【2015|2014|2013|2012|2011|2010|2009】
良いコミックがお送りする年1企画、『この装丁がすごい!~漫画装丁大賞~2016』の発表です。今回で通算7回目となる本企画、いつもの通り「すごい!」とか「大賞」とかガワだけはとにかく大げさに、中身は「すごーい!」「たーのしー!」ぐらいの気持ちで好きな作品を紹介していきます(軽い企画なので、うっかり作家さんに「ランクインしましたよ!」等とリプライを飛ばすと激しい「お、おう」時空が発生する恐れがあります)。
それでは紹介数ベスト100+α、どうぞご覧ください。
●対象:2015年12月1日から2016年11月30日に発売された作品
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【1位】 宇宙のガズゥ / 横内 なおき
▲カバー全景
宇宙船に乗り込み、警備員として雇われた巨漢『カズゥ』を主人公に、船内で起こるドッタンバッタンの大騒動を描いたスペースオペラ作品。
作者の描くディフォルメの利いたコミカルなキャラ達が、『サイボーグクロちゃん』新装版の表紙では、シンプルな塗りわけが似合うことを見せてくれたが、本作でのアプローチはその真逆。キャラ達の丸みを帯びた可愛らしさはそのままに、大胆な陰影、細やかな塗りわけ、金属部分のメタリック感強調、グラデーション効果の多用などゴージャスな加工要素がてんこもり(装丁と共に、レタッチ、カラーリングにもデザイナーさんのクレジットあり)。「劇場版」と付けたくなるようなスケールを感じさせる表紙に仕上がっているが、本編を読むとそのスケール感が何ら間違っていないことがわかることはお伝えしておきたい。
出版:講談社
装丁:arcoinc 楠目智宏,池田悠 []
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【2位】 107号室通信 / カシワイ
▲中扉をめくる
とりとめのない空想的な世界を詩的に紡いだ、18編のフルカラー作品集。
各エピソードは「植物」、「収集」「記憶」「宇宙」の4分類でカテゴリー分けされており、本編では「絵本のような…」という感想も出てくる幻想空間が展開されるが、表題作には部屋をイメージさせるものをピックアップして、表紙はドアと少女のイラストを用いたもので静かにまとめている。この余白の広いイラスト+文字+赤線のシンプルさが、縦縞の入ったカバーの手触りの良さと合わさってとても気持ち良い。見返しや開始1ページ(書影右上)には緑のページが挿入され、次のページに中表紙が出てくるが(書影右下)、中表紙は薄紙になっていて、改めて出現する扉(▲)を透かしている。他にも裏表紙、目次、奥付など、基本は扉がつき、中の幻想空間へと誘うデザインとなっている。
出版:リイド社
装丁:クラフト・エヴィング商會
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【3位】 あげくの果てのカノン / 米代恭
▲カバー全景
高校時代から8年、片思いの先輩が既婚者になってもその姿を追い続けるメンヘラ・ウエイトレスを主人公とした恋愛作品+SF。
雨上がりの空の下、崩壊したビル街を背景に佇む、ウエイトレスの制服に雨具を羽織ったヒロイン。灰色の多い背景に彩を添えるような赤ピンクのタイトルが、変則的な配置でヒロインを取り囲み、さらにタイトルエリアに重なるように英字タイトル、作者名などの白字が配置されている。
▲カバー全景
こちらは2巻。カバー下(書影右上)に収録されたシンプルな英字タイトル+表紙背景の構成と比較すると、表紙における文字の賑やかさがわかりやすい。
過去の本企画に対して「紹介している作品の半分以上、文字が読みづらい」的な感想を見たことがって、その時にはそういう視点も大事だよな~と目からウロコが落ちた気もしたが、ウロコというものは再生してしまうもので、読ませるより先に目に飛び込んでくるようなステ振りの尖がったデザインの魅力には、やはり抗えなかった。
出版:小学館
装丁:川谷デザイン []
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【4位】 スペシャル 1巻 / 平方イコルスン
▲裏表紙
田舎に引っ越してきた転校生の視点で、怪力ヘルメット女子を筆頭に、クセの強いクラスメイトの生活を眺める日常作品。
イラストはヘルメット女子を中心に据えた授業中らしき教室の1シーンになっていて、白地をベースに印刷はシルバーと黄色のみ。書影右上は本編の1ページで、作品の絵柄は線がしっかりしていて黒ベタが多く、トーンを用いずカケアミを多用しており、全体的に重たい印象を受けるが、表紙では黒部分がシルバーに置き換わることで軽くなり、そこに黄色をヘルメット、教科書1冊、文字を囲む円と的を絞って加えて、バランス良く明るさを取り入れている。絵柄の重さというか密度感は、作品としては味にあたる部分で、そこを表紙では抑えつつ、しっかり作者の絵柄をアピールしているカバーになっていると感じた。
出版:リイド社
装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/]
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【5位】 寝台鳩舎 / 鳩山郁子
▲裏表紙
戦時下の空に、機密を運ぶ任務を担いながら、無数に散っていった軍鳩(ぐんきゅう)。寝台列車を舞台に、少年と軍鳩達との不思議な出会いを描いた幻想作品。
擬人化と言うべきか、通信管を足に結わえて優雅に空を舞う奇妙な制服姿の軍鳩達。細やかな線の描き込みによって陰影を与えたイラストを青と銀で塗り分けたそれは、銅版画のような趣を備えている。
カバー下は味わいのある古書の佇い(書影右上)。本編の前後には黒いページ+銀の羽が挟まれる(書影右下)。また、本編の一部に空色を差し込むなど、構成的な見所も多い、芸術という言葉が似合う1冊。
出版:太田出版
装丁:note 芥陽子 []
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【6位】 さらば、佳き日 2巻 / 茜田千
▲裏表紙
とある地方都市に“新婚夫婦”として引っ越してきた「兄」と「妹」の生活を描いた、オムニバス・ストーリー作品。
夕暮れ時、雪が残った海沿いの道を歩き振り返る「兄」。今回紹介している作品の中でも特にイラストに目を奪われた1冊。白抜きのタイトルは小さくて目立つことはしないまでも無視はできない大きさで、「さよなら、」よりも強い「さらば、」そして改行して1行ほどの空白を挟んで「佳き日」。切なさが語りかけてくる。
出版:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
装丁:ウチカワデザイン 内川たくや []
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【7位】 ミッドナイトブルー / 須藤佑実
▲裏表紙
7編の物語を収録した短編集。
プラットホームに佇む少女のイラストを、タイトルと合わせた青系をメインとした退色的ににも見える色合いでまとめていて、リリカルな空気を感じさせる。タイトル、作者名など文字要素は概ね「そのまま」と「箱入り」で2回使われていて、さらにタイトルの語源解説が箱入りで添えられている。
書影右下は中表紙で、本編の印刷色もタイトルのように青系。書影右上、ボール紙のような質感のカバー下は各エピソードにまつわる小物が箱に収まったおまけイラスト。
裏表紙(▲)の右端には各エピソードの1コマが並んでいて、さらに各話タイトルはコマに紐付ける形で袖に配置されている。何気にこれらのコマには時系列的に物語の後の様子が描かれていて、手に取って購入の参考にする時点でネタバレになるレベルの情報を持たせていないながらも、一通り読み終わった後ではかなりささやかなエピローグとして機能する。
出版:祥伝社
装丁:コードデザインスタジオ [/]
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【8位】 BLACK‐BOX / 高橋ツトム
▲裏表紙
父親は殺人罪で服役中、兄も殺人で捕まったという“殺人一家”の次男がボクシングのプロテストに挑むボクシング漫画。
レトロを感じさせる麦わら色を下地に、黒+1色(1巻:赤、2巻:青)の3色構成。さらさらとしたカバーの質感がデザインとマッチして、ビンテージ感の出たボクシングポスターの雰囲気が上手く出ている。1巻表紙の元ネタはおそらく、モハメド・アリのポスター。
出版:講談社
装丁:LOGGIA 川瀬豊
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【9位】 なんてことないふつうの夜に / 嶽まいこ
「ふつう」の夜をテーマにした、12の連作短編集。
紺色の背景に白い点を散りばめた夜空のような背景に、枕やぬいぐるみ、本やスマホを持ってそれぞれの夜を迎えるキャラクター達。タイトル、作者名を入れた枠は枕の形。カバーの紙は裏面がまだらな薄茶色。このまだら具合と紙の質感が表面にも出ていて、白部分もちょっぴりムラがあり暗く、さらっとした線とシンプルな色分けのイラストにアナログな風味を加えている。
出版:祥伝社
装丁:Pri graphics 川名潤 []
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【10位】 彼女の季節 -少女アラカルト- / にいち
▲カバー全景
恋する少女達、11人のオムニバス。
春の夕暮れ時、風が吹き込んで桜の花びらが舞い込んだ教室で、少女は意を決して手紙を差し出す、というシチュエーションがわかりやすいイラスト。タイトル、作者名は白抜き。その他レーベルやローマ字の装飾が銀色で散りばめられており、ささやかに高級感を出している。これは偶然の産物か、銀色の部分を確かめるべく光にかざすと、レンズで捉えたかのように光状(もしくはグレア)を付けた夕日の白色部分がリアルにまぶしく感じられるよう目が錯覚するのがお気に入り。
フルカラーの単行本であるが、桜の花びらが添えられた開始ページ(書影右上)や目次ページ(書影右下)など、所々に入る白地の多いページの処理が丁寧で、全体がよくまとまっている。
出版:KADOKAWA
装丁:BALCOLONY. [/]
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【11位】 服を着るならこんなふうに 1巻 / 縞野やえ、 MB
▲裏表紙
着るものに無頓着だった主人公が、妹の手ほどきを受けてオシャレの楽しさを学んでいく、ファッションストーリー作品。作中ではユニクロが実名で登場するが、このいかにもユニクロと言えるカラーバリエーションを揃えた商品の陳列棚は、とても表紙映えすることがわかった。タイトル、作者名、巻数等使える文字は一箇所に集められて、商品のタグ風にデザインされており、この本のISBNまで載せてタグらしさを演出しているのがポイント。裏表紙(▲)は表紙のキャラなしバージョンになっていて、こちらでもバーコードエリアはタグ風。背表紙はボタンのマークをあしらったモノトーン構成で、いつもは金色の角川マークもここでは黒色。表紙の主人公のアイテムを紹介する中扉(書影右上)、チェックのパターン背景に文字エリアをラベルのように配置した目次ページ(書影右下)など、全体が品物のようにまとまっていて、清潔感が気持ちよい装丁になっている。
出版:KADOKAWA / 角川書店
装丁:D式Graphics 沼利光 []
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【12位】 ファイアパンチ 1・2巻 / 藤本タツキ
雪と飢餓と狂気に覆われた世界で、再生能力を持つ少年がその身を焼かれ続けながら、炎を与えた男に復讐すべく旅をするファンタジー?作品(1巻時点)。
少年ジャンプ+というWEBアプリで配信され1話から話題になった作品として、そういう作品はカバーデザインも仕掛けてくるというか、面白いことが多いの期待していた。そして結果がこちら、一般的なジャンプコミックスのサイズを選びつつ、特大バストアップイラストに、顔への被りを気にしない特大タイトル、巻数が眉間に被る作者名+巻数の中心線縦配置のインパクト勝負。背表紙のタイトルと比べてみると、表紙の上では端の部分を切りつつもみっちりと治まるように大きく配置してパンチを利かせていることがわかる。
その後ちょっと驚いたのが2巻で、燃えたぎる炎を全面に出した1巻から一転して、こちらは冷たさを感じさせるような青ベースの表紙に。なるほど、タイトルに「ファイア」と明確に熱さの属性を持った言葉を入れつつも、文字の造型自体には炎らしい加工を加えていないし、背表紙のタイトルも白抜きにしているので、表紙で色を変えるのもアリなんだなと感心した。4巻からはまた少しパターンが変わるが、絵柄とタイトルのベースが好みなので今後面白いものが出てきそうな気がしている。
出版:集英社
装丁:稲妻温泉 岡下陽平
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【13位】 ぼくと姉とオバケたち 完全版 / 押切蓮介
▲裏表紙
曰く付きの物件に引っ越したオバケが怖くない姉・麗子と怖がりの弟・とぼけたお化けたちで送る、にぎやかな共同生活。押切先生の好調あってか各社で数年前の作品の完全版が出されまくる流れの中、2巻分が1冊にまとまって刊行された4コマ漫画の完全版。
縁側でオバケたちに取り囲まれながら水遊びをする姉弟のイラスト。キャラがわんさかいて、塗りにムラのあるいつもの感じで着色すると濃ゆい雰囲気になりそうなものだが、今回は薄い色味のものをエリアごとに均一に塗り分けられていて、これが散りばめられた文字と交じり合って主張しすぎず、賑やかと同時に軽さを持ったバランスでまとまっている。
出版:竹書房
装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/]
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【14位】 ゴーガイ!岩手チャグチャグ新聞社 明日へ/ベストセレクション / 飛鳥あると
▲裏表紙
地方新聞社を舞台にした地域振興漫画、その新作として震災から5年、被災地の今を描いたものが『明日へ!』、既刊3巻から人気エピソード5編を選んで刊行されたものが『ベストセレクション』。
主人公の取材風景をイラストにしており、人物に焦点を当てた様に見える背景のぼかし、白枠など、イラストが写真のようにまとまっている。そこに大きなタイトルが加わって、そこにストレートな力強さを感じた。
裏表紙(▲)は、重ねられた作中のコマの隙間に収録エピソードの解説を入れる構成になって、バーコードはなし。講談社の単行本は、バーコードが消えてなんとなく寂しいと感じることがあったが、要は慣れの問題で、きっちり設計されている場合はバーコードがない方がまとまる、とこちらの裏表紙を見て思った。
出版:講談社
装丁:arcoinc 楠目智宏 []
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【15位】 憂鬱くんとサキュバスさん 1巻 / さかめがね
▲裏表紙
「鬱」状態の青年と、彼をターゲットに定めたサキュバスの居候生活を描いた、エッチで純粋な1ページ完結型の日常作品。
WEB媒体『となりのヤングジャンプ』で連載しており、紹介ページに行くと
・カバーは柔らかな手触りにこだわった特殊用紙使用。
・本文用紙は白味度を抑え、目に優しい読み味に。
・「ジョジョリオン」などを手がける気鋭デザイナー・成見紀子氏による、女性も手にとりやすい優しいデザイン。
と単行本の装丁をアピールしている。書影右、「無い袖は振れない」のエピソードをピンク色に染めて背景にしているが、並べてみると、下端の2コマの上のスペースを広げてキャラの腰掛けるスペースを作るという細やかな調節が確認できる。さらに、本編を丸々使用しながら、ピンクと水色の組み合わせが、黒のベタ部分が重く、個性的な作者イラストのクセの強さを和らげつつ、本編の優しい読み味を伝えられているように思える。「女性も手にとりやすい優しいデザイン」、なるほど。
出版:集英社
装丁:成見紀子
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【16位】 魔女の箱庭と魔女の蟲籠 -鈴木小波短編集 / 鈴木 小波
▲+裏表紙
魔女の作った奇妙な姉弟を描いた連作短編メインの作品集。
水の中を落ちていくような逆さまの姉弟。底には朽ち果てた骸の山。ドクロ単体で見てみると結構リアルに描かれていて、背景は塗りの質感的に怖い、薄気味悪い成分を多分に含んでいるが、人物の周りに文字の蛍光イエロー、水の波紋や水泡の白色など明るい色が散りばめられることで、薄気味悪さが中和されて幻想的な空気感のみが強調される。蛍光イエローの色味が絶妙で、手に取ったときに印象が大きく変わった(上の書影より蛍光色部分が明るく際立っている)ので、現物で確認してほしいタイプの1冊。
出版:一迅社
装丁:imagejack 團夢見
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【17位】 ガイコツ書店員 本田さん 1巻 / 本田
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作者であり、コミック担当の書店員を主人公に、外国のお客さん対応エピソード、営業さんとのやりとり、接客研修など漫画売りのあれこれを描いた実録エッセイ系の作品。ガイコツ、紙袋、ガスマスクと、この作品では書店員にエキセントリックな風貌をあたえており、かつ外国人エピソードが多く、表紙に描かれているのはそんな方々。キャラの説明を兼ねるタイトルは枠に入れて矢印で当人を指し、他のキャラにも枠と矢印で愛称を添えている。作者の絵柄には独特の濃さがあって、デザイン的にはこれをポップにまとめている。イラストのメインが書店員姿のガイコツということでまずインパクトがある表紙。ガイコツに書店員という属性が付くと、怖さが消えて弱々しさや哀愁が出てくるところが面白い。
出版:KADOKAWA/メディアファクトリー
装丁:arcoinc []
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【18位】 総天然色 バカ姉弟 1巻 / 安達哲
▲カバー全景
ご近所のみんなに愛されて暮らす、推定3歳の姉弟のほのぼのした日常を描いた『バカ姉弟』全5巻の完全新作。
メインのイラストの下の部分を上、上の部分を下に配置した、流れるフィルムのコマのように、止め絵の中に時間を感じさせる3段構成。タイトルは既刊のロゴを踏襲しているが、これにカラフルな「総天然色」の文字が加わりつつ作者名、巻数と共に白枠に収まって、アイテムとして洗練された印象を持った。
クラフト紙のような色合いのカバー下(書影右上)や遊び紙、姉弟の顔を散りばめた余裕のある各話タイトルページ(書影右下)など、ちょっとしたところが感じの良いフルカラーの1冊。
出版:講談社
装丁:-
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【19位】 宝石の国 6巻 / 市川春子
▲カバー全景
灰色・白のグラデーション背景に、合金の結晶と雪が散らされ、冬の訪れを感じさせる第6巻。いつも通りに宝石ホログラムが美しい、安定の作者自装作品。
普段、誰が単行本のカバーデザインをしているか気にしていない場合は、この記事を見て、その大半がデザイナーによるものだとお分かりいただけると思うが、次に、漫画家自身がカバーをデザインする事はあるかと疑問が出るもしれない。なので、この作品はちょくちょく紹介しつつ、自著の装丁を手がけるし、小説のイラストも描くし、限定版のグッズデザインもするし、ポケモンデザインの原案をまかされる漫画家もいるという情報は入れておきたい。
出版:講談社
装丁:市川春子
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【20位】 想幻の都 1・2巻 / 梶谷 志乃
22世紀のフランス。死人のパーツを使った人造人間が普及し、体の代替品として、家族として、労働力として活用される街で繰り広げられる愛蔵劇を描いた作品。
街や墓地を生やしたドクロをイラストとして用いた表紙。全2巻で、背景色を黒/白、タイトル色を金/銀と対にしている。ハグルマの組み込まれたタイトル、見栄えを意識して添えられたような振り仮名、ローマ数字の巻数、散りばめられたフランス語など、装飾的な要素が強い文字使い、蛇のウロコの様な凹凸の付いたカバー表面などと合わさることで、ドクロは不気味さよりも幻想的な雰囲気をまとっている。ハルタというかフェローズ。
出版:KADOKAWA
装丁:BALCOLONY. [/]
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【21位】 Levius/est 1巻 / 中田 春彌
▲裏表紙
IKKI(小学館)から、ウルトラジャンプ(集英社)へ移籍したスチームパンク作品。出版社が変わりつつも、そのデザインは引き続きgift unfolding casuallyさんが担当。
「エスト」として巻数を仕切り直すと共に、デザインも小学館版(書影左)の下地1色、線画部分1色の2色構成から一新。今回は白背景、上位レイヤーのメインイラスト(多色)、下位レイヤーのサブイラスト(単色)の3段構成で進めていく模様。緻密なタッチと濃淡の細やかなイラストが背景と溶け合って、白色部分にも質量を感じさせる白背景タイプとなっている。
出版:集英社
装丁:gift unfolding casually []
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【22位】 かなたかける 1~3巻 / 高橋 しん
▲3巻を前
東京からきた転校生・かなたが箱根の町を駆けながら仲間と共に成長していく、青春駅伝作品。
青空+人+白い文字情報。地面を描かずに開放感を与えるタイプの表紙に分類できるが、そこにマラソンの要素が入ると見えない地面がはっきりと意識できて、爽やかかつ、とても力強い。ちなみに背景の雲は各巻で同じものをベースにしながら、幅方向で載せる範囲を変えており、ちょっとした調節と絵柄の置き方で見え方が変わっているのがポイント。
出版:小学館
装丁:VOLARE 関善之 []
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【23位】 アイアムアヒーロー 21巻 / 花沢健吾
▲カバー全景
前回紹介した18巻はタイトルが読みづらかったが、今回はさらにエスカレートしてしまった。これは読めないと言うべきなのか、日本語のタイトルも英語の表記部分もカバー全体に大きく配置しているため、表紙だけ見るとアイ「アム」アヒーロ「ー」、I a「m a」 HEROとタイトルの一部しか写っていない。そもそもカバー全体で見ても一部の文字にはバーコードエリアが被ってしまっていて、21巻ということさえわかれば、後は読ませる気はないが見ればわかるだろうというデザインになっていると言える。そんな表紙のやりすぎ具合が貴重な本作も次巻で完結。最後はどんな表紙で作品を締めくくるのか、とても楽しみにしている(まだ見ていない体)。
出版:小学館
装丁:井上則人デザイン事務所 [/]
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【24位】 堕天作戦 1巻 / 山本 章一
長い月日の中に感情を落としてしまった不死者を主人公として、魔人と旧人類との戦いを描いた架空戦記作品。
表紙は黒、灰色、金色のほぼ3色構成(+レーベル表記の白文字)で、不死者の再生過程をイメージさせるドクロ部分が煌びやかに光を反射する。このドクロ部分、一面の金の箔押し部分は鏡のように自分の顔を映すほど滑らかに加工されており、マットな質感の黒・灰色部分との差でとにかく浮き出て見える。スキャナー泣かせの箔押し表紙なので、全部黒く写った画像を見たときにはどうしたものか悩んだが、こうやって見せれば何を推しているのかはわかってもらえると思う。
出版:小学館
装丁:Beeworks 近藤雅己
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【25位】 いい百鬼夜行 / 川西ノブヒロ
▲裏表紙
なまはげ、ねこまた、河童、座敷童に女子高生幽霊。優しい妖怪たちが棲む小さな町の出来事を描いた、ほんわか妖怪群像漫画。
人と妖怪、みんなで集まって同じ方向を歩くイラスト。人のマフラー姿や妖怪の足跡があって、白い背景は雪のように映る。さらにカバーには小さい星の混じったホログラムが仕込まれ、優しい雰囲気でまとまっている。
カバーイラストは三種のデザインの中からツイッターの投票によって決められており、2番目に票の多かった案は中表紙(書影右上)に使用された。フルカラー作品で、あとがき、奥付までひっくるめて丁寧に作りこまれた良い1冊。
出版:講談社
装丁:welle design []
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【26位】 デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 5巻 / 浅野 いにお
▲カバー全景
2年ぶりの紹介。紹介していない年に、「この作品みたいな装丁が紹介されていると思ったのに」というコメントを見ることもあれば、6つ上の作品に「毎回紹介しなくてもいいのに」と言った方もいて、矛で刺されたからといって盾で殴られないとは限らないんだな~、というのはどうでもいい話で、タイトルロゴが透明なため、角度によってはほとんど顔だけに見えるこちらの作品だが、5巻ではキャラが長髪の上、少ない背景エリアが紫で暗く、一層顔だけ感が強くてインパクトがあった。
出版:小学館
装丁:ベイブリッジ・スタジオ 黒木香,佐藤千恵 []
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【27位】 ツインドルの箱庭 / 稚野まちこ
▲WEB掲載時との比較
双子の魔法使いのジルとジゼル。同じ杖を持ち、ものに命を吹き込む魔法を持った二人の数奇な運命に迫るダークファンタジー作品。全編フルカラー。
お立ち台の上に背中合わせで立つ弟と姉。飾り枠、金の幕を開けて舞台を見せるような構成になっており、イラストが金の箔押しで飾り立てられてとても煌びやか。
こちらの作品はWEB媒体『となりのヤングジャンプ』連載しており、本と体裁を揃えて2ページを一まとめで表示させていて、並んだページの間には装飾線が挟まれる。これをそのまま本にすると装飾線が見えづらくなってしまうので、単行本化の際には装飾線が左右に加わっている(真ん中にも線は残っていているがっほとんど綴じ代化している)。
出版:集英社
装丁:中川ユウヰチ
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【28位】 木陰くんは魔女 / 小森羊仔
ワガママの女子高生・夢子と団地の管理人兼魔女の木陰くん。ボロい団地を舞台に巻き起こる不思議な出来事と二人の恋を描いたファンタジー系少女漫画。
座り込むッ人物を中心に添えたファンシーな1枚絵の上に各種文字を重ねる構成で、イラストの彩度は抑えながら、絵的な装飾のない黒々しい文字との差により明るく見え、ポップな少女漫画らしさと落ち着きを両立しているように思えた。
出版:集英社
装丁:川谷デザイン []
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【29位】 スモーキン’パレヱド 1巻 / 片岡人生,近藤一馬
▲裏表紙
家族と手足を失った少年が戦闘用義肢の力で、異形になった元生体移植者「スパイダー」に立ち向かっていく、バトルアクション作品。グロ中尉。
向き合う少年と一本角の男。グレーの背景、モアレのような縞の入った白いタイトル。角、兵器のような義肢と、非日常要素を少し出しつつシンプルな要素で飾り立てたスタイリッシュでシリアスな表紙。『交響詩篇エウレカセブン』、『デッドマン・ワンダーランド』に続く、草野さんデザイン。草野さんが関わるこの系の単行本は、目次(書影右下)や幕間などがいちいちカッコよくてコストパフォーマンスが高い。
出版:KADOKAWA/角川書店
装丁:草野剛デザイン事務所 草野剛 [/]
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【30位】 かつて魔法少女と悪は敵対していた。 3巻 / 藤原 ここあ
▲裏表紙
最終巻。
作者の不在を感じさせない仕上がりの美しさに、少し複雑な気持ちになる。
出版:スクウェア・エニックス
装丁:コードデザインスタジオ [/]
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【31位】 スティーブズ 4巻 / うめ(小沢高広・妹尾朝子)、 松永肇一偶数巻の背景が白、奇数巻の背景が黒なので本巻は黒。そしてスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアック二人の革命の物語であるが、表紙を飾るのは単独ビル・ゲイツ。2度目の黒背景ということで、1度目は二人のスティーブに白いスーツを着せて白さを際立たせていたが、2度目は黒背景+黒スーツで黒ずくし。足を組んで椅子に座る様はキャラによっては「厨二」と切り捨てられそうなほどカッコつけているが、「ビル・ゲイツ」なので納得してしまった。
出版:小学館装丁:VOLARE [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【32位】 新装版 ウッディケーン 上・下巻 / 横内 なおき樹木の力と木目調の体を手にした新米教師のヒーロー譚。『コミックボンボン』の連載作、上・下巻の新装版。 キャラは白黒で背景1色、文字用で1色で計4色。地面や舞台のイラストは黒ベタで、同じく黒ベタで陰影を強調したキャラと同化している。先に紹介している『宇宙のガズゥ』との塗り方は対極的。双方作品の内包する真面目な部分を上手く見せていると思う。
出版:講談社装丁:BALCOLONY. [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【33位】 辺境で 伊図透作品集 / 伊図透雑誌掲載作、自費出版本で出された既刊『おんさのひびき』のエピソード、未発表作等を集めた作者初の初短篇集。
レールも靴も作品で頻出し、この短編集を象徴するに相応しいイラストになっているが、中身の情報を抜きにしても、精彩に描かれたほぼ無機物のそれが、人物を普通に入れたときと同じか、それ以上に漫画として期待させる情報量を持っているとも思える。英字部分が暗い赤色で、その他はほぼ白黒に見えるが、レール部分を灰色、シルバーで色分けしていたり、枕木(レールの下に敷かれている木)の線を焦げ茶色にしているなど色使いが絶妙。
出版:KADOKAWA/エンターブレイン装丁:新井さおり □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【34位】 ぼくらのじかん。 1巻 / にしださとこ少年少女の心が揺れ動く様をオムニバス形式で描いた、comico発のオールカラー作品。
高所の葉っぱを右下に入れて見下ろし視点を強調したイラスト。人物部分を避けて子供が落書きしたように道路に同化させたタイトル1、黒字タイトル2とタイトルを2箇所に使っていて、タイトル1が遊んでいる分タイトル2は真面目に読ませる役割を担っていると言えるが、タイトルを挟むカッコ、○で囲んだ巻数、大きめのローマ字表記など、タイトル2周りの整理された文字の集合が、暖かいイラストの雰囲気を損ねずに浮き出て、イラストを正しく漫画の表紙として完成させている。
出版:KADOKAWA装丁:ベイブリッジ・スタジオ 黒木香 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【35位】 ヤコとポコ 3巻 / 水沢 悦子3巻まで出ると、デザインのパターンが確立されて、どういうお約束になっているか説明できるようになり、この作品の場合は背景は白固定でタイトル位置、キャラ位置固定で「ヤコと」の下にヤコ、ポコの下にポコが来るのがお約束。そして「ポコ」の文字色はポコの色グレーで固定、「ヤコと」の色はヤコの服や持ち物の持つアクセントカラーと合わせられている。3巻の、黄緑+グレーの組み合わせが大変好みだった。色使い、色の構成は誰がどの段階で決めているのだろうか。うさくん?
出版:秋田書店装丁:Pri graphics [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【36位】 つまさきおとしと私 2巻 / ツナミノ ユウ風変わりな色選びで個性を放っていた表紙で、
1巻から灰色、黒、黄色の色使いはそのままに、
紫が赤に変わったことにより一転して毒気が抜け、
愛が通じたと言って良いのかとてもハッピーな表紙になった。
祝完結。
出版:講談社装丁:GENI A LOIDE [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【37位】 でぶせん 7・8巻 / 安童夕馬, 朝基まさし『サイコメトラー』に登場した福島満が瓜二つの女性に成りすましてニセ教師として活躍するスピンオフ作品。
元々漫画形式の表紙でメタな自虐ネタを展開していたので、ドラマ化決定の際には、この美味しいネタを見逃すはずもなく、宣伝と自虐ネタを両立させるというこのフォーマットならではの遊びを見せてくれた。
出版:講談社装丁:スラッシュ 福村理恵 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【38位】 あの子と遊んじゃいけません / どろりWEBメディア「オモコロ」発。Twitterやはてブで拡散された更新情報から新作を読んで気付くと過去作も読み進めちゃってる系、人類には早すぎるディストピアギャグ短編を集めた初作品集。
白背景で、人物の配色は水色、みどり、黄色を使い分けている。表紙で「愛と平和」の象徴的にも使われる一列手つなぎをどこか違和感を持ったキャラ達にやらせつつ、タイトルの思想は差別的。ポップな見た目の中に悪意が入っている素敵な表紙。
出版:小学館装丁:OFFICE ASK 米川裕也 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【39位】 町田くんの世界 3・4巻 / 安藤 ゆきタイトルが一度落ち着いた3巻、再び攻めた4巻。「の」の字が下端から上端にまたがったこちらの4巻や、同事務所デザインの小説『階段島』シリーズなど、「確実に読めるタイトルを添える」よりもゆるく、「ふりがな的な要素としてひらがなタイトルを添える」だけでも多少大胆なタイトルデザインは許可されるのかもしれない、とルールを想像してみると面白い。
出版:集英社装丁:川谷デザイン [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【40位】 東京喰種:re 5巻 / 石田 スイ過去アップした記事を見て確認したのは、この作品を紹介していたり、紹介したくなるのは主人公が描かれているダークな表紙。「:re」で佐々木琲世という新しい主人公が登場して妙に明るい表紙になってしまったときには物足りなさを感じたが、中身は引き続き人喰いの漫画だったので表紙はすぐにダークな路線に戻り、5巻で表紙に主人公・金木研が戻ってきた。やっぱり金木研は良い。
出版:講談社装丁:L.S.D. シマダヒデアキ [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【41位】 ニュクスの角灯 1・2巻 / 高浜寛明治初期の長崎、異国の品々が並ぶ道具店で働く少女の物語。ニュクスの角灯(ランタン)。手描き感の出ている飾り枠にイラストを収めた、レトロな広告をイメージさせる表紙。手触りも良くアンティークのような品の良さを持っているので実物を推したいが、電子でもいいから読んで欲しいという気持ちもある。
出版:リイド社装丁:井上則人デザイン事務所
坂根舞 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【42位】 AIの遺電子 1巻 / 山田胡瓜人間の領域にまで到達した機械「ヒューマノイド」達の人生を、彼らの「病」を治療する新医者の視点で描いたSF医療作品。
人とは違った頭内の構造をレントゲンのように透かして見せた女性のイラストに被せる形で、表紙3分の1ほどの透過型の縦帯を配置し、中心に「AI(アイ)」を大きくしたタイトルを載せている。続く2巻からはタイトルエリアが右に寄ってキャラが前を向く構成で定着し、少年漫画としての正当なキャッチーさを増している。それはそれで良いことだし、おそらく手探りの過程となったこの表紙はもちろん良い。
出版:秋田書店装丁:土方芳枝 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【43位】 ディザインズ 1巻 / 五十嵐大介自然界を超越した異形の生物──HA(ヒューマナイズド・アニマル)。カスタマイズされた生物達が繰り広げるハードSF。
種別を超えた動物達が大行進するイラスト、その中心には、女の顔を持つヒョウ、そしてカエルの足を持つ裸体の女。イラストを最大限に見せるべく、文字情報は左上に集められ、英字のタイトルロゴを下に敷いてまとめられている。表紙から裏表紙の袖まで続く動物達のイラストは圧巻。カバーの質感も雰囲気を底上げしている。
出版:講談社装丁:アーテン 福躍惠 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【44位】 かくしごと 1・2巻 / 久米田康治娘に仕事がばれることを恐れる漫画家が、アシスタントや編集者を巻き込んで二重生活を送るコメディ作品。「隠し事」で「描く仕事」。
父娘が腰を下ろして並ぶ風景イラストに白枠、ペン書き風のタイトルと、ピンナップ写真のような表紙。『絶望先生』『せかどろ』から続く、お馴染みのhiveさんデザイン。
出版:講談社装丁:hive 久持正士,土橋聖子 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【45位】 亜人 9巻 / 桜井 画門明るい赤紫の鮮やかな背景色が、その人のような何のがありえない口の開きを鮮明に浮かび上がらせて、それが決して人ではありえないことを認識させる9巻。大きく開いた口の隙間は「亜人」の2文字タイトルが入るくらいには空いており、暗い灰色部分に重ねるよりも読みやすくなると思われるが、そうはせずにタイトルは一歩引いた形でイラストに溶け込んでいる。このシルエットで「亜人」を
認識してくれと言わんばかりに力強い。
出版:講談社装丁:アルティザン [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【46位】 サタニスター 完全版 1巻 / 三家本 礼両拳に嵌めたナックルで殺人鬼を狩る悪魔寄りのシスター「サタニスター」の活躍を描いたスプラッターアクションバトル漫画。元ぶんか社コミックスで、『血まみれスケバンチェーンソー』映画化を記念してビームコミックスレーベルで復刻した完全版。
イラスト横使い+通常方向の文字使い。表紙の下半分でタイトル、英字タイトル、ローマ字作者名。作者名の4段を目立たせる、作者イラストに切れ目を入れず大きく配置する、この二つをイラストの横使いで実現している。全4巻でそれぞれイラストの方向が異なり、巻数の方向だけイラストの方向と合わせている模様。
出版:KADOKAWA/エンターブレイン装丁:HONAGRAPHICS 椿山喜昭 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【47位】 新装版 ミュージアム 完本 上・下巻 / 巴亮介映画版の公開に先がけて、新エピソード付きで完本として発売された新装版。上巻はカエル男と共に建物や標識他多数のアイテムを敷き詰められ、殺人者の潜む不穏な街を構築。下巻は雨の日のカエル男で、部分的に見える素顔と共にマスクの下に潜む悪意をさらけ出している。黒+金、黒+銀とちょっとリッチな佇まいになって帰ってきた上下巻。
出版:講談社装丁:RAZZO 稲富健 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【48位】 私の少年 1巻 / 高野 ひと深30歳OLと12歳小学生。この感情は母性? それとも――。『このショタが尊い!2017』大賞作品。
寝そべる少年と傍らで少年を見つめる女性。淡い色合いのイラスト、白背景、特大4文字タイトルに絶妙なまとまりを感じた表紙。2016年、名和田さんはコミティアのトークショーで「名和田さんの表紙がわかる」という意見に「自分らしさ(個性)が出てしまうのもちょっと…」的なお話をしていたが、それはそれ、これはこれ。この表紙から溢れ出ているような名和田さん感が好物な人も少なくないのではないかな、と踏んでいる。
出版:双葉社装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【49位】 HUMANITAS / 山本亜季盲目の剣士、チェス選手、イギリス人貴族。今とは違う世界で抗い続けた者たちを描いた戦士列伝。
表紙を飾るのは15世紀中央アメリカを生きた盲目の剣士。剣を片手で持ちつつ手を前に突き出した独特のポージングが目を引く。剣の全体像が見えないイラストのトリミング具合は大胆で、古めかしい異国の情緒を感じさせるタイトルロゴと合わさって、とても力強い。
出版:小学館装丁:ベイブリッジ・スタジオ [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【50位】 はじまりの竜とおわりの龍 / 海人井 槙龍と人が交わり紡がれた歴史の一端を4篇のオムニパスから覗き込む、ファンタジー叙事詩。
タイトルの中で使い分けられている作品の核、「竜」と「龍」の文字が暗い赤色で強調され、他は全て白黒で構成された表紙(背表紙や袖には銀色の印刷あり)。タイトルの一部を色付けして埋もれないようにしつつ、大きさは小さくしていて、とにかくその白黒イラストを見せるようにしている。「竜」や「龍」の存在を示唆しつつ、一般的にイメージされるそれが描かれていないのもポイントで、想像力を刺激する、という側面も持っているかもしれない。
出版:小学館装丁:twintails 川村将 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【51位】 エリア51 13巻 / 久正人黄緑背景の上で、影のような黒色と
キャラのダイナミックなポージングで逆三角形を構成した、
スタイリッシュかつ力強い表紙。
回を重ねるごとに表紙が洗練されてきた
印象持っているこちらの作品は、
15巻で完結してしまう模様。
物語と装丁、どちらのラストにも期待が高まる。
出版:新潮社装丁:crazy force [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【52位】 バトルスタディーズ 8巻 / なきぼくろ元PL学園野球部員である作者が、同校をモデルにした「DL学園」を舞台にして人生のすべてを懸ける高校球児たちを描く野球漫画。
白髪の主人公を本編の何割り増しというレベルでリアルタッチで描き、毎巻顔芸と言えるほどさまざまな表情を作っている表紙。その中でも、人物のタッチとリアルな水滴描写がかみ合った水浴びの瞬間を収めたような絵が面白いと思ったのが8巻。デザイン的には、通巻でシーム(ボールの縫い目)を装飾に用いているのが良い。
出版:講談社装丁:田中秀幸 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【53位】 さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ / 永田カビ「行きました」部分3割、「行くことになった作者のこれまで」7割、実録エッセイ作品。ピンクと薄茶という限定的な2色を斜線、ドットパターン等を駆使して塗り分けた表紙。乳房まで描き込まれたイラストで"性"を全面的に出しつつ、卑わいさをそれほど感じさせないオシャレピンクデザイン。
同作者の新作『一人交換日記』(
▲)は小学館から刊行されたが、こちらの作品の事実上の「つづき」でもあるということで、イースト・プレスのお許しの上で川谷さんに続きのような装丁にしてもらったとのこと。
出版:イースト・プレス装丁:川谷デザイン 川谷康久 [] ▲一人交換日記 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【54位】 恋と呼ぶには気持ち悪い 1巻 / もぐす変態エリート社会人×普通なオタク女子高生。ストーカーまがいの猛アタックに罵倒で応戦する一方通行ラブコメ。
白領域が広く、一見シンプルですっきりして見えるが、手に取って間近で見てみると白領域には特殊加工で浮き出た「気持ち悪い・・・・・・」の文字がびっしり。ヒロインの心の叫びが見た目からも手触りからも伝わってくるずっしり重たい表紙に仕上がっている。
出版:一迅社装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/] ▲拡大 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【55位】 とつくにの少女 1・2巻 / ながべ黒い山羊のような姿を持つ「せんせい」と少女。人の住まわぬ地で静かに暮らす二人の物語。黒ずくめの「せんせい」白い少女、ほぼ無彩色で描かれた森の景色。文字やタイトル周りの装飾、枠にはイラストの静謐な空気を壊さない程度に表紙を目立たせる鈍い金色。異国の物悲しい童話を収めた絵本のような表紙。
出版:マッグガーデン装丁:アルティザン 倉地悠介 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【56位】 中学聖日記 1巻 / かわかみじゅんこ中学生男子×担任女教師、11歳差の純情年の差ラブストーリー。
制服をラフに着た中学生主人公のイラスト+白背景+小さな紫色で1行にまとめたタイトル、巻数、作者名。水彩画タッチの淡いイラストには透明感があって、なにもない白色部分にも光が存在するかのような有の明るさを感じられる。シンプルイズベストな表紙。
出版:祥伝社装丁:note 芥陽子 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【57位】 山と食欲と私 2・3巻 / 信濃川 日出雄自称単独登山女子が山と飯ライフを満喫していく作品。
最新巻の3巻までタイトル、巻数マーク等の文字位置、大自然背景、大股で鍋を挟み両手に食べ物・飲み物を持った主人公のポーズ、大量に広げた食材という構図を統一。自然で食べると飯が美味しくなる感覚に訴えかけ、ストレートに食欲を刺激してきた良い表紙。
出版:新潮社装丁:NARTI;S 新上ヒロシ [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【58位】 レイリ 1・2巻 / 室井大資,岩明均岩明均先生が原作、室井大資先生が作画を担当する戦国漫画。刀を持った少女の物々しさを強調した、戦国モノとしては異色感のある白い背景。カタカナで、払いの部分にだけ毛筆感を出し、落ち着きと勢いを備えたタイトルが目を引く。『秋津』が売れないこの世界の片隅で「岩明均」の名前が輝いて、いい加減人気が出るのではないかと期待できる表紙。
出版:秋田書店装丁:HONAGRAPHICS 椿山喜昭 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【59位】 ソウルリキッドチェインバーズ 1巻 / 環望荒廃し、ゾンビとヒャッハーに蹂躙された世界を鉄まみれの少女が切り開く、サイバーゴシックホラーアクション。
金髪+ガスマスク+水着+義足+義手+片腕+チェーンソー+返り血というショッキングな要素満載の少女がゾンビの頭部を足蹴にするイラスト+ピンク背景。タイトルは絵の具をカラフルに重ねたようなエリアに巻数と共に配置されており、ガスマスクになっている「O」の文字に目が行く。鮮やかなピンク色がイラストのパンク具合を際立たせつつ、ピンク色の鮮やかさ、それ自体が大変目立つ。
出版:少年画報社装丁:1LDK □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【60位】 わかばのテーブル / 芝生かや傷心のデザイナーと健気な幼稚園児。食を通して育まれる年の差の友情を描いた作品。
木漏れ日に満ちた森の中でテーブルを囲む大人と子供達。文字は白抜きで、イラストの中心をピックアップするように弧を描く筆記体タイトルによって枠が構成されている。食べる男子を見るマンガ『食男』掲載作で、「誰のため」や「誰と」に重きを置いているという意味で『甘々と稲妻』系といった作品であり、「暖かな食卓」をファンシーな味付けでデザインした表紙になっている。
出版:ふゅーじょんぷろだくと装丁:野本理香 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【61位】 タヌキとキツネ / アタモトちょっぴりぬけてるタヌキと、ちょっぴりいじわるなキツネ。3コマ前後の1ページ漫画で仲良しな二匹のほのぼのとしたやりとりを眺める、twitter発のフルカラーコミック。
元々1コマ1コマに描かれているタヌキとキツネがとても絵になっているカラー作品なので、本編のノリをそのまま表紙に持ち込んでもそれだけで絵になり、かつどんなノリの作品かが一目でわかる、という表紙。3コマの漫画と、「と」を葉っぱで区切ってキャラの色を当てたタイトルのバランスも良い。
出版:フロンティアワークス装丁:コガモデザイン chiaki-k □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【62位】 兎が二匹 全2巻 / 山うた死を望む不死身の女398歳、彼女と暮らす青年。永遠の絶望と希望を描いた作品。1巻は前に、2巻は後ろにと、人物にブランコを漕がせたイラスト。背景は乳白色。花弁を散らしてイラストをドラマティックに、そして動きのあるものにしている。全2巻作品として収まりの良い表紙。
出版:新潮社装丁:SUNPLANT □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【63位】 NKJK 1巻 / 吉沢 緑時難病に侵された親友の自己免疫力を高めるべくお嬢様学校に通う真面目な女子高生が古今東西の「笑い」に挑む、シリアスなコメディ作品。
検査衣の少女と制服少女。横並びの二人に重なるのは、Natural Killer Joshi Kouseiの頭文字をとった英字4文字タイトル。具体性のある情報は少なめで、すっきりまとまった白背景の表紙でありつつ、明確なギャグアイテムである馬のマスクが目立って内容が気になった。
中身については、「それどこ」に寄稿したマンガオススメ記事にて紹介中(宣伝)。
出版:双葉社装丁:アルティザン 倉地悠介 [] ▲2巻 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【64位】 猫のお寺の知恩さん 1巻 / オジロマコト高校に進学した主人公が、親戚のお寺で同居することになった3つ年上のお姉さんの無防備さにどぎまぎさせられる、お寺と猫と尻漫画。
縁側の傍で転寝する知恩(ちおん)さんと猫たち。細かく描き込まれた作者イラストを堪能できるタイプの表紙であるが、文字と共に添えられた肉球や点線などの付加的な装飾が本の顔としての表紙らしさを地味に底上げしている。装丁は『富士山さんは思春期』からの黒木さん続投で、今作では奥付のオマケ漫画はないものの、作りこまれた次回予告や作品独自の奥付ページは、奥付をいじりやすい前作アクションKCの良さを引き継いでいると言えるかもしれない。
出版:小学館装丁:ベイブリッジ・スタジオ 黒木香 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【65位】 うちのクラスの女子がヤバい 1・2巻 / 衿沢世衣子女子全員が役立たずの超能力を持ったクラスで起こる出来事を描いた、コミカルな青春作品。1巻はウジェーヌ・ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』、2巻はサンドロ・ボッティチェッリ『ヴィーナスの誕生』。クラスで作り上げている感が楽しい、テンションの高い名画パロディ。
出版:講談社装丁:BALCOLONY.
竹内はるか [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【66位】 双亡亭壊すべし 1・2巻 / 藤田和日郎VS不幸を生む無敵の幽霊屋敷「双亡亭」。ホラーアクション作品。
枠+背景タイプで、人物以外を黒+白+主要色で塗り分けている。背景の隙間には屋敷の主人が詠んだ詩が差し込まれており、内容は巻ごとに更新されていく模様。
出版:小学館装丁:ベイブリッジ・スタジオ 黒木香 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【67位】 ガーリッシュ ナンバー 1巻 / 堂本 裕貴、 渡航アイドル声優お仕事ストーリー作品。
左手をはみ出させて自撮りのポーズを決めているかのようなヒロインのイラスト。上着のボーダーと、タイトルロゴの挿し色、全体に散りばめられている模様のカラーをピンク、黄色、水色で揃えて各要素に一体感を出している(袖や裏表紙も含む)。
初期からメディアミックス作品として展開しており、アニメ版のロゴ、小説版の装丁などもBALCOLONY.が担当。関連作品のデザインが同じ方を向いているのが明確なのは良いことだと思う。
出版:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス装丁:BALCOLONY. [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【68位】 クロコーチ 15巻 / リチャード・ウー、 コウノコウジ12巻から表紙がほぼ黒になって、15巻は黒+黄緑色。
悪い笑みを浮かべて、懐から札束をチラつかせる主人公。
ダーティー&ハードボイルドな雰囲気が出ていて、
諭吉を表紙アイテムとして使用した最近の作品の中で
特に印象に残った。
出版:日本文芸社装丁:ベイブリッジ・スタジオ [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【69位】 ショートケーキケーキ 1巻 / 森下 suuモブ顔の親友に手を引かれて下宿生活を始めたヒロインと男子達の出会い、そして恋模様を描いた青春作品。
赤ピンクの背景の上に、少し角度を付けた横向きの姿勢で正面に目線を向けた配置が特徴的なヒロインイラスト。イラストの上には細い英字タイトルが被せられる。黒枠にはタイトルと作者名。この黒枠はリボンの端のような形をしており、凹み部分に巻数を配置している。枠周りのデザインが気に入った1冊。
出版:集英社装丁:川谷デザイン 川谷康久 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【70位】 アビス 6巻 / 長田龍伯5巻までは背景色が黒か赤で、怪物の輪郭を美しく浮き彫りにしていたデザインが多かったが、6巻は異質で、水色の部屋を舞台にして、死体の詰まった冷蔵庫からクギバットを持った怪物が出てくる様を描いている。グロテスクでホラーな表紙であることには間違いないが、クラシックなオシャレ部屋感も負けていなくて、それを行儀よく収まった怪物が邪魔していないので、一風変わったポップでホラーな表紙として新鮮味を感じた。
出版:講談社装丁:RedRooster 福永真未 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【71位】 能面女子の花子さん 1巻 / 織田涼家庭の事情で能面をつけて生活する女子高生・花子さんのマイペースな生き方と、彼女に翻弄される人達のあれこれをコミカルに描いた青春コメディ。
白背景で人物が際立ち、タイトルデザインに可愛げがあるほど、その背中が女子高生らしさをかもし出すほどに、めくれそうなスカートさえも空気と化し、その「能面」に目が釘付けになってしまう。表紙の中で重要なポイントがどこにあるのかが非常に分かりやすい一例。
出版:講談社装丁:川谷デザイン 川谷康久 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【72位】 それでもめる子 / 縁山昨年紹介した『める子』シリーズ第2巻。
奥行きのある空間でキャラの位置でキャラごとの重み付けを変える表紙の中でも、一番目立つ手前の主人公がにょきっと横から割り込んでいるので、奥の二人はいるべきところにいる感がある、という解釈はあっているかわからないが、トリッキーな構図の中に人物配置のバランスの良さを感じた表紙。タイトルは、前作と差異となる「それども」部分を吹き出しに入れ、変わった作者名には吹き出しに読みをいれ、タイトルと作者名のアクセントに統一感を持たせているのもポイント。
出版:ワニマガジン社装丁:アルティザン [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【73位】 櫻井超エネルギー / 櫻井エネルギー昨年の紹介順と逆になるが、出版社的にも発売日的にも立ち位置的にも「よく一緒に購入されている商品」的にもなんとなく『める子』とセットで紹介しておきたい作品。こちらも素直に「2巻」と入れない第2巻で、タイトルの「大」が「超」にパワーアップした。表紙の仕上がりもタイトルに泣けず劣らずエネルギッシュで、露出度の高い獣耳キャラ(満月を見て変身してしまう短編主人公)にタイトルの強調ポイント「超」を持って目立たせており、最高にテンションが高い。去年と被りそうなので今年は控えめに紹介しているけれども、はっちゃけ度の上がったカバー全体も外して確認して欲しい1冊。
出版:ワニマガジン社装丁:VOLARE [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【74位】 片翼シャトル 1巻 / 栗田 あぐり天才×初心者。新たな出会いが失っていた情熱を取り戻させる、、バドミントン作品。
真横視点で、ジャンプの有無で位置をずらした二名。白、赤のラインが入った黒のユニフォームのバランスと歩調を合わせるように文字は黒、一部赤。前傾姿勢のキャラと斜めの文字組みとがかっちり嵌った、熱さ優先タイプが多いスポーツ物の中で珍しさを感じたスタイリッシュな表紙。
出版:小学館装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【75位】 中間管理録トネガワ 3巻 / 萩原天晴、 福本伸行福本伸行の作品『賭博黙示録カイジ』の登場人物の1人・利根川幸雄を主人公としたスピンオフ作品。
元の作品とそっくりな絵柄のコメディ作品として『北斗の拳 イチゴ味』の表紙と比較すると、あちらはサウザーに世界観的にあり得ない格好や行動をさせて笑いを誘っているのに対し、こちらは颯爽と走らせるだけで面白いのはずるいというか非常にコストパフォーマンスが高いと言えるかもしれない。
出版:講談社装丁:KAKEGAWA FUJIO □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【76位】 WHITE NOTE PAD 1巻 / ヤマシタトモコ中年男・自動車工(38)「私たち…」 女子高生(17)「入れ替わってる~!?」入れ替わって1年、女と男の人格逆転ドラマ(重い)。
白い背景には、丸めた紙を伸ばして出来るシワがイラストにもかかる形で全体に広がっている。タイトルは銀の箔押し、巻数マークは赤。手に取ったときに白多めの表紙の上で光を反射するタイトルの存在感が強く、またピンポイントに入った赤の鮮やかさが目を引く。
出版:祥伝社装丁:GENI A LOIDE 小林満 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【77位】 星野、目をつぶって。 1・2巻 / 永椎晃平化粧後:1巻、化粧前:2巻という秘密を持つ人気者と、彼女のメイク係となった美術部員、その二人が紡ぐ"ボーイ・ミーツ・ガール"、と並べると内容を伝えやすい1・2巻。週刊少年マガジンに名和田さん、その1。文字の装飾は控えめで、イラストの色使いも薄い茶、赤系多めで落ち着いているが、白背景と適度に散りばめられた煌く粒のような装飾で明るく爽やかにまとまっている。
出版:講談社装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【78位】 てのひらの熱を 1巻 / 北野詠一中学空手道部作品。週刊少年マガジンに名和田さん、その2。
背景は白、タイトルは黒。
イラストを真っ赤に染め上げて、
人物からタイトル通りの「熱」を感じさせる3色構成。
タイトルを人物に被せつつ、突き出した拳だけ上にして
奥行きを作っているのがポイント。
出版:講談社装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【79位】 サムデイ・ネバー・カムズ / イトイ 圭作者が心を病んでしまった日々を独特な目線で描いた、ノンフィクションコミック。
真っ黒な紙に銀の印刷。タイトル、作者名など文字は小さく、広大な宇宙には、脱出ポットに収まった主人公がぽつんと浮かぶ。登場人物はキングジョーにメトロン星人、岩、黒塗りで自身は3頭身と、奇怪な人物描写で鬱々とした日々を綴っており、そういった作品として、寂しさ、孤独、ディスコミュニケーション、闇、もろもろの負を内包した宇宙を表紙に広げている。
出版:宝島社装丁:セプテンバーカウボーイ 吉岡秀典 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【80位】 いに怪することなく 獣じつしたひび 1巻 / 野良しごと怪獣好きとオトコ好き、相容れないはずがなんとなく近くにいるクラスメイト二人のちょっとした日常を描いた作品。
タイトルは、いに「かい」することなく、「じゅう」じつしたひび、で「かいじゅう」。外から窓越しに教室の中を見る視点で、人物と共に反射した空を収めた構図のイラスト。実在の映画の怪獣をお話に絡める作品であり、少女の空想を見せるように、校舎にはガメラがそこにいるように大きな影を作っている。窓の中だけ細かく描き込み、枠や壁の部分は白で簡略化。要素にメリハリが利いてる。
出版:講談社装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【81位】 渡英2年うめだまのイギリス自由帳 / うめだ まりこ元はゲームのデザイナーをしていた作者がイギリスに留学&就職してカルチャーギャップ、料理、旅行、デザイン等、様々な事を綴ったオールカラーのエッセイ漫画。
舞台の上に主人公(作者)を立たせたイラストになっていて、タイトルは看板、作者名はプレート的に配置。イギリスに関係したアイテムが細かく描き込まれていて賑やか。裏表紙(
▲)には、表紙を裏から見た視点のイラストが描かれていて、建物がハリボテだったり、舞台の上の作者は人形で、下から作者が操っている、というネタが仕込まれている。
出版:KADOKAWA/エンターブレイン装丁:arcoinc 楠目智宏,永井さやか [] ▲裏表紙 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【82位】 出会って5秒でバトル 1巻 / はらわたさいぞう、 みやこかしわ実験モニターと称し、一人一つの能力を与えられた者たちが殺し合いを強いられる能力バトル漫画。同名web漫画のリメイク。
能力者全員に付けられる手枷を強調すべく、大胆なパースで何かを発動しそうなポーズ少年の手を大きく描き、そこにタイトルの「5秒」を重ねる形で配置している。背景にシルバーで数式が敷き詰められており、こちらは表紙のキャラの特性に合わせて変えていく模様。
出版:小学館装丁:アーテン 井川直子 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【83位】 はじめましてさようなら 1巻 / 六多いくみ「亡くなった人と“はじめまして”って 出会ってすぐに“さようなら”。限られた時間の中で最高の“さようなら”をしてあげることがお葬儀の仕事なんだ。」片思いの相手の実家である葬儀屋に押しかけて働きだしたヒロインを通して描かれる、葬儀のドラマ。
灰色の背景に人物のバストアップ。白い枠にはピンクの花弁。人物は灰色の背景によって厳かな雰囲気を与えられている一方で、枠が太いため、枠の柄(花弁)が大きできて、色使い的にも枠が華やかという異質な構成が目を引く表紙。巻数マークを加えることでちょうど12文字、3文字改行で“はじめまして”と“さようなら”が自然に区切られるタイトルの文字配置も気持ちが良い。
出版:講談社装丁:コードデザインスタジオ [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【84位】 今日からゾンビ! 1巻 / 石川優吾,荒木宰ゾンビに噛まれてゾンビ化してしまった女子高生アイドルを主人公に、ゾンビ村での楽しい生活を描いた作品。
長編化しやすいシリアスゾンビ物が話にオチを付けるより早くジャンル化した感のあるゾンビの日常/コメディ系作品の1つということで、怖さはないけれども不気味要素を取り入れた表紙で、水着姿の主人公の眉間には一筋の血。ホラー装飾の定番、「手跡」を水着、タイトルエリアと同じ水色でカジュアルに消費しているのがポイント。
出版:小学館装丁:SALIDAS [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【85位】 僕と君の大切な話 1巻 / ろびこ天然ストーカー体質の女子と理屈系眼鏡男子の会話劇ラブコメ。
駅のプラットホームに並ぶ二人。地面、柱、椅子、屋根など背景に描かれているものが水平、垂直と整っていて、とてもすっきりした印象を与える。タイトルの文字は大きく全体に広がりながら隙間が多く軽めの印象を与えイラストの邪魔をせず、かつ整った背景の上で見やすく浮き出ている。白背景タイプの『となりの怪物くん』から一転、今回は背景タイプということで、前作とは違った通巻デザインの展開に期待している。
出版:講談社装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【86位】 誓約のフロントライン 1・2巻 / 鈴木鈴(GoRA)、 佐藤ミト人類抹殺ロボットの制御装置を手にしてしまった少年が、人類の存亡をかけた戦いに挑むロボットアクション。上端には黒いブロックを複数配置して白抜きでタイトルや作者名、スタッフ名を記述。下部には、二つ目のタイトルを、1文字以上はみ出る大きさで配置。最近、特大第2タイトル配置をちょくちょく見かける。
出版:講談社装丁:草野剛デザイン事務所 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【87位】 少女不十分 2巻 / 西尾維新、 はっとりみつる大学生時代に小学4年生の少女に拉致監禁された小説家が語る、その奇妙な1週間の監禁生活の行方。西尾維新による同名小説のコミカライズ作品。
過去の本企画を見返してみると、海、プール、水槽等など毎回大体1作品以上で誰かが"水にどぼーん"をしていて、そして今回もやはり選んでしまう。そんな水中系の中でも人物が完全に逆さで沈み込んでいくような暗さと冷たさが特徴的。
出版:講談社装丁:G×complex □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【88位】 DEAD Tube 5・6巻 / 北河トウタ、 山口ミコトデスゲーム×YouTube作品。4・5巻は「孤島編」ということで、表紙に登場しているのは、ロックリバー島にお住まいの殺人鬼、クレイジーラスカルさん。ストレートに見せる4巻、パンツ女と対面させる形で、ドアの向こうでタイトルを挟んでちょい見せさせている5巻。どちらも良い絵面。
出版:秋田書店装丁:芦田デザイン事務所 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【89位】 ゆせそま。 1巻 / kashmir日曜朝にTV放送される番組撮影のために魔法の国に騙されて魔法少女になっていた少女が、再び続編の撮影に巻き込まれていく、メタ魔法少女作品。
ジャンルとして定着した感のある「捻じれた魔法少女もの」の表紙の一つとしてこの作品が選んだのは、「魔法のステッキを折る」という選択。タイトルは中央でイラストに重ねられながら、意図を読ませないひらがなタイトル+半透明着色で一歩引いており、イラストで内容を想像させる表紙になっている。ちなみにタイトルの由来は、あとがきより「4人組の別の話用だったんですが、改変してくうちにあまり関係なくなってしまいました」とのこと。
出版:KADOKAWA / アスキー・メディアワークス装丁:里見英樹 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【90位】 ローカルワンダーランド 1・2巻 / 福島 聡『少年少女』、『6番目の世界』、『鵺の砦』に続く、福島聡の読切シリーズ最新作。
横方向にエリアを6分割し、各々のエピソードを詰め込んでいる。見せている部分は一部ながら、横長なイラストには空間的な広がりを感じられて、たくさんの世界が入っていることが伝わる短編集デザイン。
出版:KADOKAWA / エンターブレイン装丁:井上則人デザイン事務所 井上則人 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【91位】 恋するシロクマ 1・2巻 / ころもシロクマ(♂)「きみがオスでも、僕は構わない」アザラシ(♂)「僕は構う」 。恋をしたアザラシの一方通行なアプローチを面白おかしく描いた北極ラブコメディ。
キャラの純白さを際立たせる単色背景+白の水玉+ハートでピンクのアクセント。怯えるアザラシの"ブルブル"が吹き出し型の巻数マークに伝わっているユニークな表紙。
出版:KADOKAWA / メディアファクトリー装丁:arcoinc [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【92位】 おにでか! 1・2巻 / 矢寺圭太異星人との接触により、ときめきで巨大化してしまうことになった女子高生が悪と戦う、巨大アクション。1巻が女子高生と渋谷、2巻が秋葉原とメイド。実在の場所をベースにしたディテールの細かい風景にキャラを置いてサイズ感を明らかに。さらに上端のタイトルにキャラの頭を被せて巨大感を強調している。
出版:小学館クリエイティブ装丁:BALCOLONY.
荒木恵里加 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【93位】 はるかリフレイン / 伊藤 伸平進研ゼミ(ベネッセ)『高一Challenge』連載、1998年に白泉社のJETSCOMICSで発売、そして復刊ドットコムにて19年越しに復刊。同じ時間を繰り返すループ系作品。
描き下ろしイラスト、白背景、切断されたように切れ込みが入って所々がずれたタイトル、所々にぼかしを使って奥行きを強調したアイテム散りばめなど今風のデザインになっているが、固定電話や旧型の携帯などが目立ってどこか時代を感じさせる。当たり前だが、本が黄ばんでいないことに感動した。
出版:復刊ドットコム装丁:柴海美里 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【94位】 家族が片付けられない / 井上能理子ゴミ屋敷と化した実家を目の当たりにした作者が行った片付けをきっかけに、片付けという行為自体を見つめなおしていくエッセイ作品。
ファンタジーな間取りを用いて、リアルに描写すると悲惨なことになりかねない「汚部屋」をオシャレ、とまでいかなくともディフォルメを効かせてコミカルに分かりやすく表現した表紙。3行に分かれたタイトルの中、一番目立つ位置にある「片」の文字が傾き、「できない感」がよく現れている。
出版:イースト・プレス 装丁:小沼宏之 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【95位】 宇宙戦艦ティラミス 1巻 / 宮川 サトシ、 伊藤 亰宇宙規模で繰り広げられる抗争の中で、個々の生活スタイルの違いや細かい拘りによって生じる困難を描いたコメディ作品。
コックピットを舞台として、地球やタイトルを背負うように主人公が配置された構図。その無重力空間には串カツや携帯ゲーム機、ボックスティッシュなど生活感を漂わせる小物が散乱する。サムネイルレベルではとてもシリアスな表紙。
ちなみに原作者は『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』作者、あるいは情熱大陸へ執拗な情熱を傾けている漫画家、宮川サトシ先生。
出版:新潮社装丁:crazy force [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【96位】 告白びより / 中村ひなた想いが届く前のキラキラな恋模様4編を収めた短編集。
イラストは白シャツに水色のストライプが入った制服リボンを着けた少女のバストアップ。タイトルはピンク色で、大きめながらほっそりしていて重さを感じさせず適度に存在感を主張。作者名は黒で下部に横書きで配置。さらに白でさりげなく手描きの星座が散りばめられている。絵柄の綺麗さを引き立たせる素直なデザインの表紙。
出版:講談社 装丁:大澤貞子 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【97位】 奈落の羊 1・2巻 / きづきあきら、 サトウナンキ【生配信】が趣味の自堕落な生活を送る大学生がネカフェ住まいの援交女性と出会い、ゲスな企画を企てたことから始まるドラマを描いた作品。イラスト、散りばめられたタイトル合わせて走査線(横縞)が入りブレのようなイラスト加工、ニコニコ動画風のコメント装飾と合わせて「配信」をデザインした表紙。今までで~♪一番~♪ハレンチハレンチ~♪
出版:双葉社装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【98位】 本日の四ノ宮家 / 山田 果苗一つ屋根5人兄弟の下に突然現れた若いお母さんが、みんなに家族として受け入れられるために奮闘するホームドラマ作品。
主人公となる若いお母さんを中心に、玄関の前に家族が集合しているイラスト。イラストの周囲は、黄緑の水玉パターンが敷かれた枠で囲まれている。作者名の文字を囲む四角やタイトルには。黄色とピンクを互い違いに使用。全体的に淡い色使いでまとまてるが、上部の作者名、レーベル、英字タイトル周辺が整っていて、枠がない状態をイメージしてみると、これがイラストを引き立てており、ほどよく目を引く表紙に仕上げていると思えた。
出版:KADOKAWA/エンターブレイン装丁:林健一 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【99位】 上野さんは不器用 / tugenekoドS発明少女が意中の男子に毎回辱めを受けて撃沈する片思いサイエンスコメディ。「このマン」で推したが特に賛同者が見当たらなかった『彼とカレット』から3年、今回はちょっと来てるんちゃう?という感触と淡い期待と共に1票を投じたものの結果は…ということで別途紹介したくなった。しかし、あらすじ等を交えて真面目に勧める場合、「尿を飲ませようとする」「脱いだタイツの匂いを嗅がせる」等の情報を入れるのを避けられず、手に取ってもらう以前に白い目で見られることになりかねない。なので、「キャラのオレンジの髪色と制服がビビッドな黄色背景の上で映え、ちょっとオシャレで手に取りやすそうな表紙」として推す。
出版:白泉社装丁:30A 柴田昌房 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【100位】 おしりマカロン 1巻 / 青空明お尻4割、シスコン3割、百合2割、つのだじろう1割の4コマ漫画作品。
主人公のお尻への執着具合が分かるコマを数点配置し、その上に実写で赤ちゃんのお尻がばっちり写った下半身を載せている。お尻には、羽と英字タイトルを入れたお尻マークを付けて強調。いやらしさを出さずにインパクだけを出す赤ちゃんの尻実写という采配が光った。
出版:講談社装丁:アーテン 山上陽一 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
ここまでがランキング発表。
最後に、カバー下や特殊加工など別なところに注目した作品を別枠で24作品紹介していきます。
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【カバー下賞】 動物たち / panpanya日記付き短編集。表紙イラストは「空き物件を占領する狸の群れ」(袖に説明文あり)。『蟹に誘われて』、『枕魚』から続く『楽園』レーベルの作者自装の作品。3冊目ということでシリーズ化もあり、カバー下の凝った加工ももはやお馴染み。今回のカバー下には、丸いくぼみのついた地面が広がっている(真空コンクリート舗装というらしい)。地面のくぼみ以外のエリアはざらつき、絵的にくぼんで見えるところには実際にほんの少しくぼみがリアルな質感を生んでいる。
裏側。『枕魚』で排水口があったあたりに、今回はマンホールが配置されている。
出版:白泉社装丁:panpanya [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【カバー下大賞】 微熱空間 1巻 / 蒼樹うめ再婚夫婦の連れ子で、突然姉弟になってしまった同い年3日違いの二人によるほのぼのラブコメ作品。
表紙は、キャラ+枠+タイトル枠で構成され、キャラ部分とタイトル部分に光沢があるすっきりした仕上がり。カバー下大賞ということで、ここからカバーを外してしまう前に、今回はまず表紙をめくる必要がある。
表紙をめくるとチェックの模様が入った見返し、そして風呂上りのヒロインが描かれたカラーの中表紙、ここでカバーを外すと…。
カバー下には風呂あがりの姿を見られて恥ずかしがるヒロイン。中表紙の続き絵になっていて、タイトルロゴなど文字も寸分たがわぬ位置に配置している。カバーを外されることを見越して「見るな!」的なイラストを仕込んでおく、おまけの王道であるが、これの何が特徴かというと、中表紙の次に目に入ることを想定しているところ。カバー下におまけイラストを仕込むとき、表紙のイラストと関連付けられる場合が多いが、今回関連付けられているのは中表紙。多分こちらのほうが例は少ないと思われるが、これが思いのほか自然。というのも、おまけ等を期待して単行本のカバーを外すとき、まず表紙をある程度めくらなくてはならないので、次のページ(今回の場合は中表紙)が目に入り、めくったカバーから離れたカバー下の本体表紙が次のページに重なる形で目に入る。なので、今回のような仕掛けをいれておくと、カバーを外したときに突然2ページのパラパラ真漫画がはじまり、これまでにない「見るな!感」を味わう結果となった。巻頭にもカバー下にも当然のようにカラーを使える楽園コミックスなのでやりやすいというのはあるが、目からウロコの構成だった。
裏表紙と、そのカバー下。こちらは素直な絵柄変化形。
出版:白泉社装丁:simazima 平谷美佐子 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【カバー裏賞】 ハイスコアガール 6巻 / 押切蓮介5巻の発売が2013年12月。そして、紆余曲折を経て復活を果たした本作。既刊5冊分にはタイトルに『CONTINUE』が付けられ、6巻と共に新たなデザインフォーマットで刊行された。
復活にあたり、かなり多くの修正が入っていることもあり、このリニューアルは妥当であるし、何より6巻分の描き下ろしが一気に楽しめる。…なのだけれども、前の表紙がなくなってしまうのは寂しいな、とそんな心の隙間を埋めてくれるのがカバー裏。
表紙とは別の描き下ろしイラストと共に、旧版のフォーマットでデザインされた別バージョンのカバーが裏面に印刷されている。新装版のカバー下、本体表紙に旧版の表紙を収録している作品もあるが、今回の場合は単純にカバーを2パターン収録していることになる。踏んだり蹴ったりの押切先生にさらにお手数をおかけしてしまっている気もするが、「旧版も一緒に連れて行く」という気持ちは勝手に受け取った。
出版:スクウェア・エニックス装丁:メチクロ[SF/MHz] [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【表面加工賞】 包丁さんのうわさ 2巻
/ ささかまたろう、 神波 裕太「たぶんおそらくきっと」で公開されているフリーホラーゲームのコミカライズ作品。
真っ赤な背景と、包丁を持った少女。少女には血がべったりとついているが、この血の部分にクリアPPが使われている。同じタイプのアイディアで涙部分をPPにしたものは何度か紹介しており、美しいアクセントを生むことを確認しているが、これが血になると、引くような生々しさが生まれる。
こちらはPP部分に光を反射させたアップ画像。このタイプの加工で、クリアPP以外の部分はマットPP(ツヤのないフィルム)になっていることが多いが、こちらの場合はクリアPP以外の部分にPP加工が施されていないため、加工された部分がより鮮明に浮き出る。もちろん1巻にも同様の加工が施されているが、2巻ではさらに先に挙げた王道の「涙+クリアPP」を盛り込んでパワーアップさせている。サクっとやってしまったあの時の、指先のするどい痛みを思い出させるような装丁。
出版:KADOKAWA / エンターブレイン装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【合体賞】 無限島 全2巻 / 中川 悠京▲帯砂漠化した本土から自然豊かな島、"無限島"に引っ越してきた少女の不思議な体験を描いた作品。
少女、海辺、意味深なからくり人形。A5のワイド版2冊で気合いの入った2冊を繋げると強いな、という表紙。中華系の印鑑の書体にありそうな不思議な曲線の美しいロゴは、最後の文字の一部をあえてはみ出すように配置。「限」の文字の右下に伸びた部分には英字タイトルが入っていて、この無国籍感も面白い。
▲帯裏はコードデザインスタジオさん色全開。また、背表紙ではロゴが合体する。
こちらの作品は講談社Webコミックサイト「モアイ」発で出版は一迅社。一迅社はWEB漫画を引っ張ってきて面白い装丁で刊行する、ということを何度もやっていてお世話になっているが、此度の講談社の完全子会社化によってその辺の活動に影響が出るか出ないのか、気になるところではある。
出版:一迅社装丁:コードデザインスタジオ [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【帯賞】 平成生まれ3 / ハトポポコ▲帯なしシリーズ実質の5冊目であり、最終巻。
表紙の完全横使いに合わせた縦型帯。右端の2キャラを消し、タイトルの3の右、本来作者名が来るところから文章を継ぎ足すことで、タイトルを吸収した予告的・あおり的な文章を構成している。やっていることはシンプルながら遊び心が感じられてとても楽しい帯。
出版:芳文社装丁:里見英樹 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【帯大賞】 まがりひろあきのじゆうちょう / まがりひろあき▲帯なし短編集。背表紙のレーベルマーク、裏表紙のISBNコード、この二つの必須要素を除き、カバーの上から4/5程度のエリアが真っ白。帯は普通のサイズなので、真ん中らへんに何かを隠している様子はない。帯は表側がタイトル、小さなキャライラスト、キャッチコピーで、裏側が作者の別作品紹介。帯ありの状態で、外した時も同じようにシンプルな構成のものを想像させるが、帯を外してみると実際には表から裏にキャラが列をなした真の姿が現れ、「シンプル」が特徴ではなく、「偏り」が特徴になっているデザインということがわかる。
ページの上の方で紹介して帯なしをデフォルトとして構成の面白さを強調するか、このように特別枠で帯ありをデフォルトにして紹介するか非常に迷ったが、どちらにせよ、作品の好き勝手感が出た大胆なアイディアがお気に入りの1冊。
出版:講談社装丁:VOLARE 関善之 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【優良誤認賞】 ポプテピピック 1巻 / 大川 ぶくぶ▲帯なし以前、竹書房さんの雑誌に装丁記事を寄稿したとき、記事を読んだ担当さんから「是非この作品も見て欲しい」とお送りいただいたのが大川ぶくぶ先生の『ミッソン インパッセボーゥ』で、
里見さんの工数をこんなところに使いやがってすばらしい作品を知ることが出来た、という出来事があり、今回竹書房さんと大川先生に感謝の意をこめてここに紹介する。
この作品で注目してほしいのは帯。表紙の下で「とりっびきのクソ4コマ!」「大人気打ち切りコミック!」とアグレッシブなコピーが目立つが、問題は裏表紙。
「重要!数多くの名誉ある賞!」という見出しで「このマンガがすごい!2016」や「マンガ大賞2016」など各種の賞を羅列しており、見た人にこの作品は多くの賞を受賞したすばらしい作品という印象を植え付けることができる。しかし、実際この作品は帯で挙げた賞と一切の関係はなく、だからこそ帯のどこにも「ランクイン」「受賞」等の情報はなく、実際には何にも言っていない文章によって巧妙に作品を大きく見せていると言える。
これは明らかに優良誤認案件であり、これがスマホゲーだったら50個程度の詫び石は必死、リアルマネー換算で3000円。つまり、この帯には3000円の価値があると結論付けることができる。
カラーページには竹書房ビルと、どんより曇り空。
出版:竹書房装丁:小石川ふに □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【変り種装丁賞】 よっちの本 1巻 / 夕タン▲カバー下年齢不詳のちんちくりんな社会人「よっち」と猫のニャーニャーの楽しい毎日を描いた4コマ作品。
青年コミックと比較して、幅は同じだが背の低い特殊なサイズの本体。本体表紙は小麦色で、巻かれているのは本体よりさらに背が低いため帯にも見えるがれっきとしたカバー。本体表紙と表紙には色の違う同じものが印刷されていて、質感が違う部分がはみ出て色を増やし、面白いアクセントを生んでいる。イラストは本編抜粋型で、2コマ目の一部、3コマ目(台詞を削りキャラ部分を拡大)、4コマ目の一部、と断片的に切り抜いて作品の雰囲気を抽出している。
裏表紙。カバーにはバーコード、本編4コマ、内容紹介文など。本体には猫と表とは構成が異なる。
出版:トマソン社装丁:コニコ カヤヒロヤ [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【パロディ賞】 Romsen Saga 1~5巻 / ゴツボ☆マサル剣と魔法の世界を舞台にしたファンタジー系コメディ作品。ご覧の通り、と言ったときにページを見てくれている方の層的にどの程度「ご覧の通り」で通用するかは少し気になるが、ご覧の通りの「ロマサガ」パロディ・デザイン。
こちらがネタ元のゲームソフトでロマサガシリーズ第1作目、『ロマンシング サ・ガ』。スーパーファミコンソフト。第1巻は、黒枠の構成、タイトルデザインなどをネタ元に近づけているが、パロディ度はまだ控えめ。
2巻、そして元ネタ2作目。元ネタの画像はアプリ版公式サイトのTOPページイラスト。(模様の散りばめ方からして、おそらくスーパーファミコンのソフトパッケージでなく、ソフトパッケージをベースにしたアプリ版公式サイトのTOPページイラストが元ネタ)
横に長い元ネタに合わせて表紙も横使いにして、一気に再現度を上げてきた。
3巻。元ネタはまだスーパーファミコン。
ゲームを知らなくても、R-1やヨシヒコが好きであれば、「井戸の中からじゃなくて~ 井戸自体が~…俺さ! 」という佐久間一行さんのネタでBGMだけ聴いたことになる方は結構存在すると思われる。
4巻。元ネタはプレイステーションに移行。
そして完結巻。1巻のフォーマットを使った縦型に回帰しつつ、イラストにゲームパッケージあるあるでもある、元ネタの大地に刺さった剣を踏襲している。
表紙のそれっぽさを地味に底上げしていると思えるのがスクエニの「SE」マーク。スクエニの単行本において、「SE」マークは背表紙の下端に配置され、表紙に載せるというルールはないが、本作ではこれをあえてアイテムとして表紙に載せている。細かい話をすると、スクエニがスクウェアだった頃からソフトのパッケージに付いているロゴマークは文字が省略されておらず、「SE」マークがパッケージ使われているわけではないのだが、このゲームには使われていないマークが単行本の表紙のロマサガっぽいデザインに組み込まれることで、大きな「公式っぽさ」が生み出されているのは面白い。いっそのこと、このマークをソフトのパッケージに使用しても、ロゴの面積が小さくなりつつも一目でメーカーがわかって意外に強いのではないかと少し思ったりした。
出版:スクウェア・エニックス 装丁:アラスカ [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【パロディ賞】 犬マユゲでいこう 犬まゆ~げコミックス / 石塚2祐子▲カバー全景4度目の紹介となるゲームあれこれ作品。
前回の写真を使用したキャラ弁風と比べれば、漫画エリアの外に陳列される心配もないぶんやりすぎ度は抑えられた、少女漫画風。カバーは今だいぶ数が少なくなったフォーマット入れ込み風デザイン。全編フルカラーの単行本でありながら、中表紙と目次ページ(書影右)が白黒になっているのがポイント。
タイトルに「(犬ま)ゆ~げコミックス」と入れているように、今はなき集英社の少女漫画レーベル『ぶ~けコミックス』を元ネタにしている(書影:純情クレイジーフルーツ / 松苗あけみ)。Vジャンプコミックス(←レーベル名)だけれども、犬まゆ~げコミックス(←作品名の一部)。
出版:集英社装丁:L.S.D. 浅見ダイジュ,末久知佳 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【糸守賞】 あかいろ交差点 1巻 / ひのなつ海
この靴しりませんか? 完全版 / 水谷フーカ繋がった赤い糸に引っ掻き回されながら距離を縮める二人を描いた『あかいろ交差点』、女の子と女の子の初恋短編集『この靴しりませんか?完全版』。どちらも名和田さんデザインの作品で、二人を糸でつなげる、というアイディアで共通しており、どちらを紹介するか悩んでいたところで、アニメ映画『君の名は。』の空前絶後の大ヒットを眺めていて思いついた。糸と言うか、紐がキーアイテムとして出てくる『君の名は。』にかこつけて、2作品とも紹介してしまえばいいじゃないか、便乗だ便乗、そんな「糸守賞」。
『あかいろ交差点』、こちらは表紙、裏表紙に描かれた2人を赤い糸が繋いでおり、赤い糸の部分は箔押し。
『この靴しりませんか?完全版』は、赤に限らない糸が、カバー全体に散らばった5組の百合ペアを繋げる。
どちらも、糸が伸びている先を意識させる、カバーの開きがいのあるデザイン。あまり便乗になっていない気がするので、次回は米をほおばっている表紙の作品を集めて、「口の中で太古のお酒を醸造しているで賞」をお送りしたいと思います。
出版 あかいろ交差点:一迅社/この靴しりませんか? 完全版 :白泉社装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【限定カバー賞】 こちら葛飾区亀有公園前派出所 200巻 / 秋本治 2016年9月17日(土)、週刊少年ジャンプ42号で最終巻の同時発売と共に40年の超長期連載に幕を閉じた『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、通称『こち亀』。こちらに紹介しているのは、その最終巻の発売を記念して開催された『こち亀展』配布の限定カバーとなる。
200巻達成と連載完結を祝う紅白幕を背にして並んだ麗子、部長、両津、中川の4名。紅白幕の白エリアには、金色の印刷で連載初期の4人のイラストを配置。絵柄の変化に40年の歴史を感じさせる構成になっている。タイトルデザインは100巻以前に使われていたフォーマットを使用。入手方法が限定されていたことが非常にもったいない、『こち亀』にしかできない最終巻カバーに仕上がっている。
出版:集英社装丁:- □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【限定版賞】 甘々と稲妻 6巻 / 雨隠 ギド小学校のお祝いムード漂う7巻。こんなタイミングで限定版の方だけ全員集合系のイラストを使われたら、買わざるを得ないじゃないか、ずるい!と思いつつ結局買ってしまったが、実際に購入の決め手となったのは、付属のお弁当箱、の外箱。
外箱の表と裏。当たり前なのかもしれないが、これも「装丁」と言って良いのか、表は表紙のようにイラストと商品名(タイトル)、裏は裏表紙のように商品説明が配置され、作品同様にしっかりとしたデザインを感じさせる。この辺の丁寧さは、予告賞(予告ページの作りこみが素敵な作品)として紹介した1巻に感じられたものと多分繋がっている。
お弁当箱は作中で少女が使っているものと同じ、つまり子供用サイズということで、外箱込みでサイズを単行本にぴったりと合わせているのがポイント。発売時には、こちらの限定版が書店の平台漫画エリアに普通に陳列されていた。
出版:講談社装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【限定版賞】 3月のライオン 12巻 / 羽海野チカ▲コラボ小説全景西尾維新コラボ小説付きの特装版。『3月のライオン』と<物語>シリーズとのコラボレーションということで、小説のデザインは<物語>シリーズ風であり、講談社BOX風。講談社BOXにおいてイラストに入った"KODANSHA BOOK"の部分は"HAKUSENSHA BOOK"に置き換わっている。
こちらは<物語>シリーズの1作、『猫物語 (黒)』。帯の代わりにシールが貼られていて、西尾先生のお約束的な一言が載せられており、これもコラボ小説で再現していることがわかる。
コラボ小説の中表紙。今回の小説はハードカバー仕様なので、元の小説の真っ赤な本体を再現するように、中扉と最終ページを赤色にしている。裏側のあらすじ等を含めて再現度が高いが、それもそのはず、本家のデザインを手がけているVeiaさんがお仕事をしていた。
出版:白泉社単行本装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/]
小説装丁:Veia [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【新装版賞】 パーマン 全7巻 / 藤子・F・不二雄2016年中に順次刊行された、てんとう虫コミックス版全7巻。色の付いたコマを背景にした、アメコミを感じさせるような、かつコミカルなデザイン。
『パーマン』の単行本には、現在入手可能なもの、絶版のもの合わせて種類が多い。例えば下は文庫版、そして藤子・F・不二雄大全集版。
同じ作品でも、レーベルや版型が違えば読ませたいターゲットも変わってくるわけで、文庫版や大全集版は大人が読むことを意識しているのか、落ち着いていて、教科書的、資料的な雰囲気すら感じさせる。そういう見方で行くと、今回はてんとう虫コミックスのリニューアルということで、素直に今現在の少年コミックとして若返ったように思えた。
出版:小学館装丁:ベイブリッジ・スタジオ 田中陽介 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【出版社横断賞】 まどいのよそじ,これでおわりです。 / 小坂俊史様々な40歳が抱える悩み、夢、現実をコミカルに描く『まどいのよそじ』、「おわり」をテーマに描き出される『これでおわりです。』。どちらも非4コマのオムニバスショート。
1名を除く人物と背景が2色で描かれる構成と、茶色の縦書きタイトル。同じ作者・同時発売の2作品の装丁を同じデザイナーの手で揃えているというのがこちら。今回めずらしいのが、これが小学館、竹書房と異なる出版社から出された2作品であるという点。
作者のメモリアルシリーズとして異なった出版社で同デザインの物を刊行したり、今だと『クロエの流儀』今井大輔先生が異なる出版社から同じ作品を異なる視点で描く『古都こと』が2出版社合体表紙になったりと、そのようなコラボは存在するが、今回はもっと気楽なコラボと言うべきか、ちょっと面白いことができる選択肢が増えるというのはよい事だと思う。帯レベルでの出版社横断、横断あとがき漫画などもあり、「○○先生の漫画が読めるのはジャンプだけ!」のイメージがある週刊少年ジャンプですら他紙の大御所が掛け持ち連載する時代になっているので、機会とメリットと遊び心さえあればこういったものはどんどん増えていくか、もしかするとすでに沢山あるのかもしれない。
ついでの裏表紙比較。バーコードの右の書籍情報エリアは、左(竹書房)の方が好み。
出版:小学館/竹書房装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【完結賞】 暗殺教室 全21巻 / 松井 優征ニコちゃんマークをイメージさせる、ジャンプ作品の中で異質な存在感を放っていたミニマルなデザインの1巻を紹介したのが本企画の2012年版。このデザインフォーマットでネタはもつのか疑問に思っていたが、2巻でいきなり2色構成を出してまずアレンジの可能性が見えた。さらに8巻で作中のエピソードを踏まえた特殊形態を採用、アニメ化と実写映画化が明らかになった10巻にに特別感のあるホログラムを採用するなど、ある程度必然性のある状態で変化球アイディアが登場して段階的に出しても受け入れられるアレンジの範囲が広がっていった。『絶望先生』単行本の色あわせ地獄を潜り抜けたhiveさんの腕か、松井先生の発想の賜物か、作品の大団円と共に奇妙なフォーマットの単行本デザインも見納め。おつかれさまでした。
出版:集英社装丁:hive [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【最終巻賞】 日常 10巻 / あらゐ けいいち10巻ぴったりで完結。最後の表紙は1巻と同じ構図。ラストに1巻と同じ構図を持ってくる場合には登場人物やアイテムがそのままのイコールタイプ、増えた仲間を追加するプラスタイプが多いが、この作品の場合はマイナス。1巻の表紙の中からシュールギャグ成分である鹿だけを消して普通の授業中の風景にする…なるほど、とても最終巻らしくなってしまった。
出版:KADOKAWA / 角川書店装丁:里見英樹 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【コミカライズ賞】 旧約Marchen 1巻
/ ソガシイナ、 Sound Horizon音楽グループSound Horizon(紅白で『紅蓮の弓矢』を歌っていたRevo氏主催)のCD『Marchen』のコミカライズ作品。箔押しのハードカバー上製本が箱に入った豪華な装丁は、原曲CDパッケージを再現したものになっている。
こちらは原曲CDの限定版。漫画本体と限定版のハードカバー歌詞カードを並べると、サイズと綴じ方向に違いはあるものの、ぱっとみ見分けが付かないレベルで同じ。ちなみに外装のイラストは、通常版CDのジャケットがベース。
歌詞カードの導入部には、
此の物語は虚構である。
然し、
其の総てが虚偽であるとは限らない。という一節。
この導入部も、単行本で以下のように黒い見返しと合わせてトレースしている。
本の中身は、全ページフルカラー。パッケージの再現度の高さによって、原曲と地続きで繋がっているように感じられる、妥協の無いファンアイテムと呼べる1冊。
出版:講談社装丁:葛西恵 [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【イヌカレー空間賞】 ポメロメコ / 劇団イヌカレー 『魔法少女まどか☆マギカ』で魔女が潜む空間を手がけたことでお馴染み、一度聴いたら忘れられない劇団イヌカレー先生のフルカラー漫画作品。
三つ編みで繋がった双子の少女ポメロとロメコが床下に存在する王国を冒険するお話が描かれており、本体はハードカバーで、小口は赤。書影右は展示会などで限定的に付属していた外箱で、真ん中に開いた窓から双子が顔を覗かせる仕様。
本体には、紐の長さが異なる双子の栞つき。「フルカラー」、「特殊装丁」と何を推すか迷ったが、本全体が濃縮されたイヌカレー空間そのものだったので、そのまま「イヌカレー空間賞」とした。異質で独創的な1冊であることには間違いない。
出版:ワニマガジン社装丁:ステュディオ・パラボリカ ミルキィ・イソベ [] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【アンソロジー賞】 きのこ漫画名作選 / 飯沢耕太郎(編者)キノコ文学研究家としても知られる写真評論家・飯沢耕太郎氏が編者として送る、古今東西の「きのこ漫画」を収録した名作選。『きのこ文学大全』に続く同編者の豪華装丁本。まず、「彫刻版やエンボス( 浮き出し )版を一切使用せず、ごく一般的な箔押し版のみで表現している」という『くしゃモコ箔押し』によって、文字もイラストもパターン背景も1枚の箔押しで構成されたその表紙に圧倒される。
カバー下裏側と裏表紙。
表紙をめくると見返し・遊び紙と、もこもこしたぺージが現れた後、黄色地にオレンジ文字というアグレッシブな色彩で編者のきのこ愛に溢れた前書きが始まる。
つげ義春から始まり、松本零士、萩尾望都など大御所の短編はもちろんのこと、林田球『ドロヘドロ』(長期連載作品)内できのこが登場する1話、青井秋 「爪先に光路図 前篇」(BL作品)など幅広くフォローし、計18人の作品を収録した、本体の厚みは実測3.3cm(白川まり奈の長編『侵略円盤キノコンガ』が丸々収録されていて単行本1冊分稼いでいる)。作品毎に紙色、印刷色、はたまた紙質までも変えている。
後書きの後に目次、作家紹介が来て、カバーの袖に被さる見返しの部分に奥付が来る。この記事の冒頭で「すごい!」という言葉の使い方には予防線を張っているけれども、この本は確実に「すごい装丁」と言い切ってしまえる。
出版:Pヴァイン装丁:セプテンバーカウボーイ 吉岡秀典 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【良いコミック賞】 銃座のウルナ 1巻 / 伊図透辺境の豪雪地帯を舞台に、女兵士達と異形の蛮族との戦いを描いた架空戦記作品。
降雪の中、防寒具に身を包んだ女狙撃手横顔を捉えたイラスト。タイトルは上下の黒いラインに分割して配置。さらに下の黒いラインには作者名と作品のコピーが添えられている。本がシュリンクされた状態で上下のラインが若干浮いていたので、帯の2枚使いをしていると思っていたが、手にしてみると帯と思っていた部分とカバーがくっついていた。
▲開いたカバー全景カバーを外すとその構造は一目瞭然。、カバーの表面にはイラスト、裏面には黒い下地に文字が印刷されており、カバーを三つ折にして上下に帯のようなラインを作っていたというお話。エッセイ『歌舞伎町のミッドナイト・フットボール』(著:菊地成孔)でも使われていたというこちらの仕掛けは、イラストが強い意味を持つ漫画の装丁にも親和性が高いと言うか、カバーがポスターになるという体験にわくわくさせられた。大きなポスターが付いた単行本ということになるが、装丁で面白い体験ができる1冊、ということもできる。
ちなみに勘違いに終わった上下ダブル帯もそれはそれで面白いことができそうと思い、変なことに挑戦できるどこかのレーベルからそのうち登場しないかなと少し期待している。
出版:KADOKAWA/エンターブレイン装丁:名和田耕平デザイン事務所 [/] □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【良いコミック大賞】 ハルはめぐりて / 森泉 岳土▲カバー全景好奇心旺盛な中学生の少女ハル。ベトナム、台湾、モンゴル、そして日本と、少女の一人旅と出会いを綴った連作集。
ビニールコーティングの無い白い紙の軽いカバーに、グレーと黄緑の印刷。黄緑色の背景は、訪れた場所のイラストを交えた世界地図になっている。
画像右、チケットやレシート、商品のタグなど、海外の戦利品が散りばめられたページを経て、シンプルな水色の中表紙が登場する。
世界地図と絡めた目次、そして持ち物リスト。
台湾編とモンゴル編の区切り。章を区切る中扉には黄色の紙を使っている。
モンゴル編は薄茶の紙に黒の印刷、上の台湾編は白い紙に青の印刷と、章吾ごとにも紙や印刷を変えている。
カバー下。
帯付きカバー。
後書きの後に、無声の風景漫画が数ページを挟んで本が終わるなど、見所はほかにもたくさん。作者のこれまでの作品にも見られた装丁への拘りが、旅情というテーマに遺憾なく発揮され、すべてのページに無駄が無い、旅を濃縮した1冊となった。
出版:KADOKAWA/エンターブレイン装丁:セプテンバーカウボーイ 吉岡秀典□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
という感じでお送りしました、
良いコミックお気に入り装丁紹介企画『この装丁がすごい!~漫画装丁大賞~2016』。
2017年の特集でまた逢いましょう。
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【宣伝】 良いコミックデザイン / KT.当ブログの管理人が著者をつとめる漫画装丁を特集したデザイン本です。
ブログの内容をまとめた本というわけではありませんが(たまに誤解される)、
管理人が紹介する作品を選び、コメントを付けているので、
アウトプットとしては二アリーイコールだったりします。
大きい書店にお立ち寄りの際には、デザイン本が充実している
ところではに1冊ほど置いてあることもございますので、見つけた時には是非お求めください。
出版:パイインターナショナル □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
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ほしいものリストページのスクロールに疲れて頭がふやけてしまった方のうっかりした優しさに期待します
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2017年05月15日 |
この装丁がすごい!
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