川上さんはインタヴュアーとして、話題作『騎士団長殺し』(第1部 顕れるイデア編/第2部 遷ろうメタファー編、新潮社)にかんする問いを中心に、この国民的&世界的に支持されている小説家の志向を、とにかく広く、深くえぐろうとしている。
こんな〈死〉はイヤだ!
村上さんは、〈死にたいなって思ったこと〉は一度もないそうだ(310頁)。
村上さんの小説には超自然的なできごとが起こるものが多い。でも作者本人は超自然現象なんて信じていない(259頁)。
〈基本的には、死というのはただの無だろうと。でも、ただの無というのも、どんなものか見たことないからね〉(314頁)。
このあとに、村上さんの村上さんらしさが本書でもっとも凝縮された一節が続く──
〈村上 でも、実際に死んでみたら、死というのは、新幹線が岐阜羽島と米原のあいだで永遠に立ち往生するようなものだった、みたいなことになったらイヤだよね。駅もないし、出られないし、復旧する見込みは永遠にないし(笑)。
───〔川上〕それは最悪(笑)。
村上 トイレは混んでるし、弁当も出てこないし、空調はきかないし、iPhoneのバッテリーは切れて、手持ちの本は全部読んじゃって、残っているのは「ひととき」だけ。考えただけでたまらないよね。
───大丈夫、もう一冊「WEDGE」がある(笑)。〉(314-315頁)
大喜利のお題「こんな〈死〉はイヤだ!」にバカリズムさんが答えているかのようだ。イラストつきで。
村上春樹、フェミニズムに回答する
本書のインタヴューの読みどころはいろいろあるが、個人的には川上さんが村上作品の女性登場人物について質問しているあたりが印象に残った(30-33頁、237-257頁)。
村上作品はフェミニズムの立場から読むとたいへん評判が悪い、ということは、社会学者の上野千鶴子、小説家・詩人の富岡多恵子、心理学者の小倉千加子の鼎談『男流文学論』(1992、のちちくま文庫)以来広く知れ渡っている。
なんか女の人が主人公の男に勝手に近づいてきては、さくっと性行為に及ぶという、村上春樹の長篇小説でよく見る展開が、とりわけ槍玉に上がる。
この要素はフェミニズムだけでなく、男性にもあまり評判がよくない。たとえばドリーさんの『村上春樹いじり』(三五館)の中心的な批判対象となっているのもこのあたり。…
村上春樹書籍、 読みたいと思わず!
村上春樹氏って、初受賞から態度や品質が落ちてるらしいね。ポピュリズム大賞がいいとこ。