三菱ふそうトラック・バスは15日、大型観光バスに国内で初めて自動変速機を搭載したと発表した。アクセルを踏んだり離したりするだけで路面状況や車両の負荷に合わせて自動的に変速する。乗用車のような感覚で運転できるようにした。同社が電動トラックに続き、自動変速機や安全性能を高めたバスの開発を急ぐのは、運転手不足に直面するトラックやバス業界での将来の自動運転を見据えた布石でもある。
同日、千葉県浦安市内の広大なヘリポートで開いた発表会で、10年ぶりに大幅改良した大型観光バス「エアロクィーン」と「エアロエース」を公開した。
マニュアル車のようなクラッチペダルをはずし、2ペダル方式の8速の機械式自動変速機を導入。ブレーキペダルを離した状態で微速で走行できるほか、アクセルペダルを踏むとゆるやかに加速できる。ブレーキペダルを強く踏み停車すると、ブレーキペダルから足を離しても停車した状態を保てるため、運転手の疲労軽減を支援できる。
大型観光バスでは運転技術にこだわりをもっている運転手が根強い。同社の菅野秀一・バス事業本部長は「新型車を100社以上の顧客に乗車してもらったが、プロドライバーでも満足できる仕上がりだ」と強調する。トラックだけでなく観光バスでも運転手不足が深刻になる中、女性や初級者でも運転しやすい環境を整える。前方車両に近づくと警報音を鳴らし、衝突被害を軽減するブレーキ機能を搭載するなど安全機能も強化した。
同日には大型トラック「スーパーグレート」も21年ぶりに全面改良すると発表。観光バスと同様の自動変速機や安全機能を搭載した。同社のマーク・リストセーヤ社長は「少子高齢化は日本だけの問題ではない。運転手の確保にはできるだけ事故を削減し安全に運転できることが重要。今後5年から10年で自動運転のレベルをあげていく」と強調する。今月発表した電動トラックでも変速機をなくし、モーターで動かすことで運転がしやすくした。
三菱ふそうの親会社である商用車の世界最大手、独ダイムラーは欧州でトラックの隊列走行などの実証実験に乗り出している。グループの技術を結集して、自動運転社会で「変革を起こしフロントランナー(先駆者)になる」(リストセーヤ社長)ことを目指す。
(花井悠希)