水木しげるが50年前に書いた文章が発掘…「ぼくが書きたいのは敗け戦の話だったんだがそれは許されないのだ」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
mizukishigeru_01_170512.jpg
『総員玉砕せよ!』(講談社文庫)

 2015年11月に亡くなった漫画家の水木しげるが、昭和40年頃に書いたと思われる自筆の文章が発見され話題になっている。今月11日、水木プロダクションの公式ツイッターアカウントがその文面を公開。そこにはこんなことが書かれていた。

〈戦記物は勝たないとつまらないらしく「レイテ海戦」なぞかくとトタンに売れなくなるのだ。(中略)ぼくが書きたいのは敗け戦の話だったんだがそれは許されないのだ。少年たちは花々しいガダルカナル戦あたりまでしか読んでくれないのだ。だから本があいついで売れるためには戦争に肯定的にならざるを得ない。自分が思ったことを書いて売れるなんて、マンガはソンナもんじゃない〉(原文ママ)

 水木しげるといえば、まず思い浮かぶのは『ゲゲゲの鬼太郎』をはじめとした妖怪漫画の数々だが、ご存知の通り、漫画家としてのもう1本の柱として、自身の戦争体験を多分に反映させた戦争漫画を描き続けてきた作家でもある。

 水木はこの文章が書かれた数年前から「少年戦記」という、貸本向け戦記もの漫画専門誌の編集を任され、自身もそこに寄稿していた。そこで、読者にどんな漫画がうけるのか色々と試行錯誤していたのだが、その結果導き出された結論は上記のような残念なものだった。

 日本軍がひ弱な姿を見せたり、ボロボロに負けたりする作品は読者にうけないということを把握した彼は、ある程度、読者におもねった雑誌づくりが必要だと感じていたようだ(とはいえ、そんな時期に描かれた漫画でも、カルトとしか言いようのない精神論を振りかざす日本軍を揶揄する描写などが差し挟まれていたりはしている。また、たしかに主人公は優秀な戦績をおさめるヒーローとして描かれがちだが、最終的には非業の戦死を遂げるパターンも多く、作品のなかに厭戦的なメッセージは含まれているのだが、それでは物足りなかったということなのだろう)。

 というのも、当時の水木はまだメジャー出版社で漫画家デビューする前。『ゲゲゲの鬼太郎』も『悪魔くん』も生まれる前である。極貧生活のなか、ギリギリの状態で貸本用漫画を描いて暮らしている彼にとって「少年戦記」はなんとしても商業的な成果をおさめなければならない雑誌だった。文章には〈これが失敗すれば餓死しなければならなかった。必ず成功させなければならなかった〉とまで書いている。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルマンガ・アニメビジネス社会カルチャーくらし教養

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 報ステ後藤謙次の安倍批判がキレキレ!
2 安倍の改憲で高等教育無償化はまやかし
3 つるの剛士が「親学」の広告塔的役割
4 水木しげるが50年前に書いた文章が発掘
5 水原希子に日本のネトウヨがヘイト攻撃
6 水原希子が靖国神社にNO!
7 慰安婦合意見直しに安倍とネトウヨ発狂
8 葵つかさが「松潤とは終わった」と
9 神社本庁「日本人でよかった」の危険性
10 安倍の9条加憲は日本会議幹部の発案
11 安倍の代弁者・山口敬之のレイプ疑惑を新潮が
12 指原に幻冬舎から小説出版の計画が?
13 水木しげるが描いた慰安婦「地獄だ」
14 ナンシー関の長渕剛論がすごい
15 グッディ!土田マジギレ真の原因
16 櫻井よしこは「神社」に住んでいた! 
17 籠池理事長がアッキーとズブズブを証言
18 北原みのり逮捕の原因は安倍批判?
19 恵俊彰が田崎史郎を「政権の代弁者」と
20 山口敬之が安倍批判に「北朝鮮の犬」攻撃
PR
PR
1NHKが“押し付け憲法論”否定の番組 
2森本敏や橋下徹が安倍の北朝鮮扇動を批判
3清志郎、憲法9条へのメッセージ
4対北朝鮮軍事行動に固執する安倍の狂気
5報ステ後藤謙次の安倍批判がキレキレ!
6安倍は嘘つき、世論調査で改憲反対急増
7「憲法を守ろう」排除の動きが続々
8櫻井よしこは「神社」に住んでいた! 
9高樹沙耶が「大麻解禁の思いは変えられない」
10自民党が共謀罪でデマと恫喝チラシ配布
11大竹しのぶが介護保険法改正を批判
12安倍の9条加憲は日本会議幹部の発案
15山口敬之が安倍批判に「北朝鮮の犬」攻撃
16百田尚樹「漢文授業を廃止せよ」
18井上ひさし「憲法9条は古くない」
19安倍が改憲質疑で「読売を読め」
PR
PR

人気連載

アベを倒したい!

室井佑月

室井佑月が斎藤貴男と「共謀罪」を徹底批判!「安倍政権に逆らう人が片っ端から逮捕される」

アベを倒したい!

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄

"体育会系相田みつを"松岡修造は本当に「ブレない男」なのか? 年を追うごとに変わっていく修造語録を読み解く

「売れてる本」の取扱説明書

ネット右翼の15年

野間易通

高市早苗はいかにして"ネオナチ"と出会ったか

ネット右翼の15年

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

戦争を放棄せよ! 軍事力がなくても侵略と闘う方法はある、自由のために闘える!

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」