一面弥富金魚が池から消えた 鳥害? 養殖5000匹全滅の例も
全国有数の金魚産地として知られる愛知県弥富市周辺で、養殖池から金魚が大量に消える被害が相次いでいる。目撃情報などから野鳥の食害が主な原因とみられ、五千匹が全滅した池も。夏の需要期が控える中、ブランド「弥富金魚」の出荷数は今年一〜三月で前年同期より二割も減っており、業界団体が十九日に実態調査に乗り出す。 二月下旬、同県飛島村三福の金魚養殖池。ベテラン業者の浅井稔さん(59)はため息をついた。金魚を移す「池替え」のために水を抜くと、昨秋放流した数千匹の金魚がわずか百匹ほどに減っていた。強化した対策も効果はなかった。 常時五十ほどの池を使っているが、異変に気付いたのは昨年末。秋に五千匹を放流した別の池から金魚がすべて消えた。周囲のあぜ道を見ると、くちばしの跡が残る無残な姿の金魚が何匹も打ち上がっていた。 以降、一日に数回池に行くたび、サギやカモのような鳥が池の中でついばむ姿を目撃。「追い払っても、やって来る。口から金魚を吐きながら飛び立つ鳥もいた」 もともと池の上に十センチ間隔でテグスを張っていたが、鳥は脚で押してたわませたり、歩いたりして侵入。今年初めに約三十万円をかけてテグスを五センチ間隔に狭め、池の側面をすべて網で囲った。それでも入られ、被害総数は昨秋以降で十万匹近くに。収益も半減する見込みで「被害が続けば廃業するしかない」と嘆く。 弥富金魚漁業協同組合(弥富市)によると、約九十の組合員の少なくとも三割が同様の被害を訴える。一〜三月に市内三カ所の市場で競りに掛けられた、金魚入りの木枠「かんこ」は前年同期比23%減の三千二百九十九個。廃業による減少を勘案しても減り幅は例年の二倍以上で、伊藤恵造組合長(64)は「明らかに鳥の影響」とみる。 近くにはラムサール条約登録湿地の藤前干潟(名古屋市港区)をはじめ、木曽川や庄内川の河口など渡り鳥の飛来地が広がり、以前から食害はあった。だが、「ここまでの被害は記憶にはない」と浅井さん。 ただ、飛来地の一角にある県弥富野鳥園(弥富市)職員の匹田竜太郎さんは「生息調査から周辺の野鳥の数は劇的に変化はしていない」と断言。「イタチやヌートリアなどの動物の影響もあるのでは」と話す。 鳥が原因とみられる食害は同じく有数の生産地の奈良県大和郡山市でも確認。郡山金魚漁業協同組合によると、正確な調査は行っていないが、加盟の全二十五業者が被害を訴えている。 ◆いい餌場だと学習か鳥害対策に詳しい国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構中央農業研究センター」の百瀬浩さんの話 鳥は非常に頭が良く、金魚の養殖池がいい餌場だと学習し、広まったのではないか。超音波や大きな音で追い払おうとしても効果は低い。テグスや網で侵入経路を確実にふさぐことが一番の対策だ。 (蟹江通信部・酒井博章、写真も) <弥富金魚> 江戸後期、大和国郡山(現奈良県大和郡山市)の商人から金魚を買い取って飼育したことが始まりとされ、農家の副業で養殖が広まった。1994年に女性宇宙飛行士の向井千秋さんと宇宙に行ったことでも知られる。弥富金魚漁業協同組合によると、2017年の養殖業者数は最盛期(1970年代)の3分の1以下の約90軒にまで減少。16年度の養殖数は約1150万匹、取引金額は約5億4500万円。 PR情報
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