ビジネスパーソンに必須のスキルと言える英会話。TOEICスコアは良くても実際の会話に苦労する読者も多いだろう。こうした悩みの解決に向けて、博報堂などが英会話端末を開発。米グーグルのアイデアコンテストでグランプリを獲得し、注目を集めている。広告代理店である博報堂がモノ作りを手掛ける理由は何か。
新年度も1カ月半が経過し、職場に研修を終えた新入社員が配属されてきたという読者も多いだろう。毎年何かと「トンデモ」エピソードが話題になる新入社員だが、記者自身が「歯が立たない」と感じるのがTOIECスコアだ。うかつに聞くと自分自身とのスコアの差に打ちのめされてしまう。友人に話を聞くと「800以上は当たり前、900超えの新人が数多く存在する」という企業も多いようだ。
日本企業の成長に向けて海外展開は避けられない中、新人に限らずビジネスパーソンに英語力が求められるのは当然と言える。その一方で、現場での英会話に苦労している読者も多いのではないだろうか。「TOIECスコアは良いけれど会話は苦労します」という声もしばしば聞く。記者自身、外国人取材の際に細かなニュアンスの言い回しが思いつかず、簡単な英文で質問したり、会話のキャッチボールが続かなかったりという苦い経験をしたことが何度もある一人だ。
日本語で普段使っているような細かい言い回しが、英語でもできないものか。こうした悩みを解決しようとするあるウエアラブル端末が発表された。英会話学習に特化した「ELI(エリー)」と呼ばれる端末だ。
グーグルもアイデアを絶賛
エリーは博報堂社内にある「monom(モノム)」と呼ばれるプロジェクトチームが中心となって開発したウエアラブル端末だ。正式名称は「English Learning Intelligence」の略で、洋服の「襟」と掛けている。文字通り、洋服の襟元に挟んで使うウエアラブルならぬ「襟アラブル」だ。アイデアそのものは米グーグルが主催する、新規商品のアイデアコンペでグランプリを受賞している。
洋服の襟元に着けて、どのように英会話学習ができるのか。仕組みはこうだ。まずELIに搭載する小型マイクがユーザー本人の日本語での会話を集音する。こうした得た音声データはスマートフォンに無線で転送され、専用アプリで音声認識、自動翻訳される。ユーザーが良く使う表現や業界内での特殊な言い回しなどを分析。最終的にユーザー本人が直面するシーンに応じた話し方を効率良く学べるという。
「自分自身がビジネス上の英会話で苦労してきた。大学まで『トムがケリーにどうした』といった勉強をさんざんやってこの結果なので、普段ビジネス上で話している会話の表現が浮かんでくることが重要だと考えた」。ELIの開発を主導したmonomの小野直紀プロダクトデザイナーはきっかけを振り返る。