大河『直虎』高橋一生が語る―第2回:『軍師官兵衛』から引き継ぐ「内に秘めたるもの」
柴咲コウ主演の大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK)。“直虎”と名乗り、遠江井伊谷の女領主となった女性の激動の生涯を描く本作で、井伊家筆頭家老・小野但馬守政次(鶴丸)を演じている高橋一生。井伊を裏切っていたように見えた政次だったが、5月7日(日)に放送された第18話で、直虎(柴咲)と和解することに。今回は高橋に政次という役について伺った。(以下、敬称略)
演じる政次を「頑張っていこう」ってヨシヨシしてあげたいです
――第18話の直虎とのシーン。政次が直虎を裏切ってなかったことが明らかになりましたね。
高橋:裏切ってはいなかったけれど、政次の中では「僕は裏切ったんだ」っていう感覚は持っていると思います。結果的にそうなっただけで、裏切らざるを得なかったし、選択を迫られた。政次としては重責をずっと引きずりながらも、なんとかして自分の思いと乖離しないように行動したい。けれど、お家の誰かは騙し続けないといけない。いろんな裏表を使い分けないといけなくて複雑な人間に仕上がってしまう政次を、僕は「頑張っていこう」ってヨシヨシしてあげたくて。政次になるべく寄り添いながら、お芝居をしていたいって思っています。
――政次としては幼なじみとして直虎が心配という気持ちがありつつも、危険を承知で直虎が城主を続けることを認めることになりますが、その際の政次の内心はどんなものなのだったのでしょうか?
高橋:政次自体は、直虎に何かをしてあげようとは思っていない気もするんです。頭の中ではっきり意識できているかっていったら、どうなんでしょう…。直虎をどうしても幼なじみとして諫めないとという部分もあるし、家老として、政をちゃんとしないといけない部分もある。ただ、直虎がおとわの状態で接してくると、どうしても鶴丸として受けてしまうんです。
第18話で和解をしたとはいえ、政次には、今川の目付としての本音と、鶴丸としての本音と、ふたつの本音があり、さらにその裏もある。どれが本音で、どれが幼なじみとしての言葉なのか、自分で「俺は何を言ってるんだろう」みたいな状態で進んでいったりすることもあるんです。
本質的なものは、今後出てくる直虎と囲碁を打つシーンなどで見せています。はたから見たらただ囲碁を打ってるだけに見えるのですが、その中で複雑な会話をしたり、ある印象的な手を打ったりしています。直虎は和解した後も「本音なの?」って思いながらも、そこまでは聞けぬまま話が進んでいき、それがまた悲劇を招くのかもしれないのですが、そうでないと距離感を保てないということを政次は分かっていてやっているような気がします。
――高橋さんが思う、政次の魅力とはどういったところでしょうか?
高橋:以前、大河ドラマ『軍師官兵衛』(2014年)に出演した時に、井上九郎右衛門という役をやらせていただいたんですけれど、その時に印象に残っている「内に秘めたるもの」というセリフがあって。まさに政次は、「内に秘めたるもの」が何なのを、改めて考えさせてもらえる役だと思っています。
今は、九郎右衛門からバトンを渡してもらい、さらに深く、長く、密度の濃い形で「内に秘めたるもの」を見てくださってる人たちに感じてもらえるかっていう、実験ができているような気がしていて。僕は「政次、本当はこうだよね」「政次、悪い奴だよな」など十人十色の解釈でいいと思うんです。
政次の「内に秘めたるもの」、僕が本当に伝えたかったことはこうなんだっていうことが、見てくださっている方のどこに響くのかっていうのを、18話以降は聞いて回りたくて。こういうやり方をさせていただけている状況もありがたいですし、僕は政次のそういうところを素敵だと思います。