こんにちは、宅地建物取引士の宅男です。
あなたは、戸建とマンションはどちらが売れやすいと思いますか?答えは、マンションの方が売れやすいです。
しかし、マンションならば全てが売れやすいというわけではありません。今すぐ売った方がよいマンションもあります。また、戸建も全て売りにくいという訳ではありません。それはどのような条件が当てはまったときなのでしょうか?
これから、マンションを所有しており売却を考えているあなたにも、戸建の売却を考えているあなたにも分かりやすく、その理由について説明します。
まずは、戸建とマンションの主な違いについて説明します。
Contents
1、戸建とマンションの違いについて
戸建とマンションの違いについて、主な部分をまとめてみました。
【戸建の場合】
- 土地と建物をそれぞれ売却することができる。
- 毎月管理費等を支払う必要がない。
- 建物の維持・修繕は自分で全て行う必要がある。
【マンションの場合】
- 管理組合(マンションの所有者全員で運営される組合)に必ず加入しなければならず、定期的に役員にならなければならないこともある。
- 毎月管理費等を支払わなければならない。
- 建物の維持・修繕は管理組合が行う。
- 管理規約(マンションのルール)が存在する。
一番大きな違いは管理費等の有無と修繕費用の負担です。
戸建の場合は、管理費等の支出がない代わりに建物の修繕などでは突発的に大きな金額の支出があります。それに対し、マンションの場合には、管理費等の支出が必要ですが、建物の修繕は管理組合が行うため、突発的に大きな金額の支出があることはありません。
これが、戸建に比べマンションが売れやすい一番の大きな理由なのです。
2、戸建が売れにくい3つの理由
「1、戸建とマンションの違いについて」で説明したとおり、建物修繕費の負担者の違いが戸建が売れにくい一番の理由です。こちらについて詳しく説明します。また、その他にも売れにくい理由が2つあります。
2-1、建物修繕費の負担について
先ほど説明したとおり、戸建の場合には建物の修繕費用を自分自身で負担する必要があります。
そのため、戸建を買ったはいいもののすぐに不具合が見つかり、修繕を行う必要が出てくることがあります。修繕箇所によって費用は異なりますが、雨漏りにより屋根の張り替えを行うケースでは、修繕費用として数百万かかってしまうことも珍しくありません。
このような場合、売主に責任はないのでしょうか?確かに、売主が責任を負う期間はあります。契約によって責任を負う期間は様々です。しかし、売主が個人の場合は3ヶ月、売主が不動産会社の場合は2年と定めているところが多いです。
そのため、仮に売主が個人の場合には、引き渡し後3ヶ月以降に雨漏りがあった際には、自分で負担しなければならないのです。
このように、戸建の場合には売買後のリスクが高いために、敬遠されやすく売れにくいのです。
2-2、売買価格が高額になりやすい
「1、戸建とマンションの違いについて」で説明したとおり、戸建の場合には土地と建物をそれぞれ売ることができます。
しかし、基本的には土地と建物を同じ人に売る必要があります。なぜ、土地と建物を一緒に同じ人に必要があるのでしょうか?
土地と建物を別々で売ってしまった場合には、建物を新しく建築する際には土地の所有者の許可が必要となります。そのため、建物を買ったはいいものの、土地の所有者の許可が出ないために、建物が古くなっても建て替えを行うことができないという問題が発生してしまうのです。
このような問題が起こらないように、戸建の売買では基本的には建物と土地がセットで売買されるのです。したがって、戸建の場合には、買主は建物と土地を両方購入する必要があり、売買価格が高額になります。
ファーストフード店でセットを買いたかったが、高かったために諦めた経験はないでしょうか?買主にはある程度の予算というものがあります。戸建の場合には、売買価格が高額なため、予算を超えてしまうことが多く、売れにくいのです。
2-3、セキュリティ面での不安
平成27年度の調査によると、侵入による犯罪件数の内、戸建住宅の閉める割合は41.5%です。これは、マンションや事務所物件よりも高く、侵入による犯罪の中でトップの割合です。
戸建の設計上、1階から建てられている、オートロックが設置できないなどの問題があり、セキュリティ面で劣ってしまうのは否めません。
セキュリティ面で不安を感じ女性、子供連れの家族の方は戸建の購入を見送る人が多いようです。
3、マンションが売れやすい3つの理由
マンションの場合には、戸建で売れにくいデメリットがそのまま売れやすいメリットとなります。
3-1、建物修繕費の負担について
「1、戸建とマンションの違いについて」で説明したとおり、マンションの維持・修繕はマンションの管理組合で行います。このときの修繕費用は、管理組合が所有者より徴収している管理費等から支払われます。
そのため、マンションの購入後すぐにマンションの大規模な修繕を行う場合でも、高額な費用が必要となることはありません。
また、マンションの場合には室内以外の箇所のほとんどがマンション所有者全員の共用部分となっています。雨漏りなどの被害があった場合でも、マンションの共用部分が原因の箇所であれば管理組合にて復旧を行なってくれるのです。
管理組合が修繕費用を支払うために、支出が戸建に比べると必要になることが少ないです。
毎月の管理費等の負担はあるものの、購入後も突発的な高額の修繕費用の支出がなく、安定的に暮らすことができることがマンションの人気の一つの理由となっています。
3-2、売買価格が高額になりにくい
マンションでは、土地は誰の所有物になるのでしょうか?マンションの土地というのは、マンション所有者全員の共有物です。
あなたがマンションの所有者の一人であれば土地の一部も所有していることになっているため、土地も建物と一緒に売却を行うこととなります。しかし、マンションの土地の場合には「あなたの持ち分は10分の1です」と割合が決められています。
ケーキをイメージすると分かりやすいかもしれません。ワンホール3200円のケーキがあったとしたら、あなたのケーキは10分の1にカットされた320円分です。
このように、マンションの土地が1000万円の評価があったとしてもあなたが所有している土地は10分の1のために、1000万円÷10=100万円となってしまいます。
このように、マンションでは土地を共有しているために、売買の際の土地の価格が抑えられます。そのため、戸建の売買と比べると高額になりにくく、予算内に収まることが多いのです。
3-3、セキュリティ面での安心感
平成27年度の調査によると、侵入による犯罪件数の内、マンション住宅の閉める割合は17.5%です。
戸建の場合と比べると侵入の犯罪発生率が低くなっているのがわかります。オートロックマンションや、2階以上の住宅ではもっと発生率が低くなるでしょう。
このように、セキュリティ面でも戸建と比べるとマンションの方が安心できるため、女性や子供連れの家族の方に需要があるのです。
以上の理由が、戸建とマンションを比べるとマンションの方が売れやすい理由です。しかし、ある条件にあてはまる場合にはマンションでも売れにくい場合があります。
4、売れにくいマンションの特徴
4-1、旧耐震基準のマンション
マンションには「旧耐震基準」と「新耐震基準」のマンションがあります。昭和56年6月1日以前に建築申請が下りたものが「旧耐震基準」、それ以降のものが「新耐震基準」となっています。
「旧耐震基準」は震度5程度に耐えることを目的としています。それに対し、「新耐震基準」では震度6強以上でも倒れないことを目的としています。
あなたが欲しいと思うマンションはどちらでしょうか?
地震のリスクが増している現在では、旧耐震基準の物件は買い手が少なく厳しいというのが現状です。
4-2、管理組合が動かないマンション
マンションでは修繕は管理組合によって行われますが、管理組合で修繕を行おうとするとき、所有者の過半数の賛成が必要となります。
通常のマンションであれば、過半数というのは難しくありません。しかし、入居者の高齢化、投資用マンションの増加により、マンション管理に興味がない所有者が増えています。
興味がない所有者ばかりであれば、過半数の賛成を取ることができずにいつまでも修繕を行うことができません。その結果、マンションの塗装が剥がれ落ち、外壁はヒビだらけ、鉄部は腐食しているマンションとなるのです。
このようなマンションが欲しいと思う人はいないでしょう。
4-3、管理費等が高いマンション
マンションを購入したときには、毎月管理費等を支払う必要があります。その他にも、駐車場代や住宅ローンの返済も毎月支払う必要があるでしょう。
もし、これらを合わせた支出が周りの賃貸マンションより高くなってしまった場合の需要はどうでしょうか?残念ながら下がると言わざるを得ないでしょう。
管理費等の金額は、マンションによって異なるものの、機械式駐車場を設置しているマンションや、戸数が少ないマンションでは高額になりやすい傾向があります。
このようなマンションに該当するマンションを売却する場合には、周りの賃貸マンションの賃料にも注意する必要があります。
5、すぐに売却すべきマンション
現在は売れにくくはないものの、これからそうなる可能性を含むマンションについて説明します。
このようなマンションに該当する人はすぐにマンションを売却するべきです。
5-1、築10年程度のマンション
築10年程度と聞くと築浅でよいと思われるかもしれません。しかし、大規模な修繕の周期は12年〜15年程度が目安とされており、築10年程度のマンションでは近いうちに、大規模な修繕が行われることが予想されます。
修繕費用については管理組合が負担すると説明しました。しかし、修繕費用が管理組合が積み立てている修繕積立金で足りなかった場合はどうするのでしょうか?
もし、修繕費用が不足する場合には所有者より一時金を徴収します。修繕の規模、戸数によって異なるものの、徴収する一時金の額が数十万円〜数百万円というのも珍しくありません。
築10年程度の場合には、修繕積立金が必要な修繕費用まで積み立てられていないことがよくあります。
なぜならば、マンションが売れるように販売を行う不動産会社が管理費等を低く設定しているからです。
不動産会社の設定した管理費等は、将来の修繕の費用を考えずに設定されています。そのため、いざ修繕を行おうとしても費用が足りず、一時金を徴収する必要が出てくるのです。
したがって、不動産の売却を考えているならば、修繕費用の一時金の徴収が決定される前に売った方がよいのです。
もし、一時金の徴収が決まった場合には、新しい買主が一時金の徴収の義務を引き継ぎます。あなたは、新しい買主にそのことを伝えなければなりません。そのため、売却は難しくなるでしょう。
積み立て金の額と修繕費用について不安を感じたならば、すぐに売却に向けて動くようにしましょう。
5-2、管理費等の値上げの予定があるマンション
管理費等の値上げがあるマンションは、売買の際に「管理費等の値上げの予定がある」と伝えなければなりません。
しかし、具体的な案ができておらず、管理費等を上げることだけが漠然と決まっているような場合は案について説明する必要はありません。
そのため、案が決まる前に売ってしまった方がよいでしょう。管理費等は、万単位で上がることもあります。そうなってしまうと、「4-3、管理費等が高いマンション」で説明したように、売れにくくなってしまうのは避けられません。
6、売れやすい戸建の特徴
ここまで、マンションに比べて戸建は売れにくいと説明してきました。しかし、ある機能を備えた戸建の場合には需要を望むことができ、売れやすい戸建となります。ある機能とはいったいどんな機能なのでしょうか?
6-1、バリアフリー住宅
バリアフリー住宅とは、子供や高齢者に優しい住宅のことを言います。具体的には、通路に手すりを設置したり、段差をなくしたりと動きやすい戸建となっています。
もし、マンションで通路に手すりを設置するならば、それだけの工事でもマンション所有者の過半数の賛成が必要となります。また、マンション内で段差をなくすならば、大掛かりな工事が必要となってくるかもしれません。
マンションに比べて工事を自由に行うことができる、戸建ならではの機能だと言うことができるでしょう。高齢化のために、今後もバリアフリー住宅の需要は増加することが見込まれ、売れやすい戸建となっています。
6-2、エコ住宅
エコ住宅とは、環境への負荷をできるだけ少なくすることを目的として建てられる住宅のことです。具体的には、太陽光による発電や、断熱材や二重サッシの使用による高気密高断熱な戸建となっています。
太陽光発電により電気代を抑えることができます。また、高気密高断熱により「夏は涼しく、冬は暖かい住宅」を実現することができ、エアコンを使用することが少ないためさらに電気代を抑えることができます。
環境への関心が高まっている現在、エコ住宅も需要が出てきています。
6-3、災害に強い住宅
近年、土砂災害や洪水、地震による災害が多く、災害に耐えることができる住宅への関心が高まっています。
「へーベルハウス」を知っているでしょうか?へーベルハウスとは、旭化成の住宅ブランドのことで災害に強い住宅となっています。へーベルハウスが有名になったのは、平成27年9月に流された鬼怒川決壊の映像です。
https://twitter.com/JPNG5/status/641928615588794368
「鬼怒川の決壊」…平成27年9月9日から11日にかけて、台風17号と18号の影響で南から湿った空気が長時間にわたって流れ込んだため、茨城県常総市三坂町で増水した鬼怒川左岸の堤防が崩れ、氾濫(はんらん)した水が下流域に広がり約40平方キロメートルが浸水した。次々と住宅が流される映像がテレビのニュースで流れたが、全く流されない白い家が話題となった。それが、旭化成のへーベルハウスであった。
鬼怒川の決壊でもびくともしなかった家がテレビで流された際には、旭化成の株価が一時的に上昇したほど影響がありました。それほど、災害に対する関心は高いのです。
災害に強い戸建ならば需要が非常に高く、売ることも容易に行うことができるでしょう。
戸建とマンションの売却のまとめ
ここまで、基本的には戸建よりマンションが売りやすく、必ずしもそのケースにあてはまらないこともあると説明しました。
しかし、最後に不動産が売れるために一番重要なことをお教えします。それは、やる気のある不動産会社に売却をお願いするということです。
例え、売れやすいマンションでも不動産会社がやる気がなければ、マンションを売却にだしていることさえ誰にも知られることなく、マンションが売れることがないでしょう。逆に売れにくい戸建でも不動産会社がやる気を出せば、多くの人の目にとまり、すぐに売却することもできるでしょう。
まずは、戸建の売却でも、マンションの売却でも、信頼できてやる気がある不動産会社に、売却をお願いすることより始めてみましょう。