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古賀茂明「2020年 安倍改正案は“加憲”ではなく“壊憲”」

「政官財の罪と罰」

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by 古賀茂明 (更新 )

著者:古賀茂明(こが・しげあき)「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元経産省改革派官僚、国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長。2011年退官。元報道ステーションコメンテーター。「シナプス 古賀茂明サロン」主催。5月末に『日本中枢の狂謀』刊行予定(写真/筆者提供)

著者:古賀茂明(こが・しげあき)
「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元経産省改革派官僚、国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長。2011年退官。元報道ステーションコメンテーター。「シナプス 古賀茂明サロン」主催。5月末に『日本中枢の狂謀』刊行予定(写真/筆者提供)

 例えば、9条に3項として自衛隊に関する条項を加える場合、どういう書き方が予想されるのか。

「自衛隊を保持する」という言葉だけでは、条文にならない。まず、論理的には、9条2項で戦力不保持が書かれているから、自衛隊をその例外にする必要がある。

 しかし、ただ、「自衛隊は例外だ」と書くと、自衛隊なら何でもありだということになるので、目的の限定が必要になる。

 そう考えると、自民党の改正草案の国防軍の条項が参考になる。

<(国防軍)
第九条の二
我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する>

 ここにある「国防軍」を「自衛隊」と変えれば、一つの条文ができる。

 また、元々の自民党改憲案の9条2項で書くはずだった「自衛権」という言葉をここでうまく入れ込むことも含めると、こんな感じになるのではないだろうか。

<第九条
3 前項の規定にかかわらず、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、自衛権を行使する目的で、内閣総理大臣を最高指揮官とする自衛隊を保持するものとする>

 このような条文ができれば、安倍総理としては最低限の目標達成ということになるだろう。「内閣総理大臣を最高指揮官とする」という文言はなくても良い。

●「自衛隊を保持する」と書くとどう変わるか、指摘されない不思議

 現行の第九条をごく普通に読めば、確かに自衛隊があることがおかしく見える。現に、自衛隊を持つことさえ違憲だという学説が通説だった時代もある。その後、いろいろな理論で自衛隊保持は合憲とされている。安倍総理の提案は、そのことを単に条文上明確化しようというものだから問題はない……。

 ……と考えるのは、実は大変な間違いである。

 これまでの憲法解釈として「自衛隊は合憲」という意味は、自衛隊があっても悪くはないが、決して「自衛隊がなければいけない」ということではない。「自衛隊を持たなくても合憲です」という意味を含んでいる。そんなことは当たり前だと誰もが思うだろうが、意外とこの点が見過ごされている。


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