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FBI長官解任劇と米大統領執務室の録音疑惑

「ウォーターゲート」事件を彷彿させる「トランプゲート」

2017年5月16日(火)

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米連邦捜査局(FBI)長官を突然解任されたジェームズ・コミー氏(写真:ロイター/アフロ)

食い違う解任理由の説明

ドナルド・トランプ米大統領が5月9日 、ジェームズ・コミー連邦捜査局(FBI)長官を突然解任しました。いろいろな憶測が飛び交っていますが、解任の本当の理由は何だったのですか。

高濱:解任の理由や経緯についてトランプ大統領と側近の説明が食い違っていて、メディアの報道も二転三転しています。整理してお話ししましょう。

 シーン・スパイサー報道官ら側近が記者団に当初語っていたのは、こういうことでした。トランプ大統領は、ジェフ・セッションズ司法長官ら から「コミーFBI長官は、ヒラリー・クリントン元国務長官の私用メール問題に関する捜査情報を明かすなど重大な誤りを犯した。解任に値する」との進言を受け、それを受け入れた。

 セッションズ司法長官が解任を進言した理由は、部下のロッド・ローゼンスタイン司法副長官(17年1月13日にトランプ氏に任命され、4月25日に就任したばかり)からの一通のメモランダムだったそうです。

 ホワイトハウス側近筋によると、このメモランダムにはこう書かれていた。「メール問題に関するコミー長官の対応は検事や捜査官が絶対にしてはならないと教わる典型的な誤りだった。しかも、その後の議会証言でも、この誤りを認めようとしなかった。長官はFBI内の信頼を完全に失っている」

つまり大統領がコミー長官解任に踏み切ったのは、自分の意思ではなく、司法省やFBI内部からの批判の声を受けての判断だった、というわけですね。

高濱:そうです。ところがトランプ大統領はNBCテレビ(5月11日放映)とのインタビューで「解任を決めたのは自分自身の判断。誰からの進言でもない」と言い出したのです。

トランプ大統領得意の朝令暮改ですか(笑)。

高濱:というよりも、ホワイトハウス内部の情報管理が混乱しているように見えます。ホワイトハウス内で、コミー長官解任に関する意思の疎通ができていなかったのか。側近たちもつじつま合わせをするために右往左往しているんですね。

録音テープの存在を示唆して“前長官口封じ”

 さらにトランプ大統領は12日、ツイッターでこんなことを言い出したのです。「ホワイトハウスがつねに完璧で正確な情報を提供すると期待しないほうがいい。そんなに正確な情報が欲しいのであれば、報道官による毎朝の定例記者会見なんか止めて週2回くらいにしよう。そのうち1回くらいは私が直接質問に答えてもいい。あるいは記者会見など止めてしまい、質問には書面で回答するのが一番いいかもしれない」

 ホワイトハウス記者会は、「説明責任や透明性、米国民の知る権利を低下させる」として抗議声明を発表、トランプ政権との対決姿勢を露わにしています。

 さらに米ニューヨーク・タイムズが「大統領はコミー長官(当時)に会った際に、大統領への忠誠を誓わせた」と報ずるや、トランプ大統領は直ちに反論。「コミーとはこれまでに3回話をしている。1回目は夕食を共にしたいという誘いを受けて応じた。あと2回は電話だ。『FBIが進める捜査の対象に私が入っているか』と質すと、3回とも入っていないと言っていた。コミーは長官に留まりたいと私に頼んでいた。私は考えておこうと答えた」

 まるでマフィアのボスがライバルを脅す時に使うような捨て台詞すら吐いています。「ジェームズ・コミーよ、俺たち二人の会話を録音したテープがこの世に存在しないなどとゆめゆめ思わないほうがいいだろう」

 この発言はまさに「やぶへび」もいいところです。大統領執務室に録音装置を持ち込み、そこでの会話や電話の内容を録音していると仄めかしたのですから。FBI長官の解任という電撃行動が、40年前のリチャード・ニクソン第37代大統領時代に起きた「サタディ・ナイト・マサカー」(Saturday Night Massacre=土曜日夜の虐殺事件)*を彷彿させて、世間を騒がせていた矢先のタイミングでした。
*:サタディ・ナイト・マサカーは、ニクソン大統領が73年10月20日、ウォーターゲート事件究明のために任命されたアーチボルド・コックス特別検察官を解任した事件。これに反発したエリオット・リチャードソン司法長官とウィリアム・ラッケルズハウス司法副長官が辞任した。

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高濱 賛

高濱 賛(たかはま・たとう)

在米ジャーナリスト

米政治・経済・社会情勢を日本に発信している。1969年、米カリフォルニア大学卒業、読売新聞社に入社。米特派員、総理官邸・外務省担当キャップ、デスクを経て、調査研究本部主任研究員。98年からUCバークレー校上級研究員。同年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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