キツネの寄生虫が原因!エキノコックス症とは

更新日:2016/12/09

エキノコックスの基礎知識

エキノコックス症とは、キツネに宿るエキノコックスという寄生虫によって起こる感染症のことです。エキノコックス症とは、どのような病気なのか、症状や原因などについて、ドクター監修のもと、詳しく解説します。

大利昌久先生

この記事の監修ドクター

おおり医院 院長
大利昌久先生

エキノコックス症は、エキノコックス属条虫(サナダムシ)の幼虫に感染して起こる寄生虫病です。世界的に分布する単包性エキノコックス症と、北半球に分布する多包性エキノコックス症の2種が重要視されています。日本で特に問題になっているのは多包性エキノコックス症で、北海道全域で患者が報告されています。多包性エキノコックス症の原因となる多包条虫は、北半球の寒冷地域に分布し、成虫はキツネやイヌに、幼虫は野ネズミに寄生しています。キツネやイヌの糞とともに排泄されたエキノコックスの卵を人が口から摂取してしまうと、卵からかえった幼虫が肝臓に寄生して病巣をつくり、5~10年の潜伏期間を経て、肝障害などを引き起こします。

エキノコックス症の症状

幼虫の増殖速度は遅く、感染後5~15年は無症状で進行するのが特徴です。口から入った虫卵は、幼虫になって人の体内の腸壁に侵入し、血流やリンパ系を介して主に肝臓に定着します。そこで増殖を始め、サボテン状に袋が連なる病巣をつくります。おもに肝臓に寄生するため、病気が進行して肝臓に影響をおよぼすようになると、肝機能障害にともなう倦怠感や腹痛ほか、ひどいときには、黄疸があらわれて発見されます。さらに進行すると、胆道などの近接した臓器へ病気が広がったり、血液やリンパに乗って離れた臓器へ転移することもあります。脳に転移すると、意識障害やけいれん発作などを起こします。放っておくと根治不可能になり、治療が行われなかった場合は生命にかかわります。

エキノコックス症の原因

多包性エキノコックス症の原因となる多包条虫は、成虫がキツネやイヌなどのイヌ科動物に寄生し、幼虫が野ネズミに寄生して、自然界で生息しています。キツネに寄生した成虫は、キツネの腸内で卵を産みます。その卵がキツネの糞と一緒に排泄され、糞に汚染された土や草を口にした野ネズミの体内に卵が入り、幼虫が野ネズミに寄生します。その野ネズミをキツネが食べて感染し、キツネの体内で成虫になり卵を産むサイクルになっています。

エキノコックス症の治療方法

エキノコックス症の治療方法は、薬物治療も行われますが、早期治療による肝切除が根本的な治療法となります。早期に診断できて病変が狭い範囲であれば、手術で根治できます。しかし、病期が進行してしまうと、完全切除が難しくなります。したがって、早期の発見と治療、感染しないための予防が大切です。

人への感染経路

エキノコックス症は、自然界でキツネ(終宿主)と野ネズミ(中間宿主)の間を循環しているエキノコックスの虫卵を、人が偶発的に食べてしまうことで感染します。エキノコックスが寄生したキツネやその糞に直接さわったり、糞に汚染された山菜や沢水を口にしたりすると感染の危険があります。虫卵を経口摂取する感染に限られているので、幼虫の宿主である人から人、野ネズミやブタから人に感染することはありません。

感染経路について、詳しくは、『エキノコックス症の感染経路について』をご覧ください。

エキノコックス症の予防

エキノコックス症の原因である虫卵が口に入らないように、予防することが大切です。北海道保健福祉部は、感染予防として、以下のことを心がけるように呼びかけています。

  • 外から帰ったら必ず手を洗う
  • キツネに餌付けをしたり、触ったりしない
  • キツネが近寄らないよう、生ゴミなどは適正に処理する
  • 飼い犬が野ネズミを食べないよう、放し飼いにしたり野原や公園で放さないようにする。また、散歩中に拾い食いをさせない
  • 山菜や野の果実などは十分に加熱もしくはよく水洗いしてから食べる
  • 沢水などの生水は飲まないこと。飲む場合は煮沸する

参考元:「エキノコックス症の知識と予防」北海道保健福祉部

多包条虫の卵は熱に弱く、煮沸すれば卵を死滅させることができます。外から帰ったら手をよく洗い、野山の食材はよく洗うか加熱してから食べるように気をつけてください。また、キツネと同様に、イヌも成虫に感染する可能性があるため、愛犬がエキノコックスに感染しないよう十分にご注意ください。

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