住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)がある場合、納付する所得税が少なくなり、納付する所得税がないといった事も少なくありません。
・還付される税金がなくてもふるさと納税ができるのか?
・ふるさと納税をしても意味があるのか?
・ふるさと納税をする場合限度額はいくらか?
と疑問に思った事はありませんか?
自己負担2,000円の範囲内でふるさと納税をしたいが、住宅ローン控除がある場合の限度額の計算は複雑になってきます。
Contents
ふるさと納税(寄付金控除)と住宅ローン控除の違い
ふるさと納税は寄付金控除の事です。
寄付金控除は所得税では所得控除ですが、ふるさと納税の寄付金控除は住民税では税額控除になります。住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は税額控除です。
ふるさと納税は措置法第41条の18の3の規定により特定寄付金と言われる寄付金です。
税額控除 ⇒税金から控除
所得控除 ⇒所得から控除
税額控除と所得控除は名前が似ていますが、全然違うものです。
税額控除は税金から控除されるので、税額控除が1万円となれば税金が1万円少なくなります。しかし所得控除はそうではありません。
所得控除の1万円はあくまで所得が課税所得が少なくなるだけです。所得税の税率が20%の場合税金が2千円(所得控除1万円×20%)少なくなります。
ふるさと納税と住宅ローン控除の併用
ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できます。
では併用した場合のふるさと納税の自己負担額が2,000円となる限度額ですが、扶養の人数等で所得控除の金額が違うので例を用いて計算してみます。
以下シミュレーション上の前提条件は
・生命保険料控除等の所得控除なし
・住民税は課税所得(所得控除後の所得)の10%
・ふるさと納税の寄付額は1,000円未満切り捨て
・計算結果後の少数点以下切り捨て
として計算します。実際の計算結果とは異なりますのであくまで目安として参考にして下さい。
年収400万円でシミュレーション
サラリーマンの平均年収に近い金額でシミュレーションしてみます。
例 年収 4,000,000円 配偶者あり(扶養) 子供一人(16歳未満) 社会保険料550,000円
住宅ローン控除がない場合
所得 :4,000,000(給料)-1,340,000(給与所得控除)=2,660,000
所得控除:550,000(社会保険)+380,000(配偶者控除)+380,000(基礎控除)=1,310,000
課税所得:2,660,000-1,310,000=1,350,000
所得税額:1,350,000×5%=67,500
67,500×1.021(復興特別所得税)=68,917 → 68,900(100円未満切り捨て)
住民税額:1,350,000×10%=135,000
例で住宅ローン控除がない場合、所得税額 68,900円、住民税額 135,000円となるので、
ふるさと納税の限度額は34,000円となります。
住宅ローンがある場合
住宅ローン控除がない場合は、なんとか計算ができます。では、さらに奥深くまで考えてみましょう。
ふるさと納税の限度額計算は 住宅ローンの税額控除前 から約20%が限度になるため限度額に変更はありません。限度額に変更がないからといっても安心をしないで下さい。限度額に変更はありませんが、控除する税金が発生しない場合があります。戻ってくる税金がないかもしれないという事です。
住宅ローン控除は住宅を取得した(居住のように供した)日によって控除限度額等に差がありますが、多くの場合が年末借入残高の1%になります。
先程の例でふるさと納税を限度額までした場合の所得等は以下の通りです。
所得 :4,000,000(給料)-1,340,000(給与所得控除)=2,660,000
所得控除:550,000(社会保険)+380,000(配偶者控除)+380,000(基礎控除)+34,000(ふるさと納税)=1,344,000
課税所得:2,660,000-1,344,000=1,316,000
所得税額:1,316,000×5%=65,800
65,800×1.021(復興特別所得税)=67,181→ 67,100(100円未満切り捨て)
住民税額:1,350,000×10%=135,000
ふるさと納税をする前とした後で所得税額が1,800円(68,900円ー67,100円)少なくなっています。
住宅ローン控除を受けて、住宅ローン控除が所得税から引ききれなかった場合は住民税から控除ができます。しかし住民税から控除できる金額には限度があります。
期間 | 控除額 | 限度額 |
平成26年3月までの入居 | 課税所得の5% | 97,500円 |
平成26年4月~平成31年6月までの入居 | 課税所得の7% | 136,500円 |
平成26年3月までに入居した場合、ふるさと納税後の住民税額から控除される住宅ローン控除は65,800円(1,316,000×5%)
平成26年4月~平成31年6月までに入居した場合、ふるさと納税後の住民税額から控除される住宅ローン控除は92,120円(1,316,000×7%)
年末の借入残高20,000,000円
年末の借入残高が20,000,000円の場合は200,000円(2千万円×1%)です。
先程ふるさと納税後の所得税額は65,800円でした。住宅ローン控除を受けた場合まず、所得税額が控除されるので65,800円全額が控除されます。65,800円全額控除されてもまだ134,200円(200,000円ー65,800円)が控除されていないので、次は住民税額から控除しましょう。
平成26年3月までに入居した場合は、69,200円(135,000円ー65,800円)が住民税額
平成26年4月以降に入居した場合は、42,880円(135,000円ー92,120円)が住民税額となります。
住宅ローン控除があり、年末の借入金残高が2千万円の場合にふるさと納税の限度額である34,000円を寄付したら自己負担はどうなるでしょうか。
1.所得税からの控除 (34,000-2,000)×5.105%=1,633円
2.住民税からの控除(基本) (34,000-2,000)×10%=3,200円
3.住民税からの控除(特例分) (34,000-2,000)×(100%-10%-5.105%)=27,166円
住民税額から3,200+27,166=30,366円控除されます。
平成26年3月まで 69,200-30,366=38,834 → 38,800円
平成26年4月以降 42,880-30,366=12,514 → 12,500円
この場合にまとめると限度額34,000円のふるさと納税をした場合
所得税額は、0円
住民税額は、平成26年3月まで 38,800円、平成26年4月以降 12,500円
自己負担は、2,000円となります。
今回住民税額を計算する時に説明が複雑になるため所得税の所得控除(人的控除)を用いて計算しましたが、正確には
住民税額は、135,000円ではなく、145,000円となりますのでご注意ください。
住民税を計算する際に控除額が380,000円 → 330,000円になるからです。
まとめ
シミュレーション結果をふるもとに考えると
所得税額 > 住宅ローン控除
住民税額 > 住宅ローン控除
住民税額 > ふるさと納税
上記の場合ふるさと納税をしても自己負担2,000円になりそうです。
今回は確定申告を前提にシミュレーションをしました。ワンストップ特例では少し違ってきますので注意をして下さい。ふるさと納税を自己負担2,000円にしたいがために住宅ローン控除をうけないといった事はやめた方がいいでしょう。収める税金が違います。
実際にふるさと納税の寄付をする時は、事前に市町村や専門家に相談をすると確実です。