条件で中国マーケットに出せる、というのは本当に革命的なことだと思います。
※編集部注2:
イベントレポートアップしました。
【Unite 2017 Tokyoレポート Vol.1】講演「中国でAndroidアプリを出す!Xiaomiストアでのアプリリリース、収益化のためにできること」
– それはすごいですね!!Unity製のゲームでは、ここ最近ですと「TimeLocker(タイムロッカー)」がかなり人気ですよね。
伊藤:「TimeLocker」は、ゲームの「オリジナリティ」や、抜群の「操作感」、そして欧米でもウケる「デザイン」という要素が揃っていて、我々もUnityのイベントではことあるごとに紹介させていただいています。
Apple選出のベストゲーム”Best of 2016”では「クラッシュ・ロワイヤル」の次に選ばれていましたね。こういったクオリティの高いゲームは、弊社としても積極的に宣伝をしていきたいと思っています。
弊社では、Made with UnityというUnity製のゲームを紹介するサイトも運営しています。このサイトではアプリの紹介だけでなく、開発者さまにアプリに込めた思いをインタビューしているのでぜひ見てみてください。
実は、PokemonGOもUnity製です
– ちなみに、Unity製最大のヒットアプリはどのアプリになるんでしょうか??
伊藤さま:そうですね……、正確にはわかりませんが日本においては、DL数なら「PokemonGO」。セールスという意味だと「fate/grand order」なんじゃないかと思います。
– え!PokemonGOってUnityなんですね!!ピカチュウ!!!
伊藤:PokemonGOのおかげで、世界中のほとんどの人のスマホ端末にUnity製のアプリが入りました(笑)
– すごすぎですね……!それじゃあすごく儲かっちゃったんじゃないですか?
伊藤:いえ、実はそんなことは全くなくて(笑)
弊社では、年商10万ドル以上の事業者さまにUnityProのご案内をしているんですが、UnityProは1アカウントにつき、年間18万円の利用料をいただいています。ロイヤリティ売上等は一切なくて、この利用料のみでやらせていただいているんです。
– えええ!じゃあPokemonGOがあれだけヒットしても18万円……?
伊藤:さすがに開発者さんは1人じゃないと思いますけれど、本当にロイヤリティはないんですよ(笑)
映画も作れる、ゲームだけじゃないUnityの活用方法
– そういえば、Unity社が大事にしている価値観や理念はあるのでしょうか?さきほどのロイヤリティがない話は、もしかしたらそこから生まれたのでは?
伊藤:弊社の理念は一貫して、「ゲーム開発の民主化」を謳っています。
Unityを使うことで、誰でもゲームが作れるようになり、作っていただいたゲームを日本という枠組みを超えて世界中に配信できるようにしていきたいのです。
Unity最大の特徴は、やはり開発者のコミュニティにあると思っています。Googleで調べてもらえれば情報はたくさん落ちていますし、本もある。開発者同士で気軽に相談することもできる。そういった状況こそが、ゲーム開発の民主化につながっていくのはないでしょうか。
– 素晴らしい理念ですね!ゲームのほかに、Unityで作られた映画もあると聞いたのですが……。
伊藤:最近ですと、全編Unityエンジンを使用した短編作品「THE GIFT」などがありますね。これは「MARZA」という、SEGAから派生した映像制作会社が手がけた作品です。今後はディズニー作品のような長編映像も生まれてほしいですね。
また、HoloLensのアプリはほとんどがUnity製です。面白かった事例だと、宮崎の空港でPepperにHoloLensをかぶせることで空間認識をさせて、自立歩行をさせる実験をしていました。
最近は、AR・VRコンテンツ制作のハードルを下げていく動きも加速していますね。
– ゲーム開発だけでなく、様々なコンテンツ作りに活用されているのですね!今日は学ばせていただくことがてんこもりでした。徹底的に開発者さまの視点に立ったUnity社だからこそ、これだけの支持を集めているのだと思います。今日はどうもありがとうございました!