事件1週間「こんな体たらく」の抗議の声
「前代未聞」の事態、内部関係者による犯行とほぼ断定
広島県警広島中央署(広島市中区)の金庫にあった、詐欺事件の被害金8572万円が盗まれた事件は、15日で発覚から1週間が過ぎた。署員の少ない当直体制の連休中を狙ったとみられ、県警は事情に詳しい内部関係者による犯行とほぼ断定。署員らの聴取を続けているが、逮捕には至っていない。大規模警察署内で多額の現金が消えるという「前代未聞」の事態に、同署には抗議の声が相次いでおり、県警は容疑者の特定を急いでいる。【東久保逸夫、小山美砂】
被害金は生前贈与を持ちかける手口の多額詐欺事件で2月に押収した証拠品。本来、証拠品は担当する生活安全課などの「証拠品庫」で保管するのが原則だが、現金が多額で収まらず、容量の大きい1階会計課の金庫で封筒などに小分けにした上、箱に入れて保管されていた。日本銀行によると、1万円札1000枚は厚さ約10センチ、重さ約1キロ。8572万円では約8.6キロになる。
事件は5月8日午後8時ごろ、会計課長が金庫を開けて現金がなくなっているのに気付いて発覚。金庫の鍵を置いていた机の引き出しの鍵が壊されていたことなどから、県警捜査3課などが窃盗容疑で捜査を始めた。
多額の現金の保管や鍵の保管場所などを知るのは一部の関係者に限られ、金庫周辺からは警察関係者以外の指紋などは検出されていない。会計課長が5月2日時点で引き出しに異常はなかったと説明していることから、犯行は、出勤する署員が少ない3~7日のゴールデンウイークに行われた可能性が高いという。県警は会計課員や詐欺事件の捜査員らを中心に事情聴取し、この期間の署員の出入りの状況と突き合わせ、容疑者の絞り込みを進めている。
一方、監視の目が行き届くはずの警察署で、多額の現金が盗まれたことに対し、同署には市民からの抗議や問い合わせが多く寄せられているという。窓口の署員に「こんな体たらくでどうするのか。早く解決を」と怒りをあらわにする男性もいた。県警幹部は「批判を受け止め、信頼回復のためにも捜査に全力を尽くしたい」と話している。