『アインザッツ』にも登場させた、バーンスタインの書いたミュージカル(オペレッタ)。
僕はこの序曲を、生涯で三回振っている。一時期名刺代わりに使っていた。
原作はヴォルテール、当時の楽天主義というか、要は「性善説」を痛烈に皮肉った小説だ。
それをバーンスタインと脚本のリリアン・ヘルマンが、当時のアメリカを襲った「レッド・パージ」と掛けて、二重の風刺として翻案した。
だから、とてもややこしい作品となった。
興行的には惨敗。
ミュージカル作品も何本もヒットさせているバーンスタインだから、凄く心残りだったのだろう、死ぬ前年まで改訂を続けた。
今は序曲の人気もあって、なんとなーく上演されるようになった。
いわゆる「ピカレスク・ロマン」である。
僕も『フラクタル』で、『キャンディード』をかなり参考にした。
元がヒットしてないんだから、そりゃヒットしないわな。
でも、こういう人間の裏面を描く作品というのは、今後も生まれていってほしいな。
今はヒューマニズムの全肯定感が異常だ。「今が最高!」とか「アベ首相がんばれ!」とか(笑)。
全肯定感がヒステリックに蔓延している時代には、こういう作品が出てこなければならないと思う。