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【社会】

増える大型車から通学路守れ 五輪、再開発で迫る建設ラッシュ

交差点で信号待ちする児童たちの近くを通る大型車=東京都港区で

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 二〇二〇年東京五輪・パラリンピック関連施設の建設ラッシュで、東京都内を走る大型車の増加が予測され、交通事故死者が増えることが懸念されている。都内では昨年、三人の小学生が大型車事故で命を奪われた。警視庁は、大型車が多く通る道と子供たちの通学路が重なる場所の調査を始め、取り締まりを重点的に進めようとしている。 (藤川大樹)

 二つの国道が交わる東京都港区の芝四丁目交差点。横断歩道で信号を待つ登下校の児童たちの目の前を、ダンプカーなどが頻繁に走り抜ける。大型車が多い通りと通学路が重なり警戒が必要な地点として、警視庁が中央、港両区内で抽出した五カ所のうちの一つだ。

 小学二年の男児(8つ)は、「オリンピックは楽しみだけど、車が増えるのは嫌。先生から気を付けるよう注意されている」と話した。子どもと手をつないだり、横断歩道を渡り終えるまで見送る保護者の姿も見られた。

 都内では五輪に向け、有明アリーナや海の森水上競技場など九カ所の関連施設が建設される。加えて、再開発事業も主なものだけで十二カ所予定されている。

 警視庁交通規制課は、それぞれの建設工事の進展に応じてダンプカーやミキサー車、鉄骨などの資材を積んだトラックの通行が増えるとみている。都は、選手村が建てられる中央区晴海の道路で、最大で一日往復二千五百台の工事車両が通ると予測する。

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 都内ではここ数年、交通事故死者は減る傾向にあり、昨年は戦後最少だった。だが、過去の建設ラッシュ時に死者数は増えている。高度経済成長で自動車が普及し、前回の東京五輪開催を控えた一九五九〜六一年と、五輪のあった六四年には年間千人を超えた。その後二百人台に減ったが、好景気に沸いた九〇年代のバブル期には再び増え、九二年には五百人を超えた。

 警視庁は、大型車の増加が著しい場所の抽出を急ぎ、取り締まりを重点的に進める方針。四月には、不動産会社やゼネコン、行政機関の関係者を集めた連絡会議を初めて開き、子供や高齢者に配慮した輸送ルートの設定や、工事現場の出入り口への誘導員の配置を求めた。

 東京都品川区の佐藤清志さん(53)は十四年前、娘の菜緒ちゃん=当時(6つ)=を大型車事故で亡くした。佐藤さんは「大型車の運転手はプロなのだから、安全を軽視せず、特に子どもたちの安全に配慮してほしい」と話している。

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