旧運営問題(戦艦少女)

登録日 : 2016/01/02 Sat 03:33:20
更新日 : 2017/05/16 Tue 11:53:21 NEW!
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旧運営問題 とは、中国・上海のゲーム会社「幻萌网络」(通称「 幻萌 」。英名「MoeFantasy Network」)が開発したスマートフォン用アプリ『戦艦少女』の運営を委託されていた「派趣科技」(通称「 P7 」。英名「Patch Games」)が引き起こした問題行為と、それによって発生した様々な問題のことである。
この一連の問題自体に決まった通称は存在しない のだが、独立した項目でまとめるにあたりこの仮称を付けさせていただいた。
なお、中国のネット上では2015年7月から 今日まで に発生した出来事や問題を総じて「(2015年) 7月紛糾事件 」と呼ぶ。




問題発生までの経緯

『戦艦少女』を開発した「幻萌」は、社員および開発スタッフの少なさ(『戦艦少女』開発当初の社員・スタッフの総数はたった 3名 だった。徐々に社員と開発スタッフを増やしていったが、現在も総勢20名ほどしかいない)から、ゲームの運営にまで手を回せるほどの人員的余裕がなかった。
そのため、幻萌と同じく上海に本社を置いているゲーム会社である「P7」に運営を委託することになり、両社の間で契約が結ばれる。
こうして世に送り出されることとなった『戦艦少女』であったが、オープンβテストを経て正式サービスがスタートすると、徐々にその雑な運営がプレーヤーたちの間で問題点として頻繁に取り上げられるようになった。

その一方で開発担当であった幻萌に対しては、「微博 *1 」などの中国のネット上においてプレイヤーから要望や意見を求めたり、リアルの場でのファンとの交流イベントを企画したりといった積極的なユーザー重視のスタイルをとってた。そのため、中国のネット上では開発に対して好意的で、運営に対して否定的な意見が頻繁に上がるようになった。

その後、ゲーム自体のバージョンアップなどによりある程度は持ち直した『戦艦少女』は、サービス開始から半年が経過した2015年春頃を境に中国国外でも注目を浴び始め、日本、台湾、韓国、アメリカ、タイといった国々からのダウンロード数も増加。
有志の手によって英語版やタイ語版のまとめwikiが作られるほどの人気と知名度を得た。
――だが、それでも中国のネット上ではP7による運営の問題点を指摘する声が後を絶たなかった。

そして2015年6月に発生したある出来事を機に、幻萌とP7との間に大きな亀裂が生じることになる。


コラボイベント無断企画

2015年6月、P7は自社が運営する『戦艦少女』公式サイトにおいてひとつの発表を行う。
それは、同じく中国のスマホアプリ『300Heroes』とのコラボイベントの開催決定という報であった。
だが、この『300Heroes』というゲームは重大な問題を抱えた作品だった。
その問題とは――

ゲーム中に登場するキャラクターが、全て日本のアニメ、漫画、ゲームのキャラクターであり、ゲーム中でキャラクターのグラフィックとして使用されている画像はpixivなどで投稿された画像や、原作の画像を無断使用しているというものだった
なお、ゲーム自体もLeague of Legendsそのままである。
もちろんこれは著作権などの観点からすれば 真っ黒 であり、 「転載」と考えれば pixivの規定にも違反する
詳細は威力棒Vii(V-Sports)の項目を参照されたし。

当然、このような オリジナリティの欠片もないどころか完全に著作権違反な「パクリゲー」 とのコラボイベントなど(いくら嘘か真か 「大抵の奴はパクリだと感づいた上で買う」とまで言われる 中国といっても)日本のサブカルチャーが大好きなオタクたちが容認するはずがなく、P7の公式発表から程なくして中国のネット上の『戦艦少女』関連コミュニティは炎上した。
特に開発側の幻萌が P7が公式発表するまでコラボイベントの話自体聞かされていなかった ことを微博上で明らかにしたことが、炎上に拍車をかけた。

また、この頃からゲーム起動時のロード画面において このゲームを反ファシズム戦争勝利70周年に捧ぐ 」といった中国人のナショナリズムを煽る内容の文章が強制的に表示されるようになった
後にこの文章もP7が幻萌に無断で掲載していたことが明らかになっている。

結局、コラボイベントはプレイヤーたちのネット上での激しい非難の声と幻萌側の抗議により企画中止となったが、こうした出来事により開発側の幻萌と運営側のP7との間で水面下の争いが深刻化。後述する内部告発と分裂騒動に直結することとなる。


内部告発と戦いの始まり

2015年7月、微博上に幻萌のある書き込みが投稿されたことによって『戦艦少女』コミュニティに再び激震が走った。
その書き込みの内容を大まかに要約すると、 「P7が幻萌に未払いだった2014年12月から今日までの報奨金を一切支払わない旨の通知を突きつけてきた」というものであった

このことに対するプレイヤーからの問いにP7は自社が運営していた『戦艦少女』の公式掲示板(現在は存在しない)などで「幻萌がゲーム運営を妨害し、P7に甚大な経済損失をもたらしたため(意訳)」と理由を述べたが、そのP7の発表に対する幻萌の回答により、P7のおぞましいゲーム運営および経営体勢が世界中の『戦艦少女』プレイヤーに暴露されることとなった。
特に、P7のある幹部が課金プレイヤーを ニラ に例えていたことや、ユーザー重視の幻萌のスタンスに対して 「ニラなんて刈ってもまた生えてくるだろ」 という発言をしていたという事実は、中国の『戦艦少女』プレイヤーたちを激怒させた。
これは刈って収穫してもまた生えてきて再び収穫できるニラのように、 「ユーザーが逃げてもそれっぽいコンテンツで釣れば結局戻ってきて金を落としていくんだろ?」 という意味の 嘲笑
要するに 「ユーザーなぞ単なる金づるだ」 と公言したということである。
これが本当かどうかは日本でこの手のゲームを展開しているメーカーのほぼ全てが 不祥事が起きる度に火消しに奔走する ことを見れば察せるだろう。


P7に対する皮肉からプレイヤーの中には ニラを自称する者ニラの写真を用いた大量の雑コラをネット上にばら撒く者 が現れ、ついには 『戦艦少女』に参加している公式絵師の1人が、自身がデザインを担当したキャラクターがニラを高々と掲げているイラストや、牛の格好をしてニラをむさぼり食うイラストを投稿する という事態にまで発展し、中国の『戦艦少女』コミュニティは先の6月に発生したコラボイベント騒動以上の炎上をみせた。

このような状況に陥りながらもP7はプレイヤーに対する謝罪や弁明をする姿勢を見せるどころか、 「今後幻萌が俺たちの言うことに素直に従うんだったら引き続きゲームの運営に協力させてやる(意訳)」 と発言。
果てには 「今後、公式サイト上の発表以外でこの件の話は一切しない。続報を待て」 と発言してネット上から失踪した。

それから数日間、幻萌とプレイヤーたちはP7からの続報を待ち続けたが、一切の連絡はなかった。
これに対して幻萌はついに堪忍袋の緒を切らしP7との絶縁を決意。
微博上で自社で独自に新サーバーを立ち上げてゲームの運営を継続していく旨を発表する。
同時に「此度の騒動は正規の方法で解決する」とコメントを残し、すでに弁護士を通じてP7を裁判で告訴する準備も進めていることを明らかにした。
ほぼ同じ頃、『戦艦少女』に参加していた絵師たちもネット上各地で続々と幻萌を支持することを表明。
これによりこの騒動も下火に向かっていくだろうと思われた。


海賊版と幻萌のアクセス凍結

上述の騒動から1週間ほどの日時が経過したある日、またしても微博の『戦艦少女』コミュニティに阿鼻叫喚の嵐が吹き荒れた。
それまでは 中国のAppStoreのみで配信されていたiOS版が、突然「全世界版」と銘打たれて世界中のAppStoreで配信された のである。
しかし、「全世界版」という名前に反してゲーム内で使用されている言語はそれまでのものと同様 簡体字による中国語のみ(英語すら対応していない) であり、お世辞にも中国国外向けと呼べるものではなかった。

これに中国のプレイヤーたちが嫌な予感を感始めた頃、幻萌が微博上で説明を述べた。
案の定、 世界中のAppStoreで配信され始めたiOS版『戦艦少女』は、P7が無断で配信を始めたもの であった。
さらに幻萌は、 P7が『戦艦少女』の運営権を有しているのは大陸(中国国内)と北米 *2 のみであり、この無断配信は両社の間で交わされた契約に違反している こと、すでにApple社に対してこの「 違法版 」をAppStore上から削除するよう手続きを行っていることを明らかにした。

その翌日、何食わぬ顔で「百度 *3 」の戦艦少女スレにP7が降臨。 翌日から イベントを行うことを発表し、それと同時にP7が運営していた公式サイト上にも同様のアナウンスが発表された。
同日夜、遅れる形で微博上に幻萌がP7側の発表に対するコメントを掲載。
その内容は「明日から行われるイベントは P7がゲームデータを無断で改変して行うものであり、幻萌は一切関与していない。まともなデバッグが行われたのかも不明瞭なため、予期せぬバグが発生するおそれがある のでプレイヤーの方々は気をつけてほしい」というものであった。
さらに幻萌は、その後行われたプレイヤーとの質疑応答において
  • 今回のイベントはもともとは幻萌が企画していたものだが、計画していたものとその内容は大きく異る *4 こと
  • 幻萌は数日前からサーバーへのアクセス権をP7側から一方的に凍結されており、現在は一切のメンテナンスも更新も不可能な状態にある こと
を明らかにした。

この事実(特に後者)が公のものとなると、またしても中国の『戦艦少女』コミュニティは荒れに荒れ、 iOS版は事実上の「海賊版」としてプレイヤーに認知されるようになった
その後、有志の調べで 「海賊版」を含むiOS版はクライアント情報における開発者の名義が全て「Patch Games(P7)」となっていることが発覚した
今更説明するまでもないが、当時P7が有していたのは中国と北米におけるゲームの運営権のみであり、ゲームの開発権は有していないどころか、ゲームの開発には一切関わっていない。ゲームは全て幻萌が開発したものである。

余談だが、幻萌に無断で行われたこのイベントは、いざ始まってみると 幻萌が予想していた通り大量のバグが発生した
当時を知るプレイヤーたちからは、今もなお 「『戦艦少女』史上最悪の糞イベント」 として語り継がれている。
上述したゲームデータの改変(実装予定だった新艦艇のデータを削除したこと、リリース当初から日本でも悪名を轟かせていた宮永咲な北上・原村和な大井のパクリ絵師贔屓による北上改・大井改の実装など)がバグ発生の原因と云われている。


分裂と台湾サーバーの誕生

7月末、幻萌は微博においてP7に対して両社間で交わされた契約を打ち切る旨の通知書を送ったことを発表。
これによりP7は法律に基づき60日以内に自社が運営しているサーバーを閉鎖せざるを得なくなった。期限を過ぎても『戦艦少女』の運営を行っていた場合は当然違法となる。

同時に幻萌は、数日中に新たなサーバーを立ち上げることを発表し、その新サーバーはこれまでの『戦艦少女』のアカウントでログインすることが可能であることも明かした。
ただし、先述のアクセス権凍結の件もあり、新サーバーに引き継がれるアカウントデータは幻萌のアクセス権が凍結される以前までのものであることも明かされている。
同じ頃、『戦艦少女』の開発スタッフや公式絵師たちが幻萌が新たに自社運営することになる新サーバー移転後も『戦艦少女』に参加する旨を表明。ここに至り、開発である幻萌と運営であるP7の分裂は確実なものとなった。

7月27日、幻萌は微博において新たに設置された台湾サーバーのオープンβテスト版の配信を開始。
このオープンβテスト版は、 ゲーム中の文字が全て繁体字中文であり、一切の課金要素が行えないのが特徴であった
また、「オープンβテスト」と銘打ってはいるがゲーム自体のバージョンは1.3.9であり、分裂直前のバージョンであった1.3.8よりもバージョンアップしていた。

その後、『戦艦少女』は 開発である幻萌が運営も担当する繁体字中文の「正規版(台湾版)」と旧運営となったP7が運営する簡体字中文の「海賊版(大陸版)」の2種類が存在するという混沌とした状況が以後1ヶ月以上に渡り続くこととなる


データ盗用疑惑とDDoS攻撃

幻萌による台湾サーバーの運営開始により、名実共に「海賊版」となった大陸版『戦艦少女』であるが、P7はその後も運営を続行。
台湾版に遅れる形で、ゲームのバージョンを1.3.9にバージョンアップさせる。
――が、 この大陸版新バージョンは先のイベント同様、バグの宝庫であった
一部のプレイヤーにいたっては、 それまでのゲームのデータそのものが消滅した ほどの深刻なバグが発生した。
当時、台湾サーバーはAndroid版しか開放されていなかったため、iOS版のプレイヤーの多くはやむなく大陸版を続けていた。
また、事情を知らない中国国外の新規ユーザーが台湾版ではなく大陸版をダウンロードしてプレイしていたという事例も多かったことが被害に拍車がかかった。

有志の調べで、この大陸版新バージョンには 一部のインターフェイスにて繁体字が用いられていることが発覚
それまでP7が運営していた『戦艦少女』において繁体字が用いられていることは一度もなかった ことから、 「P7が台湾版のデータを不正な方法で解読し、そのデータを盗用して無理矢理組み込んだ結果バグが発生した」 という説が瞬く間に中国の『戦艦少女』コミュニティに拡散した。
さらにそれから数日後の8月上旬、 今度は台湾版において大量のバグが発生。
幻萌は微博上で台湾版の全プレイヤーに対して 「原因が判明するまでの間は一時的にゲームからログアウトし、データの破損や消失を防ぐよう努めてほしい」 旨の声明を出し、原因究明に乗り出した。

その後、 バグの原因は「大陸からのサイバー攻撃(それも不正アクセスによるDDoS攻撃)によるもの」と判明
台湾サーバーは正常に回復したが、中国の『戦艦少女』コミュニティでは「このDDoS攻撃を行った者が何者であるか」という話題でもちきりとなった。
無論、上述したデータ盗用疑惑の一件もあり、このDDoS攻撃もP7(もしくはP7の関係者)の手によるものという説がプレイヤー間で有力視されている。


その後

上述のDDoS攻撃以降も台湾版は度々サイバー攻撃を受け、「ゲームが突然重くなる」「アクセス集中による過負荷でゲームが強制終了する」などの被害を出しており、残念なことにこれは 現在も続いている
また、有志の調べでP7運営時代の『戦艦少女』は 中国国外からの課金(すなわち日本を始めとした中国国外のプレイヤーの課金)は全てP7のCEOの個人口座に振り込まれる仕組みになっていたことが判明した が、これまでの悪行の数々から多くのプレイヤーは怒りを露わにするよりも先に呆れ返った。もちろん、激怒した者も少なからず存在した。

他にも、大陸版の最新バージョンでは それまでは簡体字表記であった日本海軍艦艇の名称が全てアルファベット表記に変更され、同時にどこかおかしくて情けない名称に改変されている *5 ことや、 抗日戦争勝利70周年記念イベント 」というナショナリズム全開なイベントを堂々と企画 していることが発覚した。

また、 ダミー会社を立ち上げて日本の特許庁に『 Warship Girls 』という名称の特許を出願した ことに対しては、
日本の『戦艦少女』プレイヤーのみならず『艦隊これくしょん -艦これ-』を始めとした「艦船擬人化」ジャンルのファンからもSNS上で批判された。
この申請は却下された *6


その後もP7はプレイヤーから搾り取れるだけ金を搾り取ろうとばかりに課金キャンペーンなどを実行していたが、 8月末にAppStoreに存在していた大陸版が幻萌の訴えを認めたApple社の手により全て消滅
9月下旬には幻萌から契約を破棄されてから60日目を迎えることとなり、 P7が運営していた公式サイトも消滅した

これにより、表向きはひとまずの落ち着きを取り戻した幻萌は、 『戦艦少女』のさらなるバージョンアップ「 Project R 」を発表
戦闘画面の一新、Live2Dや新システムの実装を予定していることを明らかにし、Youtubeにて予告PVも公開した。
同時に、このバージョンアップ後、 ゲーム中の言語は以前と同じ簡体字中文表記に戻ることと課金要素が解禁されることも明らかになった

そして現在、本体のバージョンが2.1.1となった『戦艦少女』は予定通り戦闘画面が一新され、作品名も『 戦艦少女R 』に変更された。
(厳密には10月下旬に2.0.0にバージョンアップした頃から作品名と戦闘画面が変更されている)
だが、先述の通り未だに台湾サーバーに対するDDoS攻撃が不定期に行われている以上、今後も油断はできない状況であることに変わりはない。


影響と被害、そして現在

この一連の問題と騒動は、幻萌のゲーム開発に少なからず影を落とすこととなった。
幻萌はP7の約半年間の報奨金未払いと台湾サーバー移転後のオープンβテスト期間中のおよそ2ヶ月間課金要素が未解禁だったため、ほぼ収入0の状態でゲーム開発を進めなくてはならなかった。
(ただし、この期間中も中国の同人イベントに出展し、公式同人誌や公式グッズの有償配布・販売を行っていたため、完全に収入が0であったわけではない)

結局、開発費が不足したため11月下旬を予定していたバージョンアップを1ヶ月前倒しして課金要素を解禁することとなり、前倒しした分、バージョンアップ当初は細かなバグや粗が目立ったが、プレイヤーも当時の幻萌の厳しい状況を理解していたため、こうした部分に関しては寛容であった。
なお、現在はバージョンアップによってバグはそのほとんどが修正されている。



追記・修正はニラを高々と掲げるか、むさぼり食いながら行ってください。

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